走る走る走る! 全力で、ただただ無心……無心じゃないわね、欲望垂れ流しで走っています!
メロスもきっとこんな気持ちだったのかしらね。
『借金を返すために東奔西走する話でござるな!!』
そんな話だっけ? ま、メロスが多重債務者だろうと移管されようと、私には一切関係ないんだけど。
それよりもチルッチよ!! この先にいる、まだ生きてる!! このままなら間に合いそうね!!
でも確かあの子、処刑部隊――だっけ? そんなのに倒されちゃうのよね!?
そんな勿体ないことできるわけないじゃない!! いらないんだったら私に頂戴!!
『(
というか絶対に貰うから!! 貰って私のものにするから!! だから急ぐのよ私! もっと速く動いて、私の身体!!
『(しかしゾンビ部隊にされてしまうと、マッサージする隙は皆無になってしまうでござるな……それは拙者にとっても損でござる! よって――)拙者もその意見に超同意しまくりんぐでござる!!
任せなさい!! ここでやらなきゃ女が廃る――
「――って、ああっ!!」
思わず声に出してしまいました。でも仕方ないんです!
だってこの先で、妙な霊圧が、チルッチと思しき霊圧に近づいているんですよ!
これ多分絶対に間違いなく処刑部隊だと思うの!!
『(
「まだっ!? どこっ!? 見えたっ!!! そこの部屋あああぁぁっ!!」
『(何よりこの"やる気"に水を差すような真似は無粋でござるからな! ぬっはぁ! 頑張れ
射干玉が何かを言っていたみたいですが、今の私の耳には届きません。
届いていませんが、何故かやる気だけはマシマシになりました。
視線の先にあるのは、倒れているチルッチ。それと彼女を取り囲む処刑部隊の面々。それらを確認した瞬間、私は己の限界を超えました。
「どきなさいっ!!」
「……!?」
部屋に飛び込むと同時に抜刀して、周囲に立っていた髑髏仮面たちを切りつけます。
「死神ッ!? くっ……!」
ちっ、生意気な! 一人、角付き髑髏だけは反応して直撃を避けたわね!
でもその他は間違いなく斬ったわ。だってほら――
「が……っ!」
「……ぐ……っ!!」
周囲の兵士たちは全員、糸の切れた人形みたいに一斉に倒れました。
「なんと……!」
「次はあなたの番、かしら?」
「……仕方ない」
ただ一人生きている角付きへ刃を向けると、相手はあっさりと姿を消しました。
随分と引き際が良いわね。もう少しくらいは粘ると思ったんだけど、なんでかしら? それに部下を残して自分だけ逃げちゃう辺り、情けないというか……戦術的には正しいと思うんだけど……
「な、なによアンタ……?」
いけないいけない、忘れるところだったわ!!
あんな髑髏よりもコッチが本命なんだから!! 最初の出会いは肝心よね!!
チルッチは倒れたまま、けれど弱って不安そうな表情で私のことを見上げています。ゴスロリみたいな服装と化粧がまた似合ってて、なんていうか実にそそるわ!!
けど、落ち着きなさい私。焦っちゃ駄目よ。
彼女からすれば、突然現れたかと思えば処刑部隊を蹴散らして、でも死神だものね。
トドメを刺す相手が変わっただけ、としか思わなくても不思議じゃない。
だからここは冷静に対処して、バッチリ良い印象を与えないと!!
