「ん……? んんっ!?」
「どうスたんスか一護? 急に立ち止まったりスて」
回廊を駆け抜ける最中、ふと一護は足を止めて周囲を見回す。
小脇に抱えているネルが尋ねる中、彼は確認するように二度三度と周囲を見渡すと思わず頭をかきむしった。
「ちっ……くそっ! そういうことかよ……根性が悪いぜ!!」
「どどどどどうしたっスか一護!? ……あ! トイレっスか!? そうっスよね、この道ってばどこまで行っても道ばっかりで……」
「そうじゃねえよ!! 気付かねえのかネル? 周りを見りゃすぐにわかんだろ」
「ん……んんん……?」
小脇に抱えられたままでは都合が悪かったのだろう。ネルは一護の身体に掴まったまま器用に肩まで登り切ると、言われた通りに辺りを見回す。
「ややっ、ホントだ!! ペッシェとドンドチャッカがいねえっス!!」
「そっちじゃねえよ!! ……ってか何!? お前アレ置いて来たんじゃねえの!? そっちも迷子なのかよ!! そうじゃなくてもっと先に気付くことがあんだろ!!!」
「ふぇ……? ……あっ! 誰もいねえっス! ……なんで?」
「それをこっちが聞きてえんだって……」
頭のすぐ横でボケをカマされ、かと思えばつぶらな瞳で純粋に尋ねられる。どう対応したものかと思わず頭を抱えて落ち込んでしまう。
「多分だけどな、俺たちは強制的にバラバラにされたんだ。けど、ドルドーニが出てくるまではそんなことは無かった。てことはだ、強敵か厄介な相手と思われたのか……それとも何か敵側に都合が悪くなったか……チッ! 何にしても後出しはズリぃよな……」
つい先ほどまでは全員で、ドルドーニの言葉を信じて先に進んでいたというのに、気がつけば一人だけになっていたのだ。
道中で、何者かが襲ってきたり分断させる罠のような物があったなら、絶対に気付いていたはずだ。だが現実にはそのような前兆すら感じられなかった。
一護からすればただ走っていただけなのに、気付けばいつの間にか一人になっていたという感覚だ。ネルがいるのは彼女を抱えていたからだろうから、何らかの空間が操作されたのだろうということまでは予測できるが……
回廊に入る前、恋次が言っていた「全員で同じ道を通っているのに気がつきゃバラバラになってるかもしれない」と言う言葉を思い出す。
人間の常識からすれば、隣を走っていた人間が急に消えるなどあり得ない。だが今回に限っては、その「あり得ないこと」が起きてしまった。
それも、奥まで入り込んだ後でだ。
まるで初めからこうする予定だったような、誘い込んだところで孤立させ、一人一人順番に刈っていくような。突然そんな得体の知れない底意地の悪さのような気配が感じられ、首筋がチリチリと苛立つ。
――なら次は……各個撃破か? 考えてみりゃ、
「……ッ!!」
そこまで考えたところで一護は自らの頬を両手でひっぱたき、弱い思考を追い出しながら気合いを込め直す。
「一護?」
――何を弱気になってんだ俺は! 全員とんでもなく強えのは知ってる! しかも後からは隊長たちだって来るんだ!! 今は……
「信じて先に進むだけだ!!」
「おわあああぁぁっ! ちょ、ちょっと待つっス! お、おおおおお落ちる~~!!」
決意を新たに駆け出し始めた時だ。
「……え?」
「ええっ!?」
再び一護の足が止まった。
「雛森、さん?」
「黒崎……さん?」
なぜなら、道の先から桃がひょっこりと顔を覗かせていたのだ。
「なんだこりゃ、こんな風に合流してんのか」
桃が通ってきたルートを確認しつつ、一護は呟いた。
そこはまるで、高速道路本線へ合流する加速車線のような造りになっていた。まっすぐ直線のように見えるが微妙に斜めの道となっており、そこを進めば自然に一本の道へ合流できるといった仕組みだ。
「でもこれ、危ないですよね」
「下手に走ってたら激突するかもしれねえよな。おっかねえ……」
問題があるとすれば、本線に合流する直前まで壁があるので確認が出来ないことくらいだろう。
一護の言葉通り、もしも二人とも急停止出来ないほどの速度で走っていたとしたら……
結果は言うまでもない。
通路は普通の一本道だと思い込ませるような造りになっているので、案外そういった事故の発生を狙って作られた罠の一種かもしれない。
