お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第188話 ちょっと乙女になった日

 速報! 霞大路家、護廷十三隊全員に襲われる。

 

 ……いえ、本当に。そうなっちゃったんです。

 三番隊で貴船をたたきのめした後、私と天貝隊長はとって返して一番隊へ。

 

 総隊長が緊急隊首会を招集したかと思えば、全員総出で霞大路家を強襲です。

 四十六室から「手出し無用!」と言われていましたが、それは"当時の"四十六室であり、現在は総隊長が代理を務めていますので、お上公認なのです。

 藍染に「ちょっとだけ良いことをしてくれた」と感謝した瞬間でした。

 加えて犯罪の証拠は「これでもか!」と揃っています。

 よって、障害は何もありません。

 

 しかもです。

 天貝隊長は元々「霞大路家を利用して瀞霊廷に混乱を起こし、利用するだけ利用した後で自分の手で潰す」という計画を考えていました。

 そのため「いざ決行!」の瞬間に備えて、敷地内全体の地図やら見取り図やら隠し通路などをしっかり調べていたんです。

 

 よって――

 

 獏爻刀(ばっこうとう)という力を持っていても、まだ数が揃っていない。

 敵に地形や手の内を知られている。

 奇襲されたのでそもそも迎撃準備が整っていない。

 

 ――という、防衛側絶対不利な状況で攻城戦がスタートです。

 

 それでも、敵は頑張りましたよ。

 

 死神を迎え撃つべく、獏爻刀(ばっこうとう)を持った部下を迎撃に出しました。

 貴族お抱えの暗殺部隊を出してきたんです。

 出してきたんですが……十一番隊の隊長副隊長が一瞬で倒しました。斬った後の顔には思いっきり「つまらない。逆にストレスが溜まった」と書いてありました。

 暗殺部隊という似たような立場の相手が出てきたので、二番隊も頑張ってました。

 

 悪事が露見しないように、獏爻刀(ばっこうとう)を生み出す工房には特殊な結界を張って隠していた……らしいんですが。

 涅隊長が割とあっさり解除しました。

 結界破りの技法というのを使ったらしいんですが……それよりもむしろ、工房を見た十二番隊がナニカしそうで怖いです。

 

 皆さんの奮戦もあり、霞大路家は一時間持たずに陥落。

 首謀者、雲井(くもい)尭覚(ぎょうかく)――これが「いかにも悪役です」といった風貌の爺でした。霞大路家の筆頭家臣にして、現当主の後見人でもあるとのこと――は、あっさり捕縛されました。

 

ぶりっつくりーく(電撃戦)! というやつでござるよ!!』

 

 その雲井ですが。

 捕縛される前には顔半分が変形するくらい何発も殴られていたんですが、お縄についた時には綺麗さっぱり治っていました。

 不思議ですね。

 まるで「父の仇を前にして怒りを抑えきれずに殴った新隊長」と「証拠が残らないように治療した美女隊長」と「現場にいたけれど偶然にも見ていなかった総隊長」が口裏を合わせたかのようです。

 法の裁きは受けますが、十発くらい殴られても仕方ないと思います。

 

『白々しいとはこういう時に使う言葉でござるな!!』

 

 霞大路家は、現在は当主不在――瑠璃千代(るりちよ)という次期当主の少女がいるそうですが、幼くてまだ家を継いでいない――のため、雲井が仕切っていました。

 そんな状況ですから、お約束通りのお家騒動の勃発です。

 その背景には、天貝隊長が「俺も協力するから獏爻刀(ばっこうとう)の力で貴族の頂点に立っちゃえよ」と唆したとのこと。

 その結果、雲井は「当主になって、貴族の頂点にも立つ!」と動いたそうです。

 

 ……天貝隊長は提案しただけ。さらには任務なので無罪でセーフ。

 大人って汚いわね。

 

 家臣の謀反を知った次期当主は現世へと避難――をしたのが昨日。その後、この騒動を知って今日戻ってきました。

 滞在時間は半日くらいなので、ちょっと視察に行ったようなものですね。

 戻ってきたときには下手人は完全に捕縛されており、責任は雲井一派に。

 霞大路家そのものは、お取り潰しはまぬがれたものの「家臣の手綱くらいしっかり握っておけ!」と色々怒られていました。

 こっそり白哉が口添えしたらしいです。

 

 ということで。

 これまでの情報と、射干玉が言っていた「半年くらい」を組み合わせると――

 

 現世に行った次期当主が一護と知り合い、お家騒動に巻き込まれる。

 尸魂界(ソウルソサエティ)は天貝隊長を中心に騒動が起きる。

 二つの騒動が重なることで大規模な混乱を生み出し、そのドサクサで雲井を殺害。

 さらに総隊長も殺すことで復讐を完遂させる予定だった。

 けど一護が絡んだことで、なんやかんやで解決しました。

 

 ――と、こんな感じのストーリーでひっぱる予定だったのかしら……?

