お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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ここらで少し、現世側を



第250話 暴れろ、龍紋鬼灯丸

 虚圏(ウェコムンド)にて死神たちが戦いを続けているその一方で。

 現世でもまた、激戦が繰り広げられていた。

 第2(セグンタ)十刃(エスパーダ)バラガン・ルイゼンバーンの従属官(フラシオン)四名が、東西南北の四方それぞれに設置された転界結柱を破壊せんと目論む一方で。

 総隊長山本元柳斎が配備した腕利きの死神たちが、それを防がんと奮戦していた。

 

 

 

「おう、来やがったな新手が。デケェな……随分と……」

 

 転界結柱護衛の任を命じられた内の一人。

 斑目一角は、眼前に立つ破面(アランカル)――チーノン・ポウの姿を眺めながら思わず呟いていた。

 なにしろ上背だけで一角より倍は高いのだ。

 首が痛くなるほどまで見上げる必要がある相手と戦うのは、(ホロウ)大虚(メノス・グランデ)を除けば数える程だった。

 纏う衣装の下からは巨体にそぐわぬ筋肉量も感じ取れる。

 なにより第2(セグンタ)十刃(エスパーダ)従属官(フラシオン)を務めているというだけでも、かなりの実力者と見て間違いないだろう。

 

 ――ここまでは合格ってところか。

 柱の頂上にて睨み合った後、胸中でそう独白しながら一角は不適な笑みを浮かべる。

 

「見かけ倒しじゃねェことを祈るぜ」

「祈る? 何にダ。貴様ら死神に神などあるのカ?」

「何に、だァ? ヘッ、決まってんだろうが!!」

 

 祈りを捧げる対象についてポウから尋ねられた一角は、肩に担いでいた鬼灯丸を構えながら至極当然のように叫んだ。

 

「テメエにだよ!! がっかりさせんじゃねえぞ!! 精々俺を愉しませてみせろやぁっ!!」

「……そうカ。ならば問題はナイ」

 

 ポウは拳を大きく振りかぶると、勢いよく振り下ろした。

 

「オマエが愉しむより前に、ワタシに殺されるのだカラ」

「ぐっ!! この攻撃……けっ! イイ根性してんじゃねえかよ!!」

 

 拳の一撃を鬼灯丸の柄にて受け止めながら、一角はポウの狙いを看破していた。

 

 ポウが受けた命令を端的に言うならば"柱の破壊"と"邪魔者の排除"である。だが最優先すべきは柱の破壊であり、一角の排除はそのオマケのようなもの。ならばそのどちらをも狙える行動というのは、ある意味では利に叶っている。

 自らの巨大な肉体を活かして柱と一角を同時に破壊せんとした攻撃だったが、その狙いに気付いた一角は攻撃を受け止め、そして吐き捨てる。

 

「この俺をついで扱いなんざ、良い度胸だテメエ!!」

「ホウ……そのくらいは分かるノカ」

 

 訛った喋り方で一角を見下しつつ、ポウはもう片方の腕を同じように振り上げ、そして振り下ろした。

 

「ぐあっ!」

「これでもカ」

 

 転界結柱を破壊されては困るため、振り下ろされた拳を一角は再び槍にて受け止める。

 柄がミシミシと今にも折れそうな悲鳴を上げ、槍から伝わる衝撃は一角の身体に強烈なまでに揺さぶっていく。

 そのまま膝を突き、押し潰されてしまいそうな圧力を文字通り血反吐を吐きつつも、それでも受け止めきってみせた。

 

「ぐおおお……(おめ)ぇんだよ! とっとと退()きやがれ!!」

「ム?」

 

 押しつぶされそうな体勢のまま力任せにポウの二つの拳を弾き飛ばす。

 下からの予想外の一撃にポウの身体がグラつき、柱の上から足を踏み外した。とはいえ霊子を固める事で転がり落ちる事は無いが、それでも退がらされたのは事実だ。

 

「オラアアァァッ!!」

「グ……」

 

