「ん……っ……ふぅ、ごちそうさまでした」
ヌルヌルにする白い液体を、ようやく全て嚥下し終えました。
それにしても、能力の特性上こんなに喉や舌に絡みつくとは思えないんだけど……どうしてかしらね?
本気になっていつもよりも濃いのが出ちゃったのかしら……?
まあ、それはそれとして……っと。
個人的にはもう少しくらい、ペッシェの
本来の目的は「ネルちゃんを治療して良い?」ってご親族に確認して、同意を取ることだもん。
ウッカリ忘れて、ぶっかけを愉しんでる場合じゃなかったわね。
「ペッシェ、ドンドチャッカも。私のワガママに付き合わせちゃってごめんなさい。実は二人に聞きたいことがある――」
ようやく正気に戻ったとばかりに、放置していた二人に声を掛けたところで、ふと気付きました。
二人ともどういうわけか、中腰です。
中腰のまま、さらに何故か股間を手で押さえています。
「――……んだけど……その格好、どうしたの?」
「い、いやぁ……何でもない! 別に全くもって何でもないぞ!!」
「そそそそそうでヤンスよ!! ただの生理現象でヤンス!!」
うーん……中腰というよりも腰が引けているって表現した方が良いのかしら?
それに股間も押さえているより、隠しているって方が正しい言い方かしら?
とにかくそんな感じでした。
顔も真っ赤になっていて、なんだか態度も大慌てって感じで……どうしてかしら?
『見られたくない物を見られてしまい、慌てて誤魔化す思春期の少年の心情でござるよ……見なかったことにしてやるのが優しさというものでござる……』
……??? ……ああ、そっか。ボッ――
『
――別に恥ずかしがることないのに……ただの生理現象でしょ?
まあ、それはそれとして。
「そう? 二人がそう言うのなら、話を進めさせて貰うわね。それで話って言うのは、ネルちゃんのことなんだけど……」
「……ネル! はっ、そうだ!! ネルはいずこに!?」
「そうでヤンスよペッシェ!! オラたちはネルを探してここまで来たでヤンスよ!! どうして忘れてたでヤンスか!?」
「ええい、言うなドンドチャッカ! 忘れていた時点で我々は同罪だ!! 今からでも探しに行くぞ!!」
「呼んだスか?」
「「おおおおおっ!?!?」」
ネルちゃんの名前を出した途端、二人のやる気が再起動しました。
……中腰のままなので、全く以て格好は付かないんだけどね。
そのまま二人で元の使命を果たそうとしたところ、物陰からネルちゃんがひょっこりと顔を出しました。
「ネル! どうしてここに!?」
「心配したでヤンスよぉぉぉっ!! でもでもでも、会えて良かったでヤンス~~っ!!」
「いやぁ……ネルも近くにはいたんスけどね。そスたら遠くの方で叫び声やらネルの名前やらが聞こえたもんスから、気にさなって……」
ペッシェとドンドチャッカから熱烈な歓迎を受けて、ネルちゃんは照れくさそうにしています。
かと思えば続いて私の方へと向き直りました。
「隊長さんが見つけてくれたんスよね? ありがとうございまスた!」
「ううん、お礼を言われるほどのことじゃないから。気にしないで」
そもそもの話。
ペッシェとドンドチャッカが近くにいることに気付いた時点で、私がネルちゃんを連れて移動すれば万事解決、無駄な一手間を掛ける必要もなかったんだから……
『いやいや
そうよね!! 絶対にそうよね!! 私、絶対に間違ってなかった!! あれは必要なこと!!
「……あれ、隊長さん? なんかこう……うまく言ねっスけど、ツヤツヤになってる気がするっス。どしたんスか?」
「え!? そ、そう……!? ちょっと色々あったから、きっとその影響よ」
「…………?」
やだ、もしかしてバレちゃった?
残さず舐め取ったつもりだったんだけどなぁ……やっぱり、顔に出るのかしら?
ネルちゃんは、私の言葉の意味を理解できずにきょとんと首を傾げていました。
ペッシェとドンドチャッカは――あ、まだ腰が引けてる。というよりも、さっきよりも酷くなってる気がするわね。
「そんなことよりもネルちゃん。二人には今から"あのこと"を説明するわよ」
「あのこと……って、どのことっスか?」
「……頭の傷のことよ」
「……ああっ! そ、そうだったっス! 是非とも、是非ともよろスくお願いいたスまス!! どうかネルをボインボインのお姉さんにして欲しいっス!!」
「っ!!
