お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第216話 異世界への登山宣言

「来たか」

 

 一番隊の隊首室へと入室した途端、総隊長から鋭い視線を向けられました。

 

「呼び出してすまぬな、湯川」

「いえ、こちらこそ。遅くなり申し訳ありませんでした」

「大凡じゃが話は聞いておる。責めることはせんよ」

 

 ここへは桃の手術後に、少しだけ休憩を挟んでから来ています。

 移動時間を含めると「すぐに行く」と返事をしてから二、三時間くらいは経過しているでしょうかね。

 

「さて早速じゃが、本題に入らせてもらうぞ」

「ええ、勿論構いません」

 

 今更改めて言うまでもありませんが、総隊長と顔を合わせる理由はコレです。

 

「単刀直入にご報告します。織姫さんが藍染に拉致されました」

「……」

 

 その言葉に総隊長は無言のまま、眉間に深い皺を刻みました。

 

「……その結論、間違いはないのか?」

「間違いありません。井上織姫は本日、所用により尸魂界(ソウルソサエティ)へ――招待したのは私ですが、来ておりました。用事を済ませた後に、四番隊の穿界門(せんかいもん)を通って現世へと戻りました。その姿は私も確認していますし、何より部下の雛森三席が彼女と一緒に現世へ戻っています」

 

 隊長である私自身が最後の姿を確認しているってのは大きいわよね。

 

「その後、地獄蝶より空座町に破面(アランカル)が出現したとの緊急連絡が通達されました。運悪く穿界門(せんかいもん)が閉じた後だったため、伝令神機を使って雛森三席へ連絡を取ろうとしましたが通じませんでした。胸騒ぎがしたので、私自ら二人の後を追ったところ、瀕死の雛森三席を発見。井上織姫の姿はありませんでした」

「ふむ……」

 

 とまあ、前回までのあらすじですよね。

 

『状況報告は大事でござるよ! ただまあ、胸騒ぎという部分だけが大嘘でござるが!!』

 

 そこは仕方ないでしょ? 本当のことを言ってもロクな事にならないだろうし。

 

『ところで胸騒ぎとは具体的にはどのような!? 拙者が藍俚(あいり)殿のおっぱいを触って確かめますので……ああっ、ゴショウでござる! ロクショウでござるよ!! ウマのマタにムシと書いて騒がしいという漢字の意味を体験させてくだされ!!』

 

 馬、又、虫……合体すると騒……勉強になるわねぇ……

 

「雛森三席の救護のため、私は四番隊に戻りました。部下が現場を調べたところ、(ホロウ)の霊圧が残っていたことを確認済みです。また、僅かですが戦闘の痕跡もありました。相手は三席を相手に僅かな痕跡だけで倒す程の実力の持ち主です。つまり――」

「――つまりは破面(アランカル)……十刃(エスパーダ)が現れたということか」

 

 あ、勝手に結論を取られました。別に良いんだけど。

 

「なるほど、確かに理に適っておる。現場からは雛森三席の血痕のみが発見されたことからも、それは頷ける。しかし、全く逆のことも言えるのではないのか?」

「逆……ですか?」

 

 何かあったっけ?

 

「すなわち井上織姫は破面(アランカル)と、藍染と繋がっておった。今回の件は、尸魂界(こちら)の戦力を削るための行動だった、ということじゃ」

「……え?」

 

 ゑ……?

 

「そ、それはありえません! 彼女の人柄は私もよく知っています! なにより――」

「わかっておる。じゃがな湯川、常に最悪の事態は想定しておくべきじゃ。それは四番隊の長として日々、生と死に関わっておるお主がよく知っておろう」

「……それは」

「儂とて本意ではない。もしも内通が事実だとすれば、お主の部下は首を刎ねられ確実に殺されておったろう。わざわざ生かしておく必要もあるまい。となれば、拉致されたと考えるのが自然じゃろう。じゃがその理由が分からぬ。たしかに霊力を持っておるが、されど井上織姫は一人の人間でしかない。わざわざ連れ去るほどの理由もなかろう……」

 

 なるほど、確かにそう言われればそうね。

 総隊長の立場からすれば、可能性は低くとも内通も視野には十分入る。

 

「いずれにせよ、襲われた雛森三席が意識を取り戻せばもう少し情報も得られるじゃろう。現時点では結論を急ぐことでは――」

 

 ……仕方ない、か。

 

「申し訳ありません、総隊長」

「どうした?」

「井上織姫の一件で、一つ報告していなかったことがあります」

 

