……が、前話に目を通さなくても99%問題ありません。
(一部ネタが通じない程度です)
ようやく私も――正確には
実際、この後で暇を見つけて
『つまり、ケリが付いて落ち着いてから言葉巧みにマッサージをする腹づもりでござるな!! くぅぅぅぅっ!! この焦らし上手め!! でござるよ』
……否定が一切出来ない。
ということで現世、偽の空座町まで戻ってきたわけですが……
さてさて、状況は一体どうなっているのかしら?
こうして無事に戻ってこられた所から察するに、一護が上手いこと藍染を倒してくれたんでしょうけれど。
でもどうやって倒したのかしら……?
……え? 純米大吟醸はどうしたんだ……ですか?
なんの話? 私、お酒は苦手って言ったじゃない。そんなの呑んだら、すぐに潰れちゃうってば。
未成年者飲酒禁止法? お酒は二十歳になってからに決まってるでしょ。
あと、飲酒の強制は絶対にダメよ! 回り回って自分の首を絞めることになるんだからね!!
卍解!? え、藍染って卍解したの!? まあ、するわよね……決戦だもんね。
どういう能力だったのかしら……後でちゃんと聞いておこうっと。
……ねえ、なんでそんな不思議な顔をしてるの?
『なんでもないでござるよ(ということで! 前話は無かったことになったでござる! 未成年に酒を呑ませる酔っ払いなんていなかったでござるよ! それに伴って「なんであんなネタで1話使った!?」という疑問も無かったことになったでござる!! ストロングな完全催眠とは恐ろしいでござるな!!)』
「湯川隊長、お疲れ様で……おわっ!」
「そ、その格好は一体何が!? まさか、
さて現世に戻ってきたわけですが、来た早々出迎えてくれた
お忘れかもしれませんが、今の私は隊首羽織を着ていません。オマケに足は丸出しです。
上は桃に上げちゃって、下はネリエルの肌を隠すのに使っちゃったので。
普段はちゃんと着込んでいるだけに、今の私の格好は隊士の子たちにはギャップというか目の毒で驚かれてしまったというか。服がボロボロになるほどの激戦を繰り広げてきたと勘違いさせちゃったみたいね。
「ううん、そういうわけじゃないの。この格好は色々あっただけだから気にしないで」
「で、ですが……」
「そんなことより、現世の方の状況はどうなってるの!? 怪我人は!? 今からは私が指揮を引き継ぎます! まずは現状の報告!!」
「申し訳ありませんでした! こちらです!!」
説明すると長くなりますし、恥ずかしがっている暇もありません。
キビキビと指示を出して、まずは状況把握に務めます。場合によってはそのまま怪我人の治療まで私が担当しますよ。
「……ああっ! 雛森三席、その格好はまさか……!」
「えへへ、良いでしょう? 先生から貰っちゃったの」
後から来た桃が、別の隊士の子と和気藹々していましたが。
とあれ現状確認のため怪我人についての報告を受けたところ、そこそこ怪我人はいました。主立った患者は各部隊の死神だったり、
……へ? 片腕を炭化!?
「大丈夫ですか!? 今すぐに治療――いえ、再生治療の術式を!!」
「ガタガタ騒ぐでない。この程度など、怪我の内にも入らん」
「いえいえ、大怪我ですってば!!」
「儂は後で構わん。先に他の者たちの治療を優先せよ、これは命令じゃ」
「……もうっ! わかりました、わかりました!! ですが、後でじっくり対応させて戴きますからね!!」
総隊長!! なんでそんな態度を取っているんですか!?
ですが「命令だ」と言われては仕方ありません。不承不承、他の怪我人の治療を優先することにしました。
それにしても、片腕が炭化って……治すの、すっごく面倒なのよね……
後で纏まった時間を取って、しっかり再生とリハビリをさせても、元に戻せるかしら……
心の中でそんな一抹の不安を抱えながら、
「これでよし、と。このまま一週間くらい安静にしてれば、後は勝手に治っていくわ」
「師匠……ありがとうございます!」
「……ケッ! まさか湯川に治療されるとは、思ってもみんかったわ!!」
治療したと言っても、元々いた
誰がどんな怪我を負って、その処置をどうしたのかの確認。それと診察くらいです。
一人だけ、ちょっと危険だったので手を出しましたけどね。
「おおきにな、
「いえいえ、怪我人を治すのは私たちには当然のことです」
皆さんがホッと人心地を付けている中、平子隊長とお話です。
「それよりこちらこそ、お礼を言わせてください。藍染討伐へのご参加、ありがとうございました」
「そっちはまあ、
「手伝っていただいただけでも、大助かりですから」
うーん……この口振りから察するに、劇的な特効薬とまでは行かなかった……と言う程度の活躍だったのかしら……?