「私もギリギリで気付いたんです。それで、誰か来てたら危ないなって思って覗き込んでみたら……」
「俺が来てた、と。サンキューな、そうしてくれてなかったら戦う前から大事故になってたところだったぜ」
「ふふ、もしそうなっても私が治療しますよ」
「そいつはありがてえな」
まだ少しフラつきが感じられるものの、任せてくれとばかりに桃は胸を張る。
「……でもよ、俺は偶然にも合流できたけど、他の連中は……」
「そうですよね。急にみんなバラバラになっちゃうなんて……でも、きっと大丈夫ですよ! 怪我をしても絶対に探し出して治療します! 後から先生も来る予定ですし、それに先生が持たせてくれた薬もありますから」
「ああ、これか」
そう言いながら懐へ手を当てる。伝わってくるのは小さな包みの感触。
それは回廊に突入する直前、一護たち全員へと配られた支援物資だ。集団行動するとはいえ、恋次が言うように万が一があるかもしれないと、薬品の再分配をしていた。
「しばらくは、大丈夫ってことか」
「はい! でもこんな意地悪いことするなんて、きっともの凄く性格が悪いに違いありません!! 顔が見てみたいです!!」
「ははは……」
一護が苦笑している頃。
「アがががががが!!!!」
「ぞわああああああああぁっ!!!!」
同じように分断されたことに気付いて足を止め、周囲の様子を確認していたときだ。
回廊の後ろから、絶叫を上げて号泣しながらやってきたドンドチャッカの様子に、阿散井恋次は思わず悲鳴を上げて逃げ出した。
「お、おまえさっきの! ビックリさせんな! 何してんだよこんなとこで!?」
「ネ……ネ……ッ!!」
「"ネ"!? ネがどうしたちゃんと言え!!」
「ネルっ! ネルを探してるでヤンス~~~!!」
「ハァッ!? ちょっと待てお前あの通路どこに入った!? 右から何番目の道だ言ってみろオイ!!」
「おっ、覚えてないでヤンスよ~~!!」
「アホかっ!! ははーん、最初に会った時から思ってたが、さてはお前馬鹿だろ!?」
「ば、馬鹿とは失礼でヤンス! 馬鹿って言う方がバカでヤンスよ!!」
「ネルってガキは確かに俺たちと一緒にいたけどよ、気がついたらはぐれてたんだよ道を飛ばされたみたいなんだよ!! この道の先にいるかもわかんねえんだよ!!」
「ええっ!? じゃ、じゃあネルはいったいどこに……!?」
「知るか! 俺が聞きてえっ!!」
――くそっ! 嫌な予感が当たっちまったぜ! まさかバラバラにされちまうとは……しかも三桁の元
「ネ゛ル゛う゛う゛う゛ッ゛! でヤンス~~!!」
「ウルセえ!!」
恋次が全力疾走している頃。
「それは勿論、左から――番目の道を……!!」
「残念だが、僕たちが進んだのは右から――番目の道だ」
「なっ、なにいいいぃぃっ!!」
雨竜の指摘に衝撃を受けたペッシェが頭を抱えながら落ち込んでいた。
恋次とドンドチャッカと同じように、こちらでも自分の選択ミスを嘆いている……どこを選んだのか覚えている分だけ、こっちの方がマシかもしれない。
「やはりか……やはり私があの時にチョキを出していれば……」
「じゃんけんか!? まさかじゃんけんで決めたのか!?」
「先に選択できたのに!!」
「順番決めの段階だったのか!?」
……前言撤回。
八人全員が一つの道に行ったのに覚えてない時点でオツムに大差はない。ちゃんと覚えていたネルのみ合格とする。
「それよりもペッシェ、一つ聞きたい」
「む、なんだ一護。なんでも聞いてくれたまえ」
「だれが黒崎か!! ……いやそれよりもだ。君が道に入ってから僕に会うまで、どのくらい時間が経ったか教えて欲しい」
「なぜそんなことを……はっ! まさか私のストーカー!! 行動パターンを把握してから偶然を装ってさりげなーく出会いを演出して……ハンカチ落としましたよ? とかやって切っ掛けを作るつもりだろう!?」
「誰がするか!!」
「私だってイヤだ! 男などこっちから願い下げだ!! どうせストーカーされるならあの雛森という名の女性死神がいい!!」
この世界のあの子、原作以上にちょっと色々と危ないんだけど……本当にいいの?