会話から察したのでしょう。
ペッシェがスッと背を伸ばし、シリアスな声で尋ねてきました。
「……つまり、
「ほへぇぇ……まさかネルが
そうして、お互いの間で簡易的な情報交換が行われました。その結果――
ペッシェたちは、ネルちゃんの傷を治して元の姿に戻せるということを。
ネルちゃんは、自分が元
――それぞれ知りました。
「でもいいのペッシェ? ドンドチャッカも? あなたの話からすると、ネルちゃんを元の姿に戻すと……」
「……構わん! 既にノイトラもザエルアポロも倒されたのだ!! 加えて、ネル様が力を取り戻されるとなれば、これほど喜ばしいこともない!! どうして反対などできようか!!」
「で、でもペッシェぇ……オラ、今のネルとの気ままな暮らしも悪くねえって思ってるでヤンスよ……」
「ドンドチャッカ!! 貴様、どういうつもりだ!?」
「だ、だだだだってぇ! 元に戻るってことはまた
「……くっ!」
『全員で一緒に馬鹿騒ぎできる暮らしというのも、悪くないでござるよ』
まあ、どっちの意見もわかるわよね。それも悪くないって思っているから、ドンドチャッカの反論にペッシェも呻き声を上げたんでしょうね。
ちなみに射干玉だったら、どっちの意見を支持する?
『おっぱいが大きいからネリエル殿に戻すでござるよ!! 考えるまでもねえでござる!!』
私も!! だから、ペッシェの味方をするわよ!!
「差し出がましいことをいうようだけど……そんなことにはならないと思うわよ」
「へ……どういうことでヤンスか……?」
「藍染は私たち死神が絶対に倒すし、残った
「む、むむむむ……」
悩むわよね、そりゃあ悩むわよ。
「それとネルちゃん。ネルちゃんはどう思う? 二人の話を聞いても、まだ戻りたい? それとも話を聞かなかったことにして、今のままでいたい?」
「うーん……そっスねぇ……」
腕を組み、目を瞑って悩むことしばし。
私たち三人が見守る中、やがてネルちゃんが目を開けました。
「やっぱりネルは、元に戻りてえっス」
「おおっ!」
「ネ、ネルぅぅ……」
「それに今まで、ペッシェとドンドチャッカがネルのことを守ってくれたんスよね? んだったら、今度はネルが二人を守る番っス! 今度こそ、二人には心配掛けられねえっス!!」
「ネルぅぅぅぅぅぅっ!!」
決意の言葉に感極まったみたいで、ドンドチャッカが抱きつきました。
あ、ペッシェもこっそり抱きついてる。
二人でボロボロ泣いてるわね。
『すっごく、アットホームな雰囲気で良い場面でござるなぁ……』
そうね、ずっと見ていられるわね。
でも、それはそれとして。
「水を差すようで悪いんだけど」
新しい
「さっそく治療をしちゃって良いかしら?」
「おおおおお願いするでヤンス!! どうか、どうかネルを! ネル様を!!」
「
「ええ、任せて」
二人から拝み倒さんばかりの勢いで頼まれました。ネルちゃんもやる気です。
それなら、さっさと治療をしちゃいましょう。
「ネルはどうすればいいんスか」
「そのまま立っててくれればいいわよ」
緊張させないように優しく微笑むと、高さを合わせるために私の方からしゃがみます。
ネルちゃんの頭部へと手を翳し、回道を唱えます。
ゆっくりと、患部の傷を縫い合わせて塞いでいくように。霊圧が漏れ出ることの無いように、正常に流れていくように注意しながら。
そうやって五分ほども治療を続けていた時でした。
まるで
同時にペッシェたちが声を上げます。
「これは!!」
「この霊圧は、紛れもない……ネル様!!」
二人が反応していますが、私は目の前にいるわけです。なので変化は誰よりも如実に感じられました。
まだ本調子ではないのかハリベルと比べて弱々しいものの、それでもかなりの力強さを感じられる霊圧。元
「ええ、久し振り……になるのかしらね。ペッシェ、ドンドチャッカ」
そして、煙の中からゆっくりと姿を現すネルちゃん――いえ、ネリエル。
彼女は二人を見ながら、久し振りの再会ににっこりと微笑みました。
微笑んだんですが……その……
コレいいの!? 本当に大丈夫なの!?!?