「私? 見ての通り死神よ。ただ、チ……ッ!」
「血?」
ココで名前を出したら怪しまれるわよね。
「血が出ているみたいだけど大丈夫? 少し診察させて貰うわね」
「な……なんだお前急に!? やめろ、触るな!」
うつ伏せの彼女を仰向けに返して、診察を始めます。
あら、案外おっぱい大きい。ドレスの上からでも隠せないくらいの存在感を誇ってます。
しかし記憶ってアテにならないものよね、こんな生意気なおっぱいの持ち主だったなんて。憶えてたら
「この傷、かなり酷い……治すわよ?」
「話を聞けッ! 無駄なことしないでよっ!!」
おっぱいに視線が行ったので、胸元の傷にも気付きました。
打ち貫かれています。まずはこの傷を癒やさないと、安心してお喋りもできません。
チルッチは暴れようとしますが、弱っているので力が全然入っていません。なので軽々と押さえつけられます。
軽く胸元に手を当てて、回道を唱え――あら、なかなかよいおっぱいだわ。柔らかくて、けれど触れた瞬間にすごく弾力がある。これはじっくりたっぷり時間を掛けて揉まないと!!――回道を唱えて、傷を癒やし始めます。
「大体アンタ死神なんでしょ! どうしてあたしを治したりなんかすんのよ!!」
「どうして、って……自己紹介が遅れたわね。私は湯川
「四番隊……」
なんだか複雑な表情を見せましたね。
藍染が四番隊への悪評でもバラ撒いているんでしょうか?
「それで、あなたの名前は?」
「……チルッチよ。チルッチ・サンダーウィッチ」
「そう。じゃあチルッチ、少しだけ良いかしら?」
「何……?」
「この服、脱がせるわよ」
「え……やっ、ちょっ……! きゃああぁぁっ!!」
なんだか可愛い悲鳴が上がりました。
『心にグッと来る悲鳴でござるな!! テンション爆上がりでござるよ!!』
それは私も同意。同意なんだけれど、今はそれどころじゃないのよね。
「やっぱり、鎖結を射貫かれている」
みなさんご存じのように、鎖結は霊力発生の
そのため彼女の霊圧は、本当に消えそうなくらい弱々しい物になっていました。
それにしても、鎖結だけを綺麗に打ち抜いている……石田君、強くなったわねぇ……
あと余談ですが。
鎖結や魄睡は、人間と同じように胸元にあります。
そして私は、傷を確認するために彼女の服を剥ぎ取りました。
なので。
紫色のブラジャーしてました。ガーターベルトとお揃いの色ですね。
結構人を選ぶ色なんだけど、チルッチにはよく似合っています。しかも何やら扇情的なデザインですね。カップに包まれた白いおっぱいが……
……って、今は駄目! 治療に集中しないと!!
あ、でもこれだけは言っておくわね。
パンツも紫で、エッチなデザインだったわ!
「そうよ……あの
「そっか、だからさっき『無駄なことをするな』なんて言ったのね」
「そうよ! 鎖結を壊されて、しかもトドメも刺されずに生かされるなんて……!!」
横たわったまま、怒りで手を握り締めています。
「ふふ、あなた優しいのね」
「な、なにが!!」
「だって、治療しても無駄なんて普通は言わないでしょう? ましてや相手は死神、なら『無駄な治療をさせることで少しでも霊力を消費させてやろう』とか考えそうなものだけど?」
「そっ、それは……っ!! ……思いつかなかったのよっ!!」
図星だったんでしょう。
顔を真っ赤にして、ぷいっと視線を横に逸らしました。
かわいい。
「それと安心して。壊された鎖結、私なら治せるわ」
「はぁっ! 何言ってるのよ! そんなことできる……わけ……」
言葉が弱々しくなりました。
自分でも気付いたんでしょうね。私が今、鎖結を修復しているんだってことに。
「これ、霊圧が高まって……なんで……? 修復不可能なんじゃないの!?」
「私は例外。経験があるのよ、治した経験がね」
『昔懐かしい話でござるな……あの頃の
探蜂さん――砕蜂のお兄さんを治したのよね。
射干玉の言うとおり、ちゃんと治してあげられなかったのは今でも心残りだわ……でもそのおかげで、砕蜂や夜一さんと知り合えたから。
戒めの意味でも、出会いの意味でも、とっても良い経験だったわね。
『一応、鎌鼬な一貫坂殿も治してるでござるよ? そっちはどうするでござるか?』
