お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第206話 ゆびきりげんまん

「……とりあえず、十番隊に連絡はするわね」

「ええっ! ちょ、ちょっと待ってってば!!」

 

 懐から伝令神機を取り出したところ、灰猫が大慌てです。今にも私の手から通話機をひったくりかねないくらいの反応を見せました。

 

「さすがに連絡しないわけにもいかないでしょう? 乱菊さんだって心配してるわよ」

「お願い! もう少しだけ! もう少しだけでいいから!! なんだったら仕事も手伝うからさ。ね、ねっ!?」

「何言ってるんですか灰猫さん! あなたにそんなこと出来るわけないでしょう!」

「飛梅こそ何言ってるのよ!! アタシだってそのくらいは出来るわよ?」

「あれだけ散らかしておいて良くそんなことが言えますね!!」

「けんかはだめ……!」

 

 ……俗に言う片付けられない女ってヤツかしら?

 飛梅がそこまで言うなんて……部屋の状況、逆に見たくなってきたわ……

 

『ベッドの上に服とかデパートの紙袋とかが散乱してそうでござるな!』

 

 とはいえ、このままウチで預かるワケにも行かないので。

 

「……あ、もしもし。乱菊さんですか? 湯川です。今少しお時間よろしいですか?」

『あら湯川隊長。何、どうしたの?』

「ああーっ! ちょっ、信じらんない!! 何勝手に連絡してるワケ!?」

 

 飛梅と文句を言い合っている隙に連絡を取っておきます。

 ですがその目論見は、あっさりと見つかってしまったワケなんですけどね。

 

『その声……まさか、ウチのバカ猫がそっちにいるんですか?』

「バカ猫……?」

「はぁっ!? 何、アタシのことそんな風に呼んでるの!?」

「そんな態度を取っていれば仕方ないのではありませんか?」

「そっちこそ何よ! 良い子ちゃんぶっちゃってさ!!」

「なっ! あなたが我が儘すぎるだけです!!」

「ママ……けんか、やめてくれないの……」

「よしよし、凍雲は頑張りましたよ」

「あーっ! それあたしが欲しかったヤツ!!」

「「ボクたちも食べたかったの!」」

「ははは、こらこら。喧嘩は駄目だぞ」

 

 電話中なんですけど? 静かにして欲しいんですけど?

 

「ええ、まあ。そう言うことです。お察しの通り、灰猫が忍び込んでいました。なので、引き取りに来て貰えますか?」

『あー、そのことなんですけど……明日でも良いですか?』

 

 ……は?

 

『今ちょっと、手が離せないっていうか……ごめんなさい!! 灰猫の面倒、お願いします!!』

「え、ちょっと……あの!? 明日!?」

『ついでに四番隊(そっち)でコキ使っても構いませんから!! とにかくお願いします!! ほら、隊長! なにやっ――』

「……切れたわ」

 

 通話の最後、なんだか聞き捨てならない台詞があったような気がするんだけど……

 

「湯川さん……どうなりました?」

「明日まで預かってくれ。ついでに灰猫はコキ使っても構わない――だそうよ」

「ええっ!! 反対です! 絶対に反対です!!」

 

『飛梅殿がめっちゃエキサイティングしてるでござるな!!』

 

 ねえ……やたら張り切ってるわよね……

 

「まあ、予定が予定だし。一日預かるだけなら良しとしましょう。それよりも……灰猫、少し質問していいかしら?」

「ん、なに? どったの??」

「そもそも、なんで喧嘩なんてしたの?」

「うげっ、それ聞いちゃう?」

 

 質問した途端、思い切り渋面を作りました。

 さらにお団子を串ごと咥えながら視線を背けます。

 

「……まあ、答えたくないなら答えなくても良いんだけど。でも、乱菊さんとは仲直りしてよね。それが、四番隊で預かる条件よ」

「んー……まあ、それはあっちの態度次第ってトコかなぁ……」

 

 そう答えるってことは、乱菊さん側が何かしたってことなのかしら?

