お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第183話 もっと歓迎! グリムジョー御一行様!!

「探したのよダーリン!!」

「だあああっ! ウルセえな! こっちは今それどころじゃねえんだよ!!」

 

 海燕たちが破面(アランカル)らの気配に気付いたのと同じ頃、一角は色んな意味でピンチになっていた。

 弓親とコンビで夜回りに出ていたのは良いが、その途中で浅野みづ穂に見つかっていたのだ。

 

「一角! 遊んでいる場合じゃないよ! このままだと……」

「んなこたぁわーってんだよ弓親! こんだけの霊圧垂れ流してりゃ、入隊一期目の新入りだって気付くわ!!」

 

 しかも間の悪い事に、現世にやって来た破面(アランカル)たち――その一体が、一角たち目掛けて迫まりつつある。

 このままでは彼女を巻き込んでしまうのは火を見るよりも明らか。立場上、現世の一般人を巻き込むのは避けたいところ――避けたいところなのだが……

 

「こんな時間に外で遊んでいるなんて校則違反よ! 生徒会長の立場として見過ごせないから、このままウチに拉致――連行――監禁――えーっと、保護! 保護するから!」

「オイ! なんかコイツどさくさ紛れにとんでもねえこと言ってんぞ!?」

「四番隊の隊長さんといい彼女といい、一角は個性的な異性に好かれる星の下に産まれてきたのかな?」

「ウルセえ! ってか弓親! この女引き剥がせ!! アレ(・・)は俺が相手をする!!」

「はいはい、わかったよ。ということで、ほら行くよ?」

「あーっ! ちょ、なによアンタ!? ちょっとイケメンでおかっぱだからって調子に乗ってんじゃないわよ! これは拉致なんだからね! ちょっとおおぉぉぉっ……!!」

 

 みづ穂は弓親に強引に引き摺られながら――ついでに怨嗟の声を上げつつ――この場から離れていく。

 

「さて、これで問題ねえな」

 

 夜の闇の向こうに二人の姿が消えていったことを確認すると、彼は義魂丸を口に含んで死神の姿へと戻る。

 そのまま闘争本能の赴くまま、迫り来る破面(アランカル)へと突撃――

 

「……お前はどっか見つからない場所に隠れてろ。特にあの女には絶対に見つかるなよ!」

「わ、わかりました……」

 

 ――する前に。義骸へと厳命を下してから、ようやく戦いへと赴いた。

 

 

 

「おお、俺の相手は死神か!」

 

 一角の前へと現れたのは、左右非対称な髪型が特徴的な巨漢の破面(アランカル)だった。

 自身よりも巨大な――六尺六寸(2メートル)はあるだろうか――相手に、彼は気を引き締め直す。

 と同時に、遠くの方で一つの霊圧が消えた。

 

「……あん?」

「これは……そうか、ディ・ロイがやられたか」

「ディ・ロイ? テメェの仲間か?」

 

 仲間がやられたというのに何の感情も見せないどころか、笑みすら浮かべながら相手は答える。

 

「まあ、な。けど、誰かは知らねえがアイツと当たった奴は運が良いぜ。アイツは破面(アランカル)だってのが信じらんねえ位の出来損ないだからなぁ……それに引き換え、テメエは運が無えな! 俺に当たったばっかりに、ここで転げ回って死ぬしか無えんだからなァ!!」

「ハッ! 仲間に随分と冷てえじゃねえか!!」

 

 その評価に見知らぬディ・ロイへと少しだけ同情を送りつつ、一角は斬魄刀を引き抜くと相手へと斬り掛かっていった。

 

 

 

 

 

「いい加減にしなさいよ! とっとと放しなさい!!」

「はいはい、悪い悪い。けどね、あの場所にいたら危険なんだよ」

 

 その一方で。

 弓親はみづ穂の首根っこを掴みながらまだ移動を続けていた。

 破面(アランカル)を相手に一角が戦いたがるのは分かっていた。そして戦いが始まれば、周囲に気を配る余力は無くなるかもしれない。

 そんな戦いに人間を巻き込むようなトラブルは避けるべく、彼は距離をとり続ける。

 本音を言えば「無視して一角の戦いっぷりを間近で見たい」のだが、どうやら死神としての仕事の方を優先させたらしい。

 

「はぁっ!? 何が危険なのよ!! 不良のヤリ(ピー)ン男どもが集まってきてマワされるとでも言うの!?」

「げ……下品な……」

 

