「これ、新作なんだけど……味はどうかしら?」
「美味い……だが、私はどちらかと言えばもう少し甘くない方が好みだ」
「そう? あたしはもっと甘くても良いくらいだけど?」
ハリベルとチルッチから、全く真逆の意見が返ってきました。
どうすれば良いのかしら……?
……よし! 今度は両方作って持って来ましょう!
「それにしてもさ、
「なんだ、不満でもあるのか?」
「べーつーにー、ただ"変わってる"って言っただけでしょ」
ハリベルの言葉にツンとした顔を見せながら、チルッチはティーカップを手にして紅茶を口に含みました。
「おかげでこんな美味しいお茶とお菓子を食べられるんだもの。何か下心があっても、不満なんて消し飛んじゃうわ」
「当人には色々言いたいところですが、味については同意ですわね」
スンスンがすまし顔で頷くものの、アパッチたちの反応はいまいちです。
「そうか? あたしはもう少し重くても良いくらいだ」
「ああ」
「……全く。あなたたち二人の頭には風情という言葉は無いのかしら?」
「「なんだとスンスン!!」」
あらら、一触即発の雰囲気ね……いつものことだけど。
どうしようかしら……
「そこまでだ」
「「「っ!!」」」
――と思っていたら、ハリベルの言葉に三人とも動きをピタリと止めました。
「わざわざ湯川が用意してくれた場だ。喧嘩をしたいのなら外でやれ」
「も、申し訳ありませんでした! ハリベル様!!」
「あはは……まあまあ……」
三人が揃って頭を下げたところへ、私は「気にしていない」とばかりに割って入ります。
「それよりも感想を聞かせて貰える? 他にリクエストとかもあれば教えて欲しいの。重めの食べ物ってことは、次のお茶会には軽食も用意した方が良いかしら?」
「あっ、良いの!? じゃあ私は果物!!」
ネリエルが手を上げながら要望を口にしてきました。
はいはい、果物ね。何が良いかしら……?
『でしたら一護――もとい、苺がイイでござるよ!! 同じ名前ということで、ネリエル殿もきっと大喜び間違いなしでござる!!』
なるほど! 一理あるわね!
『口の中でイチゴを玩ぶネリエル殿……! イチゴは抵抗も出来ずにされるがままに……!! か、考えただけで拙者興奮してきたでござるよ!! ハァハァ……!! つ、次のお茶会はまだですかな!? 明日、開催してくれますかな!?』
いいと……いや、無理だから。
基本は死神のお仕事があるんだから。早くても来月よ?
『そんな……ッ!!』
まったくもう……
……あ、置いてきぼりにしちゃったかしら? 状況、よくわからなかったわよね?
でも、別に大したことをしているわけじゃないの
今日も
ただ今日の目的は、お茶会。
紅茶とお菓子を持参して、それからちゃんとカップやらポットやらも本格的なのを用意して雰囲気を出しているの。雀部副隊長に教わりました。
こうやってお茶会をするついでに
『死神の業務内容に、そんなものは一切ないでござるよ?』
こ、これも大事なお仕事だから!
あと、雀部副隊長が育てている茶葉の試飲とか、雀部副隊長が開いているお茶会用のお菓子の新作を味見して貰ったりとか! そういう意味合いもあるの!
『と言ってもメンツは女性
女性限定って言うけどさ……
じゃあ射干玉は、ウルキオラとかグリムジョーを呼んだところでまともな感想を言ってくれると思う?
『……拙者が間違っておりました』
綺麗な土下座ね……
でもまあ、射干玉が言った通りです。
この場には女性の
ハリベルたちとか、チルッチとか、ネリエルとか、あとは――
「あたしも、甘い方が好き……かな……?」
「うん、あたしも……」
ロリとメノリの二人とか、それから――
「なあ、これってもう無いのか?」
忘れちゃいけない、リリネットもいます。
……ってリリネット、もう全部食べちゃったの!?
