お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第264話 現状の整理をしましょう(虚圏側)

「その件でしたら、湯川サンがご心配なさることはありませんよ」

 

 今日も現世で補修作業をしています。

 その合間、休憩時間の最中に少しだけ現場を抜け、浦原商店まで足を運びました。

 要件は勿論、一護についてです。

 

 一護が死神の力を失うってことは、どこかで復活イベントがあると考えました。

 そして、そういう技術的な面で頼りになる相手といえば浦原喜助か涅隊長のどちらか。一護の立場から考えれば、きっとおそらくは浦原がなんとかしてくれることだと思います。

 

 そう思ったので、こうして浦原商店まで来て「黒崎くんの霊力を取り戻す手段は何か無いのか?」と尋ねたところ、返ってきたのが先ほどの言葉だったわけです。

 

「それは、どういう……?」

「いやいや、言葉通りの意味っスよ」

 

 手にした扇子をパタパタと軽く扇ぎながら、軽い調子を続けています。

 

「実はもう、研究は始めているんスよ。黒崎サンが力を失った、あの瞬間から」

「え……?」

「といっても、まだ手探りも手探り。アタシの頭()中だけで、具体的な形には一切なってはいませんけどね」

 

 ……ああ、そういうこと? 

 心配しなくても、とっくにそのつもりだから。だから「心配する必要はない」ってことなのね。

 紛らわしいって怒るべきか、それとも手回しの良さを褒めるべきか……

 どうしたものかと思っていると、浦原の表情が少しだけ沈んで真面目な物になりました。

 

「そもそも黒崎サンが力を失ったのは、元を辿ればアタシが崩玉を作ったせいですからね……アタシが原因でこうなった以上、アタシがなんとかするのがスジってものでしょう?」

「浦原さん……」

「にしても、まさか湯川サンがそんなことを言い出すとは思ってもみませんでしたよ。アタシとしちゃ研究を完成させてから報告して、皆サンをびっくりさせようとか思ってたんですけどねぇ……はぁ、こんなに早く先を超されるとは思ってませんでしたよ」

 

 まだ黒崎サンが目覚めてすらいないってのに――そう言いながら、わざとらしく溜息を吐き出しました。

 うん、普通はそう考えるわよね。

 まだ自分たちの周囲の状況すら落ち着いていないのに、死神の私が気に掛けるってのは変な話よね。

 

「そこはほら、私は黒崎君に最初に土を付けた死神だから」

「ああ、こりゃまた随分と懐かしい話っスね! というかズタズタにしてから治療するとか、あんなの湯川サンくらいしか出来ませんって」

 

 まかり間違っても「アイツ主人公だから復活させるぞ」などとは言えませんからね。

 なので代わりに「それっぽい理由」を口にすれば、浦原が乗ってきました。なので意を得たりとばかりに、少し微笑みながら続けます。

 

「それに彼、なんだか放っておけないのよ。私以外にも心配している人が沢山いるって、知ってるの……だから、かしら……?」

「あははは、確かにそっスね。黒崎サンは人気者スから」

 

 浦原が両手をポンと、景気づけのように叩きました。

 

「アタシも心配する一人ですからね。必ず黒崎サンを元に戻してみせますよ……多少時間は掛かると思いますが……」

「ええ、期待して待ってるわ。何かあれば言って頂戴、何でも協力するつもりだから」

 

 力強く真摯な言葉に、私も強く一度頷きを返しました。

 

 

 

 

 

「んで、それとは別の話なんですが」

 

 一護の話も終わり、現場に戻ろうかと思っていたところ。

 浦原はそう切り出すと店の奥から小さな箱を持ってきました。

 

「いやぁ、お待たせしました」

「なにこれ?」

「どうぞどうぞ、まずは開けてみてください」

 

 訝しげに首を捻る私へ、けれども浦原は先を促すように箱を押しつけてきます。

 その勢いに負けて開けたところ、中にあったのは小さな珠でした。

 手の中にすっぽりと納まりそうなほど小さくて丸い石、宝石を連想するようにキラキラと光を反射しています。

 

「どうっスか? ようやく出来上がりましたよ。ご依頼のあった"個人で虚圏(ウェコムンド)への移動手段"です」

「えっ、これが……!?」

 

 思わず耳を疑いました。

 確かに注文はしていたけれど、まさか今ここで手に入るなんて思っても見なかったわ。

 それに、こんな小さな珠で移動なんて出来るの……?