まあ、藍染だもんね……仕方ないわよ、そんなに落ち込まないで。
『そうでござるよ!
そういうことは言わないの!!
「と、ところで。以前にもお話をしましたけれど、皆さんはもう死神に戻るつもりはないんですか?」
「んー、それはなぁ……俺らも話し
「今回の手助けもあるから積極的に受け入れてくれるとは思いますけれど、返事はなるべく早くお願いしますね」
「あん? なんでや……?」
「卍解を覚えた副隊長が、何人かいますので……」
「はぁ!?」
阿散井君とか、海燕さんとか。
藍染たちが抜けた穴、割と簡単に埋まりそうなのよね。
「そういうわけですから、意思決定はお早めに。グズグズしていると平隊士からやり直しになりますよ」
「ぐえぇ……それは、嫌やなぁ……」
舌を出しながら苦々しい顔をしていました。
「あのぉ、隊長……少し、よろしいでしょうか……?」
「あら勇音、どうしたの?」
治療を一通り――総隊長の炭化した腕は除く――済ませたところ、勇音が声を掛けてきました。
ただそれは、なんとも遠慮がちで躊躇っている口調ですね。
何かあったのかしら?
「ひょっとして、まだ怪我人がいるのかしら?」
「その、とても申し上げにくいんですが……」
相変わらずの口調。
やってしまったものの、どうしたものか自分でも決めかねている――そんな印象が、言葉の裏から感じられます。
「はい……それが、その……」
「……?」
「と、とにかく着いて来ていただけますか!?」
「ええ……まあ、それは……」
勇音に案内されて偽の空座町の中心から少し離れた場所まで移動したところ、そこで思わず度肝を抜かれました。
何しろそこには"半ばほどまで伸ばした長髪と薄い顎髭が特徴の精悍な顔つきの男性"と"ヘルメットのような仮面を付けたボーイッシュな少女"がいたんですから。
二人ともかなりの大怪我をしており、簡素な布を一枚だけ敷いた上に寝かされている状態です。
瞳を閉じているので意識を取り戻してもおらず、呼吸も苦しそうです。
ただ、傷には最低限の手当がしてあります。
そして肝心の怪我の原因ですが……私、この傷はよ~~く知っています。
斬魄刀で斬られた傷跡です。なんだったら比較的多めに実体験した切り方の傷です。
……ん? でもそれ以外の切り口もありますね。
「この人って、確か……
アレよね?
「はい、スタークと名乗っていました」
「スターク……コヨーテ・スターク!!」
そうそう、思い出した!!
「――ってことはこっちは、リリネット・ジンジャーバック……」
「はい。こっちの子はそんな名前だったと記憶していましたけれど……隊長、よくご存じですね?」
あらら、またやっちゃったわ。
どうも私、
でも今回はちゃんとした言い訳を用意しているのよ。
「ああ、それはね。ちょっと理由があって、名前は知ってるの」
「ちょっとした理由……ですか?」
「そうなの。
『何人か、でございますか……?』
何よ、文句でもあるの?
『
半分
そういう台詞は、せめて過半数を超えてから言いなさい。
『まさに今ココに、過半数超えとなる相手がいるわけでございますが?』
……あっ! そう言われればそうだった。
「それより勇音、ひょっとして……」
「はい……多分隊長が今思っていらっしゃる通りです。戦いの最中にこちらのスタークさんが倒れていたところを、私が最低限の治療をしました」
なるほど、言いにくそうにしていたのはそういう理由なのね。
藍染と戦っている最中なわけだから、治療をするにしてもまずは死神たちを優先するって考えるのが普通のはず。
敵対していた
なのに、味方ではなくて敵を治療していた。それを怒られるんじゃないかと、怯えているってところかしら?