 その隙を逃さんと一角もまた中空へと飛びかかり鬼灯丸を突き出すものの、その動きに合わせてポウは無造作に片手を突き出した。

 槍の穂先と手の平とがぶつかり合い、一瞬の拮抗の後に槍が勝った。手の甲までを貫かれた痛みと衝撃にポウは僅かに顔を顰める。

 

「もう一丁!!」

 

 すぐさま槍を引き抜くと、即座に二発目の突きを放つ。

 今度の狙いは相手の膝――巨大な相手だけに、足を破壊してしまえば鈍重な動きしかできなくなるだろうという魂胆からだ。

 

「な……ッ!?」

「少しだけ、イタかたよ禿頭」

 

 穂先が膝を貫かんとする直前、横から伸びた巨大な手が槍を掴み取った。

 慌てて引き剥がそうとするものの、引けども押せども槍はピクリとも動かない。見た目に違わぬ無茶苦茶な握力で握り締められているのだろう、鬼灯丸全体が今にも砕け散りそうな、断末魔のような音が鳴っている。

 

「でモ、少しダケ」

「ぐおおっ!!」

 

 片手で鬼灯丸を握り締めたまま、ポウが勢いよく引っ張った。

 柄を握り締めていた一角は、まるで綱引きの決着が付いた瞬間のように引き寄せられる。ポウから見れば一角が懐へ飛び込んで来たようなものだ。

 飛び込んできた獲物を地面へとたたき落とすように、もう片方の拳を胴体目掛けて放つ。

 引き寄せられている一角に、それを防ぐだけの余力は無かった。

 

「がああああああぁぁっ!!」

「……手、放さないカ」

 

 地面――正確には、転界結柱の天頂部分――へと叩き付けられても、一角は鬼灯丸を手放さなかった。

 歯を食いしばって痛みを堪え、意識を繋ぎ止めながら両腕に力を込める。

 

「だったラ、手放させてヤル!」

「ぐっ……!」

 

 地に伏せた一角目掛けて、ポウが再び拳を振り下ろした。

 その攻撃に反応した一角は慌てて身を捩ると、仰向けになりながら鬼灯丸を突き出してなんとか受け止めて見せる。

 だがその代償は少々大きかった。嫌な音が大きく響く。

 

「なにッ! ……くっ!!」

「逃げタか。マア、いいヨ」

 

 攻撃を受け止めると、即座にゴロゴロと転がりながら一角は距離を取った。

 本来ならば追撃必死の動きであったが、ポウはあえてそれをすることはなかった。追撃の代わりとばかりに、一角の両手に視線を向ける。

 視線の先には、中程から真っ二つに折れた鬼灯丸の姿が映っていた。一角の意思を折るよりも前に、鬼灯丸がポウの攻撃に耐えきれずに折れてしまったようだ。

 

「すまねぇ、鬼灯丸。無茶させちまったな」

 

 それぞれの手で折れた鬼灯丸を握りながら謝罪の言葉を口にすると、一角はゆっくりと立ち上がった。

 

「……なあ、オメエよ。エドラドって名前の破面(アランカル)、知ってるか?」

「エドラド……さて、聞いたことモないネ」

「そいつぁおかしいな? グリムジョーって十刃(エスパーダ)の部下だったヤツぜ」

「グリムジョー……?」

 

 記憶の底から情報を引っ張り出すように、ポウは逡巡する。数秒の後、合点がいったように口を開く。

 

「……ああ、アイツの従属官(フラシオン)カ。それじゃあ知らないわけダ」

十刃(エスパーダ)ってのはオメエらの上司だろ? アイツ呼ばわりはないんじゃねえのか?」

「バラガン様こそが王にして神ダ。それ以外はどうでもいいヨ。それデ? そのナも知らない破面(アランカル)がどうかしたのカ?」

「別にどうもしねえよ。アイツとやり合って勝ったんだが、あの時よりも今の方が苦戦してんだよ。それでどうもな、考えたんだ……」

 