 

『せ、拙者はシランでござるよ……』

 

 ……まあ、もう終わっちゃったし。

 作中時間で二日、話数にしても三話で片付いちゃったわ……

 

藍俚(あいり)殿が気付いてしまいましたからなぁ……気付かなければ半年引っ張れたでござるよ?』

 

 いやだって、アレは気付くでしょう!!

 

 ……え、総隊長気付かなかったの!?

 

『しかも今話に至っては語りだけで全てが終わってしまうという省エネっぷり!!』

 

 本当に一瞬だったのよ? 特筆すべき事なんて何にもなかったの。 

 四番隊(ウチ)は救護班として参加したけれど、怪我人なんてほとんど出なかったし……あと、日番谷隊長がなんだか張り切ってたのは覚えてるわ。

 

 ……そういえば、なんで私最前線で参加させられたのかしら……?

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

「いやあ、お疲れ様でした」

「お疲れ様でした」

 

 霞大路家強襲事件、少しだけ経ちました。

 結局あの事件は、後始末の方が時間が掛かって面倒でした。

 しかも「当事者だから手伝え」と言われてしまい、天貝隊長と二人で後始末をすることに……三番隊と四番隊の協力作業です。

 勿論、普段の業務と並行してやってました。

 

 巻き込んでゴメンね、みんな……

 漸く終わったから許してね……

 

 なので今は、天貝隊長と二人で打ち上げ中です。

 打ち上げと言ってもまだ日中ですし、場所も茶店ですよ。

 軒先に並んで腰掛けて、お茶とお饅頭でささやかな乾杯です。

 

「そういえば、四番隊の業務を引き受けて頂いて、ありがとうございます」

 

 意外だった――と言っては失礼なんだけど、三番隊が四番隊の雑務を手伝ってくれるようになりました。

 他隊の雑用を進んで引き受けることで、三番隊の立場を回復させる狙いとのこと。

 なにしろ前隊長が裏切っちゃいましたからね……

 なので「悪いのは市丸だけ! 三番隊は違うよ!」ということを証明する、という狙いが一つ。

 

「アレはなんというか……部下に対する償い、みたいな面もあって……俺自身が進んでやらなきゃ駄目ですから……」

「償い、ですか……」

 

 多分、就任初日の事を言ってるんでしょうね。

 天貝隊長の初日、三番隊が拘突(こうとつ)に襲われたことがありました。アレは天貝隊長が遮断要請を無効にしたのが原因です。

 ピンチを救うことで隊長としての力を見せつけ、隊士たちから手っ取り早く尊敬と信頼を集めるための自作自演だったので。

 

 色々と真相を知った今となっては、そんな手段を取ってしまった己を恥じており、きちんと白状と謝罪をしたそうです。自作自演しちゃってごめんなさい、と。

 なので現在の天貝隊長は、部下から強い懐疑の目を向けられています。

 

 先ほど雑務を引き受けてくれてると言いましたが、それは天貝隊長自らが率先して雑務を引き受けてくれています。

 反省していることを態度と行動で示したいそうです。

 

 洗いざらい事情を話せれば一番楽なんですが、そうなるとまた別の面倒が出て……

 なので三番隊はもうしばらく、冬の時代が続きそうです。

 

「それとなく悪評が消えるように、私も及ばずながら力になりますよ。事情も知っていることですし」

「あはは、ありがとうございます。本当に、藍俚(あいり)さんにはすっかりお世話になってしまって……」

 

 まっすぐに見つめて来たかと思うと、天貝隊長は私の手を握ってきました。

 

「……え?」

「思えば、俺が道を誤らずに済んだのは藍俚(あいり)さんのおかげですよね……あなたが親父のことを気付いてくれたから、俺は真相を知ることが出来た……自刃しようとしたときには、自らが傷つくのも顧みずに俺のことを想って叱ってくれた……」

「あ、あの……? 天貝、隊長……?」

 

 すっごい真剣で情熱的な瞳で見られています。

 こ、これってまさか……

 

「正直に言います。藍俚(あいり)さん、俺と結婚を前提にお付き合いをしていただけないでしょうか……?」

「え……ええええぇぇっ!?」

 

 う、うわぁ……まさかとは思いましたけれど……

 私今、耳まで真っ赤になってるのが自分で分かります。

 

 ど、どうしよう……!? いやだって私、特に何にもしてないわよ!? どこに惚れる要素があったの!?

 

『いやいや、悔しいですが天貝殿が先ほど言ったとおりの理由でござるよ?』

 

 またまたご冗談を……え、冗談じゃないの?

 

『自分が誤った道を進もうとしたとのを、ギリギリで止めてくれた。命を張って思いとどまらせてくれた。オマケに亡き父親の事を覚えていて、真っ先に繋がりに気付いたでござるよ? そこまで大切に思ってくれてるならば、相手からすれば感謝感激雨アラレちゃんガッちゃん!! 運命感じまくりでも仕方ないでござるよ!!』

 

 う、嘘だぁ!!

