お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

20 / 406
第20話 まずはお仕事を覚えます

「あなたが新人の湯川さん……で、良いのよね? その、なんだかちょっと具合が悪いように見えるのだけれど、なにかあったの?」

「いえ、何でもありません先輩」

「そうなの……? なんだか遅くなるって連絡は卯ノ花隊長からあったけれど」

「入隊挨拶のときに、卯ノ花隊長と少しお話をしていただけですから……」

「そ、そう……」

 

 私の言葉から何か厄介ごとの匂いでも感じ取ったのでしょうか、先輩はそれ以上は聞いてこようとはしませんでした。

 

 あの卯ノ花隊長とのキツいお話し合いの後、少し休んで復調したので、こうして同期に遅れること少しだけ、先輩から四番隊の業務について学びます。

 

「じゃあ問題はないって話だし、さっそく業務について教えるね」

「お願いします」

 

 私はぺこりと、頭を下げました。

 

 護廷十三隊では、新人隊士は最初の一年間は見習いとして先輩隊士について回り、死神としての仕事を覚えるというやり方を取っています。現代社会で言うところのメンター制度の走り、みたいなものですね。

 

「といっても、知ってるかもしれないけれど、四番隊の仕事は色々分かれていて――」

 

 そう前置きすると、先輩は一通りの仕事について、直接現場を案内しながら教えてくれました。

 

 まず四番隊には、綜合救護詰所と呼ばれる大きな建物があります。

 いわゆる大きな総合病院を想像して貰えば、大体合っています。この綜合救護詰所の中で、怪我人・病人の治療をします。

 四番隊の隊士は基本的に回道を使える者ばかりなので全員が、医者や看護師みたいなものですね。

 

 

 

 

 ――ですが、それは病院の一側面でしかありません。医者と看護師だけで病院が回る訳がないのです。

 例えば――

 

 

 

 

「湯川さん、手伝える!?」

「任せてください! これ、全部みじん切りで大丈夫なんですよね?」

 

 綜合救護詰所・炊事場。

 

 ここは四番隊全体の食事を作る場所でもあり、同時に入院患者たちの病院食を作る場所でもあります。

 入院患者の中には容態によって"まだ固形物は食べさせちゃ駄目"のように、一人一人気遣う必要があって、当然ながら朝昼晩の三食を用意しなければなりません。

 なのである意味、医師や看護師以上に忙しい日々を送っている場所とも言えます。

 

 仕事を覚える前段階として、現場を案内されている途中、ものの見事に手伝いにかり出されました。

 

「うわっ! 上手ね!? どこかで習ったの?」

「私、流魂街出身でして。そこで居酒屋のお手伝いをしていたんですよ。だからこのくらいは……」

 

 まだ生のままだった野菜を素早く、そして同じ形・同じ大きさになるように注意しながら切っていきます。こうしないと火の通り加減が違っちゃいますからね。

 

「えっ!! それ本当なの!? だったらこっち、お鍋の方もお願いしていい!?」

「お米もそろそろ用意しなきゃ駄目なんだけど、手伝ってもらえる!?」

「はい? えーっと、ちょっとお待ちくださいね」

 

 刻んだ野菜を手渡しながら、まずは手近なお鍋の様子を見ます。

 ふむふむこれは――

 

 そんな感じで、昼食完成の目途が付くまでの間、たっぷりと手伝わされました。

 

 

 

 

「あら、こっちも結構上手なのね」

「流魂街では女将さんたちの着物の補修とかもしてましたから」

 

 食事作りから解放され、続いて訪れたのは死覇装縫製室です。

 (ホロウ)との戦いに勝利しても、怪我をしていることはよくあります。そして、怪我をしているということは着ている物が破れているわけです。

 なのでここには、四番隊隊士の中でも特に手先の器用な者たちが集まって死覇装や隊首羽織の製造や修繕を行っている場所です。

 

 ですが現在私が行っているのは、端切れを使った小物の繕いです。

 さすがに食事と違って、新人隊士にいきなり死覇装の縫製とかは任せられませんから。

 

「いえ、でもこの子上手よ」

「縫い方が丁寧だし、力も強いみたいだから縫い目もしっかりしてる。案外掘り出し物なんじゃないかしら?」

 

