お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第236話 再戦合意

「がっ……はっ……ぐ、ううぅ……」

「よう、グリムジョー……まだ、生きてっか?」

 

 倒れ伏し、砂と自ら流した鮮血とが混ざり合った泥に塗れながらも、グリムジョーの瞳は死んでいなかった。

 天沼矛を杖代わりによろよろと近づいて様子を見れば、吐血しつつも鋭い目つきで海燕のことを睨み上げる。

 

「俺が、負けるわけがねえ……俺は、志波……てめえを倒して、黒崎とケリを……」

「……驚いたな。まだ噛み付いて来んのかよ……」

「あたり、前だ……その妙な卍解を……がはぁっ!!」

「グリムジョー!!」

 

 だが、どれだけ不屈の精神を持っていたとしても、肉体的には限界だった。

 大ダメージの影響で開放状態の維持は既に不可能になっており、目に見えて弱っている。にもかかわらず無理矢理立ち上がろうとしたことで肉体はさらに傷つき、血が溢れ出した。

 

「動くんじゃねえよ! あー……ったく。ほら、コレ使え」

 

 ガリガリと頭を掻きながら、自分でも何をやっているのだろうと思いつつも、海燕は懐から薬を取り出すとグリムジョーへ放り投げる。

 

「傷薬だ。そっちは誰にでもある程度は効果があるヤツだから、多分破面(アランカル)のお前でも大丈夫だろ……それこそ、俺が無理に回道使うよりかはよっぽどな」

「薬、だと……」

 

 眼前に降ってきた薬の容器を睨むと、グリムジョーは吼えた。

 

「志波ァ! 俺に、情けでも掛けたつもりか!?」

「はぁ!? 知らねえな! 俺は持ってきていた傷薬を落っことして無くしちまっただけだ! それがいつの間にかどっかの誰かに拾われて、どっかの誰かの怪我を治しちまったとしても不可抗力ってやつだろうが!!」

 

 一方的なことを言った後に「けっ」と悪態を吐くと、さらに海燕は背中を向ける。

 互いの関係上、表立って助力するのは何かと外聞が悪い。ならばこういった"言い訳"の一つでもあれば、幾らかでも緩和されるだろう。

 ついでに「後ろを向いて見ていなければ、相手の性格から考えても手を伸ばしやすいだろう」という海燕なりの配慮でもある。

 

「……おい志波、一つだけ聞かせろ」

「なんだ……?」

 

 後ろを向き視線を切っているため、海燕にはグリムジョーが薬を手に取っているかはわからない。

 それでもグリムジョーの方から話を振ってきたことを意外だなと思いつつ、海燕は話を続ける。

 

「最後の……俺の豹王の爪(デスガロン)を放った……あれは……」

「ああ……! ありゃ、隊長の斬魄刀の見よう見まねだ。お前の技の霊圧を受け止めて、跳ね返した。一応、多少なりとも威力の増幅やタイミングをズラしたりはしたんだけどよ……やっぱ隊長みてえに上手くはいかねえな」

「見よう、見まね……だと!?」

「ああ。だからお前のその怪我は、お前自身が"これだけ強え"って証でもあんだよ……あの王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)といい豹王の爪(デスガロン)といい、ホント死ぬかと思ったぜ……」

 

 浮竹の始解、双魚理を頭の中で思い描く。

 ついでに何故か、先日の斬魄刀実体化事件にて生まれた双子の少年に挟まれて満面の笑みを浮かべている浮竹のことも思い出しながら。

 

「……んで、どうすんだグリムジョー?」

「なにがだ……」

「一応、言い訳は出来ちまったぞ? ――卍解が出来るなんて知らなかった! だから今の戦いは無効だ! ――って具合に……」

「見くびんな!! 殺し合いで、奥の手の一つや二つ、出てくんのは当然のことだろうが!」

 

 砂に何か硬い物が叩き付けられたような、そんな音がした。

 後ろを向いている海燕からでは見えないが、おそらくはそれが激昂して拳を叩き付けたのだろうことは推測できた。

 

「……だからだ」

「あん?」

「今回だけは、引いておいてやる。てめえの甘さ、存分に利用させてもらう! 志波、次こそてめえを殺す!!」

「おーよ、いつでも相手になってやんぜ! 俺の目の黒いうちは、一護の相手なんざ絶対(ぜってぇ)させねえからな!!」

 