「ただ私だけではまだ分からない部分もあって、隊長に改めて治療を……その、お願いしたいんです。ダメ、ですか?」
「いいえ、全く問題ないわよ」
恐る恐る尋ねてきた勇音を安心させるべく、まずはハッキリとそう告げます。それを聞いて表情が和らいだのを確認してから、二人の治療を始めました。
ふむふむ……なるほど、上手に対処出来てるわね。
でも、まだやっぱり慣れてない部分が多いみたい。もう少し経験を積めば、私がいなくても勇音一人だけで治療も出来たんでしょうけれど……
それをするだけの時間も経験も、あと心の余裕もちょっと足らなかったんでしょうね。
……心の余裕、か……
「勇音、あなたのしたことは何にも間違ってないわ。四番隊は怪我人を治療して当たり前、そこに敵も味方もないの」
気付いてしまった以上は仕方ありません。
心の余裕を取り戻させてあげるべく、ゆっくりと声を掛けていきます。
「私だって
「隊長……ありがとうございます!」
会話をしながら治療を続けていくうちに、あることに気付きました。
この傷跡――もう、卯ノ花隊長が斬った痕跡って言っちゃって良いわよね?――ですが、途中から手加減されています。
致命傷のギリギリ半歩手前で止まるようにしているというか……
……戦ってみたらそこそこ面白かったから手加減して、再戦できるようにした……
コレ多分、そんな感じの太刀筋です。
私も含めた誰も知らないところで、きっとそんな面白そうなやり取りがあったのね。
「……うっ! ぐ……っ、うあああっ!!」
少し治療を続けていくと、まずはスタークが意識を取り戻しました。
覚醒したと同時に痛みが走り、その痛みで反射的に身体を動かしてしまいまた痛みに苦しむ。そんな動作をしていますね。
「あっ、気がついた?」
「ここは……? 俺は、助かったのか……? いや、アンタ死神か……なら、助かっちゃいないみたいだな……」
「失礼ね、トドメを刺すつもりならこうして治療なんてしないわよ」
「……は? 治療?」
「それとこっちのリリネットも、ほどなく目を覚ますと思うわよ」
「リリネット! お前、リリネットに何を――ッ!!」
あ、急激に動いた痛みで言葉を失ってる。
「落ち着いて。藍染は倒れているし、もう敵対する理由なんて無いの。だから……」
「スターク!! お前、スタークに何すんだ!!」
今度はコッチ!? せっかく説得しようと思ったのに!!
しかもリリネットの方は丁寧に治療してるから、痛みで行動制限されていないの。だから私に掴みかかってきたわ。
けれど伸びてきた手をスルリと躱して、反対に彼女の首根っこを掴みます。
「リリネットも、話を聞いて貰える? まず二人を害するつもりなんて無いの」
そう前置きしてから、二人に向けて状況説明を始めました。
藍染が倒れたこと。
戦いはもう終わったこと。
二人を見つけて助けたのは、勇音だということ。
そして、
「――というわけなの。分かって貰えた?」
「んー……まあ、一応は信じるとするさ……」
「スターク、この死神たちには命を助けて貰ったんだぞ? その態度はちょっと失礼じゃないか?」
「いや、そうは言っても実際に自分の目で見て確かめてみないことにゃ信じられないだろ……?」
「確かにそうだけど! でもそんな嘘を吐く意味も無いだろ!?」
「治療したのは、俺たちをとっ捕まえて研究材料にするため。ただの延命処置だったらどうするんだ?」
「うぇ……!?」
スタークの指摘に、リリネットの動きが止まりました。
そしてギギギと音を立てそうなくらいゆっくりと首を動かして私を見つめてきます。
「ち、違うよな……?」
「ええ、勿論。そんな事
「えっ! い、いるのか……?」
「あはは……」
勇音の乾いた笑いが響きます。
リリネット程では無いものの、スタークも僅かに顔を顰めていました。
「ふふ……そんな怖い死神に見つからないうちに、二人とも
「けど、本当に帰ってもいいのか?」
「問題ないわよ」
任せておけ、とばかりに強く頷きます。
「ただ、
「あー……けど俺は王なんてガラでもねえし……仕方ねぇ、手伝ってやるとするか……そうすりゃ文句も言われねえだろ」
ボリボリと頭を掻きつつ、面倒そうに遠い目をしました。
そんなに手伝いたくないのかしら?
「んじゃま、帰るとするわ。それと勇音だったか? 助かった。礼を言わせてもらう」
「ありがとうな」
二人はまず勇音へと頭を下げて、続いて私に視線を向けます。
「……」
「……?」
「いや、あんたの名前……?」
……ああ、そういうこと!?
「そういえば、名乗ってなかったかしら? 私はね、湯川
とびきりのウィンクを一つしながら、自己紹介をしてあげました。
そして。
二人が
しかも……昏睡状態になって、死神の力を失うとか……
主人公がそれで大丈夫なのかしら……? ちょっぴり不安だわ……
ようやく終わったと思ったのに、まだ暗雲が残ってるのね。
とりあえずこれで一区切り。
●スタークとリリネット
当初は「この二人は助けられないよなぁ……」と諦めていたのですが。
途中で「描写をボカせば、ノリと勢いで助けられるはず」と開き直りました。
開き直った結果、こんな風にしてやりました。
(原作のキャラだって「よくわからないけれど生きてた」なパターンもありますし)
……これ、自分で自分の首を力一杯絞めているだけなんじゃ……??