 

「そっスよ。んで、使い方っスが――」

 

 そんな私の内心の不安を払拭するかのように、使用方法をレクチャーしてくれました。

 使い方だけど「とっても簡単でした」とだけ言っておくわね。

 

「それと、こちらもどうぞ」

「これって伝令神機……?」

 

 黒腔(ガルガンタ)発生装置――仮称だけどね――を感心しながら眺めていたところ、更に追加で伝令神機を三台ほど押しつけられました。 

 

「こちらも湯川サンがお持ちの物と同じく、虚圏(ウェコムンド)と通信が可能な特別製っス。これで連絡取り放題っスよ」

「ありがとう……でも、どうしてこんなものを?」

「どうして? って、移動手段を欲しがっている以上は、通信機も必要でしょう? それに湯川サンの性格も考えれば……ま、何を考えていたかなんて自ずと見えてきますよ」

 

 そう言いながら、ニヤニヤと笑っています。

 うう、なんだか見透かされているみたい……

 

「んで、御代の方ですけど――」

「お金取るの!?」

「移動用の装置が――で、追加の伝令神機はサービス込みで――このくらい――」

「――くっ! 良いお値段してるわね……!!」

「いえいえ、適正価格っスよ? こう見えても精一杯、勉強させて貰ってますから」

 

 

 

 

 

「毎度あり~♪」

 

 

 

 

 

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 お財布は軽くなりました、心はウキウキです。

 具体的には、虚圏(ウェコムンド)の殺風景な景色を見ても「ロマンチックだわ……」と思っちゃうくらいですかね。

 

『その感性はちょっと問題がありそうでござるよ?』

 

 いいの! そのくらい良い気分なんだから!!

 

 

 

 浦原商店で黒腔(ガルガンタ)発生装置を購入した翌日、ちょっと無理を言って休み――半休だけどね――を貰い、試運転してみました。

 結果は大成功でした。

 前回から数えて、大体一週間ぶりくらいですかね? 虚圏(ウェコムンド)への帰郷ですよ。

 

『帰郷というのはおかしいような……』

 

 確かに、ちょっと変よね。言い直すわ。

 

 一週間ぶりのハリベル(褐色おっぱい)との再会です。

 

『なるほど! ぐうの音も出ない正しい表現でござりますな!!』

 

 でしょう!? でもね、ただハリベルに会いに来たわけじゃないのよ!!

 

 見てよこの大きな風呂敷包み!

 色々と詰め込んで持ってきたの!! お土産とか、道具とかを色々と(・・・)ね!!

 

『それはつまり……"ゴクリ"ということでござるか!?』

 

 当然でしょ!! "ゴクリ"に決まってるじゃない!! 待たせたわね!! 具体的には次話予定!!

 さあ、行くわよ虚夜宮(ラス・ノーチェス)!!

 

『おおーっ!!』

 

 

 

 

 

「え、藍俚(あいり)……!?」

「チルッチ! 久し振りね!!」

 

 霊圧感知を頼りに奥へと進んだところ、真っ先に再会したのはチルッチでした。

 私は、今にも抱きつかんばかりの勢いで相手の手を握りしめます。ですが彼女の方はというと、私を見た途端に目を白黒させています。

 

「良く来たわね……というか、死神が気軽に来て良いの?」

「大丈夫でしょ? 別に何かしに来たわけじゃないし」

 

『ナニはしに来ていますがな!!』

 

「まあ、アンタが良いならあたしは別にいいんだけど……そ、それより! 良く来てくれ――」

「この霊圧、もしやと思ってきてみれば……やはり湯川か……」

「ハリベル!! 元気だった!?」

「ああ、無論だ」

「話さなきゃいけないことが沢山あるんだけど、どこか落ち着ける場所を借りても良い?」

「落ち着ける場所? そうだな……」

「――……っっっっっ!!」

 

 会えた……会えたわ!! ハリベルに!! また会えた!!