 年頃の女性が口にするにはあまりにもな内容に、一瞬弓親のコメカミがヒクついた。

 一瞬「もうこのまま見捨てていいんじゃないだろうか」という考えが過るが、弓親はその意見を気合いでねじ伏せる。

 

「……そういう意味じゃなくてもっと単純に、生死に関わる意味で危険なんだよ。君だって、まだ死にたくはないだろう?」

「あそこで殺し合いでも始まるっていうの!? バカバカしい、つくならもっとマシな嘘を――」

 

 その言葉を、みづ穂は最後まで言い切ることが出来なかった。

 

「始まったか」

「な、なに……あれ……」

 

 霊感を持たない彼女には、何が起きているのかはさっぱり分からない。だがそんな彼女でも、理解できることが一つだけある。

 それは、強烈な殺気――戦いの匂いとでも言えば良いのだろうか?

 たまに街中や校内で喧嘩を見かける時があるが、その時の雰囲気を何万倍も濃くしたような"何か"が、引き摺られてきた方角から放たれている。

 

「これでわかっただろう? ここからは、君が踏み込むべきじゃない」

「何言ってるのよ! ってことはダーリンがあの場所にいるんでしょ!? 助けに行かなきゃ……!!」

「勇敢だね。けど、君の出番はここまでさ」

「は……? あうっ……!」

 

 知ってなお一角の場所へ戻ろうとするみづ穂の様子に少しだけ驚きつつも、弓親は彼女の目の前でライターのような道具を使う。

 ボムッと何かが小さく爆発したかと思えば、彼女は意識を失いゆっくりと倒れた。

 

「その勢いは嫌いじゃないけどね。正直、知りすぎた。ゆっくりお休み」

 

 記換神機(きかんしんき)――人間の記憶を差し替える道具である。

 死神と(ホロウ)に関する記憶を忘却させるこの道具を使えば、彼女は今夜の事を思い出すことはない。

 関わり合いにならない方が、両者の為にもきっと良いのだろう。

 

「さて、急いで戻らなきゃね……」

 

 とりあえずみづ穂の身体を大通りまで運び、壁にもたれるような格好で座らせると、弓親は元来た道を大急ぎで戻っていった。

 その三十秒後。

 

「うわぁ……なんか変な爆発みたいな騒ぎが起きてんだけど……アフさんにも無視されるし……夜は暗いし……こええよ……って姉ちゃん!?」

「ん……ううん、ケイゴ……?」

「何こんな道ばたで寝てんだよ!? まさか酒でも飲んだのか!?」

「……あっ! ダイバダッタ! ダイバダッタは!?」

「は? お台場、だった……? ……なにが?」

「さっきまでいたのに! どこ、どこに行ったの!?」

 

 なお記換神機(きかんしんき)で差し替えられる記憶はランダムなため、ありえないシチュエーションの記憶になることもあるという。

 

 

 

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「おらぁっ!」

「らぁっ!」

 

 霊圧が込められた張り手を、一角は片手の鞘で受け止めると同時に、もう片方の手で握る斬魄刀で斬り掛かる。

 その攻撃は相手の胸元を浅く切り裂き、何筋目か刀傷を刻んでいた。

 

「ちっ! やるじゃねえか死神ィ!」

「テメエもな破面(アランカル)!」

 

 とはいえ一角も初撃を腹部に一撃を喰らい、ダメージを負っている。

 それ以降は上手く避けているが、どちらも決定打とは言いがたい。

 一発だけ重い一撃を受けた一角と、軽い傷を多く受けた破面(アランカル)。互いの負傷具合は半々と言ったところだろうか。

 

「……そういや名をまだ聞いてなかったな、デカいの」

「オウ、俺か!? 俺は破面(アランカル)No.13(トレッセ)――」

 

 そこまで口にしたところで、破面(アランカル)は動きを止めた。

 

「――いや、止めだ。これから殺す奴を相手に、名なんぞ名乗るだけ無駄だろう」

「……そうかよ」

 

 相手の反応に、一角は若干冷めた瞳で応じる。

 

「どうやらテメエは俺とは流儀が違うらしいな。"殺す相手には名を名乗れ"ってのは、俺が戦い方を教えた奴に――必ず教える最後の流儀だ。戦いに死ぬと決めた奴なら、自分を殺す奴の名ぐらい知って死にてえハズだからな」

 

 そこまで口にすると、一角は再び闘志を燃え上がらせた。

 

「更木隊――あー、もとい――卯ノ花た……十一番隊第三席! 斑目一角だ!!」

 

 が、ちょっとだけ締まらなかった。

 

「テメエは名乗る必要は無え! 俺の名だけをよく覚えておきな! テメエを殺す男の名だ!!」

「そうかよ死神ィ!!」

 

