お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第198話 斬魄刀とキャッキャウフフしていこうぜ

「…………」

「…………」

 

 緋真さんも鴇哉(ときや)君も、ぽか~んとした表情をしています。

 でも、そりゃあこんな表情にもなるわよね。

 

 朽木響河は倒れ、村正もまた響河と共に逝くようにして消滅。

 それに伴い、実体化していた斬魄刀たちも消えた――はずでした。というか、死神たちはそういう認識でした。

 

 だって実体化させていた元凶の村正が消えたんですから。

 術者が倒れれば術もまた消えるって考えるのが、当然でしょう? 何より村正の消滅と同時に実体化した斬魄刀たちも姿を消したんです。

 

 それがどういうわけか、前触れもなく急に姿を現せば驚くしかありません。

 

 あ、忘れるところでした。現在の状況ですが。

 響河を斬ったことを報告すべく、白哉は朽木家へ戻ることにしました。

 ルキアさんと阿散井君も、身内ということで一緒に朽木家へ。

 私も、響河にはちょっとだけ関わっていたので"一言だけでも"と思って、同行させて貰いました。

 

 そして朽木家に着き、緋真さんたちが出迎えてくれたと思ったらコレですよ。

 千本桜と袖白雪が突然実体化したかと思えば、我先にと自分を売り込んだわけで。

 事情を知らない緋真さんたちでは、呆然とするしかありません。

 

 だってこの二人は、まだ斬魄刀が実体化したことすら知らないはずですから。

 

「千本桜!? 突然何を……!?」

「袖白雪!? 姉様に何を……!? い、いや待て! お主たち、どうして……!?」

 

 突然実体化して自己紹介を始める斬魄刀の言動に、二人とも焦っています。

 

「どうするよ猿の? オイラたちも挨拶しておくか?」

「蛇のよ、我らは後で良かろう。今あの場に加われば、余計に混乱させるだけじゃ」

「あー……よく我慢したな。気配りの出来る斬魄刀で俺も鼻が(たけ)ぇわ……」

 

 阿散井君のところもいつの間にか実体化していますね。

 

『ちなみに前回もご紹介しましたが、蛇尾丸は実体化すると"サルの女性"と"ヘビの少年"の二人になるでござるよ!! お互いに相手を「猿の」「蛇の」と呼び合う間柄でござる!! 蛇尾丸は(ヌエ)でござるからな!!』

 

 鵺って猿の顔・狸の胴体・手足は虎・尾は蛇だっけ? で、頭の猿と尾の蛇がそれぞれ独立して存在してるってところかしら。

 

『元々蛇尾丸は、猿と蛇で別々の人格として描かれているでござるよ? お忘れでござるか?』

 

 ……お忘れしてたわ。

 

『拙者としてはやはりあの、猿殿の身体を!! あの毛むくじゃらの身体をヌルヌルのベトベトにして、ババア言葉を出せなくさせるくらい素に戻してやりてぇでござるよ!! ふひひひひひっ!!』

 

 私はちょっとだけ、あの蛇の子を涙目にさせたいなぁって……

 

藍俚(あいり)殿!? ま、まさかそちらにお目覚めに……!?!?』

 

 生意気な男の子が泣きそうになってるのを歯を食いしばりながら必死で堪えているのって、興奮してこない?

 

『……完全に同意でござるよ!! 大丈夫でござるよ! 怖くないでござる! 怖くないでござるから! ちょっとだけ、ちょっとだけで良いから「おねえちゃん」って言うでござる!! 漢字は使っちゃ駄目でござるよ!! 全部ひらがながジャスティスでござる!!』

 

 そうね、その通りだわ。でもそろそろ状況を進めましょう?

 とりあえず、二人に状況の説明を。

 

「あの緋真さん、鴇哉(ときや)君。この二人は千本桜と袖白雪で、それぞれの斬魄刀が実体化した姿なんです。急にこんなことを言われても困惑するのはわか――」

「まあ、そうでしたか! 実体化……そのようなこともあるのですね。あなたが千本桜殿……白哉様を助けて頂き、ありがとうございます」

「い、いや俺は……」

「あなたがいなければ、白哉様が危険な目にあっていたかもしれません。命を落としていたやもしれません。肩を並べて戦いに赴いてくださった方にお礼を言うのは当然のことです」

「――りますけど……」

 

 さ、流石は緋真さん。

 アッという間に受け入れて、千本桜にお礼を言ってるわ。

 

「それに袖白雪様も。ルキアを守っていただき、感謝の言葉もありません」

「千本桜……父様の? それに、ルキア叔母様の……?」

「ああ、そうだ。それにもうすぐお前は兄になるのだ。強くなり、守ってやれ」

「こうやって会話をするのは初めてですね。初めまして、鴇哉(ときや)殿」

 