 夢じゃない、これは夢じゃない!! よかった……死神やってて、本当に良かったわ……!!

 

 ……あら? なんでチルッチは無言で地団駄を踏んでるのかしら?

 

『じぇらしーでござるな……』

 

 

 

 

 

 なにはともあれ。

 ハリベルによって虚夜宮(ラス・ノーチェス)内の一室、長机が設えられた会議室らしき場所まで案内してもらいました。

 ……ここ、アレよね? 十刃(エスパーダ)が集まって会議してる場所よね? 朧気な記憶だけど、こんな場所があったのは覚えてるわ。

 

「それじゃあみんな、集まってくれてありがとう」

「……ああ」

「……なんの用で来たのよ?」

 

 卓の上座――いわゆるお誕生日席――に座ると、まずは挨拶をします。

 返ってくる返事は冷たい物が多いですが、くじけません。

 

 この場には、私たちが関わった破面(アランカル)が集められています。

 具体的に名を挙げると、スタークとリリネット・ハリベルと従属官(フラシオン)三人・ウルキオラ・チルッチ・ロリとメノリ・ネリエルと愉快な仲間たちです。

 

 全員、ハリベルが気を利かせて呼んでくれました。

 

 ちなみにグリムジョーは欠席です。

 なんでも誘ったら「誰が行くか!」と半ギレされたとのこと。

 ……そういうことしてると、村八分な扱いされた挙げ句に海燕さんにも愛想尽かされるわよ? あのすっごい卍解でまたぶっ飛ばされるわよ?

 

「湯川さん、一週間ぶりね」

 

 ネリエルの存在が癒やしだわ……

 

「ところで一護は元気? 怪我とか、してないわよね?」

 

 あ、違う。一護の"ついで"扱いだわこれ。

 でもくじけない!!

 

「その辺のことも含めて、話をしに来たの」

「……その辺のこと、とはどういうことだ?」

「落ち着いて、まずは飲み物でも飲んで。お菓子もあるわよ」

 

 大風呂敷の中身は、いわゆる嗜好品です。

 マンション退去時に残っていた物の再利用なんですけどね。

 疑問符を浮かべるウルキオラを制しつつ、用意しておいたお茶を促します。

 

「まずは虚圏(ウェコムンド)の状況から確認させて貰える? こっちの事はその後で話をするから」

 

 ということで、ハリベルたちの聴取から行いました。

 聞き取った結果を大雑把に言うと――

 

 現在は、当初の交渉通りにハリベルが虚圏(ウェコムンド)を纏めてくれている。

 藍染の仇討ちとばかりに尸魂界(ソウルソサエティ)に攻め込もうとしたり、現世で暴れようとしている(ホロウ)破面(アランカル)もいない。

 なので認識としては、藍染が支配していた頃の小康状態に近い。ただ、あの頃よりは規律も緩くて、各々が好き勝手なことをしている。

 (※ 一部の破面(アランカル)を除く)

 

 ――という所でしょうかね。

 

 一部の具体的な部分は、グリムジョーがウルキオラに噛みついているとか、制御不可能な気まぐれな破面(アランカル)がいるとか、そういった物でした。

 

 そんな風に現状の聴取を終えたところで、ハリベルが頭を下げてきました。

 

「それと、スタークもお前が助けてくれたそうだな。湯川、私からも礼を言わせてくれ」

「……え? ううん、気にしないで。あれも仕事だったし、助けられたのは偶然みたいなものだから」

「それでも、だ。おかげで藍染が現世でどのような行動を取ったのか、知ることができた」

 

 ……ああ、スタークから聞いたのね。

 現地へ赴いて直接見聞きした人からの体験談ってのも、重要だからねぇ……虚圏(ウェコムンド)は情報インフラ、弱そうだし……

 

