お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第275話 滅却師対策会議

「それではこれより、隊首会を執り行う」

 

 あの日から一週間後――隊首会は予定通りに執り行われました。

 ですが今回は、いつもと少しだけ雰囲気が違います。具体的に言うと、厳粛とした空気だったそれがどこか浮ついたような感じに変わっています。

 

 ……死神に復帰した、元仮面の軍勢(ヴァイザード)の皆さんがいるから? いえいえ、そっちではありません。

 総隊長を除く計十二名――あ、私も除くから十一名ですかね――の隊長たちの瞳が、その全てが総隊長の左腕に注がれているからです。

 皆さん、治った腕に興味津々ですね。

 まるで治療後、初めて見たかのように……というか、実際に初めてみています。

 

 ……だって隊長が「各隊士には、無事を知らせるだけで良い。実際に見せるのは隊首会の場で良かろう」って言ったんだもん……

 それがなかったら、私だって隊長を優先して面会させていたわよ……!

 

 とまあ、そんなことがあったので。

 各部隊の隊長には、今日が初のお披露目となります。

 

 ついでにですが。

 手術完了後から退院までの間、総隊長にお祝いの手紙やら回復祝いの人々やらが再び押し寄せてきました。単純に手術成功を祝うものやら、術後の経過回復まで願ってのものなど色々です。

 四番隊(ウチ)で手紙は全て差し止めて、お見舞いの人数も制限しましたが……それでも多かったです……

 ゆっくり休んで、腕を身体に慣らして欲しかったんですけどね……

 それに巻き込まれて、隊長たちまで面会制限されてしまったという……

 

「始めるのは良いんだけどさ……山爺、その腕治ったんだねぇ……いや、話には聞いていたけどさ……」

「俺も驚きました。まさかここまで完全に治るとは……」

 

 口火を切ったのは京楽隊長、浮竹隊長がそれに続きます。

 前述した事情により空白の時間が生まれたことが原因なのか、想定よりもずっと驚いた表情をしていますね。

 総隊長はいつも通り、杖に両手を掛けていただけなんですけども。

 

「ふむ……その様子から察するに、皆には要らぬ心配を掛けたようじゃな……」

「心配したした、ボクなんか心配しすぎて夜も寝られなかったんだよ?」

「ホンマやで? 藍俚(あいり)ちゃん、なんで面会制限なんてしとったん?」

「すみません。けど、総隊長の御意向だったんです」

「湯川が口にした様に、それについては儂の判断じゃ。平子、それ以上責めてやるな」

「へーへー」

 

 そんな風に、総隊長の見舞いに行けなかったことを嘆く人もいれば――

 

「元柳斎殿の腕、対藍染の対策を練っていたあの頃のままとしか思えぬな……いや、気のせいかそれ以上の覇気が漲っているようにも感じられる」

「フム、見事なモノだね。オリジナルと遜色が見られない……複製などという域を超えているヨ」

「まあ、藍俚(あいり)ったら……良くやりました。うふふふ……」

「……こぇぇ」

 

 治った腕の様子を気に掛ける人もいます――

 

 ……あの、卯ノ花隊長? その笑顔はいったい……

 隣の六車隊長が引いてますから、抑えてください。その人(拳西)は、四番隊に所属していた頃の隊長しか知らないんですから……

 

藍俚(あいり)殿、遅くなりましたがお疲れ様でした」

「相変わらず、見事な腕前です」

「いえ、やるべき事をやったまでですよ」

 

 ついでに、両隣の隊長が小声で褒めてくれました。

 ちょっと嬉しい。

 

『拙者も頑張ったでござるよ!? 拙者に賞賛の声は!?!?』

 

 はいはい、射干玉が頑張ったことは私が一番よく知っているから。そんなに拗ねないの。あとでちゃーんと、二人っきりでご褒美をあげるから。

 

『約束でござるよ!! 約束破ったら、拙者泣くでござるよ!! 大声で、力一杯!!』

 

