「おお、お前たち!!」
「村正はやらせん!」
「そうだ! 死神による斬魄刀の支配は今宵終わる! 同志たちよ! 今こそ斬魄刀が死神を支配する世を作るのだ!!」
現れた相手と村正の反応を見るに、あれも斬魄刀の中の人たちですね。
仲間が助けに来たからか、村正が何やら強気になっています。
『なお現在の村正殿は、全身壁に埋まった状態で顔だけ出しているでござるよ!! 身動き取れぬ状態でカッコ付けてもダセェでござる!!』
「死神の支配からの解放が目的なの? 朽木響河は斬魄刀と随分仲が良かったと記憶しているんだけど」
「それも昔のこと! 私は悟ったのだ!! 死神など必要ない!!」
「その通り!」
村正の言葉を肯定するかのように、さらに斬魄刀の中の人が増えました。
日番谷の近くから現れた緑髪の男性は、氷輪丸でしょうね。
白哉の近くからは鎧武者のような男が。あれが千本桜かしら。
そして乱菊さんの近くから現れたのは……ね、ネコマタ!? 魔獣ネコマタにそっくりだわ! コンゴトモヨロシク! って言わなきゃ!!
『拙者! 悪魔合体したいでござるよ!! ランクアップさせてバステトを作るでござる!! あー、サキュバスもいいでござるな! リリムも捨てがたい! いっそ、キクリヒメやアメノウズメにするでござるか!?』
いやまあ、アレが灰猫なんでしょうけど……なんてケモノな見た目かしら。
『アリスちゃん! 拙者が黒おじさんでござるよ! ぐへへへへへへ……一緒に真っ黒でヌルヌルのプレイをするでござる!!』
「あたし、あんたのコト大っ嫌いなのよね。ワガママだし気まぐれだし、正直もう付き合ってらんないっていうか」
「はぁ!? なんですって!! アンタの方がよっぽど性格悪いじゃない!!」
灰猫……持ち主と気が合うわね。
「ひ、氷輪丸……戻ってこい!」
「……」
こっちは無視されてるし。
「なんだなんだ? オイオイ、コイツら全員斬っちまっていいのか?」
「剣ちゃん、それは駄目ってさっきあいりんに言われたでしょ!」
「ちっとくれえなら問題ねえだろ?
「うーん……それもそっか!」
それもそっか! じゃないってば!!
あーもうどうするのこれ!?
敵の総大将はコッチが捕まえているから優位なのは間違いないけれど、敵はどんどん増えるし! かといって下手に倒すと斬魄刀ごと壊れそうだから手が出せないし! 藍染問題があるから困るのよ!!
「……そこまでにしておけ、村正。それが貴様の本心では無いことは、この私がよく知っている」
困っていた所、口を開いたのは白哉でした。
「た、隊長……?」
「あらら、朽木隊長……どういうことだい?」
「何か知っているのかい?」
この場の全員の視線が集中する中、白哉はゆっくりと頷きました。
「村正よ、お前の真の狙いは朽木響河の居場所……そして、封印を解く方法を探すことであろう?」
「ち、違う! 私は……!!」
「祖父から響河と村正のことは聞いている。斬魄刀へ強烈な暗示を掛け、持ち主を自滅へと追い込むことが出来る、と。おおかた、その能力で斬魄刀たちへ反旗を翻すよう命じたのだろう?」
『あー、その通りでござるよ。拙者も誘われたでござる』
うわぁ、軽い肯定だわ。
……一応聞くけれど、どういう感じなの?