「ほらスターク! お礼を言わなきゃダメだろ?」

「いや、前に言ったろ?」

「それでもだ!」

「まあまあリリネット、お礼はもう貰っているからそんなに怒らないであげて。次は死神側(こっち)の話をするから」

 

 リリネットの微笑ましい様子に思わず釣られて笑顔を浮かべながら、私も死神側の状況を簡潔に語ってあげました。

 

 とはいえこちらも、言ってしまえば小康状態。

 藍染は倒されて刑を執行されたことで決着は付いている。

 虚圏(ウェコムンド)に積極的に仕掛ける予定も特に無し。そもそも藍染が引っかき回した事件そのものがようやく片付いたので、その後始末に追われている真っ最中ですし。

 

 虚圏(ウェコムンド)側への懸念があるとすれば、涅隊長くらいよね。

 あの人はあの人で勝手に虚圏(ウェコムンド)に行っては、何やら研究のためのフィールドワークとかしているみたいだから「そこは気をつけて」とだけ注意をしておきました。

 

 それから最後に。

 

「――ということなんだけど、もしかすると後始末が全て終わったら『破面(アランカル)を一掃しろ』なんて命令が出されるかもしれないの」

「まさか、それを黙って受け入れろって言うんじゃないだろうな!?」

「そんなわけないでしょう!! そんなことになったら私も全力で異を唱えるつもりよ!!」

 

 アパッチの疑問は尤もですよね。

 

「でも万が一ってこともあるから……だから――はい、これ。渡しておくわね」

「なんだそりゃ?」

「確か……死神が通信に使っている機械、ですわよね?」

 

 風呂敷包みの中から伝令神機を取りだして見せたところミラ・ローズが首を捻り、スンスンは気付きました。

 

「ええ、そうよ。もしもそんなことになれば、この伝令神機で私が連絡してあげる」

 

 と、口ではこのように「万が一に備える」なんてご大層なことを言ってますが、実際はそんなこと一切考えていません。

 私が考えているのは「これでいつでもハリベルと連絡が取れる!」ということだけです。

 

『連絡を取るために通信機器ごと強制的にプレゼントでござるな……ちょっと引くでござるよ……』

 

 なによ! 射干玉は嬉しくないの!?

 もしかしたら、すごく頑張ったら毎日お話ができるかもしれないのよ!?

 

『……ッ!! なるほど……』

 

「それと私の番号も登録済みだから、いつでも連絡してね。それにこの三台それぞれも番号を登録してあるから、上手く利用して。他に誰か連絡をしたい人がいたら言って頂戴。番号を教えてあげる」

 

 そんな風に、簡単な説明を織り交ぜつつ伝令神機を手渡します。

 とはいえ全員分は用意できていないので、それぞれのグループの代表者にでも渡しておきましょう。

 

「はい、チルッチ」

「ありがと」

「リリネット」

「へぇ、こんなのがあるんだな」

「それから、ハリベルも」

「……助かる。だがしかし、本当に良いのか? 湯川の言っていることは、つまりは尸魂界(ソウルソサエティ)への背信に繋がるぞ?」

 

 受け取った機械に興味津々の二人とは対照的に、ハリベルは伝令神機を大事そうに握り締めたまま心配するような目を私に向けてくれました。

 ……うわ、嬉しい……なにこの素敵な表情! 私のことをちゃんと心配してくれてる!! ハリベルの中の私の位置づけが、敵から仲間になってるのね!!

 

 ……え? 背信行為?? それ、何か問題がある???

 ハリベルと四十六室、どっちかを守れと言われたらどっちを守る?

 

『きくまでも なかろうよ! でござるよ!!』

 

 よし、意見は完全に一致してるわね!!

 

「それがどうかしたの?」

「いや……お前が良いというのなら、それでいい……」

 

 ほぼ素の状態で聞き返したところ、ハリベルは頬を赤らめながら視線を逸らしました。

 なにこれ……? なんでそんな反応をしたの……?