 分かってるから。

 

「……さて、儂の腕の事はそのくらいでよかろう。ではこれより、今隊首会の開催理由について述べる。お主らの中には、既に耳にしている者もおろう……"滅却師(クインシー)の王"についてじゃ」

 

 短いやりとりが出来る程度の僅かな時間を置いた後に総隊長がそう切り出せば、若干浮つき始めていた空気が一気に引き締まりました。全員が息を呑み、さながら戦場のような鋭い雰囲気が室内を包み込みます。

 

「十三番隊の志波からの報告によって判明した。近いうちに、彼奴が復活する。藍染惣右介の一件が全て片付いた以上、我々は次なる危機に総力を傾けねばならぬ」

「あの総隊長……凄く初歩的な質問なんですがね。滅却師(クインシー)の王って、一体なんなんでしょうか?」

「天貝は知らぬか? まあ、あまりにも昔の出来事ゆえ詳細に覚えておる者も少なかろう」

 

 恐る恐る挙手をしながら質問する天貝隊長に、総隊長は片目を開けつつ答えます。

 

「千年ほどの昔に光の帝国(リヒトライヒ)を建国し、現世の全てを制圧した男……それが滅却師(クインシー)の王じゃ。名はユーハバッハ。尸魂界(ソウルソサエティ)へと侵攻して来おった」

「懐かしい話ですね」

 

 卯ノ花隊長が感慨深そうに呟きました。

 ……あ、そっか! 当事者なのよね!!

 

「じゃが卯ノ花が口にした通り、千年前――初代護廷十三隊が返り討ちとした。奴が率いておった星十字騎士団(シュテルンリッター)。その悉くを打ち倒し、ユーハバッハ本人も儂が斬り捨ててやったわ。逃がしこそしたものの、全ては終わったとばかり思っておったが……」

「ああ、思い出したよ。山じいが卍解したってアレだ」

「なっ! 元柳斎殿が卍解を!?」

「そっ。何でも尸魂界(ソウルソサエティ)全土が大変なことになったらしいよ」

「……京楽、今はそのことは議論すべきことではない」

 

 卍解、総隊長のですか……

 炎系の斬魄刀……尸魂界(ソウルソサエティ)全土が大変なことに……

 あら? なんだかそんなお伽話をどこかで聞いたような……炎の化け物がなんとかって、そんな話を……

 それに卯ノ花隊長、またなんだかニコニコしているわね。

 ということは総隊長の卍解って、そんなに凄いの……? 卯ノ花隊長が笑うくらいに……??

 

「じゃが卍解を使う、という点においては相違ない。此度は逃がしはせぬ。再び甦る様なことの無いよう存在全て焼き尽くし、息の根を確実に止めてやる」

 

 そのために左腕を復活させた――とでも言いたげに、これ見よがしに。総隊長は左腕を軽く回しました。

 

『(……ああ、なるほど。こうやって話を聞いていると何となく理解できる気がするでござるよ)』

 

 ……あら? 射干玉が何か喋っているような……

 

『(海燕殿から情報が伝わり、四文字(ユーハバッハ)殿の復活が間近に迫っていると知った。過去に一度倒した相手とはいえ、今回は後れを取るかもしれない。何しろ直近で藍染殿を相手に煮え湯を飲まされているでござるからな。危険に思うのも当然でござる)』

 

 射干玉、おーい?

 

『(片腕を失ったのは、自身が驕った結果から。その戒めとして、原作では一年半もの間ずっと腕を治すこともなかったのではないかと……意地と言いますか矜持と言いますか……何しろ織姫殿やマユリ殿に代表されるように、腕一本くらいなんとでも出来そうなメンツは揃っていますからな……いえ、確か織姫殿だけは"人間をこれ以上巻き込みたくない"という理由で断っていた気もしますが)』

 

 ねえ聞いて? 何か喋っているの?

