第263話 現状の整理をしましょう(尸魂界側)
藍染が倒されました。
いつもの日常が戻ってきました。
めでたしめでたし――となってくれれば楽なんだけど、実際にはそうは問屋が卸さないわけで。
『そうは問屋が卸さないという慣用句も、今なら"フリマアプリで値引き交渉に応じてくれない"とか言うのでござりますかな?』
さぁ、そんな言葉聞いたことないけれど……でもそれ、凄く言いにくいわね……
と、それはそれとして。藍染が倒れても仕事は山積みなの! 日常を取り戻すのにも、色々と手続きとか作業があるのよ!!
一護が「意識を失った時点で死神の力を失って、目が覚めると霊圧の残滓全てが消えて普通の人間に戻る」と浦原から教えて貰ったから、それについても調べたいんだけども! 元に戻す方法とか模索したいんだけども!
仕事は待ってくれないの!!
まず最も優先して片付ける必要があるのが、転界結柱の後始末について。
みんなも知っての通り、アレを使って本物と偽物の空座町を入れ替えたわけで。その後、私たちが現世に戻ってきた日に再起動して、本物の街は無事に元の座標に戻ったの。
ただ、戻りはしたんだけど、細かい部分で悪影響が出てるのよ。
どうやら藍染やら
大雑把に問題は無くなって、日常生活を普通に送れるようになったけれども、それはあくまで「現世で生きてる、特に霊力も持たない普通の人間からすれば問題なし」ということであって。
『とはいえ、その不具合の補修を完全に解決するまで再転送を待つわけにもいきませぬからな! 現地の人々が困ってしまいますから!!』
そういうこと。
さっきも言ったけれど「霊力も持たない普通の人間」からすれば問題が無いわけで、それ以外の人には影響が出ます。
具体的に言うと「
なので――
「"ろ-五十二番"の不具合、修復完了しました」
「はい、ご苦労様。後で確認に行くわね」
「すみません! "に-七番"の不具合、もう少し掛かります!!」
「え、そうなの? どのくらい掛かりそうか教えて?」
「わかりました!!」
とまあ、こんな具合に。
現世で指揮を執って、残務作業に追われています。
ほらほら見て見て、今日も
『この竜胆の印も、なんだか
本当にね……限定霊印をこれだけ打ち込んだ隊長ってのも、中々いないんじゃないかしら……?
調べたことないから知らないけれど、多分私が暫定トップなのかもしれない……
「大変です! 新しい亀裂が見つかりました!!」
「えっ!?」
そんな呑気なことを考えていたら、突然の報告が飛び込んできました。
「場所はどこなの? それと、もしも事故が発生したらどんな規模の影響が出そうかは確認した!?」
「はい、大凡ですが纏めておきました。こちらをどうぞ」
伊勢さんが差し出してきた紙を受け取ると、無言で目を通します。
えっと、この規模と予測範囲だと影響度と優先度は……
……?
ええ、そうです。伊勢さんですよ、八番隊副隊長の。
この仕事には彼女も参加しています。
というよりも「十二番隊が
修復作業は思ったよりも工数が掛かりそうなので、役に立ちそうな死神を片っ端から駆り出している状況です。
しかもこのお仕事は十二番隊がメインなので、本当なら十二番隊の隊長が仕切るべきなんですけど……涅隊長は逃げてます。
『
そのせいで私が、現世に出張って来る羽目になってます……
ちなみにこのお仕事ですが、一ヶ月くらいあれば終わるというスケジュールが組まれています。
なのに私、四番隊の業務も平行して回してます……
『デス・マーチでござるな』
……まあ、良いんだけどね……のんびりやってたら、どんな悪影響が出るか分からないし……
「あの……湯川隊長?」
「え? ああ、ごめんね伊勢さん」
ボーッとしていたら、心配そうな目で見られました。
大丈夫、まだ疲れてない。
と、私が馬車馬のように働いているその裏で。
構成員が揃って、中央四十六室も心機一転ようやくスタートですね。
……初仕事が、藍染の裁判って大変そうよね。私だったら絶対にやりたくない。
結局藍染の刑は「第八監獄"無間"に二万年投獄」ということに落ち着いたそうですが。
それと同じくらい問題になったのが、
これについては総隊長が、鬼の居ぬ間になんとやらで、受け入れの準備を整えていました。後は当人の意思次第で復帰は可能な状態にしていたそうです。
藍染の問題も片付いてますし、そもそも
