お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第246話 藍染の宣戦布告

 ――ここまで十刃(エスパーダ)を陥落させた君たちに敬意を表し、先んじて伝えよう

 

 この声、藍染ですね。

 ということはこれから、藍染たちが現世に向かう訳か。

 

 チラッと周囲を見れば、ハリベルたちにもこの声は届いているみたいですね。神妙な顔つきをしていることから、声に集中しているみたいです。

 

 ……十刃(エスパーダ)、予定よりも一人多く減ってるけれど大丈夫なのかしら? 本当ならハリベルってここで負ける筈じゃなかったはずよね? 私の記憶だと彼女たちは現世に行くはずだけど、今のところ動きも音沙汰もないし……

 

『やってしまった張本人が今更それを気にするでござるか!?』

 

 藍染が取り返しに来るとか、そういう気配も今のところ無いみたい。

 天蓋の下で解放を禁じる――って枷を付けていた以上、藍染としても上位四人は別格扱いなんでしょうし。

 だったら取り返しに来ても良いんじゃないの?

 

『(一応第0十刃(セロ・エスパーダ)もいる関係上、上位()人と呼ぶのが正しいのかも知れませぬな……藍俚(あいり)殿はすっかり忘れているようでござるが……)』

 

 そんな疑問を抱きながらも、頭の中では天挺空羅の声が響いたままです。

 織姫さんを餌にして、私たちを計画通りにまんまとおびき寄せて、その結果は四人の隊長を含む主戦力を虚圏(ウェコムンド)へ幽閉することに成功した。これは誇るべき成果だ――そんな風に得意げに言っています。

 

 と同時に、私たちが通ってきた黒腔(ガルガンダ)が封鎖されました。

 

「……え?」

 

 ちょっとまって藍染! それで大丈夫なの!? 一応こっちにはハリベルとチルッチが協力してくれているのよ!?

 私が彼女たちに「お願い、道を作って?」って頼んだらどうするつもりよ!?

 

 ――それともう一つだ。ハリベル、聞こえているのだろう?

 

「あ、藍染様!!」

 

 ――まさか第3(トレス)の君までもが敗れるとは思わなかった……いや、ただ敗れるどころか、命を庇われ軍門に降る程に愚かとは思わなかった。

 

「違います! 確かに私は敗れました! ですが決して……決して!!」

 

 ――どうやら君の力は、私の下で戦うには足らなかったようだ。実に期待外れだったよ。

 

「あっ! あああああぁぁっ!!」

 

 天挺空羅で声を届けている以上、この通信は一方通行。ハリベルの言葉が藍染に届くことはありません……いや、多分だけど別の手段でここも監視していそう。

 となれば、聞こえてはいるけれども藍染の耳には一切届いていないんでしょうね。聞く耳持たないを地で行ってるわ。

 それにしても、そんな言い方はないわよね! ハリベルも頑張ったわよ!!

 

 ……そういえばあの戦い、従属官(フラシオン)たちも含めて形式的には二連戦だったわよね?

 

『その通りでござるが? あ、アヨン殿を入れれば三連戦と言えなくもないでござるよ!!』

 

 まあ、ね……でもさ、二連? 三連戦だったはずだったのに、気分的にはその三倍くらい疲れてるのよね……なんでかしら? なんと言うかこう、同じ戦いを二回繰り返したみたいで……

 

『不思議なこともあるものでござるな……』

 

 ねー、不思議よねー

 

 あと今更ではありますが。

 戦いも終わったのでハリベルの姿はとっくに開放状態から戻っています。だからあの"露出度控えめだけど下乳がむしろ目立ってエッチ"な格好になっていますよ。

 

『脇のスリットから覗く太腿も忘れてはいけませぬぞ!!』

 

 はいはい。

 とにかく解放前の格好に戻っていて、元に戻った影響からか水中に落ちたのに服はすっかり乾いています。精々髪がしっとりしているくらいですね。

 

 ちなみに私は未だに濡れ鼠です。

 隊首羽織と死覇装とサラシと褌が水を吸って肌に張り付いて、気持ち悪い……髪もすっかりぺたーっとしちゃってるし……

 

 ――黒腔(ガルガンダ)には少し細工をしておいた。君たちは好きなだけ死神へと協力するがいい。だが、現世へと通じる門が開くことは決してない。

 

 あらら、残念。先手を打たれましたか。

 そんな風に個人を識別して鍵を掛ける、みたいなことも出来るんですね。

 ……藍染なら可能か。

 

 でもこのままだと、スタークとバラガン……だっけ? エスパーダの最上位の二人を引き連れて現世に行くんでしょ? 戦力足りる?

 あ、でも老化の能力みたいなのがとってもとっても強くて厄介だった気がするわ。あの能力だったら多少の数の差を吹き飛ばせそうって私の記憶が……

 

 じーっ……

 

『なんでござるか藍俚(あいり)殿? 拙者をそんなにガン見されると……こ、興奮して赤く染まってしまうでござるよ……!!』

 

 なんだか「お前が行けば一瞬で倒せるから行ってこい」って言われた気がしたわ。

 なんでかしらね? 

 

 そうこうしている間にも藍染の話は進みます。

 

 虚圏(ウェコムンド)には隊長が四人もいるし、しかも更木剣八までいる。尸魂界(ソウルソサエティ)の戦力は半減以下に落ち込んだと断言しよう。

 しかも湯川藍俚(あいり)までもを封じ込められたのは僥倖だ。おかげで継戦能力も半分以下となった。

 容易い、実に容易い……って何それ! 何で私の名前まで出したの!? 私がいなくても卯ノ花隊長がいるわよ!? 勇音だっているし、補給やら救護やらどんどんやるわよ!?