 

『(ですが今回の場合、事前に知ることができた。そして自らの気持ちと尸魂界(ソウルソサエティ)の危機とを秤に掛けたのでしょうな。天秤が傾いた結果、藍俚(あいり)殿の治療を受けることを了承した……つまりは個人の拘りをようやく捨てて護廷の鬼となりえたのだと認識すべきでしょうか……)』

 

 私も反応した方が良い?

 

『(反対に原作の場合は"急に滅却師(クインシー)が来たので"だったため、腕を治すだけの覚悟も時間も無かった。その結果が隻腕で四文字(ユーハバッハ)殿に挑んで、アレだったと……? 今回のように事前に知ることが出来れば、マユリ殿に腕の補完を頼むことでまた違った結果に――)』

 

 ……そろそろ泣くわよ?

 

『HAHAHAHAHA!! この紳士で淑女な射干玉ちゃんが藍俚(あいり)殿を無視するわけがないでござるよ!! ただちょっと、明日のオカズを……』

 

 タケノコの煮付けでいい?

 

『問題ないと思います!!』

 

「ところで元柳斎先生。そのユーハバッハですが、本当に侵攻して来るのでしょうか?」

「どういう意味じゃ浮竹?」

「千年も前に敗れたんですよね? そんな相手が再び攻め入ってくるなんて俺には信じられ――」

「……滅却師(クインシー)の王は九百年を経て鼓動を取り戻し、九十年を経て理知を取り戻し、九年を経て力を取り戻す」

「――それは?」

滅却師(クインシー)たちに伝わっておる、古い言葉だそうじゃ」

 

 遮るようにして語られた言葉に、浮竹隊長の表情が強張ります。

 

「あの男が諦めぬことは、儂がよく知っておる。故に断言しよう、必ず来る」

「……わかりました」

「話は済んだかネ?」

 

 引き下がった浮竹隊長と交代するように、涅隊長の出番です。

 

「先ほど千年前と言っていたようだが、それはつまり相手に千年もの準備時間を与えたに等しいのだヨ。滅却師(クインシー)たちにこの私ほどの天才はいないだろうが、それでも凡人どもでも千年も研鑽すれば私の足下くらいには近づけるからネ」

「回りくどいヤツやな……何が言いたいねん?」

「わからんのかネ? 千年の間に、死神を相手にできるだけの特異な技術が用意されている――そう考えて当然だと言っているのだヨ」

 

 まあ、そうでしょうね。

 一度破れた戦法を何度も使い回すとは思えません。

 

『一度見たワザは、このゴールド射干玉ちゃんには通じぬでござるよ!!』

 

「よって、千年前の資料や情報は有るだけ用意してくれたまえ。そこから可能な限り推察と対策を用意させて貰うとするヨ」

「…………」

「……なんだネ湯川、その表情は」

 

 ひっ! 思わず口を開けて見ていたら涅隊長に睨まれました!!

 ただ考えていた内容が少し無礼なので、軽く頭を下げつつ理由を言います。

 

「いえ、ただ……以前石田君を相手にしていた経験から、滅却師(クインシー)の解析は完了している――そんなことを仰りそうだと思っていたもので……」

「医術の腕は認めてやらんでもないが、キサマの頭の中はカラッポなのかネ? 考えてもみるがいい。滅却師(クインシー)は二百年前に掃討されている。数で劣る希少種どもが大軍を相手取るには、質を上げるしかない……当然の帰結だヨ」

「いや、ちょっと待ってくれないかな!」

 

 涅隊長の言葉に納得していた一方、京楽隊長が声を上げます。

 

「そうだよ、滅却師(クインシー)はボクたち死神が滅ぼしている。僅かに生き残ってはいるが、その全てには監視が付いている……じゃあ、その滅却師(クインシー)の王様は一体どこにいるんだい? それと護廷十三隊を相手に出来るだけの戦力や技術は、どうやって用意するつもりなのか……」

「「「……ッ!!」」」

 

 比較的若い隊長たちが息を呑みました。

 