 深々と頭を下げながら、続きを口にします。

 

「彼女は、事象を拒絶するという特異な能力を持っています」

「……なんじゃと! 事象を……拒絶!?」

 

 驚かれました。それはそうですよね。

 

「はい。負った傷を治すのではなく、無かったことにする。おそらく、藍染はその力に目を付けて彼女を欲したのだと……」

「何故それを黙っておった!? 知れておれば護衛は……」

「下手に広めてしまえば、利用しようとする者は後を絶ちません。また、下手に護衛を付ければ"重要な存在だ"と宣伝するようなものです」

「……むっ! それは……確かにそうじゃが……」

 

 だって! 下手に言えないでしょ!?

 涅隊長とか涅隊長とか涅隊長とか!!

 

『太陽サンサン、ぴかぴかぴかりん! なマユリ殿が狙ってくるでござるよ!!』

 

 ……時事ネタは止めましょうね。

 

「……もしや、その能力を用いて崩玉を覚醒させるのが狙いか!?」

「そのため、脅迫して懐へと引き込んだ。可能性はあると思います。勿論、織姫さんも崩玉については知識がありますから、従いつつも完全覚醒までの期間は引き延ばすとは思いますが……」

「いずれの覚醒は避けられぬ……冬を待たずとも……なるほど。その情報があれば、お主が"拉致された"と断言したのも頷ける。藍染がこれほど派手に動いた理由にも説明が付く」

 

 納得したように総隊長は頷きました。

 

「もう一つだけ、私見をよろしいでしょうか?」

「まだ、何かあるのか?」

 

 さて、ここからもう一手ですよ。

 

「今現在、霊波障害が発生していて、現世との連絡が取れません」

「それは聞いておるが……それがどうかしたか?」

「おそらくはそれも藍染が絡んでいると思います。通信を途絶させて、あえて時間を与えることで井上織姫が裏切ったと思い込ませるために。もしかすると、何か秘密裏に行動を起こさせるかもしれません」

「……なくはない、というところかの」

 

 難しい顔をしていますが、総隊長の顔には「さもありなん」と書いてあります。

 というか、絶対にするのよね。

 

 この後に「人生が五回あっても五回とも大好き!!」ってちょっと病んでて重いけれど言われると男の子としては嬉しい告白を。

 

『じゃあ拙者は十回生まれ変わっても藍俚(あいり)殿のおっぱいを揉むでござるよ!!』

 

 私はまだ二回目の人生だけど、そこまで言い切れないかなぁ……

 

「なので、尸魂界(ソウルソサエティ)は織姫さんが裏切り者だと判断した、という演技をしましょう」

「演技……?」

「はい。こちらは気付いてないフリをしておき、尸魂界(ソウルソサエティ)は守りを固める。先遣隊も現世から引き上げさせる。織姫さんを取り戻すこともない――通信が回復次第、黒崎一護たちへもそう知らせます」

 

『ただの原作通りでござるな』

 

 えっ、そうだったっけ!?

 なんかこう、一護たちが突入することしか覚えてなかったわ……

 

「ですが黒崎一護たちは、こちらの命令を無視して絶対に取り戻しに行きます。すでに一度、朽木ルキアの件という前例もありますので」

「……志波の血か……なるほど、こちらもその動きに合わせる……ということかの?」

「はい。付け焼き刃、かも知れませんが……事前に動くとわかれば、こちらも備えておけます」

「……状況次第じゃが、よかろう」

 

 そこまで告げると、総隊長はしばし考え込んだ後にそう言いました。

 

「では……!」

「じゃがその件については明日、隊首会を開く。霊波障害も解消しておらん。全てが終わってからじゃ。よいな?」

「はい!」

 

 よかった……じゃない! 最後にもう一押ししないと……

 

「それと総隊長……これだけはハッキリと言わせていただきます」

「……なにか?」

虚圏(ウェコムンド)には、私は絶対に行きますから!」

 

 だってそうしないと、チルッチを助けられないんだもん!

 

 そうしないと、おっぱい揉めないんだもん!!

 

 

 

 

 

 ……あ、あと桃を傷つけられた落とし前も付けにいくわよ。

 




●ぴかぴかのマユリ
少し前にアニメで出てきたので。

●じゃないとチルッチを揉めない
藍俚の中の人はマユリがお持ち帰りするのを知らない。
なので、ここで機会を失するとアウトだと思ってるため。
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