 

『(ああ、これは……自分たちのことを組織すら超えて心配してくれていると判断したでござるな。とっくに覚悟は出来ている、今更考える必要も無い。そんな決意を感じてしまい、ギャップから思わずドキッとしてしまったようでござる……)』

 

 なんでかは分からないんだけど、ハリベルは顔を真っ赤にしたまま伝令神機を――

 

 あああっ! ちょっ、ちょっと待って!! 今のシーン!! 今のシーンもう一回!!

 伝令神機を胸の谷間にしまったの!! あの下乳丸出しの格好のまま、下から突き入れるようにして!!

 谷間をかき分けるようにして滑り込んでいって、そのまま両側から押さえつけるよう挟み込んで、保持してる……みたいなんだけど……

 なんでそこに入れたの!? なんでそこに挟んで落ちないの!?

 

 ……いえ、あの弾力で挟まれたら落ちないわね。私も「お体に触りますよ」したから分かるわ……

 

「……ッ……ッ!!」

 

 あ、ペッシェが顔を真っ赤にしながら無言で悶えている。

 きっと、私と同じ事を考えたのね。

 

『録画、しておけばよかったでござるな……』

 

 本当よね……あ! 録画といえば……!!

 

「それからもう一つ、持ってきたの」

「まだ何かあるのか?」

「食い物か?」

「お下品ですこと……」

 

 そうは言うものの、スンスンもこっそり夢中で食べてます。

 現世のお菓子、気に入ってるようですね。また次に来る時も持ってこようかしら。それとも手作りの方がいいかな?

 別の事に頭を悩ませつつ、机の上にポータブルプレイヤーみたいな物を置きました。

 

「何コレ、小さなモニター?」

「どちらかというと、ロリとメノリのための物かしらね?」

「は、あたしたち……?」

 

 これまで我関せずとばかりの態度だった二人は、急に矛先を向けられたことで目を白黒させています。

 

「これは携帯用の映像再生機器なの。そこに録画した物があるから、見て頂戴」

「録画……? 一体何が……」

「……まさか!」

 

 あら、スタークは勘が良いわね。

 彼の予想通りかはわかりませんが、映し出されたのは藍染の現世での振る舞い――その一部始終でした。

 彼が現世に来てから、バラガンに慈悲を与え(切り捨て)たり、東仙を殺したりといったシーンが、余すところなく録画されています。

 

 ……そんなのいつ撮ったのか、ですか?

 あらら、もう忘れちゃった?

 鏡花水月の完全催眠、その対策の一環として「映像を撮り外部が確認し、現場に伝えることで完全催眠の真贋を見抜く」って案を出したでしょ。

 だから現場にはちゃんと、撮影スタッフがいたのよ。

 撮影した映像も全部残っているから、こうして外部に持ち出すことも出来るの。

 

 こんな風に使うことになるなんて、発案した当時は思ってなかったけどね。

 でもこの映像のおかげで、破面(アランカル)たちの目を覚まさせる事も出来るはず。藍染への忠誠心が残り続けた結果、奇妙な方向に歪んでしまって自爆テロみたいな事件が起きたら困るもの。

 

「これ……嘘でしょ……」

「いや、嘘じゃない。以前も言ったが、俺は現場で見ている」

 

 モニターの中の藍染の行動を、ロリは震える瞳で眺めています。

 事前に聞いていたスタークの話に映像という証拠が加わり、否定したくとも頭の中で否定仕切れないような、そんな状態になっているみたいです。

 

『映像メディアを使って、幻想をブチ殺しに来たござるな!! ひっでーことをしてるでござるよ!! ロリ殿とかは特に藍染殿への忠誠心といいますか、盲信のような状態でしたからな!!』

 

「……本当にバラガンを切り捨てていたとはな……仮定だが、この場にいたら私も斬り捨てられていたのかもしれん……」

「俺も、な……」

「う、あ……ああっ!! ああああっ!!」

「ロリ! 待って!!」

 

 ぐるぐるお目々のまま映像を眺め続けていたロリでしたが、やがて感情が昂ぶりすぎたのかプレイヤーを抱きかかえながら走り去ってしまいました。

 メノリもそれを追ってこの場から出て行きます。

 

「こればかりは、時間が癒してくれるの待つしか無いから……」

 

 そんな二人の背中を目で追いながら、私は呟きました。

 

『逆に暴走させる切っ掛けになったらどういたしますかな!?』

 

 その時はその時でしょう?