「どこかに隠れて力を蓄えている。そう考えるのが自然、だろうな……」

「我ら死神の目を逃れて隠れ潜める場所……そのような場所が存在するのか……?」

「ではその調査は、我々二番隊にお任せください。潜伏場所、必ず突き止めてみせます」

「意気込むのは構わんがネ。例えばそこが断界(だんがい)の中であればどうするつもりなのかネ?」

「……そ、それは……」

 

 あらら、砕蜂が言葉を詰まらせました。

 

「そういった事も含めて、圧倒的に情報が足りていないのだヨ。まずは技術開発局に任せたまえ。お前たち刑軍の出番は、我々の解析が済んでからだネ」

「…………」

「(まあまあ)」

 

 ちょっと拗ねる砕蜂を小声で宥めつつ、もう一つ疑問に思っていることを尋ねます。

 

「ところで総隊長、先ほどの……九百九十九年を掛けて復活するという話ですが。それが事実だとして、具体的には何年何月何日になるのでしょうか?」

「……およそ、二年後といったところじゃ」

 

 一瞬だけ卯ノ花隊長と目配せしあいました。

 まさか、時間に自信が無かったんでしょうか……? でも、千年だもん……責められないわよね……

 

「理解はできたかの? 我らはこれより先、通常の業務と並行してユーハバッハらへの対策も同時に進めていくこととする。各自、部下への通達と対抗手段を講じよ。以上!」

 

 総隊長がシメの言葉を口にして、隊首会は終わりました。

 ……ただ……口にも態度にも一切出しませんでしたけれど、一つだけ気になっていることがあるんですよね。

 

 滅却師(クインシー)の王様なんて大きな情報、一護が関わってるに決まってるんですよ。だって友達に石田君がいるんですから。

 当然、巻き込まれることにもなるはず。

 

 その辺りの情報が――もっと具体的に言うなら、一護関連の情報が見えてこない。

 今日の隊首会、情報の出所は海燕さんです。ですが情報源を推測するに、出所(でどころ)は一心さんでしょう。

 ……だったら、一護も絡んでるに決まっています。

 

『メタ読みでござるなぁ……』

 

 意図的に情報が伏せられている、のかしら……

 丁度良いわ、このまま海燕さんにそれとなく伺ってみようっと。

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

「湯川」

「あら、海燕さん」

 

 帰り際――隊首会は基本、隊長と副隊長で参加します。ただし副隊長は会議が終了するまで別室で待機――に海燕さんを探していたところ、渡りに船とばかりに向こうから声を掛けられました。

 

「実は探していたんですよ。少しお聞きしたいことがあったので」

「なら丁度いい。場所を変えて話すぞ?」

 

 そう聞いてくるものの、態度は有無を言わさないそれでした。

 仕方ないのでそのまま海燕さんの後を付いていきます……あ、勇音にはちゃんと説明していますよ。

 ただ、海燕さんと一緒に行くということは当然、浮竹隊長も一緒な訳です。三人で連れだって向かった先は十三番隊の隊舎、その隊首室でした。

 

「付き合わせてすまねえな、湯川。ただ、一応お前には聞かせておいた方が良いと思ってよ」

「私には聞かせておいた方が良い……?」

「というより、もう湯川隊長は勘付いているんじゃないか? 海燕に用があると言っていたし」

 

 隊首室に到着して、促されるまま席に座れば。海燕さんの軽い謝罪から始まりました。それに続いた浮竹隊長の言葉で、どうやら自分の予想が正しかったのだと悟ります。

 

「ひょっとして、今日の議題にあった滅却師(クインシー)……黒崎一護と関係があるんですか?」

「……ああ」

 

 海燕さんが苦々しい表情で頷きました。

 

「その様子から察するに、お友達の石田君が滅却師(クインシー)だから――とかいう規模では済まない話、ですよね……?」

「……ああ、そうだ。一護君、彼の母親は滅却師(クインシー)だ」

 

 へえ、そうなの。

 お母さんが滅却師(クインシー)……え……???