「そうじゃなくてだ! どのくらいのスピードでどれだけ移動したかが分かれば、今どのくらいの位置にいるのかが分かるだろう!?」
「…………???」
「なんでそんな反応をする!! 速さ
「なんだと! バカにしないでもらおうか! ……おおおお覚えてるとも! オアシスだな!」
「それは避難の時の原則だ!!」
相方の大ボケにめげることなく、雨竜は少ない情報から必死で現在の位置関係を導き出そうとしていた。
家が建ちそうなくらい建設的な意見である。
回廊操作が可能な相手にそれがどれだけ役に立つかはともかくとして。
ちなみに距離だけでいうならば、結構戻されている。
ペッシェは一人だったので案外おっかなびっくり回廊を進んでおり、進みが遅かったからである。
雨竜が華麗なツッコミを入れている頃。
「ぐ……が……」
泰虎の強烈な一撃を受けて
その一撃はそれだけにとどまらずに部屋の壁へと突き刺さると、そのまま壁を破壊してしまうほどであった。
「さすが、凄い威力だね。まともに相手にはしたくないよ」
「吉良がいるからな……ここまでの威力は、そうそう出せない」
少し離れた場所で戦いを見守っていたイヅルが、壁の破壊痕を興味深そうに眺めながら声を掛ける。彼の力は
記憶の中にある威力の倍はあるのではないか? ――思わずそう疑うほどに。
対して泰虎は、イヅルへ信頼の眼差しを向けていた。
彼が後ろで待機しており、傷の治療や霊圧の補給をしてくれるのだから彼は気にすることなく全力を出せる。
回廊を進む最中に突然一人になったときには驚かされたものの、泰虎とイヅルは一護と桃のときと同じように程なくして合流できたのも幸運だった。
ガンテンバインとの戦いが合流後だったのも幸運だった。
だが合流出来なかった者もいるかもしれなければ、後々を気にしながら戦わなければならない者もいるかもしれない。それを考えれば自分は恵まれているのだろう。
そう感謝しつつ、彼は自らが開けた大穴から外へ出て行く。
「……それにしても、どういう事だ……?」
「空、だよね……? 宮殿の中に入って、外に出たと思ったら空がある。でも中庭ってわけでもなさそうだし……」
一先ずガンテンバインの命に別状がないことを確認してから、イヅルは泰虎に遅れて外へ視線を向け、同じように度肝を抜かれた。
「ああ、あの巨大な丸天井がない。それに、ここに入る前は夜空だった」
「ということは人工的な空を作って――茶渡君!!」
注意の声が上がると同時に、泰虎は振り返りながら即座に戦闘態勢を整える。
「……よォ、オメーが一番乗りか?」
巨大な霊圧を放つ
泰虎が緊張に身を固くさせた頃。
「壁を、抜けてしまいましたね……」
「だな……」
ルキアと合流した海燕は回廊を駆け抜け、やがて外へと出ていた。
突然現れた青空と合わさり、なんとも奇妙な感覚に襲われてしまう。
「しかし、急にバラバラになったと思ったら朽木と合流して、そのまま一戦も交えることなく外に出ちまうとは……こりゃ匂うな……作為的な匂いがプンプンしてやがる……」
「まさか我々を狙う何者かが!?」
「わかんねえけど、多分な……けど、無傷で出られたのは好都合だ。一護たちを探しに戻るぞ! 霊圧を探って……」
仲間の居場所を確認しようと霊圧を探った途端、海燕は表情を引き締めた。弾かれたようにとある方角へ睨みを効かせ、滅多に見せない憤怒にも似た表情を浮かべる。
「海燕、殿……?」
「わりぃ、ちょいとヤボ用が出来ちまった。あと、たのんまぁ!」
「え、あ……あの、ちょっ……!!」
「それと、ついてくんなよ! 絶対だからな!! 副隊長命令だからな!!」
思わず心配そうにルキアが顔を覗き込めば、海燕は途端に笑顔を張り付かせると返事も聞かずに走って行く。
それだけならば普通のことのようだが、問題はその様子。身に纏う雰囲気だ。
表情こそ笑顔ではあるものの、内面からはかつてないほどに真剣になっていることがルキアには分かってしまった。
「い、一体何が……」
脇目も振ることなく駆けていく海燕を、彼女はただ見守ることしかできなかった。
●組み合わせ一覧
・桃苺(ネル)
・志波ルキア
・茶渡イヅル
・ドンドチャッカ恋次
・石田ペッシェ
……よし、完壁!(ペキではなくカベ)
(恋次は卍解もできるし、霊圧解析で圧倒的に優位に立てるので、ザエルアポロが勝ちやすい獲物と捉えて上手く孤立させた。
雨竜も同じ。滅却師はレアだから欲しいので狙いたい。
本来なら全員孤立してたんだけど、その後でギンが回廊操作しなおして良い感じに組み合わせた。
(なので、一度孤立したのに再合流する。という回りくどい結果になっている))
●ガンテンバイン・モスケーダさん
彼は犠牲になったのだ。
ペッシェとドンドチャッカのボケの犠牲に。
(どうせ原作でも噛ませだったし)
●原作のルキアのこの辺り
三桁の巣なんだから、あの3人以外の十刃落ちと戦っているはず。
でもそれらをすり抜けて、アーロニーロと戦った。
モロにギンが操作していますよね。