 

 

 

 

 

「海燕さ~ん!!」

「いいっ! この声……!!」

 

 そんな「素直になれない男同士の意地の張り合い」のようなグリムジョーとの会話も一段落したところで、遠くから声が聞こえてきた。

 覚えのあるその声色に、海燕は軽く肝を冷やす。

 

「織姫ちゃん!? まだいたのかよ……とっとと逃げちまえって言っただろうが……」

「だ、だけど……やっぱり海燕さんを置いて行くなんて、私できませんよぉ……」

「ですが、井上が下手に移動しなかったおかげで我々が合流しやすかったのも事実です! なので、あまり怒らないであげてください……」

 

 近くまでやってきた織姫の言葉に海燕が思わず嘆息すれば、ルキアが助け船を出す。

 

「いや、朽木……お前も、織姫ちゃん担いで逃げて良かったんだぞ? 虚圏(ウェコムンド)に置いておくよりかはずっと安全だろうに……」

「すまぬな、志波副隊長」

「いやいや! 朽木隊長に言ったわけじゃなくてだな……」

 

 朽木(ルキア)へ言ったつもりが朽木(白哉)が反応し、この場での会話のややこしさに海燕は軽く頭を抱える。

 

 二人の激戦も終わり、周囲は落ち着きを取り戻した。

 となれば、近くにいた織姫が海燕のところまで来るのは当然のことだった。

 

 そして、別れるまで海燕と共に行動していたルキアが近くにいたことも。ルキアを心配して真っ先に向かった白哉が近くにいたことも。

 戦闘終了の気配を察知した二人が、海燕の身を案じてやってくることも。

 全く以て、当然のことだった。

 

 そんなこんなで現在、この場は虚圏(ウェコムンド)全土でもそこそこの盛り上がりを見せていた。

 

「ところで志波副隊長、この男は……」

「こ、此奴は……!!」

「ああ……朽木は現世で顔を合わせてたよな? 十刃(エスパーダ)のグリムジョーだ」

 

 未だ起き上がれてはいないものの、それでも視線が集中するのは鬱陶しいのだろう。グリムジョーはルキアたちをにらみ返していた。

 

「その、コイツとは色々とあってな……出来れば見なかったことにして貰えねえか? 死神の言うことじゃねえっては、わかってんだけどよ……頼む! 朽木隊長!!」

「……私は何も見ておらぬ」

「たはは、すまねえ……」

 

 先ほど海燕がグリムジョーに行ったのと同じ理由で、白哉はグリムジョーに背中を向けて視線を切る。

 

「……そういえば志波副隊長。先ほどまでは気付かなかったのだが、その斬魄刀は……」

「ああ、捩花だ。ようやく取り戻したぜ!」

「え……あ、あああっ!」

 

 そして、下手な話題転換とばかりに海燕の腰に目を向けると、さも今気付きましたとばかりに二振りの斬魄刀を注視していた。

 ただ、白哉の言葉にルキアが本気で今気付いたとしか思えない反応を見せたのだけは、計算外だったようだ。

 白哉ばかりか海燕までもが軽く頬を掻く。

 

「あー……朽木は覚えてねえか? ほら、四十年くらい前だよ。都が危なかった時に、俺が斬魄刀をなくしただろ?」

「……おおっ! そういえば確かに!!」

「ルキア……仮にも自らが所属する部隊の副隊長と三席の大事件だったのだぞ? 忘れるなど……」

「いっ、いえ兄様! ただあの後、海燕殿は都殿の斬魄刀を受け継いでいたのでつい……」

「朽木さん! あのねあのね、海燕さん凄かったんだよ! 二本の斬魄刀で、こうビシッ! バシッ! シュゴオオオオッ! って感じで――」

「う、うむ……うむ……?」

 

 そこへ織姫が乱入してきて、事態はさらに混迷を極めていた。

 




●(原作でのこの辺の)グリムジョー
①ベリたんに負ける
②ノイトラに横からぶっ飛ばされる

(この間出番とか描写無し)

③2年後に再登場

なんですよね。
もう少しこう、アフターケアと言うか、その……
(そう思ったら1話使っていました)


次、ようやく湯川殿でござるよ
(;´Д`)
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