 

「……は……? はぁっ!?」

 

 堪えきれず、珍しく素っ頓狂な声を上げてしまいました。ですが海燕さんたちは特に何かリアクションをするでもなく、好意的に頷いてきました。

 

「驚くのも当然だぜ。俺も一心から聞いた時にゃ頭を抱えたもんだ」

「俺も海燕から報告が上がってきた時には、久しぶりに胃が痛くなったよ」

 

 そりゃあ、そうでしょうね!!

 

 というか嘘でしょ!? 一護って滅却師(クインシー)でもあったの!?

 死神で、(ホロウ)で、滅却師(クインシー)って……なにその夢の欲張りセット!! 一粒で三度美味しい存在じゃない!!

 

『実は一護殿には、もうちょっとだけヒミツが……』

 

 えっ、まだ秘密があるの!?

 

『(祖父母とは……一心殿は純正死神でござるし、真咲殿は純正滅却師(クインシー)でござる故、宇宙人だ魔女だなどということはありえませんが……ですがここは訂正せずに黙っておく方が絶対(ぜってぇ)面白っぇ反応が返ってくるでござるよ! よって――)』

 

 ていうかこれ以上って何!? 祖父が宇宙人で祖母が魔女とでも言うの!?

 

『………………』

 

 そのイノセントな目は止めなさい!! ちゃんと言って!

 あ、ごめんなさいやっぱり言わないで!!

 

『実は、モヒカン刈りが……』

 

 わーわー!! 聞こえな……は? モヒカン……?

 

『それよりも、お二人が藍俚(あいり)殿のことを心配そうに見ているでござるよ?』

 

 くっ! 覚えておきなさい!!

 いつか、えーとえーと……ひどいことしてやる!!

 

「すみません、取り乱しました。そんなことより海燕さん。一心さんから話を聞いた……ということは、現世駐在の時に知ったってことですよね?」

「まあな」

「一心さんも知っていて、でも二十年近く黙っていたと……?」

「あー……それにゃ、色々と理由があってだな……実は――」

 

 さらに海燕さんから語られる、一護の出生の秘密。

 その内容に、自分の中で心がどんどん折れていくのを感じます。

 

「――って話だ」

「……えーと、一心さんは死神の力を失ってて、ユーハバッハは母親の仇で、浦原さんもこの秘密には関わっていて、あと石田君は親戚で……」

 

 あ、駄目……自分で列挙していても、頭がおかしくなりそう……

 とは言うものの、浮竹隊長らの"伏せる"という判断もわかります。

 

「確かにこんな話、総隊長(うえ)に報告できませんよね……」

「いや、俺も元柳斎先生に報告はしたんだ。けど今日の隊首会でも聞かされた通り、一護君に関しては伏せる方向で進めるようだ」

「それが良いと思います……下手に出生の秘密を広めると、ロクなことにならなそうですし……」

「そもそも一護のヤツは本来なら、現世で平和に学生やってるはずの人間だ。これ以上死神だ滅却師(クインシー)だなんざ厄介ごとに関わらせるべきじゃねぇんだよ! んなもんは、俺たちだけでやりゃいいんだ!」

 

 海燕さんの力説が続きます。

 お父さんですものね、子供は守らないと。

 

「ついでに言うなら、一護君の立場は色々と危ういものだと分かってしまった。しかも彼は霊力を失い、自衛すら困難な状況だからな。巻き込ませたくはなかったんだよ」

「力が無けりゃ、(ホロウ)がらみの事件が起きても気付かねえ。気付かねえなら、関われねえだろうからな。今の状況はある意味、不幸中の幸いってヤツだ」

「なるほど……」

 

 言い分はご尤も。

 仮に何か事件が起きても織姫さんや茶渡君、石田君がいれば、駐在の死神だっています。これだけ揃っていれば多分、なんとかしてくれることでしょう。

 少なくとも、藍染クラスの強者が突然襲いかかってこない限りは。

 

『(空座町の駐在はイモ山殿でござったような……大丈夫でござるかなぁ……)』

 

 なんか射干玉が不穏な空気を醸し出しているわね。

 そこまで心配するようなことでも――あっ!! 