 これ以上を口にするのは心の底から不本意だ――そう言わんばかりに、深い溜息を吐き出した。

 

「どうやらテメエは、アイツよりも強えってわけだ。下手すりゃ負けるかもしれねえ」

 

 続いて折れた鬼灯丸を強く握り締めながら、霊圧を集中させる。

 

「ホントはよ、こんなところで見せるつもりなんざなかったんだよ。隊長の席がまだ二つも空いてっからな。これだけの目があるんじゃ、もう誤魔化せねえだろうし。推薦とかされちまうんだろうな」

「……何ガ言いたイ?」

「けどよ、もうちょっとだけ考えたんだ。ここで負けたら、藍俚(あいり)のヤツに何を言われっか分かったもんじゃねぇ……そう思ったら、無性に腹が立ってきやがった。死ぬよりも我慢ならねえ!」

「……もういいネ」

 

 負けを悟り自暴自棄となったのだろう。

 訳の分からない一人語りを延々と続ける一角の姿をポウはそう判断すると、黙らせるべく再度拳を振り上げる。

 その間に、一角の準備はとっくに完了していた。

 

「卍解! 龍紋鬼灯丸!!」

「ッ!? 卍解、それガ……」

 

 折れていたはずの鬼灯丸が一瞬で繋がり、そして瞬時にその姿を変える。重々しい鉈を手にして構える一角の姿に、ポウは大きく口を開けて――

 

「ぽっ、ぽは……ぽはははははははははははっ!! ガッカリだヨ! 武器の形が変わるだけじゃア、怖くもなんともナイ!!」

 

 ――腹の底から笑った。

 

 とはいえコレは仕方ないことだろう。

 事実、ある程度の実力者であれば卍解しても一角の霊圧が全く増していないことにすぐに気付く。

 そして龍紋鬼灯丸とて、まだまだ相手を畏怖させるような霊圧を放っていない。

 現状だけを考えればポウの言葉通り、ただ武器が物々しくなっただけなのだ。

 卍解は死神の切り札、帰刃(レスレクシオン)と同じ様な物だと認識している破面(アランカル)からすれば、今の一角は精一杯の虚仮威しとしか見えない。

 これらは全て、龍紋鬼灯丸の持つ特性が原因なのだが……

 

「あー、そうかよ。だったらコイツの力、試してみろやぁっ!!」

「ぽ?」

 

 卍解直後は舐められるだろうことは、一角も十分に予測できていた。そのため嘲笑など意にも介さず、自ら突っ込んで行き龍紋鬼灯丸を振るう。

 襲いかかる超重量級の武器に、ポウは鬼灯丸の時と同じく拳を繰り出した。

 

 大鉈と拳とがぶつかり合う。

 鉈は拳に食い込み、片腕を深々と切り裂く。だが拳と激突した衝撃に耐えきれず、鉈もまた粉々に砕け散っていた。

 中央の刃に彫られた龍の紋が赤く染まる。

 

「言うダケのことはあるネ。武器一つを引き換えニ、ワタシの拳を……ぽははははっ!」

「何がおかしいっ!!」

 

 砕けた方とは逆――左手に握る鉈を力強く斬り上げるものの、その攻撃をポウは手の平で受け止めた。

 刃が手の平に食い込んで今にも片手を切断しそうだが、龍紋鬼灯丸の刃はそれ以上動かなかった。ポウが五指にて刃の動きを止めている。

 摘まむ力だけで、左の刃がミシリと音を立てて亀裂が走る。

 

「おかしいに決まってるネ。ワタシの鋼皮(イエロ)を切り裂いたのダケは、立派だたヨ。でモ、弱点だらけダ」

 

 ベキッという鈍い音が響いた。

 指からの圧力に龍紋鬼灯丸が耐えきれず、左の刃が中程から砕けて折れた音だ。刃の破片を地へと叩き付けながらポウは続ける。

 