「ごめんなさい。人数分しか作ってないの」
「そっかぁ……あ、じゃあ次はさ、もっと多めに作ってきてよ!」
「……善処するわね」
持ってくるの、結構大変なんだけどね。
私がリリネットの相手をしている横では、チルッチがニヤニヤとした目でロリとメノリのことを見ています。
「ふ~ん……」
「なっ、何よ……!?」
「べっつにー」
興味の無い素振りを見せつつも、チルッチの視線は二人へ――正確にはロリと髪とメノリの手首に注がれていました。
そこは
私がプレゼントしたアレです。
よかった、ちゃんと付けてくれて。気に入ってくれたのかしらね?
『ロリ殿とメノリ殿をたらし込んだ結果でござるよ!! もうアレ、当人たちの中では忠誠の証レベルになってそうでござるな!!』
それはさすがに言い過ぎ、考えすぎよ。
とか思っていると、ハリベルが口を開きました。
「……大した物だな」
「何が……?」
「あの二人のことだ。特にロリは、藍染が健在だった頃からその振る舞いは高圧的だった。湯川も手を焼いただろう?」
「あはは……」
その言葉に、思わず乾いた笑いを浮かべます。
そっかぁ……ハリベルもそんな風に思っていたのね……
「ところで、その二人は今はどうしているの?」
「どう、と言われてもな……まあ、私を手伝おうとしてくれているぞ」
「へぇ……」
あら意外。
私が言ったこと、ちゃんと聞いてくれているんだ。
「とはいえ、そこまで大したことは任せていない。そもそも今の
「そうなの?」
「
そっかあ……前は小康状態だとか言ってたけれど、もう落ち着いたのね。
『しかもその怖い死神の隊長が、定期的に
ああ、涅隊長のこと?
『……いえ、現在
……え、私?
『
そっか……私が
「――あ、ハリベル。ちょっと待ちなさい。今のは聞き捨てならないわよ?」
「なんだ?」
チルッチが割って入ってきたかと思えば、指を一本立てます。
「いるのよ、面倒なのが」
「何……!?」
「ま、アンタは知らなくても当然か。なにしろ
そっか。一護たちが遭遇しなかったってだけで、危険なのがいても不思議じゃない。
どうやらハリベルも詳しく知らなかったみたいで、目を丸くしています。
「どんなヤツだ?」
「ヤツっていうか……ヤツ
「ら?」
「そうよ、ら。まあ、気まぐれで行動なんて全然読めないから、心配するだけ無駄なんだけど」
複数形で、気まぐれで行動が読めない……?
それって――
「まるで小さな子供みたいね」
「あ、
「……え?」
あっさりとした肯定の言葉に、思わずこっちが拍子抜けしました。
「そいつはピカロって名前の、ガキの集団なのよ」
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「ピカロって名前、知ってますか?」
「ピカロ……?」
コーヒーカップを片手に、スタークが怪訝な顔を浮かべます。
「子供で、集団の
「……ああ、思い出した。アイツらか」
そう呟くとコーヒーを一口、口に含みました。
「昔、藍染様が作った
「百人の子供……!? それが、一体の
「詳しくは知らないが、統一の意思みたいなものがあるらしい。個にして群、だとか言ってたな……」
個にして群、ねえ……蟻とか蜂みたいな感じなのかしら……?
しかも百人の子供って……うわぁ、考えただけでも統率なんて取れなさそう……
『ちょっと目を離した隙に、二・三人消えてそうでござるな』
幼稚園の先生とかって、大変な仕事よねぇ……
「けど性格も子供なもんで、まるで言うことを聞かない。どうなるか予測ができないってんで、
「ルヌガンガ……?」
どこかで聞いた様な……誰だっけ?
一護たちが戦った3桁の誰かの名前、だったかしら……? なんだかこう"その辺り"で聞いたような名前なんだけど……
私が記憶を辿っている横で、スタークはコーヒーを飲み干しました。
「ところでコレ、美味いな。もう一杯貰えるか?」
「気に入ってもらえました? 良い豆が手に入ったんですよ。カフェ・ブラックスターってお店の――」
『
何、どうしたの?