 鴇哉(ときや)君も緋真さんの子供よね。

 ちょっとおっかなびっくりだけど、受け入れてる。

 

「兄に……なる……? あの、母様……どういうことでしょうか?」

「そういえば、千本桜殿が仰っていましたが……あの、白哉様? 私、身に覚えが……」

「す、すまぬ! 私は先にお爺様へ報告を済ませたいのだ……失礼!」

 

 大慌てで言い訳染みたことを口にしつつ、白哉は逃げました。去り際にチラリと私にアイコンタクト――というよりも、泣きそうな目で訴えながら。

 

 ……その視線はまさか、私に説明しろってことなのかしら?

 千本桜がこうなったのは、白哉が悪いと思うんだけど?

 

 でもやっぱり説明しなきゃ駄目よね……

 

 あ、そうそう。銀嶺さん、まだ生きてます。

 と言ってももうすっかり老け込んでいて、身体にも随分とガタが来ています。

 ひ孫パワーでかなり頑張ってはいるんですけどね。

 今回の響河の件で思い残すこともなくなって、そろそろ危険かも知れません。

 頑張って! ひ孫がもう一人産まれるかも知れないから!!

 

「えーっと……千本桜、少しだけ鴇哉(ときや)君の相手をしてもらえるかしら? 緋真さん、ちょっとお話よろしいですか……? 実は、かくかくしかじかで、だから千本桜は兄になると言っていまして……」

「……まあ! そういうことでしたか!!」

 

 こっそりと緋真さんに伝えたところ、予想外の好感触です。

 恥ずかしそうに顔を赤らめつつも、喜色を浮かべていますね。

 

鴇哉(ときや)も一人では寂しいかもしれませんからね。そ、それに……白哉様がお望みでしたら……その……やぶさかでは……」

「……体調については問題ありませんので、今夜からでも構いません。ただ時期などはご夫婦でよく話し合って決めて下さいね」

「そうですね。その時にはまた、湯川先生にもお願いいたします」

 

 え? また私が産婦人科するの!?

 鴇哉(ときや)君の時でも相当面倒ごとが増えたのに!?!?

 

「か、考えておきます……」

 

『そうやって曖昧な返事をしてしまうから、なし崩しに巻き込まれるでござるよ? 今回ばかりは「前回手助けを~朽木家の伝統が~」とか理由を付けて断れたでござる……考えると言った時点で、ほぼ確実に白哉殿が相談に来るでござるよ?』

 

 ……あ。

 ですが、気付いたときには後の祭りでそんバラピーにゃん。

 

『まあ、そんなチョロいところが藍俚(あいり)殿の魅力でござるよ!!』

 

 チョロくないもん!

 

「湯川殿!! ありがとうございます! 奥方様とお子様の件、よろしくお願いいたします!! それと名前の件も是非に!」

「せ、千本桜……!?」

「いやはや、湯川殿にお任せすれば成功を約束されたようなもの。赤子にまで今のように接することまでは適いそうにないが、ようやく肩の荷が降りた気分だ……」

 

 いつの間にか千本桜がやって来て、私の手を握りながら感謝しています。

 外堀が……! 外堀がアッという間に埋まっていく……!!

 

『だから言ったでござるよ?』

 

 うう……泣きそう……って、あら? ちょっと待って??

 今、聞き捨てならないことを言ったわよね!?

 

「あの、千本桜? さっきの『今のように接することはできそうにない』って言葉だけど……ひょっとして実体化には制限があるってことなの?」

「ああ、その通りだ」

「ええっ!?」

「な……そうなのか蛇尾丸!?」

 

 私が訪ねたところ、あっさりと肯定する千本桜。

 その様子に、むしろルキアさんたちが驚いていました。

 

「ええ、そうです。そもそも(わたくし)たちが実体化できるのは、村正の能力によるものですから」

「本来なら村正の消滅と共に消えるのじゃろうと、儂らも思っておった。じゃが、彼奴が消滅しても霊圧は残っておったのじゃろうな。おかげでほれ、この通り」

「ま、細かい理屈なんてどーでもいいぜ! こうやって好きな時に外に出て遊べるってんだから、オイラは結構気に入ってんのさ!!」

 

 袖白雪らが後を引き継ぐように説明してくれました。

 なるほど、術者が倒れてもしばらくは残り続けるタイプの術だったのね。

 術者が消えたショックで一時的に姿を消したけれど、霊圧が残っているから本体が望めば実体化している……そんなところかしら?