 苛立ったように拳が振り下ろされるが、一角はそれを鞘で受け止める。

 

「ついでにもう一つ覚えておけ! その腰の斬魄刀、そろそろ抜いとけよ!」

「あぁ!? 何を馬鹿なことを言ってやがる!」

 

 鋼皮(イエロ)の強固さに任せ、一角の斬撃を素手で強引に防ごうとした刹那、一角の殺気が一段階濃くなった。

 

「ぐ、あっ……!!」

「だから、抜いとけって言っただろうが」

 

 強烈な踏み込みによる一撃は、鋼皮(イエロ)の鎧をバターのようにあっさりと切り裂いてみせた。

 それまで斬撃を受け止めていたはずの片腕に斬魄刀が深々と食い込み、傷口からどくどくと血が流れ出ていく。

 

「て、テメエ……今までのは遊びか……?」

「まあな。せっかくの機会だ、ちょいと楽しませて貰ったぜ。けど、ここからは本気だ。もうちょっと遊びてえんだが、それであの女に笑われるのはもっと我慢出来ねえんで――なぁッ!!」

「チィ……ッ!!」

 

 強烈な斬撃を一角は放つ。

 両腕を巧みに操り、時に攻防を入れ替えて、時に鞘すらも攻撃へと利用する戦い方は、なるほど当人の言葉通りこれまでの戦いが遊びとしか思えないほどだ。

 

「オラどうした! 全力で来いよ! 命を賭けた戦いってのも、いいもんだぜェッ!!」

「ぐ……!」

 

 二撃、三撃と放たれる斬魄刀を前にして、破面(アランカル)は自身の霊圧を高めて鋼皮(イエロ)をぶ厚くすることで防いでいく。

 だがそれで防げるのは一撃にも満たない。強固にしたはずの鋼皮(イエロ)は一撃目で半ばまで斬られ、二撃目では確実に食い破ってくる。

 防御を固めてなおもそれを上回る攻撃力に、じわじわと追い詰められていく。

 

「チンタラ守ってばかりじゃつまんねえだろうが!! 男らしく――」

 

 ――いかんッ!

 

「――攻めてみせろッ!!」

 

 見せつけるかのような大ぶりの一撃を放とうとした瞬間、破面(アランカル)の本能が警告を発していた。彼はその本能に従い、腰の斬魄刀を抜くと一角の攻撃を受け止め防いでいた。

 

「はははっ! 抜いた、抜いたな!」

 

 渾身の一撃を受け止められたものの、悲壮感などカケラも見せることなく一角は敵の間合いから一旦距離を取る。

 一方相手は、信じられないような。だがどこか当然のような表情で自ら手に握る斬魄刀を眺めていた。

 

「……まさか、斬魄刀抜くことになるたァ……思ってもみなかったぜ……」

「そう言うなって。出し惜しみして負ける方が、よっぽどみっともねえぞ。俺ァ良く知ってるからよ」

「……?」

 

 若干苛立ちを混ぜながら呟いた一角の言葉の真意を掴めきれず、一瞬だけ怪訝な表情を浮かべる。

 

「やれやれ……急いで戻ってきたおかげで、どうやら間に合ったみたいだね?」

「おう、弓親! あの女はどうした?」

「安全な場所まで連れて行ったよ」

「よっしゃ!」

 

 と同時に、弓親が戻って来た。

 短いやりとりを交わすと、彼は少し離れた場所――ある意味特等席で一角の戦いを見届けようとする。

 

「さて、ここからが本番ってわけだ。次は解放まで引きずり出してやるよ」

「いや、その必要はない」

 

 傷ついた手を刀身へと添えると、霊圧を高めていく。

 

「――破面(アランカル)No.13(トレッセ)、エドラド・リオネス」

「あん?」

「つれねえな。お前の流儀なんだろ? 殺す相手に名を名乗るのはよ。そしてコイツが、俺の斬魄刀だ――()きろ、火山獣(ボルカニカ)!」

 

 エドラドの肉体に変化が起き始めた。

 肩から腕にかけての部分が巨大化し、強固な鎧を形作るように隆起していく。その姿は、見る者に今にも噴火する直前の火山を想起させる。

 

「この二つの名前を覚えて、死んでいけ」

「……上等だ」

 

 一角は歓喜していた。

 エドラドから伝わってくる強大な霊圧に、これほどの強敵と戦える喜びに、身体中が打ち震えている。

 深々と腕へ切り込んだはずだが、相対する相手からは怪我の様子が伝わってこない所を見るに、どうやら解放することで傷も治るようだ。

 

