「遠くから見ても大きかったですけど、近くで見るとまた……一段と大きいですね……」
一護たちの移動した際の痕跡や霊圧を追って、私たちも
本当に、結構な距離がありました。移動時間だけでも大変なことになりました。
……けど、途中から先行組の足跡が無くなったのはなんでかしら?
え? 砂漠みたいなところだし、足跡なんて風に吹かれて消えるだろ? ですって??
ううん、そうじゃなくて。
それまで自分の足で走っていたのに、急に足跡が消えてるの。
代わりに、蛇みたいな生き物が這い回って移動した痕跡みたいなのが増えてるんだけど……これ、なんでかしら?
『いったい何処の
え、ウナギ? 私は腹開きにするけれど……お腹空いたの?
『そうではなく! ほらあの、砂漠のデザート三兄弟が飼っていた……』
はちみつ、まだ残ってたかしら……あ! でも
『……わーい、おやつだー!!』
諦めたわね。
「ああ、そうだな。見上げているだけで、首が痛くなりそうだ」
「この奥に強えやつがわんさかいるんだろ? へへ、面白ぇ……なんせ道中にゃ、雑魚すら出てこなかったからな……」
「まったく、単純馬鹿は気楽なことだヨ……
更木副隊長と涅隊長はなんていうか、本当に変わらないですね。
……え?
ええ、そうですよ。同意してくれたのは浮竹隊長です。白哉じゃありませんよ。
だってほら、白哉はその隣で無言で頷いてますから。
え? なんで浮竹隊長がいるのか、ですか?
いいですか?
桃とイヅル君は、四番隊。
阿散井君は、六番隊。
海燕さんとルキアさんは、十三番隊。
だったら、それぞれの隊長が来るのも当然ですよね。
『子供の喧嘩に親が出るのも当然、みたいな言い方になってるでござるよ? あとその理屈だと、十一番隊と十二番隊は参加資格無しになってしまうのでは!?』
本当は、浮竹隊長の参加は総隊長がねじ込んだの。
同じ部隊の部下がいるからって理由もあるけれど、それ以上に慎重に物事を考えて行動してくれそうだという判断からです。
ほら、隊首会の時にも冷静な意見を言ってたでしょう?
『217話の時のアレでござるな!! 京楽殿と揃って「守りを固めるべきでは?」と自らの考えを口にしていたでござるよ!!』
逆にそれが
『なにしろ同行しているのが変態医師・シスコン・狂戦士・狂科学者という無茶っぷり!! いやぁ、浮竹殿も大変でござるな!!』
浮竹隊長も長いからね。そういうの任されちゃうのよね。
『……
ほっ、ほら! 私は下っ端が長かったから!! それに今は隊長だもん!! そんなこと言い出したら、雀部副隊長なんてどうなるのよ!!
あとシスコンって言わないであげて! 白哉は普通に家族を大事にしているだけだから!! 義理の妹と義義理の弟が心配なだけだから!! この世界ではちゃんと奥さんも子供もいるんだから!! 良いパパなの!! ちょっと前の瀞霊廷通信に「奥さんとお子さんと一緒にお買い物している姿が可愛かったです」って投稿があったくらい――
……こほん。
ということで、浮竹隊長も
現世の守護が甘くなる? 大丈夫、天貝隊長がいるわ。だから実質的には戦力増強してるのよ。
『ところで、ネム殿について全然全くこれっぽっちも言及しておられないのはどういうことですかな?』
仕方ないのよ……そもそもが積極的に絡んでくる子じゃないし……そもそも涅隊長と一緒にいると素直に付き従うタイプだから……
「外壁が壊されているな。この霊圧、どうやら恋次が壊したようだ……」
「これはまた乱暴な手段……とも言えないな。入り口がどこにあるのか、俺にもさっぱりわからん。壁を破壊して侵入するのも仕方ないだろう」
どうやら説明やら茶番やらに意識を集中しすぎたみたいですね。
気付けばいつの間にやら、外壁の大穴を発見していました。そうそう、確かこんな風に穴を開けた……で良いんですよね?