『たしか拙者たちは、ハリベル殿たちと一緒にキャッキャウフフしながら紅茶を飲んでいたハズでは!? それがどうしてスターク殿と一緒にいるでござるか!? しかも飲み物もコーヒーになっていますぞ!!』
コーヒーだけじゃなくて、お茶菓子のバターサンドも用意してるわよ?
『なんと!? ……いや、そこではなくて!!』
分かっているわよ、ちゃんと説明するから。
ハリベルたちと一緒にお茶会をしました。
お茶会が終わりました。
今度はスタークたちと一緒にお茶会をしてます。
――というわけ!
『なるほど……完全に理解したでござる!! つまり、もう死語となってしまった女子会の後の男子会というわけでござりますな!!』
一応男性
ただ、ハリベルたちに出した食べ物はスタークたちの好みには合わないだろうから、こうやって変化を付けているの。
コーヒーはあんまりツテがなかったから、浦原経由で現世から仕入れたわ。
それとほら、原作で藍染が「紅茶、行き渡ったかな?」みたいな事を言ってたシーンがあったでしょう?
だから、こういうお茶会にすればスタークたちも受け入れてくれると思って。
『あのシーン、どうみても紅茶を飲むカップではないでござるよ? ポットもコーヒードリップ用の物にしか見えねえでござるし……藍染殿には特命係のあの人を見習えと言いたいでござる!!』
それは……ほ、ほら! 藍染も現世の文化にはあんまり詳しくなかったんじゃない……!?
だからきっとそれっぽい感じにしただけで、あのお茶もきっと雀部副隊長の見よう見まね……って、なんで私が藍染のフォローしてるの!?
『軟水で抽出だとかジャンピングだとか、藍染殿はめっちゃ拘りそうでござるが……』
そこは私も完全に同意するわ。
『それとは別に、もう一つ疑問があるのですが……どうして男女で分けたのでしょうか? 纏めて開催してしまえば色々と手間が減ったと思いますが?』
……ハリベルたちと一緒にキャッキャウフフしたいでしょう?
『確かに!! そのための手間を惜しんではなりませんでした!!』
「――ところでピカロのことだが、なんで俺に聞いたんだ? リリネットだって知ってるハズだろ」
「う……」
スタークの言葉に、リリネットが渋面を浮かべます。
「……あんまり覚えてなかったんだよ」
「はぁ……そういうことか……」
「い、いいだろ別に!」
そう言うとリリネットはバターサンドを食べ始めました。
「お前確か、ハリベルたちのところでも何か食ったって言ってただろ? 太るぞ?」
「仕方ないだろ! だって
そうです。
実はリリネット、
最初は「スタークとあたしは一心同体だから」みたいなことを言ってたんですけど、もう開き直ったのね……
『
人聞きが悪いわね。
「ウルキオラとグリムジョーはどう?」
「ああ、この苦みが良いな」
「……ケッ! ま、泥水よりはマシってところだな」
そう言いながら、ウルキオラはぎこちない笑顔を見せてくれました。
グリムジョーは……うん、口は悪いですがカップが殆ど空になっているところを見るに、気に入ってるみたいね。
やっぱり私が見込んだ通り、
藍染もコーヒーを淹れてあげれば、あの会議だってもっと平和になってたと思うの。
『あの会議のシーン、誰も紅茶に手を付けていなかった気がしますな……ゾマリ殿くらいは飲むべきだったのでは!? キャラ的に!』
「文句があるのなら、お前は来なくても良いんだぞグリムジョー」
「なんだとウルキオラ! 俺だって来たくて来てるんじゃねえ!! ただ、コイツがいりゃ志波の情報を――」
「飽きねえな、アイツらも……」
言い争いを始めた二人を、スタークがやれやれと言った顔で眺めています。
「暴れ出したら、スタークが止めてくださいね?」
