お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第185話 反省会だよ! 先遣隊!

「海燕さん!」

「副隊長!!」

「一護、それと朽木も。どうやら怪我はねえみたいだな」

 

 グリムジョーらが消えたのを見て、二人は海燕の所へと駆け寄ってくる。

 

「申し訳ありません! 本来ならば、私が……」

「あーあー、気にすんなって。あのグリムジョーってヤツは、かなり強かった。少し間違えりゃ、俺だって負けてたかもしれねえ。限定解除の許可が早めに降りて来て助かったぜ……」

 

 ルキアは寄りつつすぐさま頭を下げた。

 グリムジョーの霊圧に気圧されてしまったことを悔いていたようだ。だが海燕は何でも無いとばかりにぱたぱたと手を振る。

 

「つーわけでだ、朽木ィ! 今日の事を悔いてる暇があったら、鍛え直すぞ。じゃなきゃ、俺たちは勝てねぇ……あれで上から六番目の腕前ってことは、てっぺんは下手すりゃ隊長たちだって勝てねえかもしれねえんだ……わかんだろ?」

「う、それは……はい……」

「うっし、んじゃ反省はここまでだ。まずは仲間の状態の確認! それが終わったら相手の情報の共有! 上への報告! 対抗策の練り直し! 俺たち個人の鍛え直し! やるこたぁ山ほどあるんだからよ! 落ち込んでる暇なんざねえぞ!!」

「は……はいっ!! ではまずは、恋次たちの状況確認からします!!」

「おう! 任せたぜ!!」

 

 邪気のない笑顔に、いつの間にかルキアは釣られて頬を綻ばせていた。

 気を取り直したように霊圧を探り、伝令神機にて仲間と連絡を取り始める。

 

「さて、朽木はアレでいいだろうな……んで、次は一護。オメーの番だ」

「あ、ああ……その……」

 

 言い淀む一護の頭を、海燕で片手で掴むとそのままグリグリと乱暴に撫で回す。

 

「なーにをグジグジ悩んでんだよ!」

「わっ、わわっ! 何すんですか! やめ……っ……!!」

「なんだオイ、ガキがいっちょ前に俺たちのことを心配してたか? 破面(アランカル)相手にすんのに、自分がいなきゃ勝てないって本気で思い込んでたか? ばーか! ガキが気ィ遣いすぎなんだよ!!」

 

 にやにやと笑いながら一通り撫で回し続ける。

 一護の髪型が崩れ、ぐちゃぐちゃになってもお構いなしだ。

 

「今日の事で、俺たちでもなんとか出来るってこたぁわかっただろ? だったらテメーはとっとと、自分の用件を片付けてこい。んで駄目だったら、俺と一心に泣きついてこい。そんときゃ、力尽くででもなんとかしてやるよ」

「ち、力尽くって……」

 

 なんとも乱暴な物言いだったが、髪ごとぐちゃぐちゃにされるのも含めて、不思議と悪い気はしなかった。

 

氷翠(ひすい)はアレで優等生だからよ。お前みたいにヤンチャで手の掛かるガキじゃなくて力が余ってんだよ」

「はは……ノロケっスか?」

「違えよ。コイツは……意地みてえなもんだな」

「意地、ですか……?」

「オウ! ま、お前もそのうち分かると思うぜ」

「ありがとう……ございます……」

 

 一護は深く頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 この日から、現世は動き始める。

 

 

 

 

 

 

「え……? 修行を付けて欲しい……?」

「僕たちに……?」

「お願い!」

「頼む! この通りだ!!」

 

 伏して頭を下げる織姫と茶渡の姿に、吉良と雛森は困惑していた。

 

「その……君たちを守るために僕たちが来たわけで……」

「わかっている……それでも、だ。頼む!」

「昨日の戦い、私たちずっと見ていたの……そうしたら、なんだか置いてけぼりにされたみたいで……」

「これは我が儘だと理解している……! だが、このままでは一護の隣に立てなくなりそうだ……」

 

 二人の言葉から、昨日の破面(アランカル)たちの襲来が原因だということは理解出来た。

 そして実力の開きから不安を覚え、知り合いである雛森たちに助力を請いに来たのだということもわかった。

 

「えっと……どう、しようか……?」

「と、とりあえず志波副隊長に連絡と許可を取ってみるね!」

「修行をするにしても場所が……穿界門(せんかいもん)の使用許可を取って、尸魂界(あっち)で修行を付けるべきかな……?」

「あ! じゃあ先生にも連絡してみる!」

 

 

 

 

 

 

「恋次……頼む、一生のお願いだ!!」

「な、なんだよルキア……! どうしたんだ!? んな改まって……!!」

「私に稽古を付けてくれ! 卍解を、教えてくれ……!」

「……はぁ!?」

 

 ルキアの姿に恋次は困惑していた。

 

「お前まさか、昨日の戦いで役に立たなかったのを気にしてんのか……?」

「そ、そうだ……」

「いや、だからって卍解は一朝一夕で出来るもんじゃねえぞ!? それに稽古なら志波副隊長にだって……!!」

「そ、それはそうだがその……れ、恋次……お主が良いのだ……」

 

 うつむき、頬を赤らめながらルキアは口にする。

 その姿を見た恋次は、思わず耳まで真っ赤に染める。

 