霊圧もこの奥に続いていますから……って! ちょっと待って!!
「追いましょう。どうやらこの先で、みんな戦っているみたいですよ!」
「ああ、そうだな。一気に霊圧が高まっている。急ぐぞ!」
改めて霊圧を感知していたところ、どうやら複数名が戦いを繰り広げているみたいです。
浮竹隊長もそれを感じ取ったようで、私たちは急いで中に入りました。
ああ、そういえばそんな感じだった気がします。
こんな風に中に入って、その後で道が分かれていて、バラバラになったところを各個で襲撃されるのよね。
思い出したわ……って思ってたんだけど……
「え……なんで八つもあるの!?」
進んだ先を見て、軽く絶望しました。
だって道が八つに分かれているんですもん! あれぇ!? 五つじゃなかったっけ!?
「分かれ道、か……」
「ふむ、先行した人数と丁度同じか……妙だな」
……ああ、なるほど。増やしたわけなのね。
……って、増やせるの!? 入り口って増やせるものなの!?
手間が掛かってるわぁ……
「ああ、そうそう。先行した奴らだがネ、全員同じ道を選んだヨ」
「えっ……!? 涅隊長、それはいったいどういうことだ!? どうしてそんなことが分かる!?」
「簡単なことだヨ。
「なんだと……!!」
ああ、浮竹隊長が怒っています。
プライバシーの侵害ですもんね……人権無視っていうか……でもとっても涅隊長らしい行動だわ……
え? ちょっと待って!? 全員が同じ道を選んだの!? あれぇ……? 全員バラバラで行こうって言ってた記憶があるんだけど……
『メンツも人数も違いますからなぁ……そのくらいのイレギュラーはあってしかるべきでござるよ!!』
そ、そっか!
「ちょ、ちょっと待って下さい! 全員で固まって行動しているはずなんですよね? でも霊圧は各所でバラバラに感じられますよ!? これは一体……!?」
「どうやら通路に細工がしてあったようだネ。移動の途中で分断させられていたヨ」
「なるほど、各個撃破の方が楽なのは確かだが……しかし、移動している相手にそんなことが可能なのか?」
「不可能ではない、とだけ答えておくヨ。十分な仕込みをしておけば、私でも再現可能な技術だ。とはいえ誰に気取られることなく分散させたのは大したものだ。時間があればこの宮殿の隅々に至るまで解析したいところだネ」
通路に細工……?
え、そんなことまで出来るの!?
……入り口増やせるんだから、そのくらいは楽勝かしらね。
「それはつまり、ルキアや恋次たちが通った道を選んだとしても必ず追いつけるわけではない、ということか?」
「その質問に私の回答が必要かネ?」
あらら、白哉が心配してる。
その隣では更木副隊長が「めんどくせぇ……」って顔をしています。
「へっ、どうせ道なんざわかりゃしねえんだ。なら、適当に選べばいいじゃねえか!! 俺はコイツに決めたぜ!!」
「じゃーねー……!!」
「な……っ! ちょっとまて更木!!」
浮竹隊長が背中に声を掛けますが、時既に遅し。アッという間に走り去って、姿が見えなくなりました。
しかし「適当に選ぶ」と言ってた割に、一番霊圧が高そうな相手に近いルートを選んでいる辺りは流石です。選んだ道が一本道なら、茶渡君とイヅル君が戦ってる所に出られるはずです。
あと、小さくなっていく背中の上で草鹿三席が楽しそうに手を振っていました。
ドップラー効果って言うんでしたっけ? 声も小さくなっていきました。
「ふむ、野蛮人の言うことにも一理あるね。現状では選択に足るだけの根拠もない。なら、私はこの道にしようか」
「了解いたしました、マユリ様」
「涅!?」
あらら、今度は涅隊長もですか。
適当に選んだ、らしいんですが……本当でしょうか? 絶対、何らかの裏があると思います。
「ああ、まったく……二人とも勝手なことを……!!」
「お察しします」
ガシガシ頭を掻く浮竹隊長でした。
問題児が二人もいますからね。
『
私が? 失礼ね、私のどこが問題児なの? こんなに素直で皆に気を配ってるのに。
『おやおや、拙者にそんなことを言ってしまってよろしいので?』
な、なによ射干玉……何か企んでたりするの……?