「え、俺がかい? ……ま、美味い茶を淹れてくれた礼だ。そのくらいは協力するさ」
「というかスタークはサボりすぎなんだよ! ハリベルのことだって全然手伝わないし!」
リリネットが声を上げました。
そういえば
「仕方ないだろ? 統率なんざ、俺にゃ向いてない。そういうのは
「うー! スタークはいつもそうやって!」
「それにな、グリムジョーとウルキオラの面倒だって見てるんだぞ? ……一応は」
一応!? ま、まあ……癖の強い二人だしね……
「けどそう言うってことは、ウルキオラとグリムジョーの近況について詳しいの?」
「まあな……けど、そんな言うほどのことは特にないぞ?」
そう前置きすると、にらみ合っている二人にスタークは視線を向けます。
「ウルキオラは、しばらく前までは身体を休めていたんだが、最近になって修行みたいなことを始めたな。それと、少しだが表情が変化するようになったことくらいか?」
へえ……
さっきコーヒーの味を聞いたときもだけど、良い変化があったみたいね。
最初の"休んでいた"っていうのは、身体が元の状態に戻るまで休息していたんでしょうけれど……修行ってことは多分、一護との再戦を意識しての行動よね?
決着が納得いかなかったからってことで、再戦を約束してたし。
でも下手に強くなられると桃が泣くから、ほどほどにしてあげて……
あの子も一応、ウルキオラのことはライバル視してるんだから……
「グリムジョーは……ま、大人しくしてるよ。今のところは」
但し書きがついたわね。
内心では、海燕さんへの雪辱戦をやりたくてしかたないんでしょうね。でも、スタークが見張っているから大人しくしている、と……
『そのうち
でもノコノコやってきたら、隊長数人掛かりで押さえ込まれるわよ? その辺の分別はあるでしょうから、狙うとすれば海燕さんが一人で離れた場所にいる時とかかしら。
「話によると、死神に借りを返したいんだって?」
「ええ、まあ……色々とあったので……」
「……ま、せっかく縁が出来た仲間だ。もう少しくらい付き合ってやるか」
……?
何か、スタークがちょっとだけやる気を出している……? なんで??
『ところで男子会のメンバーに、どうしてペッシェ殿とドンドチャッカ殿はおらぬのですかな? 女子会でも姿を見かけませんでしたが……』
……察して。
『あ、はい(……女子会など、嬉々として参加しそうでございますが……チルッチ殿が睨んだのでしょうか? 男子会はこのメンツですから、考えるまでも無く逃げたと分かりますが……)』
「なあなあ
男子会も終わって、後片付けをしていたときでした。
リリネットに呼ばれ、私は作業の手を止めて彼女に向き直ります。
「どうかしたのリリネット? お菓子のリクエスト?」
「あ、あのさ……」
「?」
「ロリとメノリにしたやつ、あたしもお願いしていいかな……?」
「……!?」
予期せぬお願いに、思考が真っ白になったのを自覚しました。
●お茶会
茶を飲み駄弁りつつ、状況の整理をしている。
ところで、紅茶とコーヒー。
参加するならどっちが良い?
●カフェ・ブラックスター
特に意味は無い。ウルトラ的な意味も無い。
●ピカロ
なんとなく「スタークは最初からずっとNO.1だった」のイメージがありまして。
そのためピカロが破面になった時期も知ってて、教えてくれた。
(ハリベルは知らない。チルッチはお隣さんみたいなものだから少し知ってる)
という扱いにしています。
(この後、ハリベルたちも調べて知る)
(でもピカロは多分、私の実力ではマッサージ無理……)
●ペッシェとドンドチャッカが不在
この二人がいる状態で、ちゃんと話を進められる自信がありませんでした。
●リリネット
ちみっこ ほんとうに むずかしい
わたし しってる
でも がんばって もむ