「し、しししししょうがねえーなー!! ま、俺様に任せとけって!!」

 

 

 

 

 

 

「ああっ! いたあああぁぁっ!」

「ゲッ! テメエは……おい弓親ッ! ちゃんと記憶は書き換えたんだろ!?」

「……? ああ、そうか! 書き換えたのはあの場の記憶だけだからね。だから、学校の屋上で見つかった時の記憶はノータッチだよ」

「それじゃ意味ねえだろうが!! チッ! 逃げんぞ!!」

 

 

 

 

 

 

「よお、一護。なんや、仮面の軍勢(オレら)の仲間ンなってくれ……ちょ! どこ見とんねん!?」

 

 空座町のとある区画。

 廃棄された倉庫の一つへと乗り込んだ一護であったが、出迎えとばかりに声を掛けてきた真子には目もくれず、視線は別の方を向いていた。

 

「真子、一護のヤツお前のことちっとも見とらんで。なんや知らんが、リサの方をじーっと見とる」

「ハァ!? おいおい、お年頃ってことかいな!? そら、リサは見た目だけはええけど……ん? どないしたん?」

「ああっ!! その格好! リサって名前!!」

 

 ひよ里と真子の言葉を聞きながら、やがて思い出したように叫ぶと一護は大急ぎでポケットを漁る。

 

「持って来といて正解だったぜ……おい、アンタ! そこのセーラー服着てるアンタだよ!!」

「……あたしか?」

「そうだよ! アンタ、矢胴丸リサって名前なんだろ!?」

 

 矢胴丸リサ。

 その名前を口にした途端、真子たち全員がざわついた。

 

「おい、なんで知ってんだ……?」

「まさかストーカー?」

「ま、リサは見た目は良いからな。可能性はあるだろ」

「一目惚れかよ……」

「見た目だけちゃうわ! 中身もええ女や!!」

「なにがだ! てか、誰がストーカーだ!! ちげーよ! そうじゃなくて、アンタに手紙を預かってんだ! 湯川藍俚(あいり)さんか……ら……?」

 

 藍俚(あいり)の名を出した途端、先ほどとは別の意味で仮面の軍勢(ヴァイザード)たちがざわつき出した。

 そしてリサだけは、その名を聞いた途端に風のように動き、一護の手から手紙を奪い取っていた。

 

「湯川……うわぁ、懐かしい名前だな」

「真子が言ってたことって、嘘じゃなかったんだな」

藍俚(あいり)ちゃんホンマどういうこっちゃ!? なんでリサに手紙だしとんねん!!」

「あー……名前聞いたら、あいりんのご飯食べたくなってきた……!」

「あんたら静かにしぃっ! 喧しくて手紙に集中でけへんやん!!」

「お、おう……」

 

 一喝して仲間たちをも黙らせると、リサは手紙へと視線を落とした。

 彼女はしばらくの間熟読を続けていたが、やがて勢いよく顔を上げる。

 

「……さすがや師匠……やっぱり師匠は奥が深い……」

「……は? なにが……?」

「よっしゃ一護! 今からアンタのことは全力で鍛えたる!! ハッチ!! 今すぐ結界張りぃ!! 内在闘争始めるで!!」

「は、はいデス!!」

「ちょちょちょちょちょい待ちィ! なんや、何でイキナリやる気出しとんねん!!」

「ええからさっさとヤルで! 時間が惜しいんや!!」

「話がはええのは良いんだけど……何書いたんだよ、湯川さん……」

 

 一護本人を置いてけぼりのまま、何やら急ピッチで事態は動いていた。

 

 

 

 

 

 そんな最中――

 

 

 

 

 

「まさか、また現世に来られるなんてねぇ……」

『やったでござるよ藍俚(あいり)殿!! 今度こそ薄い本を買い漁るでござる!!』

 

 一人の死神が、現世にやって来たようです。

 




●手紙の中身
リサへ
これを読んでいるってことは、ちゃんと虚化できたのね。
ちゃんと生きているって、信じていました。

それと、百年前のあのとき、助けられなくてごめんなさい。
今更何を都合の良いことを言うのかと思うかもしれないけれど、謝らせて。
色々と書きたいこと、語りたいことはあるけれど、それはきちんと時間が取れてから、改めて二人で話しましょう。

もう分かっているかもしれないけれど、黒崎君の中には虚がいます。
虚化については、私が実例を踏まえて前提となる知識は大体与えておきました。だから、遠慮は無用です。
内在闘争まで含めて、ある程度は知っています。
なので最初から、全力でやってあげてください。

この戦いが終わったらまた尸魂界(こっち)で伊勢さんと一緒に本を読みましょう。

かしこ。

湯川 藍俚

追伸
現世では男の娘というのが流行っているそうですね。
ですがアレは、恥じらいを捨てたら可愛くないと思います。
自分は男なのに、女性の格好をしている。女性扱いされている。それが恥ずかしくて、でも嬉しいという二律背反の間で悶える姿が至高なんだと思います。

だから完全に受け入れたのなら、きちんと性転換までするのが正しいと思うんだけど、リサの意見はどうかしら?

●BBA無理すんな

【挿絵表示】

現世に行くから……仕方ないんだ。
……女医の方が良かったかもしれない。
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