「こんなに脆い武器デ、何を斬ル? デカくて重いカラ、動きも遅くナル。何ヨリ――」

 

 袖口に仕込んでいた斬魄刀をおもむろに取り出す。

 巨体のポウだが斬魄刀だけは通常の、それこそ死神たちが持っているのと同じサイズだった。本来ならば両手で掴んでもまだ余裕がある長さの筈の柄を片手で握るその光景は、刀ではなく短刀か脇差のようだ。

 

「――気吹(いぶ)け、巨腕鯨(カルデロン)

「……ッ!」

 

 サイズ差に目の錯覚を起こしそうな中、帰刃(レスレクシオン)にて開放状態へとその身を転じさせた。

 元々巨大だった肉体が更に大きく大きく膨れ上がり、瞬く間に数十メートルはあろうかという体躯へと変わる。さすがに転界結柱よりは小さいものの、一角と比較すれば圧倒的な巨体。

 その外見はどこか鯨を連想させる。

 

「でけぇな……」

「フウウウウウ~~~……これで傷モ、治タ。全部無駄ダッタナ」

 

 だるそうな声を上げ、一角を見下ろしながらポウが一歩進む。天井に足が掛かり、その重みで柱がズシンと大きく歪んだ。

 

「コレで終わり……ダヨ!」

「うおおおおっ!!」

 

 三度振り下ろされる拳。

 今度のそれは今までとは大きさも威力も桁違いだ。避ければ柱は間違いなく破壊されるだろうことは火を見るよりも明らかだ。

 残った中央の刃を両手で掲げ、その拳を迎え撃つ。だが防御する気など毛頭ない。むしろ振り下ろされた拳を下から弾き飛ばさんと振り上げた。

 

「グウッ!!」

「おおおおおっ……らあぁぁっ!!」

 

 左右の刃が破壊されたことで、龍紋は全てが深紅に染まっていた。最大限の破壊力を発揮した龍紋鬼灯丸は、ポウの指を吹き飛ばし片手を深々と切り裂く。鋼皮(イエロ)による防御など始めから無かったかのようだ。

 とはいえ一角の方も無事では済まない。開放状態となった破面(アランカル)の拳と正面衝突したのだ。

 一角本人は受け止めた衝撃によるダメージが大きく、元々強度の無い龍紋鬼灯丸に至ってはとうとう中央の刃までもが粉々に砕け散っていた。真っ赤に輝いていた龍紋の破片が散らばり、周囲を血の涙のように染める。

 

「ググググ……まさか、まだこれだけの力があったトハ……でも、もう無理みたいダネ」

 

 潰れた拳をもう片方の手で押さえ、痛みに顔を引き攣らせながらもポウは勝利を確信していた。

 相手の武器である斬魄刀は既に完全に破壊され、死神本人もまた傷だらけだ。バラガンの従属官(フラシオン)の中でも高い戦闘力を持つポウの攻撃を何度も受ければそうなるのも当然のこと。

 後はこの死神を叩き潰し柱を破壊するだけ、そう考えていた。 

 

「あ~あ、ブッ壊しちめえやんの」

 

 だからだろうか、ポウは気付かなかった。

 周囲におびただしい霊圧が広がっているのが。その霊圧は、粉々に破壊されたはずの龍紋鬼灯丸――その欠片一つ一つから放たれ、一角へと集まっていることに。

 

「おかげでよぉ、ここまで見せる羽目になっちまったじゃねえか……俺が隊長にでもなっちまったら、責任取れんのかテメエええええええぇぇぇっ!!」

「ハッ、隊長? 何を言っているのヤラ……斬魄刀の無くなったオマエに何ガ――」

「来い!! 燭陰(しょくいん)!!」

 

 周囲の破片が、まるで意思を持ったかのように一瞬にして一角の手元へと集まった。破片たちはまるでそうなるのが当然のことのように寄り集まると、槍を形作る。

 それは何の変哲も飾り気すらない直槍。無機質とすら呼べるその槍からは、先ほどまで相手にしていた龍紋鬼灯丸と同量――いや、それを軽々と上回るほどの霊圧が感じられた。

 