 そもそもスタークが既に話をしているんだし、大した差は無いわよ。

 

『映像のインパクトは大きいと思いますが……』

 

 

 

「湯川さん! 私からも一ついい!?」

 

 しんみりとしていたところ、これまで特に口を挟むこともなく成り行きを見守っていたネリエルが挙手しました。

 

「ねえ、一護は!? さっきの話の中には一護が出てきていないんだけど、元気でやってるのよね!?」

「あ、ああ……そうだったわね……」

 

 言われて気付きましたが、話題に挙げていませんでした。

 自分の中でも無意識で避けていたのかしら……?

 

「ネリエル、落ち着いて良く聞いて頂戴。黒崎君はね……」

 

 ゆっくりと、噛んで含めるように意識しながら、一護の現状と顛末について伝えます。

 

「……え……? じゃ、じゃあ一護は……」

「遠からず霊力を失ってしまう。そうなればもう、私やネリエルのことも見えなくなるわね……」

「そんな!!」

「そうか……それは少し、残念だな……」

 

 息を呑むようなネリエルの小さな悲鳴。そしてウルキオラがぽつりと呟いた言葉。

 言い方こそ違えども、そのどちらも落胆に染まっていました。

 

「い、行かなきゃ……待ってて一護!!」

「待ってネリエル!! 今行っても意識を失っているから!!」

「あそっか、じゃあ目が覚めてから……」

 

 私は首を横に振ります。

 

「それも止めた方が良いわ。霊力を失った一護の魂魄が、ネリエルの霊圧に耐えられる保証が無いから……」

「俺とヤミーが現世に行った時と同じか」

 

 そんなこともあったわね。

 その時と同じように霊圧の差がありすぎるから、下手すれば対峙しただけで魂魄まるごと潰されかねないの。

 仮にネリエルがどれだけ気をつけたとしても……

 

『虎は遊んでいるつもりでも、遊び相手がネズミだったら一溜まりもない理論でござるな!!』

 

 そういうこと。

 

「もしかすると魂魄の強度で持ちこたえるかもしれないけれど、でも霊力を失っている以上はネリエルの姿は見えないし声も聞こえないわよ」

「そんな……」

 

 へなへなと、ネリエルが力なく座り込みました。

 

「だったら私は……どうすれば……」

「安心して。今、別枠で霊力を戻せないか動いてるから。だから――」

「それ本当!?」

 

 尻餅をついていたかと思えば瞬時に起きあがると、私の言葉を遮るようにして手をぎゅっと握ってきました。

 落ち込んだり喜んだり、ネリエルの感情が忙しすぎる!

 

「え、ええ。本当よ。ただ時間が掛かるだろうから、今はじっくり見守ってて」

「ええ! 湯川さん、ありがとう!」

 

 なんだかやる気になってる……

 

「目指せ! 刀剣解放(レスレクシオン)第二階層(セグンダ・エターバ)!!」

 

 すっごいやる気になってる……!?

 しかも目指す方向ってそっちなの!! え、まさか全員にその辺の情報はもう周知されちゃってるの!?

 

 と、とにかく! これで一通り説明とかお土産の配布とかは終わったわよね!?

 あとやることがあるとすれば!!

 

「話は済んだか?」

 

 タイミングを見計らっていたのでしょう。話に決着が付いたところでハリベルが声を掛けてきました。

 

「ちょっと付き合って貰うぞ」

「ええ、喜んで」

 




●連絡手段
某四番隊の隊長は「これでいつでもお話出来る!」としか考えていない。

●具体的には次話
お待たせしました。本当にごめんね。
(およそ50話振り)
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