 

「そういえば私、浦原さんに黒崎君の霊力を取り戻す研究を依頼しちゃいました!」

「なにっ!?」

 

 浮竹隊長が一瞬だけ驚いた顔をしますが、すぐに落ち着きを取り戻します。

 

「……いや、アイツなら放っておいても研究やってそうだな」

「そうですね。依頼した時には『もう始めている』って言ってましたから」

 

 どうやら私たちの中には"浦原喜助ならば絶対にやる"という共通認識があったようです。

 

「それと海燕さん? 関わりようがないっていう意見は、ちょっと違うと思います」

「なんだと?」

「だって黒崎君は海燕さんと同じ、志波家に関わっているんですよ? それに(ホロウ)についても知っているんです。仮に力が無いままだとしても、間違いなく関わってくると思います」

「なるほど、そう言われればそうだな。俺も色々と思い当たるところが……」

「ちょ! 隊長!?」

 

 海燕さんを横目で見ながら、しみじみと呟く浮竹隊長でした。

 

「とにかく、だ。一護君の対応はもう一度俺たちの方でも考え直してみるよ」

「そうですね。総隊長とも良くご相談をした方が……」

 

 話が纏まったところで、ふと思い出しました。

 

「そういえば海燕さん、捩花を取り戻したんですよね? 使い心地はいかがですか? 都さんに斬魄刀を返す――」

「……ゆ、湯川!」

 

 なんとなく話題を切り替えたところ海燕さんの目が爛々と輝き始め、同時に浮竹隊長が"余計なことを"とでも言いたげに視線で訴えてきます。

 

「おっ! その話か!? 聞きてえか? 聞きてえよな? 何しろようやく卍解が使えるようになってよ! 都にも話したし、それに氷翠(ひすい)のヤツは捩花とは初対面だからな!! 試しに見せたらよ、氷翠(ひすい)のヤツ大喜びでな! なんでだか知らねえんだけど、えらくお気に入りで! 『父様とお揃いの斬魄刀が欲しい』とかダダをこね出してもう大変でよ!! 今までそんなワガママ言うような娘じゃなかったんだが――」

「は、はあ……」

 

 ああ、浮竹隊長が言いたかったのはこのことだったんですね。

 自分の斬魄刀が戻ってきて、卍解も覚えて、娘からの評価もうなぎ登りになって……

 そりゃあ浮かれてベラベラ喋り始めますよね……

 

『遅い親バカ! 遅れてきた親バカでござるよ!!』

 

 結論だけ言うと。

 一護の件の倍の時間くらい、海燕さんの話を聞かされる羽目になりました。

 




●対策会議
でもコレ全部、滅却師(クインシー)らは監視してるんですよね……

●復活するまでの下り
具体的には「九年を経て力を取り戻す」の部分。

あの日(本編開始七年前、一護の母が力を取られた日)に聖別して力を奪って、それから九年掛けて力を完全に取り戻した。という解釈……で良いんですよね?
(聖別した時点で、力を完全に取り戻した。
 という解釈だと「藍染相手に死神たちが現世に行ってる時、滅却師(クインシー)たちは漁夫の利で瀞霊廷を襲っちゃえ」が出来てしまうわけで。
 なので「九年掛けて力をモグモグ、全部食べて完全復活したよ。完全回復して、一年くらい力の確認とかして準備が整ったよ。さあ最終決戦だ」の流れと認識しています)

(認識が間違っていたとしても、書き直すとは言っていない)

●千年前に陛下が逃げる際
総隊長の卍解に袈裟斬りにされて、逃げた(影の中に身を潜めた)
という認識なんですけど。

「これ(影の中に潜れる事実)」を、総隊長は知っていると認識していいんでしょうか?
ざっと描写を見た限り、知らない様子なので。
その方向で進める予定です。
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