「そうそう、ネルちゃんにもお礼を言わないと」
「ふぇ……? ネルにお礼スか……?」
桃とネルちゃん。
二人の感情がようやく普通になったときを見計らって、思い出したように口にします。
「ええそうよ。ネルちゃん、桃のことを守ってくれていたんでしょう? ありがとうね。隊長として、お礼を言わせて貰うわ」
「ふぇっ!? た、
「そのくらい、ネルちゃんの行動を見ていたらわかるわよ。私がここに来た時だって、ネルちゃんは桃を守ろうとしてくれたでしょう? だから、お礼を言わせて貰うわ」
「そ、そんなぁ……照れるっスよ……」
恥ずかしそうに、けれども満更でもなさそうに身体をくねくねさせています。
かわいい。
可愛いんだけれど、確かこの子って成長するのよね?
成長しておっぱい大きくなって、一護を守ってたような、そんな覚えがあるわ。かなりうろ覚えだけど、でもあの明らかに際どい格好だけは覚えてる。
『正確には今が仮の姿でござるよ』
元?
……ああ、なるほどね。この子、なんだか霊圧が漏れ出てるわ。
多分、それが原因よね。だったら――
「話は済んだ?」
「ほげぇぇっ!? な、なんなんスかあんたらは!!」
「ッ! ネルちゃん、下がって!!」
どうしようかと考えていたところ、チルッチたちが追い付いてきました。
突然現れた五人の
あら? それにしても。
短い距離だったけれど、到着までに随分時間が掛かったわね? まあ、以前も言ったけれど目に見える程度の距離だったから、特別急がなかったのかしら?
息切れとかもしていないから、きっとそうなんでしょうね。
……あるいは、私と桃の会話で邪魔が入らないように気を遣ってくれたとか?
『やだ……チルッチ殿ったらイイ女でござるな……拙者の中の射干玉ちゃんポイントがスリーナインでジャックポットでござるよ!!』
スリーセブンじゃない辺り、微妙にケチってるわね。
『ではスリーストライクで』
バッターアウトになってる!? え、何!? 射干玉ってチルッチのこと嫌いなの? ……いや、そんなことは絶対ないわよね。
「ああ、二人とも大丈夫よ。この人たちは
「あ、
「それってどういうことっスか!! そんなのありえねえっスよ!!」
ネルちゃん……? それをあなたが言うのはどうなのかしら……?
「それをアンタが言うのはどうなのよ!!」
あ、チルッチと被ったわ。
「……あ、そういえばそっスね」
「そっか……ネルちゃんみたいな
「ちなみにだけど、あたしは3桁落ちの元
「「えっ、ええええええぇぇぇっ!?!?」」
明らかに二人の反応を見て愉しむために言ったでしょ、今の。
ニヤニヤとイタズラっぽい顔で、わざと誤解させるような言い回しだもの。
でもこの二人には効果抜群だったみたいね。
「せ、先生……!?
「二人とも大丈夫よ。さっきも言ったけれど、色々あって今は協力して貰っているの。だからそんなに緊張しないで」
「け、けけけけけんども! まっさか
二人のハリベルを見る目が尋常じゃないんだけど……
ああ、そういえば。ウルキオラって
『雛森殿の
「……湯川も言っていたが、そう緊張しなくて構わない」
今まで沈黙を守っていたハリベルが二人に向けて――いえ、違うわね。桃はオマケで、ネルちゃんに向けて語りかけました。
「先ほどの藍染様の言葉が聞こえていただろう? 現
「あっ! ちょっとハリベル! あんた口数が少ないと思ってたらそういうこと言うタイプだったわけ!? だったらあたしにも考えがあるわよ!?」
「お前が元なのは事実だろうが……」
「何よ! 文句があるんだったらあんたも一度くらい
「そんなもんやるかッ! あたしたちはハリベル様を慕っているんだよ!!」
後ろ、いつ見ても賑やかそうね……
でもさっきのハリベルの言葉、ちょっとだけ不正解なのよね。
天挺空羅で伝えたから、ネルちゃんにまで会話を飛ばしたかまでは分からないのよ。
ただ桃が一緒にいたことと、ハリベルの言葉に特に反応しなかったことから、桃を経由してネルちゃんに伝わっているでしょうね。
「ところで小さな
「ネルにスか? ……けんどもネルは、たいスた事は
「お前は、元
「「「「……ッ!?」」」」
ハリベルの爆弾発言が飛び出しました。
その言葉にチルッチたち
平静なのはハリベルと私くらいですね。
……あ、いけない! 私が無反応なのっておかしいわよね。不審に思われないかしら?