「これでようやく互角ってところか? こっちも行くぞ! 延びろ! 鬼灯丸!!」

 

 ならばこれは仕切り直し。文字通り、ここからが本番だ。

 一角もまた斬魄刀を始解させると、エドラド目掛けて切り込んでいく。

 

「わかってねえ、みたいだな死神ィッ!」

「ぐ……ああっ!?」

 

 突進する一角に合わせて、エドラドは肩から炎を噴射して迎え撃つ。

 それは道一つを、通りの向こうまで焼き尽くさん程の勢いで放たれた業火に、自ら突っ込んでいったのと同義だ。

 一角の全身が炎に包まれ、死覇装もろとも肉体を焼いていく。

 

破面(アランカル)の斬魄刀は、俺らの能力の"核"を刀の姿に封じたモノ! 死神の斬魄刀とは全くの別モンだ! 真の力と真の姿を解放した俺に、勝てるワケがねえんだよ!!」

 

 だがエドラドの攻撃はそれだけでは止まらない。

 炎に焼かれ、放射の勢いによろめく一角目掛けて飛び込み、拳を放つ。その勢いは、先ほどまでのゆうに数倍の速度と威力を誇っていた。

 

「どうだ!! 斬魄刀を解放すれば戦闘能力もハネ上がる! 受け止めることなど――!」

「ハハハッ! ちょいと驚いたぜ!! たしか、高温滅菌とか言うんだろ!? あの女が時々言ってやがったな!」

「てめえ……」

 

 炎の幕の向こう側、オレンジ色に染まった空間の向こう側から、一角が姿を見せる。

 高熱によって所々焼け焦げてこそいるものの、どうやら戦闘に支障を来すほどのダメージは受けていないようだ。

 衝撃で折れぬよう槍の柄を微妙にたわませてエドラドの拳も受け止めていることから、焼かれても意識を失うことなく冷静に戦局を見ていたようだ。

 

「んで、そうやって炎を出すだけか? ならもう勝負はもう決まったな」

「お前の負けでな! 死神ッ!!」

 

 挑発に対し、エドラドは両肩から渾身の火炎を放つ。

 単純計算だが、先ほどの倍の熱量と火勢を誇る一撃だ。

 

「おらあああああぁぁっっ!!」

「な……っ……!?」

 

 対して一角は、手にした鬼灯丸を勢いよく振り上げた。

 それだけで空気が割れ、炎が切り裂かれていく。まるで炎が意思を持って一角を避けて通っているかのようだ。

 

「よお、それで終わりか?」

「くっ! 舐めるなァッ!!」

 

 炎を切り裂いたのは賞賛に値するが、それだけだ。

 一瞬度肝を抜かれたものの、エドラドは再び炎を放つ。

 再び両肩からの猛火、それも先ほど以上の霊圧と勢いが込められた一撃だ。その威力は闇を舐めつくさんほどだが――

 

「ば~か! オラッ!!」

「ッ!! ぐッ!!」

 

 炎が延びる先に一角の姿は無かった。

 いつの間に移動したのやら、エドラドのすぐ隣に現れたかと思えばそのまま彼の胸元を切り裂いた。

 

「い、いつの間に……!?」

「いつまでも同じ場所で呑気に待ってると思ってんのか!?」

 

 さらに飛び上がり、手にした槍を勢いよく回転させるとそのままエドラド目掛けて叩き付ける。

 落下による勢いと回転によって威力を増した攻撃だ。

 なんとか身を捻るものの避けきれず、肩から延びた火山が三分の一ほど切断される。

 

「遅えんだよ!!」

火山獣(ボルカニカ)ァッ!!」

 

 着地したかと思えば今度は地を這うように姿勢を低くしたまま動き、下顎めげて槍を切り上げてきた。

 だがエドラドもされるがままではない。

 伸び上がる槍ごと一角を押し潰そうと、炎を纏った拳を振り下ろす。肩から炎を噴射する勢いを加えた、強烈な打ち下ろしだ。

 

「ぐあ……ぁっ!!」

 

 拳と槍――鬼灯丸と火山獣(ボルカニカ)とが激突し、その痛みと衝撃にエドラドは思わず数歩よろめき苦痛の声を漏らす。

 一角の切り上げは直前でその軌道を変えると、彼の火山獣(ボルカニカ)の鎧ごと肉体を――彼の手首を下から貫いていた。

 

