お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第260話 そろそろお暇しますね

「むっ……! お前は……」

「一応、初めましてと言っておくわ。私はネリエル・トゥ・オーデルシュヴァンク。元だけど第3(トレス)十刃(エスパーダ)だから、一応あなたの先輩にもなるの」

「そうか……やはり私の考えは間違っていなかったということか」

 

 元の姿に戻ったネリエルを連れて戻ったところ、さっそくハリベルが食いつきました。

 彼女は元々ネルちゃんを見て「ひょっとして……」と疑っていたこともあってか、その反応は上々です。

 強者を見つけた時のそれ、とでも言うんでしょうかね。

 

「コイツ、あのネルって破面(アランカル)……なんだよな……?」

「う、嘘だ……」

「信じられません……」

 

 アパッチたちは、信じられないといった目で見ています。

 それでも彼我の霊圧の差を感じ取っているのか、手を出すこともなく遠巻きに眺めているだけでした。

 

 そして、三人と同じように困惑しているのがもう一人。

 

「ネルちゃん……なんだよね?」

「ええ、そうよ」

 

 桃です。

 彼女からしてみれば、ちょっと目を離した隙に大人の姿になって戻ってきたわけで。事前に「そうなるかも」という話は聞いていたものの、俄に信じられないようです。

 おっかなびっくり、疑うような眼差しでネリエルのことを見上げていました。

 ネリエルはそんな桃の様子に、少しだけ悲しげな表情を浮かべながら切なそうな声で呟きました。

 

「――桃ちゃん」

「あ……っ! そ、その呼び方……!!」

「小さな私と一緒にいてくれて、どうもありがとう」

「覚えてる……の……?」

「ええ、勿論よ」

「ネルちゃん!!」

 

 桃が嬉し涙を流し始めました。

 短くも内容の濃い時間を一緒に過ごしていただけに、ネルちゃんに色々と思うところがあったようで。

 それでも共通の経験や思い出が失われたわけではないと分かり、一安心したようです。

 

 

 

 その後ろでは――

 

「ああーっ! アンタたち!!」

「お前は……まさか生きていたのか!?」

「ギクゥゥッ!! ……や、やあ久し振り! 元気だったかな!?」

「ええ……おかげさまでね。藍俚(あいり)に治して貰ったわ」

「それで? まさか僕に復讐でもするつもりかい?」

「フン! 今のアンタは見逃してあげるわ……アンタはね」

「ハハハハハ! なーんで私の肩を掴むのかな? 申し訳ないが今日はこれからジャパニーズ・カラーテの稽古に行かなきゃならないので……」

「何が無限の滑走(インフィナイト・スリック)よっ! アレだけは許さない!!」

「ぎゃあああああ!! お、お助けぇぇぇっ! 藍俚(あいり)! 藍俚(あいり)ーっ!!」

「何を気安く名前を呼んでるのよ!!」

「わーっ! わーっ! だって名前を呼んで良いっていったんだもん!! 本当なんだもん!!」

 

 ――…………うん。

 

藍俚(あいり)殿? なにやら物騒なことになっておりますが……』

 

 聞こえない聞こえない。藍俚(あいり)ちゃんにはなーんにも聞こえない。

 

 だって……

 

 

 

「まさか、生きてやがったとはな……」

「それはこっちの台詞だ」

 

 剣呑な雰囲気が漂っています。

 発生源はウルキオラとグリムジョーの二人からですね。

 

 今現在、虚夜宮(ラス・ノーチェス)の中にいる強者は全員がこの場に集まってきているわけです。なので、こういう顔合わせも十分ありえるわけですね。

 この二人の間にもある程度の因縁はあったはず。

 

 元々は一護を狙っていた相手同士……なんですけれど、確か今のグリムジョーって海燕さんにご執心だったはず……だから喧嘩するような事にはならないと思っていたんですが。

 この様子を見るに、どうやらそこまで単純でもないみたいですね。

 

 反膜の匪(カハ・ネガシオン)とかいうアイテムで、グリムジョーがウルキオラを閉じ込めていたはずですけれど……それが原因かしら?

