お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第283話 あいりん×あいりん

『まるでどこかのハンター漫画のようなタイトルでござるよ!!』

 

 きゃあああっ!!

 び、ビックリしたぁ……まさか第一声が射干玉から始まるなんて……

 時々あったけど、今回は完全に油断してたわ……

 

『ちなみに現在(2024年2月時点)、まだ完結しておりません』

 

 アレまだ終わってなかったの!?

 ……まあ、仕方ないか。ずーっと休載してたし……

 そういえば現世でジャンプが売ってたけれど、この世界でもハンター漫画って掲載されていたっけ?

 なかった気がするけど、たまたま休載してただけなのかしら……?

 

『ところで藍俚(あいり)殿、今は一体何を? 厨房にいることは分かりますが……そのタマゴやら小麦粉やらは……?』

 

 今? 今はね、四番隊(ウチ)の調理場を借りてお菓子の練習中なの。

 ほら、前にネリエルから「フルーツが良い!」ってリクエストを受けたでしょ? だから、試作してみようって思って。

 

『なるほど! ではそのタマゴを使うわけですな!!』

 

 そういうこと!

 

「ま、やってみましょうか」

 

 現在は業務時間中なので、他の隊士の子たちも働いています。

 色んな子たちの注目の視線を浴びています。

 

『それはつまり、隊長自ら仕事をサボっているわけで……』

 

 この後、みんなに食べさせて口止めさせておくから大丈夫。

 ということで。

 

 卵とグラニュー糖を泡立てて、そこに小麦粉を加えて混ぜて――

 

「くんくん、くんくん……」

「なんだか美味しそうな匂いがする……あまーい、あまーい……」

 

 ――あら? なんだか、観客の数が増えてるわね。

 具体的には二人。それも女性。

 それも四番隊(ウチ)の隊士じゃない二人が。

 

「……あれって……」

 

 思わず手を止めて二人を見つめます。

 すると私の視線に二人も気付いたようで、ものすごい勢いで近寄られたかと思えば一瞬にして挟まれました。

 

「あーっ! あいりんまた何だか美味しそうなの作ってる!!」

「ねーねー、あいりんそれなに!? 取材! 取材させて!!」

 

 うわ……ステレオで喚かれるのってちょっと頭が痛くなるわね……

 周りにいた四番隊(ウチ)の隊士たちも、この二人のかしましさに食傷気味なのか、ちょっと距離を取っています。

 

 裏切り者!! ……とは言えないわよね。私も逆の立場だったら、こっそり逃げてそうだもの……

 

 あらかた予想は付いたと思いますが。

 忍び込んでいたのは、十二番隊の草鹿三席と九番た――もとい、URSE記者の久南さんです。

 

(ましろ)殿は死覇装も着ていますが、書類上は死神ではありませんからなぁ……ただ拳西殿の近くをウロチョロしているだけの自由人でござるよ』

 

 本当にね……なんで許されているのかしら……?

 

「これ? これはね、果物を入れた甘いオムレツなのよ。ちょっと要望(リクエスト)があったので、試作してみているところ」

「甘いの!?」

果物(フルーツ)!?」

 

 二人の目が同時に輝きました。

 

「「食べたい!!」」

 

 と、二人は異口同音すると――

 

「「……!?」」

 

 ――再び同じタイミングで顔を合わせました。

 

「ねえ、あなた誰?」

「あたし? あたしはね草鹿やちるって言うの。あいりんのお友達だよ! あなたは?」

「あたしは久南(ましろ)! あいりんの親友で、URSEなのだ!!」

「なにそれすっごーい!!」

 

 あ、久南さんの役職名に草鹿三席が食いついたわね。

 

『というか二人とも、藍俚(あいり)殿の呼び方が被っているでござるな』

 

 そうなのよね……

 

「そーだあいりん!! 柿、柿は!?」

「柿?」

「もー、忘れちゃったあ!? ほら、前に拳西たちと飲んだときに言ったじゃんかあ!! ローズのところの干し柿が食べたいって!!」

「柿!? 柿が入ってるの!? じゅるり……」

 

 言ってましたけど……ええ、言ってましたけどね……

 

「ごめんなさい、今回は用意していないの。特に考えてもなかったから」

「ええーっ! そうなのー!?」

「あいりんのいじわるー!!」

 

 どっち!? 今どっちが言ったの!?

 草鹿三席の口から流れ出ていた涎が一瞬で引っ込んだのは分かったんだけど。

 

「また今度ね。それに干し柿を使うとなると……クリームチーズとか……?」

「「何それ美味しそう!!」」

 

 あ、ちょっと案を出しただけで一瞬にして機嫌が直ったわね。

 

「仕方ないなあ! じゃあそれはまた次の機会にしておくね!!」

「うん! やくそくだよ!!」

 

 約束、した覚えはないんですけどね……

 そう言うと二人ともどこからか椅子を持ってくると、それに座って私の作業を眺めて――

 

「あの、お二人とも? どうしてそんなにじぃーっと見ているんですかね?」

「だってぇ、ここならあいりんのお菓子が出来たのすぐにわかるでしょ!?」

「そうそう! 出来たら一番最初に食べてあげるからね!」

 

 予想通り、食べる気満々だわ!