えーっと、まずね。彼女、ネルちゃんの時には緑色のローブみたいなのを着ていたの。ただ、それはネルちゃんの時にピッタリのサイズだったわけで。
それが今、ネリエルの姿に戻ったわけだから……子供の服を大人が無理矢理着たみたいな格好なのよ。
胸元と腰回りを、ボロ布で辛うじて隠しているだけの状態。ちょっとでも激しく動いたら、ズレちゃったり零れ落ちるのは間違いないわ。
しかもね。
彼女ってば、背丈が
でもそのくらいの
そんな格好の彼女を、私はしゃがんで見上げているわけで……
『早い話が下から覗き放題! 見放題の状態でござるよ!! ヒャッハアアアアァァァァッッ!!』
仕方ないでしょ! これは不可抗力!!
だから見えちゃうのも仕方がないことなの!!
隙間から、ね……こう、太腿の付け根とか……裾の下からぷるんと揺れる下乳とかが……
……っ!! ちょ、ちょっと待って!!
これ、まさか……
『どうしたでござるか
射干玉は気付かないの!?
ネリエルの
『なん……だと……!?』
た、確かめたい……! 今すぐにでも彼女を押し倒してマッサージしてしまいたいわ……!!
でも、でもね……! 今そんなことをするわけにはいかないの!!
「ちょ、ちょっと待って!! これはちょっと予想していなかったわ!! とりあえずこれ! これで身体を隠して!!」
私は大慌てで立ち上がると
『長いスカートやシャツを千切って、傷口を縛るアレと同じでござるな!! 今回の場合は肌を隠しているわけでござりますが!!』
だって、こうでもしないと見えちゃうんだもん。
こんなボロ布だけを纏った露出度の高い格好で、皆の前に出させるわけには行かないでしょう?
「あ、そうね。ありがとう湯川さん」
幸い、ネリエルも理解してくれたのですぐに自分の身体を隠しました。
……ええ、隠したんだけど……
なんか、これ……余計エッチな格好になってない?
『肌色の面積は減っているはずなのに、隠している部分が多くなることで脳内で補完されてしまうというアレでございますな!! 人の想像力というのは、誠に素晴らしいでござるよ!!』
本当に、ね……これは一護に見せられないわ……
健全な男子高校生には、目の毒だもの。
『そう言っている
ふぇっ!? な、なんで……あ!!
『お気づきになられましたかな!? 着物を破いたことで、現在は生足を見せているでござるよ!! さながらネム殿のようなミニスカート状態でござる!! むっはあああぁぁっ!! 太腿がたまんねぇでござる!! その証拠に、ご覧下さい!!』
ペッシェとドンドチャッカが、揃って顔を真っ赤にしながら私を見てる……!!
でもなんで私だけ!? 隣にネリエルもいるのに……
『そこはそれ、お二人の忠誠心というやつでござるよ。仕えるべき主をエッチな目で見るなど、拙者を代表とした紳士淑女の皆様には……み、皆様には……ゴクリ!!』
ああ、もうっ!! 期待通りの反応をありがとうね!!
それよりも今はネリエルのこと!!
「うん、私のことを『湯川さん』って呼んだところを見るに、どうやら元の姿に戻っても記憶の問題はないみたいね」
「はい。小さかった頃の私が経験した記憶や思い出……そういった物は、今の私もちゃんと持っています。湯川さんのおかげです」
「ネル様! 私たちはようやく……ようやくううぅぅっ!!」
「よかった……よかったでヤンスよぉ~~っ!!」
「二人も今までありがとう」
「勿体ないお言葉です!!」
ペッシェとドンドチャッカも納得しているみたいだし。
やれやれ、これでようやく肩の荷が降りたわ。
「これで私も、一護の力になれる」
従者の二人が歓喜の涙を流している中、主のネリエルは拳を握り締めながら呟くのが聞こえました。
はぁ……ホント、こればっかりは一護が羨ましいわね……
ちょっとご紹介が遅れましたが。
X(旧twitter)へのリンク
(なので外部に飛びます)
踏文 二三様(壱丸二三様)から
大変ありがとうございます。無茶苦茶カッコイイです。
(リンク、ちゃんと出来てるよね……)