「いやいや、このチビ助が元
「かつて、私がまだ
ハリベルはチルッチのことも知っていたみたいだし、知っててもおかしくないわ。
……でも、この小さな子と結びつけるのって厳しくない? むしろ良く気付いたわね。
「いやいやネルはネルっスよ? 名前はちっとだけ似てるスが、ネリエルなんて名前じゃねっスし。そんな記憶もねっス」
「そうか? だがお前を見ていた時に少しだけ、かつて調べ上げたネリエルの印象と重なったのだ。それともう一つ」
あ、視線が私に向いたわ。
なんだか嫌な予感しかしない。
「私が元
「……はぁ」
ああ、やっぱりそうなのね。ちゃんと見てるのねハリベルってば。
となると、下手な隠し事はできないわよね。
小さく嘆息しつつ頷いてから、私は考えを口にします。
「ええ、そうよ。少し見ただけだけど、ネルちゃんは霊圧がちょっとおかしいの。だから、何かあったんじゃないかって思っていただけ。そういう心構えがあったから、驚かなかっただけよ」
「ええっ! そ、そうなんですか……?」
「桃が気付かなくても無理ないわね。長く時間が経って、不自然な状態が自然な状態になってるから、気付きにくいのよ。私だってチルッチたちの経験が無かったら見過ごしてたかもしれないくらいだから」
自分が気付けなかったことに少しだけ責任を感じているみたいですが……桃、本当に気にしちゃ駄目よ?
それとここまで来たら、とことんやっちゃいましょうか。
「だからネルちゃん。少しだけ、身体を調べさせて貰ってもいいかしら?」
「……ネル、どっかおかしいんスか? だ、だったら……すんげぇ怖いけんども、お願いスるっス!!」
跪いて視線を合わせながら優しく尋ねれば、ネルちゃんは不承不承頷いてくれました。
さて許可を貰ったので、検査開始です。
といっても、どこが悪いかなんて見ていれば分かるんですけどね。
ズバリ頭です。
『それだと、頭が悪いって言ってみるみたいでござるな』
勿論、そんなこと言ってないわよ? 頭というか、被ってる仮面が傷を負ってて、それが原因ってこと。
だからこの仮面をもう少し詳しく調べれば――
「あっ、あっ、あっ! やめてけれ、やめてくんろ! ネルってば初めてなんスから、もっと優スくスて欲しいっス!!」
――なんでちょっとだけ色っぽい声を上げてるのかしら? すっごく気が散るんだけど!?
「……ああ、あったあった。この穴が原因ね」
「穴、っスか? そりゃあネルは
「ネルちゃん! そんなこと言っちゃ駄目!!」
『ギリギリでござるよ! 発言がギリギリでござる!! そんな言葉どこから覚えたでござるか!!』
桃も即座に反応して諫めてくれたわ。
よかった、本当に良かった……このままアウトな発言されたらどうしようかと思ったわ。
ところで……ハリベルまで含めてちょっとだけ頬を染めているってことは、全員理解しているってことよねコレ……?
「ゴホンゴホン! えっと、話を戻すわよ。ネルちゃんの頭の仮面なんだけれど、穴が空いている……というよりも、誰かに穴を開けられ――もとい、傷を負わされたんでしょうね」
なんだかさっきの発言が気になってしまって、思わず言い直してしまいました。
『ノイトラ殿に穴を開けられるネリエル殿でござるか……間違ってはいないでござるな! 思いっきり誤解はされるでござるが!!』
「それでこの傷から霊圧が流れ出ていて、それが原因で身体が収縮しているみたい。私もこんな現象は初めてだから、確実なことは言えないけれど」
「……えーと……てことはネル、穴が開いた風船みたいなもんスか?」
「んー、そういう認識で問題ないわ。ただ風船に穴が開くと割れるみたいに、普通じゃまずあり得ないの。よっぽど上手く、それこそ奇跡みたいな確率で傷ができたんでしょうね」
普通ならそのまま死ぬもの。
それが身体が小さくなるなんて不可思議な現象が起こるとか、どんな確率なのかしら。
「それでネルちゃん……頭の傷なんだけど、どうする? 塞ぐ?」
「ふ、塞ぐとどうなるんスか……!?」
「おそらくだけど、風船はまた膨らんで元の姿に戻ると思うわ。その元の姿が、ハリベルが言っていたみたいにネリエルなのか? それともまた別の誰かなのかまでは分からないけれど」
「……つーことは、ひょっとスたらそっちのハリベル様みてぇな、おっぱいボインボインのエッチなお姉さんになれるかもしれねえってことっスよね!?」
「え、ええ……もしかしたら、だけど……」
「…………」
あ、ハリベルが無言でネルちゃんを睨んでるわ。
言ってることは一切合切間違ってないんだけれど、言い方ってあるわよね。