 諸先輩方の評価になんとなく気恥ずかしさを覚えてしまいます。

 これも五十年の生活の結果、自然と身についただけなんですけどね。訓練すると着物が結構簡単にビリッと破れていたので。

 

「こんな物でいかがでしょうか?」

 

 とりあえず縫い上げたのは、簡単な巾着です。

 

「出来映えは……素人にしては悪くないと思いますけれど」

「ねえ、湯川さんって言ったわよね?」

 

 恐る恐る尋ねたところ、名前を確認されました。

 

「そうですけれど、あの……」

「本格的にウチに来てくれないかしら?」

「えっ!?」

 

 ……なんだか予想外に高評価です。

 

 ホント私って、死神の必須技能に関係ない部分ばっかり評価されますね……

 

 

 

 

 

「それじゃあ最後になっちゃったけれど、四番隊の基本業務でもある回道――つまり、治癒についてね」

 

 縫製室を逃げる様に去り、他の部署も一通り回り終えた最後に、救護業務について教わる事となりました。

 

「でも湯川さんは霊術院でも回道について学んでいたのよね?」

「ええ、一通りは。といっても霊術院生相応の実力しかありませんけれど」

「謙遜することはないわよ。私なんて霊術院では回道とか救護を全然学んでなかったんだから」

「え! そうなんですか!?」

「そうそう。だから私よりもずっと湯川さんの方が立派よ。でもまあ、今は先輩として見本をみせないとね」

 

 そんなことを言い合いながら、治癒業務についても一通り教わりました。

 

 

 

 

 

 ――カンカーン! カンカーン!

 

 空が鮮やかな橙色に染まっていく中、鐘の音が隊舎中に響き渡りました。

 

「あら、もうこんな時間なのね」

 

 これは終業の鐘です。

 もう今日の業務は終わり、ということを告げているわけですが……悲しいかな、四番隊は他の隊から雑事を回されることが多くて、残業をする者が多いです。

 それ以外にも、病院なので基本的に患者の容態急変に備えて二十四時間体制になっているわけで、ぶっちゃけた話が夜勤アリです。

 

「じゃあ今日はもう上がって良いわよ。お疲れ様」

「お疲れ様でした、先輩。お先に失礼します」

「そうそう、言い忘れるところだったわ。分かっていると思うけれど、業務報告書は忘れないでね」

「はい、ご忠告ありがとうございます」

 

 こうして今日の業務は終わりました。

 

 一つを除いて。

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

「えーと……」

 

 寮へと戻った私は、その足で本日の業務報告書をまとめ中です。

 

 各部隊は隊舎内に寮がありまして、隊士はその部屋で寝起きするのが大多数です。この辺もやはり霊術院同様、自宅から通うのも許されていますが、そんなことを出来るのはやはり裕福な貴族くらいです。

 これが上位席官になれば、隊舎内に私室を持てたりするわけですが。

 

 ……何事も出世ですね。

 

 そして業務報告書の方は名前の通りです。

 終業後、各隊士はその日に何をしたのかを書いて、執務室前の回収箱へ提出する。というのがどの部隊でも行われています。

 

 それに倣い、今日何をしたのか。纏めていったのですが――

 

「改めて見返すと、結構色んなことをやっていたのね……」

 

 ――これ、一部隊が担当する範囲を超えてるんじゃないの? 死神以外から募った方がいいんじゃないかしら? と思うくらいには、色んな事がありました。

 

「医療従事者って、大変なのね……」

 

 絶対に下に見るような真似はしない、と心に誓いました。

 




●四番隊の建物や業務、就業形態などについて

基本的には小説――

 BLEACH THE HONEY DISH RHAPSODY
 BLEACH The Death Save The Strawberry
 BLEACH WE DO knot ALWAYS LOVE YOU

――の記述から。
(先輩について1年間学ぶ・縫製室・炊事場・終業の鐘・隊士は隊舎の宿舎に住んでいる・業務日報を提出する、の辺り)

業務内容は、病院内とホテルの各種業務関連の全部を担当してると思っておけば、大体間違いではない――はず。

●先輩
名前が出てこない時点で、再登場の機会などない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。