『いえいえ。ですがほら、よーく観察してみるでござる。漂ってきてるでござるよ、戦闘の痕跡が。
……ッ!!!!
「浮竹隊長! 先行したみんなが心配なので、私はこの道を行きます!!」
「ちょ、ちょっとまて湯川!!」
「大丈夫です!! 先遣隊だった面々には特製の薬も渡してありますから!!!」
声が掛かりましたが、後ろを振り返ることなく駆け抜けていきます。
だって、だってね……!!
この道の先から漂ってくるのは、今にも消えてしまいそうな弱々しい霊圧と、
石田君が戦った際のもそうですが、それ以前に私は二百年前の
だからわかるんですよ、私には!!
見つけた、見つけましたよ!! 誰にも渡しませんよ!!
待っててチルッチ!! 今すぐに行って助けてあげるからね!!
『さっすが
「まったく、湯川まで先走るなんて……!! 全員、好き勝手が過ぎるぞ!!」
「ここは敵の――藍染惣右介の本拠地だぞ!? どんな危険があるかわからない! おそらく海燕の奴もそう考えて、全員で一塊となって行動させるようにしたんだろう……それを、俺たち隊長がこうも軽々しく――!!」
「いえ、仕方ないことでしょう」
「朽木!?」
お前までなんてことを言うんだとばかりに、浮竹は目を見開きながら白哉を見る。
「まず他の二人はともかく、湯川殿は仕方ないかと。ほら、感じませんか? ほら、この道の先から……」
「霊圧だな……それも、かなり弱った……」
白哉の言葉に従い浮竹は
その言葉に白哉は一つ頷いた。
「おそらく湯川殿は、この弱った霊圧の持ち主を助けに行ったのでしょう」
「だがこんな霊圧、俺たちは知らない。つまりこれは敵だ、弱った敵を治療しに行ったというのか!?」
「それが湯川殿です」
「……ッ! そう、だな……湯川なら、そうするか……」
神妙な顔で頷き合う白哉と浮竹――って、いや、二人とも納得するな!
今回ばかりは純度100%の下心なんだぞ!! 多分だけど今頑張れば、お持ち帰りされている最中のドルドーニとか助けられるタイミングかもしれないんだ!
なのにそれを無視してチルッチの所へ真っ先に行ってるんだぞ!! 冷静になれ!! なんかこう「倒れた敵に手を差し伸べる美談」みたいなのと違うんだぞ!!
倒れているのが男の
「なにより、我々は別々の道を選ぶだけの理由があります」
「ああ、わかっている……対応速度の差だろう?」
「ええ。湯川隊長もそう考えたからこそ、単独行動を選んだのかと」
――叫んだところで後の祭りである。
このまま隊長全員で同じ道を進んだ場合、確かに安全かもしれない。だが安全な分だけ、各地に散らばった一護たちの危険度は跳ね上がる。
ならば各人が別々に行動するというのも、決して間違いではない。
と、
「付け加えるならば、我々は護廷十三隊の隊長です。
「……わかった」
結局残る二人もまた、それぞれ別々の道を選び進んでいった。
●アラブ系のスイーツ
デーツとは「ナツメヤシの実」のこと。
(木に実を付けたまま自然乾燥する。天然ドライフルーツな果物)
これと「はちみつ」があれば、大体アラブ系のお菓子になる。
(アンコがあれば和菓子、くらい雑な理論)
●この後
(予想通り)各隊長が好き勝手します。
(でもまず(次話)は
だって約10話ぶり(実時間で三週間ぶり)の射干玉ちゃんの出番なので。
もう1話くらいは、いいよね?)