 

「それにあたし、URSEだよ? あいりんの新作のことも瀞霊廷通信でちゃーんと紹介してあげちゃうよ!? だから(ましろ)には食べる義務があるの!」

「あっ、だったらあたしも!!」

 

 思い出したようにそれっぽいことを言い出し始めた!

 久南さんは確か、現世の紹介を記事にするとか言っていた気がするんだけど……?

 

藍俚(あいり)殿……もう諦めた方が……』

 

 みたい、ね……野良犬にでも噛まれたと思って諦めましょう。

 そうしている間にも準備は着々と進め、焼いた生地の上に生クリーム塗って、果物を並べて形を整えれば――

 

「とりあえず、こんなところかしら?」

「できた!?」

「じゃあさっそく、あたしが味見してあげるね」

 

 うわ、手が早い……

 アッという間に取られたわ。

 

「ん~……甘くって、ふわふわ~……」

「うわぁ……何これ何これ!?」

 

 小さめに分けていた事もあってか、二人とも一口でペロリと食べてしまいました。

 もぐもぐと咀嚼しながら、蕩けそうな顔をしています。

 

 ……仮にも味見って言うのなら、もうちょっと感想とかはないのかしら?

 一応これ、外側の生地厚くしてふっくらするように気をつけたつもりなんだけど……そういう意見は……?

 

「おかわり!」

「あ、待って! 悪いんだけどこれってまだ試作品なの。だから一人一口までしか作ってない――」

「ええーっ! 駄目だよそれえ! もっとたっくさん作らないと!!」

「そーそー! しさく? だからって、手抜きはめっ! ちゃーんとお腹いっぱいになるまで作ってよー! ねーねーあいりーん! お願い!!」

 

 ……泣いていい?

 

『お上にも情状酌量の余地はあると思うでござるよ』

 

「みんな、ごめんね。また今度作るから」

 

 四番隊(ウチ)の子たちに頭を下げて謝ると、みんな仕方ないといった表情で不承不承離れていってくれました。

 二人はそれが「もっと食べて良いよ」という合図と勝手に受け取ってくれたようで、食べる手を再開します。

 

「もう食べながらで良いから、一つだけ聞かせて。どうしてお二人とも四番隊に?」

「……え? なんであいりんの所に……?」

「あたしはね! あいりんが何だか美味しそうな物を作ってる予感がしたの!!」

 

 うん、草鹿三席はそんなところだと思ったわ。

 今までも時々、そうやって野生の勘みたいな理由でお菓子をたかりに来ていた物ね。

 でも久南さんはなんだか首を捻ってます。

 

「あとね、剣ちゃんに美味しい物を持って行ってあげようって思って」

「更木副隊長に? そういえば卍解の修行をしていたはず……」

「そうなの! でも剣ちゃんいっぱい大変だから、差し入れ!!」

 

 差し入れ、ねぇ……

 

『(あら……? 確か、更木殿の卍解はアレで……鍛錬のレベルだとしても、やちる殿が消えてしまう……いや、再度具現化すれば問題ないですが。となるともう具現化は平気で行っている? ……そういえば時々藍俚(あいり)殿に治療をお願いしに来ましたが、アレはそのときの傷……? 卯ノ花殿による厳重な管理の下で行ったとしても……)』

 

「それでねそれでね! 剣ちゃんがちゃーんと卍解できるようになったら、あいりんと斬り合いしたいって!!」

「えええぇっ!?」

 

 無邪気な笑顔で、爆弾発言が飛び出しました。

 

「じょ、冗談ですよね……?」

「んーん、違うよ。約束だよ!」

 

 約束……えっ、いつの間に!?

 卍解ってアレですよね!? 時々怪我を治しにきているアレ! あの傷だけでも何となく想像は付くとはいえ、更木副隊長が"あんなこと"になるような性能を私に受けろと!?

 

『(ちゃーんと……つまりはアレを完全制御できるまで……いえ、更木殿のことですから"全力で暴れ続けても平気なくらい"という意味でしょうな……その場合藍俚(あいり)殿は、本気(虚化)全力(刀剣解放)かつ真剣(卍解)になれば……なんとか生存"だけ"は出来そうですな……)』

 

「あっ! そうだった!! あいりんのところに取材に来たんだった!!」

 

 油断していたところで久南さんが声を上げます。

 それ、つまみ食いしたいだけの方便じゃなかったのね……




●今回の二人
あだ名が被ったので(いつぞや予告したように)まとめました

ただこの二人……上手く差別化ができないんですよ……
気がつくと(ましろ)がやちるに引っ張られてしまって(口調とか性格とか)

(原作で「もうやだー! おなかすいたー!! おはぎたべたいー!! まわりにきなこついてるやつー!!」とダダを捏ねているので、同じ扱いでも良い気がしますが)
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