「――ガ、ガガガ……ッ!? な、なんだそれハッ!?」

「あぁん? 龍紋鬼灯丸に決まってんだろ。さっきまでテメエが壊して楽しそうにはしゃいでたじゃねえか」

「ち、違ウ! あり得ナイ、同じハズナイ!!」

「違わねえよ」

 

 そう呟いた瞬間、一角の姿が消えた。

 

「な……がぐううぅぅっ!!」

 

 どこに消えたのか。

 ポウが感じ取るよりも先に、額に強烈な衝撃が叩き込まれた。あまりにも強烈な一撃はポウの頭を軽々と吹き飛ばして大きく仰け反らせるほど。

 解放して巨大な姿となった自分の、しかも最も高い位置にある頭に攻撃を加える。何が起きたのか混乱するポウの視界の端には、有り得ぬ程の速度で動く一角の残像だけが微かに映っていた。

 

「ボオオオオッッ!!!!」

 

 今度は片腕を切り裂かれた。

 龍紋鬼灯丸を殴り傷ついていた腕が更に切り裂かれ、肩口まで続く深々とした傷が一瞬にして広がっていた。

 これほどの傷では治療も不可能だろう、当然戦うことなど出来るはずもない。

 

「吹き飛べえぇぇっ!」

「ごぶアアァァァァッ!!!!」

 

 だが腕の痛みを感じるよりも先に、三度目の攻撃がポウを襲う。

 続いての衝撃は腹だ。鋼皮(イエロ)と脂肪と筋肉によって分厚く守られているはずの腹に強烈な刺突が突き刺さり、それどころか衝撃にて巨体が大きく吹き飛ばされた。

 転界結柱から強引に距離を取らされ、大地へとたたき落とされる。偽物の空座町の街並みを巻き込んでしばらく転がり続け、ポウはようやく見ることが出来た。

 

 先ほどまでの攻撃をしていたのは、やはり斑目一角だ。

 だが、これはどうしたことだろうか。先ほどまでとはまるで別人のように霊圧が高い。大人と子供――破面(アランカル)らしく言うならば最下級大虚(ギリアン)最上級大虚(ヴァストローデ)ほども差がある。

 

 ――龍紋鬼灯丸・燭陰(しょくいん)

 

 これこそが一角の持つ斬魄刀、龍紋鬼灯丸の真の姿だ。

 三つの刃全てが完全に破壊されることによって目覚め、その時までに解放されていた霊圧全てを持ち主の力とする能力。龍紋が最大まで赤く染まった状態で発動すれば、その霊圧は一般的な卍解の数倍、ともすれば数十倍にもなる。

 

 圧倒的なまでに上昇した霊圧は一角の身体能力全てを異次元の領域にまで高め上げ、文字通り目にも映らぬほどの速度で暴れ回れるようになる。持ち前の霊圧は物理攻撃は当然、鬼道や特殊能力などすらも弾き返し、仮に傷を付けられてもその霊圧にて一瞬の内に自然治癒してしまう。現に龍紋鬼灯丸・燭陰を発動させるそれまでの間に負っていた傷が、今ではすっかり癒えていることからもそれが分かる。

 

 一角が手に握る斬魄刀も、その姿を再び変えていた。

 長い柄とやや湾曲した幅広の刃が取り付けられた槍――その姿は、この暴力的なまでの霊圧を十二分に振るうための姿。余計な小細工など無用、ただ真正面から戦うのみと言外に宣言するかのような威風を堂々と放つ。

 唯一名残があるとすれば、色と僅かな飾り。真っ赤な柄とそこへ僅かに刻まれた龍の文様は深紅の龍が抜け出し一角へ力を貸しているようにしか見えない。

 

 もしも――仮にもしも更木剣八がこの場にいて今の一角の姿を見たならば、矢も楯もたまらずに全てを放り出してでも斬り合いを一方的に挑んでいたことだろう。

 