 どれだけ強固な鎧であっても、肘や肩といった関節部分は薄くせざるを得ない。

 それは破面(アランカル)とて同じ。鋼皮(イエロ)であっても、真の姿へと変じたとしたにせよ、関節がある以上は逃れられない。

 

「し、死神ィ……ッ!!」

 

 理屈ではそうだが、攻撃の直前で軌道をズラしたのははたして狙ってやったのか。それとも偶然なのかはエドラドには分からない。

 分かるのは、手首から伝わってくるのは無視出来ぬほどの激痛。そして――火山獣(ボルカニカ)を貫く程の強大な霊圧を、一角が放っているということだった。

 

「貴様……この霊圧、俺よりも……」

「知らねえな! 霊圧の差なんざ大して興味もねえよ! だがよ、面倒な相手との戦いの経験ならテメエより積んでるつもりだぜ! 不本意ながらよおぉっ!!」

 

 エドラドの片腕を潰しても、一角の動きは止まらない。

 先ほどの切り上げの際、少なくは無い火炎を受けてダメージを負っているはずだ。それは焼け焦げた死覇装が何よりも物語っている。

 

「おらっ!」

「くっ!」

 

 なのにそれを感じさせぬ動きで、突きを放った。

 一見すればただの鋭い一撃にしか見えないものの、だが先端は小さな円を描くように蠢き、突き刺さった瞬間に傷口ごと抉り取るような動きをしていた。

 その攻撃を、エドラドは傷ついた片腕で受け止める。腕が深々と切り裂かれて痛みがさらに走るが、もはやしったことか。

 

 手首を貫かれた片腕は、もはや攻撃の役には立ちそうもない。

 ならば使い捨てるつもりで防御に用い、その間に無事なもう片方の腕にて全力で一角を叩き潰す。

 そのために片腕へと霊圧を集中させていたところ――

 

「ひゃっはぁっ!!」

「な……っ!!」

 

 一角はエドラドの肩へと取り付くと、そのまま躊躇うことなく槍の穂先を火山獣(ボルカニカ)の中へ――正確にはその表面に存在する、火炎の噴出口へと突き刺した。

 それは内圧の高まった空間に大穴を空けられた様なものだ。

 

「こんな馬鹿でけえ弱点丸出しにしてるなんざ、狙ってくれって言ってる様なもんだぜ!!」

「て、テメエ! 狂ってやが――」

 

 逃げ場を求めていた炎たちは、空いた穴へと我先に殺到し―― 

 

「オオオオオオオオォォッッ!!」

「ぐうううううぅっぅっ!!」

 

 ――主であるエドラドごと大爆発を巻き起こした。

 

「斑目……一角……」

 

 周囲が爆煙に包まれる中、エドラドは呟く。

 半身は衝撃に耐えきれず円形状に抉られ、彼の身体は半分しかない。

 

「お前と戦ったのが……俺の不運……か……」

 

 そこまで口にすると、彼は血を吐き出しながら事切れた。

 

 

 

 

 

 

「お疲れ、一角」

「……オウ」

 

 弓親は道を少し歩くと、その先で座り込んでいる一角へ軽く手を上げる。

 

「また、無茶をしたねぇ……」

「チッ! 仕方ねえだろうがよ。下手すりゃ負けてたかもしれねえ。負けても仕方ねえって思ってんだけどよ……」

 

 ボロボロになった鬼灯丸で地面をカンカンと叩きながら、不本意そうに彼は吐き出した。

 

「あの女に負けたまま死ぬのは、どーにも腹の虫が治まらねえ!」

「まったく、その通りだね。今度勝負するときは、僕も手伝うよ。けど――」

 

 うんうんと首肯しつつも、弓親は遠くへと視線を投げる。

 

「今はその傷を治す方が先だね。ほら、どうやら来てくれたみたいだよ」

 

 未だ姿は見えないが、その先からは死神の霊圧が感じられた。

 どうやら雛森がコチラに向かって来ているようだ。

 

「チッ!! あー、腹が立つぜ……! 不本意だが、大人しく治療されてやるとするか……!」

 




(本当はグリムジョー戦まで入れる予定だったんですけどね……
 前話くらいの文字数があったから……)

●タイトル
何も浮かばなかった結果。

●更木隊もとい卯ノ花隊もとい十一番隊の発言
どうしても四番隊がチラついて恥ずかしくなって「卯ノ花隊」と言えなかった。

某隊長「卯ノ花隊と呼んで良いのですよ?(にっこり)」
某三席「ちょ! やめてくださいよ!」
某副隊長「卯ノ花隊(平然)」
某ちっちゃい子「卯ノ花隊だよねー♪(誇らしげ)」
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