『ヘイユー! 持ち主に不満くらいあるだろう!? 死神なんて忘れて俺と一緒に楽しくハジけようぜ! レッツパーリー!! ヒーハー!! ……って感じでござるな』
うわぁ……なにそれ……うわぁ……
「えっと、その……射干玉――私の斬魄刀も同意してます。どうも、斬魄刀が持つ不満を煽ることで洗脳した、みたいですね」
「馬鹿な!」
「暗示……だと……洗脳されたというのか!?」
「死神の言葉など信じられるか!!」
あらら、斬魄刀の中の人たちが一斉に文句を言い始めました。
「不満だと!?」
「藤孔雀! どういうことだい!?」
「だからボクをそんな美しくない名前で呼ぶな!!」
死神側も、なにやらいきり立っています。
「出来るはずよ。私は朽木響河が実際に敵の斬魄刀を操って、同士討ちや自傷させるところを見たことがあるもの」
「あのー、
ああ、そうか。知らないわよね。
「昔、
「なるほど、反乱……そんなものがあったのですね……」
「内乱鎮圧にはうってつけの能力、そりゃあ評価もされるわけか」
「それだ!」
納得したように呟く天貝隊長の言葉に、村正が激しい怒りを見せました。
「貴様らのその誤った評価が! 無能な死神たちの妬みが! 響河の心をどれだけ苦しめたか!! それが原因で響河は私の声が――」
「あらら、その反応……朽木隊長たちの言葉は真実って考えて良いのかな?」
「……く……っ!!」
我慢出来ないとばかりに叫びましたが、それが決定打と言いますか。
主を悪く言われるのが我慢出来なくて、口を挟まずにはいられなかったんでしょう。
ですがその行動は、致命的でした。
「ま、まさか……」
「本当に……」
「
「…………」
斬魄刀たちが問い詰めますが、村正は口を閉ざしたままです。
「となると、なぜ村正はこんなことを引き起こしたんだ? 居場所を探すだけならば、当時の記録なりなんなり調べれば――」
「ありませんよ」
「……え?」
「当時の記録は全て破棄されましたから」
「ええ、その通りです。ちなみに、響河の討伐には祖父も参加しましたが、その祖父ですら封印された場所は知りません。知っているのは総隊長だけです」
結構有名だったはずなんだけどなぁ……
なんだか、覚えている自分の方が間違ってる気がしてきたわ。
「つまり。この村正くんは、どこかに幽閉されているご主人様を助けようと健気に頑張っている、ってところかい?」
「だ、だが! 元柳斎殿はこの場におらぬぞ! まさか……!!」
「いや、それはありえないだろう。下手に元柳斎先生を害する様な真似をすれば、封印の場所は永遠に分からなくなる」
「多分だけどさ、山じいに逃げられたんじゃないの? だって当時のことを知っているってことは、村正くんのことも覚えてる。下手すりゃ斬魄刀と同士討ちだよ? 流刃若火を敵に回すかもって考えると……こりゃ笑えないからね」
「となるとこの騒動は元柳斎先生の居場所を探すための時間稼ぎ……いや、俺たちに居場所を探させるのが目的か……?」
「おそらく、それで間違いないでしょう」
情報が出揃って来たかと思えば、浮竹隊長と京楽隊長がもの凄い勢いで推理を始めました。しかもすっごく腑に落ちます。
そこに当事者の孫が補足していくので、推理がどんどん強固になっていきます。
斬魄刀たちも身に覚えがあるのか、顔色が蒼白になっていきますね。
「仮に総隊長が口を割らなくとも、流刃若火ならば封印の情報を知っている……だから身を隠した?」
「湯川隊長の推測で合っていると思います。祖父から聞いた話ですが、自らの心を閉ざすことで村正の支配から身を守る事が出来たそうですから」
あ、ちゃんと攻略法あるのね。
いわゆる「心を無にする」ってパターンかしら?
「やれやれ、山じいもご苦労なことで。そういえば、お花とお狂に会いたいんだけど……どこにいるのかな?」
「京楽、お前な……」
「浮竹だって気になるでしょう? 双魚理のこととかさ」
確かに、それっぽいのはいませんね。
……一歩間違ったら、この場に真っ黒でヌルヌルの変態がいたかもしれないのよね……本当によかったわ……
『いやあ、照れるでござるな』
「しかし湯川隊長、当時のことをよくご存じでしたね」
「大きな事件でしたから、よく覚えていただけですよ。それに当時も関わっていましたし……なにより、蒼純さんとそんな話をしたこともあったので……」
「なんと……いえ、そういえばその様なことを仰っていましたね……」
白哉に驚かれました。
けど、あれだけの大事件を忘れるなって方が難しいですよ。なにしろ四大貴族の一家のスキャンダルですよ!?