 でも言動から察するに灰猫も悪いことをしたと思っていそうではあるのよね。

 

「ま、努力はしてみるわ。お世話になるんだし」

「本当にお願いね。あと乱菊さんから"コキ使え"とは言われたけれど、お仕事を任せるつもりはないから。そこは安心して」

「えっ、本当!? なーんだ、案外話せるじゃん!! んじゃ、景気づけにもう一本もーらいっと!」

「だからって少しは遠慮を……ああっ! もういいです、私も頂きます!!」

 

 仕事しなくて良いと告げた途端、それまでの渋い顔を嘘の様に破顔させました。

 コロコロと気まぐれに態度を変えるその様子に、飛梅も半ば八つ当たりのように手にしていたお団子を頬張ります。

 

『タダ飯は美味いでござるからな!!』

 

 下手に手伝わされると、余計仕事が増えそうだからこれでいいの。

 飛梅曰く「豪遊していた」という病室に明日まで閉じ込めておきましょう。

 

「あの、湯川隊長」

「あら? どうしたの?」

 

 とりあえず一件落着したと思ったら、今度は伊勢さんが話しかけてきました。

 ……え? 伊勢さん?? なんでこの子がここにいるの!?

 

「申し訳ありません!!」

「え、と……何が?」

 

 こちらが戸惑っている間に、彼女は勢いよく頭を下げました。

 と、同時に。

 

「あーっ! 何よアンタ!?」

「…………」

 

 雀蜂の叫び声が聞こえました。

 そちらに視線を移せば、覆面をしたクノイチのような格好の少女がお団子の山をじっと見つめています。

 

「あれって、京楽隊長の……たしかお狂だっけ?」

「はい、隊長の花天狂骨です。一緒に行動していたのですが、少し目を離した隙に姿が見えなくなってしまって……」

「それでようやく見つけたのがここだった、ということかしら?」

「はい。勝手に入ってしまい、申し訳ありません」

 

 なるほど、だから開口一番に謝ってたのか。

 しかし、今日は千客万来ね。みんなそんなにおやつが食べたかったのかしら?

 

『お子様に大人気でござるな!! 甘い香りに誘われまくりでござるよ!!』

 

「なるほど。そういうことなら気にしないで、一緒に食べましょう。勿論、お狂さんも一緒にね?」

「ありがとうございます」

 

 再度頭を下げると、伊勢さんはお狂の方へと寄っていきました。

 

「ほら、ちゃんと許可は貰ってきましたから。一緒に食べましょう」

「……ん」

「どれがいいですか? 私のお薦めは、やっぱりこの餡子(あんこ)がたっぷり乗っているのが……それが食べたいの?」

「……ん」

「わかりました。それじゃあ、はい」

「…………」

 

 お狂が選んだのはヨモギ団子でした。

 伊勢さんに渡された串を手にしたまま……そういえば彼女、どうやって食べるのかしら? 目から下を覆い隠すように覆面してるんだけど、脱ぐの? 脱いじゃうの?? 素顔が見れちゃうのかしら!?

 

『幼女がひた隠しにしている部分が白日の下に曝されると聞いて!!』

 

「美味しいですか?」

「……ん」

 

 って、あら?

 気がついたらもう半分くらいお団子が減ってるんだけど!? 誓って目を離してないわよ!! 精々がほんの一瞬、瞬きしたぐらいなのに……

 まさかその一瞬で脱いで食べて着け直したの……???

 

『花天狂骨恐るべしでござるよ!!』

 

「おだんご、すき?」

「そのお団子は、凍雲が頑張って作ってくれたんですよ」

「そうなんですか? 凍雲さん、ありがとうございます。ほら、あなたも」

「……――がと」

 

 二人とも凍雲にお礼を言っています。

 しかしこうしてみていると、なんだか伊勢さんとお狂って姉妹みたいですね。

 気まぐれな妹の世話を焼くお姉さん、みたいな。

 

『むふふ……』

 

 ん、どうしたの射干玉? 意味ありげに含み笑いなんてしちゃって??

 

『なんでもないでござるよ!! あの二人が仲良くしている姿に、拙者の真っ黒ヌルテカぼでぃが漂白され掛けただけでござる!!』

 

 そ、そう……

 

「パパ……」

「あら、凍雲?」

 

 気付けば凍雲が私に抱きついてきていました。

 

「よかったわね。みんな、凍雲のお団子美味しいって褒めてくれるわよ」

「うん……みんな、おともだち……」

「そっか、よかったね」

「ねえパパ、またパパとママと一緒に、おかし、つくろ……」

「凍雲……ええ、そうね」

「やくそく、だよ」

「ええ、約束」

 

 伸ばされた小指へ私も小指を絡め、指切りをしました。

 




●七緒ちゃんと花天狂骨(お狂の方)
出したかった。
旧アニメでも二人が一緒に行動して仲良くなるエピソードがあるの。
アレ好き。
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