あれは例外。
「治した経験って……信じられないんだけど……でも、信じるしかないみたいね……」
「ええ、だから安心して」
素直に治療を受け入れてくれたので、そのまま回道を続行していきます。
とはいえ、鎖結だけでも治療って大変なんですよね。
しかも相手は
なにより彼女、他にも治療な必要な部分があるのよねぇ……
「ねえ、チルッチ。一つ聞いて良い?」
「……なによ」
「あなたひょっとして、自分の身体を自分で傷つけた?」
尋ねた途端、目を丸くしました。
「驚いたわ、なんでわかるの!?」
「わかるから、四番隊の隊長をやってるのよ。それで、何をやったの?」
「……
「それも治して良い?」
「――はああぁっ!?」
「動かないで」
驚きのあまり今にも掴みかかってきそうなチルッチを押さえ込みます。
押さえつけられ、ぶすっと不満げな表情とふてくされた態度で彼女は口を開きました。
「あんまり適当な事言ってんじゃないわよ? 鎖結を治せるのはわかったけれど、調子に乗らないでよね」
「それで、治していいの? 駄目なの?」
「あーもう
そういえば、そうでした。
彼女は石田君に勝つために「姿を変えて一点集中で勝負!」みたいなことをやっていた覚えがあります。
けど、言質は取りましたよ。
「それじゃあ、ご依頼通りに」
「ん……っ……え、え……っ? なに、これ……あたしの、カラダの奥、が……っ……熱く、なって……るっ……んんっ!!」
なんだか色っぽい声を上げながら、自分の身体を自分で抱きしめて身悶えしています。
彼女の本体も一緒に治療しているので、その影響だと思います。
今は開放状態ではないので、肉体の奥底に眠っている
……え? なんで治せるのか?
彼女がやったことって、自分の身体を自分で切り捨てたのと同じだからね。その程度なら治せるに決まってるわよ。
それにさっきも言ったけれど、私って
少なくとも、鎖結を治療するのに比べれば軽い軽い。
ちゃんと教えれば、勇音や桃やイヅル君だって時間は掛かるけど彼女を治せるはずよ。
けど、あんまりのんびりと治療しているわけにもいかないし……仕方ない、か。
斬魄刀の柄を握り締めます。
「力を貸して……卍解・
「え、ちょっ……何!? なんでアンタ、卍解してるのよ!?」
『お任せでござるよ!! ぐへへへへへ!! チルッチ殿の身体と拙者の身体が一つになるでござるよ!! 拙者が補いまくって、拙者無しでは生きていられない身体にしてやるでござる!! ふひ、ふひひひひひ!!』
……うん、言ってることは間違ってないのよね。
能力でチルッチの肉体や本体と一体化、複製体を生み出すことで補って元の状態まで戻すわけだから、射干玉無しじゃ文字通り生きていけなくなるわけで……
「別にあなたを攻撃するわけじゃないから安心して。私の斬魄刀はね、治療に使える能力を持ってるの。このままだと時間が掛かるから、短縮のためにちょっとだけ我慢してね」
「え、え……?」
刀身からどろりと溶け出した、真っ黒でものすごいヌルヌルの粘液。
それを両手一杯に手に取りチルッチに見せつけます。
「大丈夫、痛くないから。ちょっと部屋の柱の本数でも数えてれば終わるわよ」
「いや……いやあああぁぁぁぁっっ!!」
無垢な少女が黒く汚される。
多分、そんな感じの悲鳴が部屋中に響き渡りました。
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「どこか違和感はあるかしら?」
「いーえまったく、腹立つくらい絶好調よ」
「そう、なら良かったわ」
「そうね、ありが……とっ!!」
治療は無事に終了しました。
今は最終確認というか、彼女は立ち上がって調子を確かめるように軽く身体を動かしながら答えてくれました。
その言葉ににっこりと微笑むと、チルッチは手刀を私の首筋に突きつけてきました。
身長差があるので、精一杯背伸びしているみたいで可愛いですね。
「……アンタ、馬鹿なんじゃないの? あたしとアンタは敵同士よ? なのに傷の手当どころか、完全回復させるなんて……こうなるって、予想出来なかったわけじゃないでしょう?」
「ふふ……チルッチ、あなた本当に優しいのね」
「なっ、何がよっ!!」