「ヒッ、ヒイイイイィィィッッ!!」

 

 吹き飛ばされた勢いが、無数の建物を巻き込んで転げ回りようやく止まる。

 自由になった身体のあちこちから襲ってくる信じられないほどの痛みと、なによりも信じられないほど強化された一角に恐れをなしたのか、ポウは柱に背を向けると一目散に駆け出した。

 

「あ、ああぁ……」

「なんだ……やっぱり見かけ倒しじゃねえか……」

 

 だがそれは叶わなかった。

 逃げ出したその先では一角が槍を肩に担ぎ待ち構えていた。いつの間に先回りしたのか、移動の影すらも感じ取れないほどの神速。

 

「祈って損したぜ、嘘つきヤローがよ」

 

 またしても一角の姿がポウの視界から消える。声が後ろから聞こえてきたことから、背後に回ったことだけは分かった。だがその動きが全く見切れない。

 動き出そうとした瞬間、ポウの左右の視界がズレた。

 

「オアアアアアアアアアアァァァッ!!!!」

 

 それが、自らの身体が真っ二つに切り裂かれたためだと認識したところで、彼の意識は無くなっていた。ただ本能のままに断末魔の雄叫びを上げながらその巨体が倒れ伏せる。

 

「ただまあ……コイツを使うと、霊圧の消費がデカすぎんだよな……」

 

 ポウの霊圧が完全に消えたのを確認しながら、一角は懐から丸薬を取り出す。それは四番隊謹製の霊圧回復用の薬だ。

 それを口へ放り込み、乱暴に噛み砕きながら呟く。

 

「こうならねえために、始解と基礎鍛錬を積んでたのによぉ……隊長なんざ、俺のガラじゃねぇってのに……あー、やだやだ。ホント、嫌になるぜ……」

 




ネタ仕込んだの74話です。
それから1年と少し経っています。

……ごめんなさい。引っ張りすぎてごめんなさい。
ちゃんと回収したから許してください

●一角の真の卍解(の妄想)
・名前
龍紋鬼灯丸・燭陰(しょくいん)

・発動条件
龍紋鬼灯丸が完全に破壊されること。

・外見
いわゆる青龍偃月刀(基本カラーは赤で龍の装飾がある)

・能力
単純に、アホほど霊圧が上がって強くなる。
(その倍率は、破壊された際の龍紋ゲージ量に比例する)
それ以外に特殊な能力はないが、小細工は圧倒的な霊圧で跳ね返す。
(霊圧が一気に上がるので本人が鍛錬不足だと振り回されてまともに戦えない)
再度卍解すると龍紋鬼灯丸から開始だが、完全に修復された状態になっている。
(発動させれば卍解の修復作業は不要)

(多分ですが、ゲージが大きいほど発動時間が短い。みたいな弱点がある)

燭陰(しょくいん)
古代中国の地理書「山海経」に記載された神様(龍)
北海の鍾山という山のふもとに住む。
人の頭部に似た顔と、千里に及ぶ赤い蛇の胴体が特徴。

目を開くと周囲が明るくなり、閉じれば暗くなる。
息を吸うと夏に、息を吐くと冬になる。
と言われるくらい凄い力を持つ。

(八岐大蛇でも良いんでしょうが……なんか嫌だった)

●チーノン・ポウ(決してチ○ポではない
訛った喋り方の巨漢破面(アランカル)
始解の一角には無傷で勝った。
その後、狛村に一蹴された。なので多分、バラガンの部下の中で一番強い。
(このシーンの一角の立ち位置は「狛村の噛ませ(ポウ)の噛ませ(一角)」だから一角ボロ負けは仕方ないかもしれませんが)

しかし柱を守る死神たちって、弓親も藤孔雀じゃ負けただろうし69だしイヅルも相手次第で負けてたと思う。
(この時の長次郎ってどこにいたんでしたっけ? 空座町の外?)
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