 

藍俚(あいり)殿? 素手で藍染殿とやりあったのをお忘れですか? 欠損部位を再生させたり、ここに来てからもチルッチ殿を完治させているのですが……? 敵から見れば真っ先に潰すべき相手でござるよ』

 

 なるほど、一理あるわね。

 

 ――君たちは全てが終わった後でゆっくりとお相手しよう。そして裏切り者の破面(アランカル)たち、君たちも同じだ。面倒だが、全てが終わった後で処分してあげよう……死神たちのついでにね。

 

「そん、な……ッ!!」

 

 ハリベルが膝から崩れ落ちました。

 従属官(フラシオン)たちも、顔が真っ青になっています。

 ただチルッチだけは、割と平然としていました。3桁だったりあの処刑部隊――だっけ? に仕留められそうになっていたことで「始末されても仕方ない」と覚悟が決まっていたのかもしれませんね。

 

「……たく、藍染め。また書類仕事を山ほど押しつけてやろうかしら……ハリベル、気にしないで」

「湯川……だが……」

「あなたはきちんと自分の務めを果たした。負けても譲歩は最低限だから、むしろ誇るべきだわ。それにほら、さっき私の名前も出てきたでしょう? そんな厄介な相手を抑えたんだから、もっと自信を持って!」

「そ、そうか……?」

「そうそう! それに繰り返しになるけれど、死神側だって藍染対策は十分にしてあるの!! もしも藍染がやって来たって、私が返り討ちにしてみせるから!!」

 

 なんでこんな風に元気づけてるのでしょうか?

 とにかくハリベルは多少なりとも持ち直したらしく、今は従属官(フラシオン)たちを元気づけています。

 

「とりあえず、藍染の企みを出来るところから壊してやりましょう」

「何それ?」

 

 懐から伝令神機を取り出せば、チルッチが興味深そうに覗き込んできました。

 背丈の差があるので、手元を覗き込まれていますね。

 

 覚えていますか? 浦原に頼んで作って貰った、虚圏(ウェコムンド)と通信可能――のはず――な伝令神機です。

 ほら、ここに来る少しだけ前に届けて貰ったアレですよ。

 

「知らない? 伝令神機って言って、死神が連絡を取る時の物なんだけれど。これで連絡が取れないかやってみるわ」

「あの藍染様よ? そんなの通るわけないでしょ」

「まあ、物は試しってことで」

 

 実際「テストはしていない」って話だったからね。

 さてさて、どうなることかしら……? 上手く連絡が付けば儲けもの、このまま浦原に連絡を取って黒腔(ガルガンダ)を開いて貰えれば……

 

「もしもし、私です。湯川です。聞こえますか?」

『あー……ザザッ、ザザザザー……ゆか……ザザッ……これ、駄……ザザッ……妨、害……ザザザザー……』

 

 ――プツン。

 と、そんな音を立てて通信が切れてしまいました。

 

「何コレ? 雑音ばっかりじゃない。壊れてるんじゃないの?」

「ううん、多分だけど通信出来ないように妨害されてるわね」

 

 一応最低限繋がりはしたんで、相手も認識はしたと思うんだけど……

 

 でもコッチの状況に気付いて、新しく通路を開けて、連絡を取って、そこに移動する。なんて連携が取れるとは思えないんですよね……

 しかも現世側にはこれから藍染が行くわけですから、そんな暇が果たしてあるかどうかも不明です。

 

 となると次に出来そうなのは――

 

「何よ? もしかしてあたしに黒腔(ガルガンダ)を開けって言ってる? やってもいいけれど、どこに出るか保証は出来ないわよ?」

「それは最後の手段にしておきましょう。それよりも今は、先にやるべき事があるから」

「やるべきことぉ? 何よそれ」

 

 チルッチの顔を見ているのに気付かれたようです。

 でもまさか、いきなりそんなことは頼まないわよ。物事には順番って物があるの。

 

「まずは、みんなにチルッチたちを紹介しないとね」

「紹介!? あたしたちを!? ……あんた、やっぱり馬鹿なんじゃないの? それってつまり、死神に紹介するってことでしょ!?」

「今は味方、もとい中立関係なんだからそれでいいでしょ? ハリベルたちも、それでいいわよね!?」

 

 尋ねたところ、無言で小さく頷いてくれました。

 全面同意はしていないけれど、今はやむなしと判断したみたい。

 

「それじゃあまずは、バラバラになっちゃったみんなを集め直しましょうか」

 

 いわゆる、部隊を再編成する。みたいな感じですね。

 一応みんなの居場所は霊圧を探ってある程度は突き止めていますから。

 

 そうして織姫さんを助けて。

 あとネリエル……だっけ? あの小さい子が大人になるタイプの破面(アランカル)! あの子たちとは是非とも接触を取りたいのよね!!

 

 

 

 

 …………あっ! ちょっと待って!! 私まだびしょ濡れのまま!!

 

 伝令神機、完全防水だったのね。知らなかった……技術が高いわぁ……

 




●同じ戦いを二回繰り返したみたい
多分、もう二度とやりません。

●藍染
よっしゃああっ! 一番狂ってるのを二人とも閉じ込めた!!
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