なので、拒む理由もない……はずだったのですが……
曰く――
「自ら望んだワケではないとはいえ、
「
「その場合は湯川
「正式な辞令として通達すれば良かろう」
「その場合、誰が名を出すのだ?」
「中央四十六室の名で良かろう」
「それは御免被る。やるならば個人の名を出せ。厄介者たちに目を付けられたくはない」
「ええいっ! この様な事態の為に、総隊長がいるのだろう!?」
「だが当人は受け入れるつもりだったのだぞ!? 素直に従うわけがなかろう!」
「そもそも、
「だがそれは伝統として問題があるのでは!?」
「となれば、湯川
――と、こんな感じで話し合いが続いていたみたいです。
『無限ループって怖いでござるな』
本当よねぇ……同じネタで何回会議をするんだって思うわ……
けど最終的には折れて、総隊長が整えた受け入れ体制のままで行く事に決まったそうよ。
ただ「出戻り連中は私が面倒見ろ」って命令をされたのは納得出来ない。全員知った顔ばっかりだから、まだ良いけどさ……
『(ババの押し付け合いを続けた結果、疲れて
あとは……藍染たちと相手に戦った際の反省点とか改善点の洗い出しのために、隊首会が予定されている程度ね。
目新しい出来事も、もう無い……
……あっ! ごめんなさい!! 一つだけ、一つだけあったわ!! 絶対に忘れちゃダメなことが!!
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「え、返金は無しなんですか!?」
「そうなりますね」
担当者の言葉に、私は思わず愕然としました。
「でもまだ月の半ば……」
「そうなんですが、こちらの契約は月単位の物でして。それに"途中解約時の返金は一切無し"と契約書にも明記されていますので」
「え……あ、本当だ……」
差し出された賃貸契約の書類に目を通せば、そこにしっかりと記載されていました。
「海燕さん……どうしてちゃんと確認しなかったんですか!?」
「俺のせいか!? 俺が悪いのか!? 知らなかったんだから仕方ねえだろ!」
恨みがましい視線を向ければ、何故か逆に文句を言われました。
現在、マンションの退去手続きの真っ最中です。
ほらほら、覚えていますか? 先遣隊のみんなに「拠点としてマンションを借りろ」って指示したわけですよ。
ところが色々あって解約するのを忘れていて、しかも今までは退去手続きに出向くような暇も無かったわけで。こうして現在、ようやくの明け渡し作業を行っています。
でもこの場にいるのは
『拙者もいるでござるよ!!』
はいはい、射干玉は良い子ね。
それで話を戻すんだけど、さっきも言った通り退去作業中なのよ。
ところが、期間契約だった上に途中解約しても返金は行わないということが分かって……それでも一応「なんとかならないの!?」と交渉してはいるんだけど……契約書を出されたらねぇ……
……うう、当初の予定は決戦は冬だったから、多めに「来年の
三ヶ月分損したわ……
はぁ……まあ、仕方ないか……
急な退去依頼で管理会社に無理をさせている負い目もあるし、そもそも仕事の合間に来ているから時間が勿体ない……
ここは素直に従っておきましょう。
「返金については分かりました。それと私物の処理についてはどうなってます? 持ち帰れる物は持ち帰っても大丈夫? それとも処理費用が掛かります?」
「それは初期費用に含まれていますので、最悪全てを置いていっても問題ありません」
「部屋のクリーニング代は?」
「はい、そちらも同じく初期費用に込みですので問題ありません」
「仮に備品を壊していた場合、どこまで――」
「……何の話か、さっぱりわかんねぇ……」
担当者の人と確認しながら退去作業を進めていく最中、海燕さんが置いてけぼりになっていました。
「えっ! 別途費用が掛かるんですか!? だってさっき初期費用に含まれているって……」
「はい。前の部屋は問題ないのですが、こちらの部屋は汚れと破損が目立っていますので――」
……あ、壁紙が破れてる……これはヘコみ?
こっちの傷、多分コレ木刀の痕跡……
女性部屋だけ見て、油断してた……こんなことなら、事前に掃除くらいしておくんだった!!
ああもうっ! だったら私にも考えがあるわ!!
現世で買い揃えた私物とか生活必需品、全部持ち帰ってやる!! 一角たちには返さないで
●退去
218話の「契約解除するの忘れてた!」からの、ようやく手続き完了。