『そのボインボインなお姉さんに抱きつかれるとか、一護殿も無茶苦茶羨ましいでござるな!!』
「……でへへ」
「ネ、ネルちゃん……?」
『蕩けきった顔をしてるでござるな。一体どんな姿を想像したのやらでござりますよ』
……あれ? ちょっと待って。
なんでネルちゃん、ネリエルの姿じゃなくてハリベルを引き合いに出したのかしら……? だって確か、ネリエルの姿に戻って一護を助けたはずで、この場には桃もいる。
だったら桃から聞いていてもおかしくないだろうから、引き合いに出すのも自分の姿を……まさか、ひょっとして……
「ねえ、桃」
「はい先生、どうかしましたか?」
「今更なんだけれど……あなたたちに何があったのか、簡単に教えて貰えるかしら?」
「ええ構いませんよ。えっとですね、まず
……ふむふむ。
「――というわけです」
「そう、ありがとうね……」
ネリエルの姿に戻ってなかったの!? だったらこの反応も納得だわ。突然やってきて「お前には本当の姿がある」とか言われても、混乱するわよね。
「えっと……お楽しみの所申し訳ないんだけど、ひょっとすると元の姿に戻ると今の記憶が消えるかもしれないわよ?」
「ふぇっ!? そ、そうなんすか……!?」
「あくまで仮定だけど、元の姿とか記憶の素振りって今までなかったみたいだから。別の人格になる――とでもいえば良いのかしら?」
「う、うー……そうなるとネルは、ネルは……」
凄く悩み始めました。
「悩むんだったら、今すぐに決断をしなくてもいいわよ?」
「ホントっスか!?」
「ええ、本当よ。治すのはすぐにでも出来るから、だから黒崎君やご兄弟のペッシェとドンドチャッカとも話し合ってから決めるべきだと思うの」
「……ああっ! そっスね。二人ならひょっとスて、何か
この反応って、まさか二人の事を忘れていたの?
「そういうわけだからハリベル、ごめんね。少し保留になったみたい」
「気にするな……というか、話を聞いていると厄介な傷のように聞こえたのだが、本当に治せるのか?」
「ええ勿論」
「そ、そうなのか……」
伊達に長年死神を治療していませんし、
やろうと思えば五分か十分もあれば治療可能です。
さて、ちょっと一悶着ありましたけれど。
ようやく桃を回収できました。さて次は――
「この霊圧……!」
「ああ、藍染様が仰っていただろう? 第五の塔の方角だ」
霊圧探知をすれば、よく知った霊圧たちが全員向かっている方角があります。ついでにその延長線上では、誰かが戦っている様な気配も感じられました。
そして私の言葉を補うように、ハリベルが付け加えてくれました。
これって確か、一護とウルキオラの戦いよね……? 間違いないわよね?
桃の話を聞いた限りだと、浮竹隊長もいるみたいだけど。
「ほら、さっさと行くわよ
「え……チルッチ?」
「どうせアンタのことだから、行くに決まってるんでしょう? もう慣れたわよ。アンタが行かないんなら、先に行くわよ?」
ひょっとして、背中を押してくれたんでしょうか?
一方的にそう告げるとチルッチはさっさと先に行ってしまい、ハリベルたちもそれに続きました。
「……あっ! ちょっ、ちょっと待って!」
待って待って! あなたたちだけで先に行くと、他の死神たちと鉢合わせちゃうから! そうなったら最悪、戦いになるから! 更木副隊長が嬉々として斬り合いを挑んでくるから!!
私が一緒に言って止めないとややこしい事になりかねないじゃない!!
「ああもうっ! ほら桃、それとネルちゃんも。私が背負って連れて行くから! 一緒に行くわよ?」
「え、あ……先生……!?」
「ふえ……お、おおっ!? 高いっス! ドンドチャッカの頭に登った時みたいっスよ!」
二人を無理矢理担ぎ上げると、慌てて後を追いました。
そういえば、現世の方もきっと戦いが始まってるのか……
……大丈夫……よね?
(こっそり意趣返しで置いていくチルッチ)
●今回のタイトル。
我ながら酷いですね。
(思いついて悪乗りしてしまった私が一番悪いんですが……)
でも原作で「のどちんこ」とか「ドMだから」とか言うなら、このくらい言わせてもバチは当たらないんじゃないかと思ったり思わなかったりします。
●ネリエル
いつでも元の姿に戻れるフラグは立てておきました。
(ノイトラもザエルアポロもいないので問題は無いはずですが、ネルの気持ちを慮るとワンテンポ挟むかなと思ったので)
そういえばネリエルって「作者が一番の巨乳と認識して描いていた」みたいですね。
(十刃としては3位止まりだったけど、おっぱいは作中ナンバー1)