覚えてるに決まってるじゃない!
「むしろ、個人的にはどうして卯ノ花隊長や京楽隊長がご存じなかったのかと……」
「まあ、うふふ……」
「ほらボクは、女の子が絡んでないとどうも記憶が、ね……」
笑って誤魔化されました。
「と、とにかく! 斬魄刀の皆さんはどうやら騙されていたようですが……どうします? 村正の言葉に従って、戦いますか? 今ならまだ間に合いますよ!?」
固まっている斬魄刀たちに向けて問いかけます。
そもそも敵対する意味は、既にありませんからね。
話し合いを聞いている内に真相を知って衝撃を受けたのか、みんな考え込んでいます。
「持ち主に対する不満があっても、本当は仲良くしたいですよね? 死神のみんなもそうでしょう? 斬魄刀と仲良くしたいわよね?」
「「はあ!? 誰がこんな奴と!!」」
「「そうよそうよ!! いっつもワガママばーっかり言ってくるんだから!!」」
「息ピッタリじゃねえか……」
あれは綾瀬川五席と、乱菊さんね。
思わず一角がツッコミ入れてるわ……
「あの! あなた、飛梅だよね? ……あの、その……」
「侘助……! 僕に悪い点があれば、遠慮無く言ってくれ! 直すよ!」
「天譴……! お主、儂の何が不満なのだ……!?」
「氷輪丸!!」
「蛇尾丸! お前……いや、お前
とはいえ、死神側は概ね好印象といいますか。受け入れる姿勢ですね。
騙されていただけってことは、もう十分証明されましたから。
「……まったく、つまらんネ。こんなことなら、斬魄刀を改造するのではなかったヨ。でなければ今頃、思う存分実験が出来たというのに……」
自分の斬魄刀を握り締めながら呟くこの人のことは見なかったことにして。
「……我が主よ」
「ッ! 千本桜、お前なのか……?」
ちょっと目を離した隙に、斬魄刀側の方から歩み寄ってきました。
鎧武者が白哉と対峙しています。
「俺は、あなたに言いたいことが……たった一つだけ、言いたいことがあります!」
「な、なんだ……?」
やたら真剣な雰囲気を漂わせる千本桜の姿に、白哉も思わず息を呑みました。
「……して……」
「む……? き、聞こえぬぞ……?」
「どうしてなのです!!」
今度ははっきり、誰の耳にも聞こえました。
千本桜の悲痛な叫びが。
「どうしてご子息のお名前に"桜"の文字を付けてくださらなかったのですか!? 白と緋を合わせたのであれば鴇の文字よりも、桜の文字こそがふさわしいと思いませぬか!?」
「す、すまぬ……」
「俺はずっと、ずっと信じて待っておりました! 奥方殿がご懐妊なさった事を知り、ご子息には桜の一文字をつけてくださるのだと!! 俺は主の斬魄刀として! 共に戦う者として!! 次代を担う者として!!」
「すまぬ……」
「いえ、わかります! わかるのです!! 確かに湯川殿は主にとって大恩あるお方!! その方の言葉を無碍には出来ぬでしょう! ですがそれでも、それでも私は……!! 湯川殿があの時仰った"桜"の案を採用なさると信じておりました……!! 信じておりましたのに……!!」
「……すまぬ」
ああ、それは……不満爆発して裏切りもするわよね……
白哉も平謝りするしかないわ……
これはもう、もう一人作って名誉挽回するしかないわね。
『女の子がいいでござるよ!! 桜たん(*´Д`)ハァハァでござる!!』
●朽木 響河(くちき こうが)
元六番隊三席。文武両道のイケメン。
朽木の姓を名乗っているが、血縁関係はない。婿養子。
有能な死神だったので銀嶺の娘婿になって朽木家の人間になった。
(朽木の当主も期待されていたらしい。蒼純は身体が弱かったから?)
●千本桜(中の人)
仮面を付けた若武者、といった出で立ち。
無愛想で傲岸な性格。
「桜の文字を付けて!」は感想から使わせて頂きました。