 

「じゃあ、今頃は他の斬魄刀も実体化を?」

「おそらくは。持ち主の死神の方々と、交流を深めていると思いますよ」

「ちなみにその霊圧って、どのくらい保ちそう?」

「んー……まあ、二週間くらいは保つんじゃねえの?」

「儂も蛇のの意見に賛成じゃ。まあ、あくまで感覚の話で保証は無いがの」

 

 ということは……

 

 雀蜂も!

 飛梅も!!

 袖白雪も!!

 灰猫も!!!!

 蛇尾丸も!!!!

 花天狂骨も!!!!

 

『なんともクレッシェンド(だんだん大きく)な並び順でござるな』

 

 みんなまだまだ実体化していられるってこと!? 

 一夜の夢だと思って諦めていたけれど、チャンスはまだまだあるってこと!?

 

 さっき射干玉が「蛇尾丸の毛並みをヌルヌルにしたい」って言ってたのは、こういうことなの!?!?

 

藍俚(あいり)殿……気付いていなかったでござるか?』

 

 ごめんなさい、全く気付かなかったわ! でも、今気付いた!! 気付いたからには動くわよ!! まずは下準備から!! 料理もおっぱいも、下準備が大事!!

 

「千本桜、ちょっといいかしら?」

「む、何を……!?」

「すぐに済むから」

 

 戸惑う千本桜を押し切って彼の胸元に手を当てて、そっと霊圧を流し込みます。

 回道を使う時や響河の五感支配と同じような感覚でゆっくりと、それでいて相手の霊圧に合わせるように意識して、ゆっくりと。

 けれども確実に。

 

「……ふう、一先ずはこんなところかしら。どう、千本桜? 少し霊圧を補充してみたんだけど、分かる?」

「ああ、わかる……多少だが、身体が軽くなった」

「よかった。とりあえずは成功ね」

 

 千本桜の反応は、予想通りの物でした。

 彼は自分の身体の具合を確認するように手足を軽く動かすと、確証を得たように口にします。

 

「先ほど蛇尾丸が二週間と言っていたが、これならばもう数日は実体化を維持出来そうだな」

「なんだってぇっ!?」

「千本桜殿、そ、それは誠ですか!?」

「ほほう、それはそれは……なかなか愉快じゃな」

 

 斬魄刀たちが思いっきり食いついてきました。

 

「さ、流石は先生……」

「え……マジっすか……? まさかコイツら、このまま永遠に実体化し続けるんじゃ……?」

「流石にそれは無理よ。村正の能力と霊圧の両方が残っているから実体化しているの。霊圧だけ補充しても、能力の効果が消えたらそれでおしまい。あくまで本来よりも"もうちょっとだけ"長びくだけよ」

 

 でもとりあえずは実体化の延長には成功したわね。

 じゃあ次は――

 

「ねえ、鴇哉(ときや)君。千本桜や袖白雪と、もっと長く一緒にいたいよね? お父様の斬魄刀に稽古を付けて貰ったり、ルキアさんの斬魄刀と一緒に遊んだりしたいよね?」

「うんっ! もっと千本桜や袖白雪と一緒にいたい!」

「そうよね、私も同じ気持ちだわ。それにルキアさんだって阿散井君だって、二度とない機会なんだから斬魄刀たちともっと交流を深めたいでしょう?」

「それは、まあ……」

「確かに……」

 

 ――よし! 言質は取ったわ!!

 

「だから、私にも協力させて。斬魄刀が少しでも長く実体化し続けていられるように、全力で協力するわ。それに四番隊の隊長としても、色々調べておいて万が一に備えたいの」

「なるほど、そういうことなら」

 

 大義名分もゲットしたわよ!!

 これで実体化の延長という名目で、斬魄刀に触れられる!!

 あとは時間との勝負!!

 

『負けられないアディショナルタイムがココにあるでござるよ!! 主審権限で90分延長するでござる!!』

 

「差し当たってまずは――」

 

 この場にいる斬魄刀たち、それら全員に視線を動かします。

 そうね、ここはやっぱり……

 

「――袖白雪さん、協力してもらえる?」

(わたくし)ですか? 構いませんが、一体何を……」

「大丈夫、ちょっとした健康診断みたいなものだから」

 

 私はにっこりと微笑みました。

 




それっぽくてで良いから、ちゃんとしっかり、理由を付ける。
まずは袖白雪から(わきわき)

●後の祭りでそんバラピーにゃん
特に意味はありません。
後の祭りでピーヒャララとか書こうとしたら、何故かこうなりました。

●クレッシェンドな並び
多分これが一番エロいと思います。
あと、だんだん文字数を多くするところを頑張りました。
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