 とにかく、一触即発の空気です。

 

「……チッ! テメエに関わってる暇なんざ俺にはねえんだよ!! まずは志波の奴からだ!!」

「奇遇だな。俺もお前に殺されてやるわけにはいかなくなった」

 

 と思ったら、そうでもなかったようですね。

 にらみ合っていたはずの視線が、あっさりと外れました。

 どうやらそれぞれ意中のお相手がいるから、内輪揉めしている場合じゃないみたい。

 

 何にせよ、もう戦いはお腹いっぱい。

 これ以上は本当に、ごちそうさまよね。

 

『あの、藍俚(あいり)殿……?』

 

 そういえば、反膜の匪(カハ・ネガシオン)ってハリベルも持ってるのかしら?

 持っていたら分けて貰えないかしらね。

 あの人(涅マユリ)とかあの人(浦原喜助)への良いお土産になりそう。

 

『残っている戦い、決着が付いたでござるよ』

 

 えっ! 本当に!?

 

 うわぁ……本当だわ……

 

 ヤミーが倒れてる。

 完膚なきまでに叩き潰されてるし、なによりあの巨体……治療は、ちょっと無理……ね……

 

藍俚(あいり)殿でも無理でござるか?』

 

 相手が巨大過ぎて、治療が間に合わない。

 

 なによりほら、ヤミーを見てごらんなさい。

 怪我の具合があり得ないもの。

 

 上半身には野晒で斬られた裂傷が、嫌ってほど走ってるの。

 あれ、塞ぐだけで一苦労なのよ。野晒の刀身ってある程度ギザギザしているから、普通よりも治すのに手間が掛かるの。

 それに加えて全身に、千本桜の細かな裂傷が無数に走ってるし。

 

 あの傷跡は多分、蛇尾丸でやられた傷ね。

 あっちは……アレって虚閃(セロ)の傷跡かしら? 浮竹隊長が跳ね返したんでしょうねきっと。

 海燕さんも、多分何かしらしたんだと思うけれど……

 

 と、とにかく! アレは無理!! あの巨大なサイズだからまだ生きているけれども、巨大なサイズだから治療が間に合わない!!

 けど普通のサイズに戻ったら、生命力が足らなくてすぐに力尽きちゃう……!!

 

 はぁ……無力ね、私って……

 こういう場合は想定してなかったわ。なにか方法を考えておかなきゃ。二度とこんな無様な想いをしないためにも。

 

 でも今は。

 

「お疲れ様でした、皆さん。お怪我はありませんか?」

「ああ、湯川。そっちこそお疲れ様。俺は大丈夫だけど、海燕たちを診てやってくれるか?」

「わかりました」

 

 ヤミー討伐を終えた死神たちの治療です。

 流石にあのサイズと霊圧は強敵だったみたいで、怪我をしていますね。

 そっちの治療を――

 

「あん? なんだ、まだ楽しそうな相手がいるじゃねえか」

「あっ! ちょっと更木副隊長!! ダメです! そこにいる破面(アランカル)はダメです!!」

 

 ――食指が動きかけた更木副隊長を、必死になって止めます。

 

 ハリベル・ウルキオラ・グリムジョー・ネリエル・チルッチと、十刃(エスパーダ)だった者たちだけでもこれだけいますからね。

 斬り合いをしたいと思うのも当然でしょう。

 

「ここにいるのは全員、暫定だけど私たちに協力してくれる相手です! 一応味方です! それと全員、予約済みです! それぞれ狙っている相手がいるからダメですよ! 絶対にダメぇ!!」

「なんだ……つまんねぇな……ちょいとつまみ食いするくらいは……」

「ダメです!!」

 

 せっかく生き延びたのに、ここでひっくり返されてなるもんですか!!

 いざとなったら全力を出してでも止めてみせるわ!! 主に私の為に!!

 

『その決意、仮にグリムジョー殿辺りを狙われた場合は見て見ぬ振りをしそうでござるな』

 

「湯川、お前も大変だな」

十刃(われわれ)と同じく、死神にも問題児というのはいるのだな」

 

 浮竹隊長とハリベルの二人から、ねぎらいの言葉を戴きました。

 

 

 

 とあれ全員の治療もして、説明もしました。

 

 これでやることは全部やれたわよね?

 

 現世の方も落ち着いたみたいだし、もう帰っても大丈夫……よね?

 

 うん! 大丈夫!!

 それじゃあ、ばいばい虚圏(ウェコムンド)! またすぐに来るからね!!

 




風呂敷畳んで、いったん帰りますよ。ということ。
(全部終わったらまた虚圏(ウェコムンド)に来て、ちゃんとマッサージします)

●ヤミー
(原作同様)こっちでも描写省略。
戦闘描写したり加入描写より、白いヌルヌルを優先した結果。
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