「だって、寸止めしたり尋ねたりなんてしないで、そのまま突き刺せばよかったのに。それをしないってことは、やっぱり優しいんだなって思っただけよ」
「う……っ……!」
顔が真っ赤に染まりました。
彼女、肌が白いから表情の変化がよく分かって、見てて飽きないのよね。
「ねえ、チルッチ。どうせなら、少し私たちに協力してもらえないかしら? この建物の案内とかしてもらえると、とっても助かるの」
「はぁ!? 何馬鹿なことを言ってんのよ! あたしは
「そうなの? でもあなた、私がこの部屋に来た時に仲間から処刑されそうだったみたいだけど……?」
「っ!!」
チルッチの手が震え、私から目を逸らしました。
「私の目には、あなたが死を受け入れていたようには見えなかった」
「……さい」
「だから、私が治療するときに拒絶しなかった」
「……るさい」
「開放状態を治すと言った時も、本当はどこかで期待していたから『できるものならやってみろ』って言い方に――」
「……っるさいって言ってんのよ!!」
叫ぶものの、攻撃はなし、と……
「ええ、そうよ! あのまま終わるなんてクソ食らえだわ! 治るわけないって思ってたのに突然現れて、あっというまにあたしを治療して……あんた、なんなのよ……あたしに、どうしろって言うのよ……」
震える手で隊首羽織を掴み、声を震わせながら下を向いています。
俯いたままなので表情は読み取れませんが、おそらく……
彼女が顔を上げたのは、たっぷり数分してからでした。
「あーもう、やめやめ。考えるだけ無駄だわ。あたしはあの
「ええ、それで良いわよ」
彼女のアイラインが少しだけ滲んでいたのは、見なかったことにしておきましょう。
「んじゃ、着いて来なさい。こっちよ」
「外に出るの?」
「この先に出てからの方が、あんたのお仲間との合流は楽なのよ」
彼女の先導に従い、この回廊を抜けた先まで辿り着きました。
「ここからなら、霊圧を感じ取って合流できるでしょ? ああ、ここって空があるようにみえるけれどアレは……って、ねえちょっと、聞いてる?」
「……え、何?」
「あなた一体どうしたのよ? 外に出るなり、明後日の方向をじーっと見つめちゃってさ」
明後日の方向……かぁ……
「そっちの方向に、あんたのお仲間は多分いないと思うわよ? そっちは
「そう」
返事こそしたものの、それが生返事なのは自分でもわかりました。
この先に、
そして、この霊圧……でも、チルッチはこの霊圧に気付いていない。今まで確認された霊圧のパターンでもないし、それにこの数……今の時間だったらまだ
賭ける可能性は十分にある!!
「ちょっと
「……見つけた」
「は……? 何言って――」
「ごめんなさいチルッチ、ちょっと用事が出来たから私は行くわね」
そう告げると、返事も待たずに私は駆け出しました。
「――ちょ、待って……おい――か――ない――!!」
この霊圧の強さ! それに周りにいるのは多分
チルッチに間に合ったのは、きっとこのためだったんだわ!!
上機嫌を隠そうともせず、砂漠を疾走し続けます。
待っててね!
すぐに行くから!!
●チルッチのお持ち帰りまでに間に合うの?
拙作中のルドボーンの動きとしては
・ドルドーニを回収する
(その後、一護たちがバラバラになった(ここで時間ロス))
・ガンテンバインが負けたので回収しに行った。
だがチャド&イヅル組がいるので、ちょっと立ち往生。
(戦闘に巻き込まれてるし、あと可能ならチャドとイヅルも回収したいと悩んでロス)
という具合で時間を浪費しています。
その後のタイミングで、石田がチルッチを倒しています。
順番的には一番最後ですね。
(ちゃんと222話で「結構戻されている」と書いているので、時間が掛かってます)
順番が後回しにされたから、後から来ても間に合った。というわけです。
(石田対チルッチがカットしてるので、分かりにくいですね。
藍俚が倒して治す、でも良かったかもしれません)
●移管
基本的な意味は「管理・管轄を他に移す」こと。
本文中の移管は金融関係なので「借金の返済が滞った(期日までに入金されなかった)ので、債権の管理が"コゲつき専門の回収担当"に移されたこと」になる。