 

『おそらく刃を掴んで説得した辺りで、墜ちていたでござるよきっと。でなければ貴船殿の所へ藍俚(あいり)殿を連れていったり、霞大路家で藍俚(あいり)殿を一緒に連れて行ったりしないでござる! 良いところを見せたかったんでござろうな!! そして今、一緒にお茶をしているから"これはイケる!"と思ったでござる!!』

 

 あれそういうことだったの!?

 

『あああああぁぁっ!! 藍俚(あいり)殿が藍俚(あいり)殿が!! イケメンの毒牙に掛かってしまうでござるよ!! 拙者は止めたい! 止めたいでござるが!! けどメスの顔をしている藍俚(あいり)殿をもっともっと見ていたいでござるよ!! 拙者、悔しい、悔しいでござる!! けど心を許しちゃう!! だって拙者はNTR(ネトリ)NTR(ネトラレ)も美味しくいただけてしまう性癖でござるよおおおぉぉっっっ!!』

 

 捨ててしまいなさいそんな性癖!!

 

『くっ! 心は許しても、藍俚(あいり)殿の身体は拙者のものでござるよ!!』

 

 アンタ、それでいいの……?

 

「い、いやあの……私、その、年上ですし……」

「それは知ってますよ。けど"年上の女房は金の草鞋を履いてでも探せ"とも言いますし、俺は気にしません」

「た、隊長ですし……」

「俺も隊長ですよ? 三と四、お隣の隊同士仲良くやっていきましょう」

「背だって高いですし……」

「俺の方が少しだけ高いです」

「お、男の人と付き合ったこともありませんし……」

「恥ずかしながら、俺もです。親父が死んでからずっと、そんなことに気を配る余裕なんてなかったので……なんだか俺たち、気が合いますね」

 

 あああああぁぁっ! 駄目だわ、全部逃げ道が塞がれてる!!

 他に何か、他に何か……えーっとえーっと……!!

 

『どうやら雌墜ちルート確定でござるな! 録画の準備をしておくでござる!! 永久保存版でござるよ!! クラウドに保存して無料公開もするでござるよ!!』

 

 お黙り! ……えっと……!!

 

「お、お酒が飲めないんです! 一杯くらいが限界で! だから――」

「凄いですね! 俺なんて一杯呑んだら潰れるくらい弱くて……下戸同士なんて、ますます気が合うなぁ! 今度、一緒に美味い店にでも行きませんか?」

 

 これも駄目なの!? というか、プラスに働いちゃったわ!!

 

「あ、あああああのっ! ま、まだ仕事がありますのでこれで!! 先遣隊のみんなから連絡とか貰っていて、その対応もしないといけないので!! これ、私の分です! し、失礼します!!」

 

 必死で仕事を言い訳にして、この場から逃げることにしました。

 

『うっひゃあ!! ダセえでござるよチキンでござるよ藍俚(あいり)殿!! おめめグルグルで耳どころか全身真っ赤にしてるのですから、もう「あなたの色に染めてッ!」って叫びながら抱きつけば楽になれるでござるよ?』

 

 し、仕方ないでしょう!!

 

「よーく考えて下さいねー! けど、俺は諦めませんからー!」

 

 逃げだした私の背中に、天貝隊長の声が掛けられました。

 

 

 

 

 

 

 ……し、繍助さん……とか、一回くらい呼んでみても……いいのかしら……?

 

『すっげー雌の顔してるでござるよ!!』

 




書き終えると「誰が得するんだ?」と不安になる……

●天貝編の大雑把なあらすじ(全体)
・天貝、父の仇について間違った結論に達してしまい復讐計画を誓う。
 霞大路家と山本を殺そうと決意する。
・雲井をそそのかし、派手に動かすことで討伐させるための大義名分を作る。
・隊長としての立場を利用して動き、信頼を得ると同時に死神の戦力を測る。
 (各隊との合同演習とか企画してた)

・現世に行った次期当主、一護と知り合う。だが次期当主には暗殺者が差し向けられており、流れで一護たちが戦うことに。
・その縁で首を突っ込み、結局見捨てることなく守る為に動く。

・なんやかんやで獏爻刀の存在が知れ、霞大路家を攻める死神たち。
 天貝、その騒動の中で雲井を殺害。山本と、ついでに次期当主も殺そうとする。
・一護が関わっているので、次期当主を守るために天貝と戦うことに。
 最終的に天貝は真相を知らされて、自害する。

と言うのが本来の流れ。
なのですが、やらかす前にどっかの誰かが真っ先に気付いてしまった模様。
年長者はコレだから……

他にも「白哉が協力して貴族的な圧力で潰す」とか「二番隊が全面協力して事前に証拠を集める」とか、そういうルートも出来そうです。

なお「幼女に化けて襲いかかる暗殺者」を出せなかったのが、心残りです。
(旧アニメの173話より)

●現世のどこか
ローズ「え、あれ……? 隊長……あれ……??」
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