「ネリエル、落ち着いて。ロカちゃんって誰のこと? あなたの
『ううん、違うの! でも、本当ならそうなる予定だったっていうか……』
伝令神機越しに、逸る気持ちのネリエルを落ち着かせようとします。
ロカちゃんって誰の事かしら? 今までそんな話題は出なかったはずだし……
『私もあの子が生きているなんて知らなかったの! ヤミーに叩き潰されたって聞いて、それで……探したけれど見つからなくて……でも生きてて! それで小さい私たちのことを助けてくれて!』
「え……っと、そのロカちゃん? のことなのよね? 小さい私ってことはネルの頃に助けてくれたの?」
『そうじゃなくて! 彼女は――あ! ちょっ――貸しなさ――まだ話の途ちゅ――その言い方じゃ分かんないでしょ!』
イマイチ要領を得なかった会話が続いたかと思えば、伝令神機の向こうが再び騒がしくなりました。
どうやら業を煮やしたチルッチが奪い返そうとしているみたいですね。
『もしもし
「女
え、女性なの!? まだ女性がいたの!? ロリとかメノリとかリリネット以外にも!? ひょっとして、ハリベルくらいおっきくて立派な
ああああぁっ!! それを聞きたい! 今すぐに聞きたい!! でもそんな状況じゃなさそうだから我慢しなきゃ!!
『そうよ! かいつまんで言うと、ネリエルがネルの姿で遊んでたらピカロに襲われたの! んで、それを助けたのが、その女
なるほど、そういうことなのね。大体分かったわ。
……って、待って! ということは、やっぱり結構な大事件じゃない!!
――あ、でもこれだけは聞いておかないと!!
「それで、そのロカって
ああ……そこで「胸は大きいの!?」と聞けないヘタレな私……
『特徴? 特になかったわね。見た目も地味だし髪だって短いし、精々が右半分に仮面の名残があるってくら――あ、アンタまた……! ――もしもし! ロカちゃん、本当はとっても強いの! でも戦うのとか好きじゃなくて! 本当は今すぐにでも私が行きたいんだけど、そうすると余計に混乱することになっちゃうから……だから湯川さんお願い! ロカちゃんを助けてあげて!!』
「わ、わかったわ! とりえあえずこっちでも対策を練るから、一旦切るわよ!!」
……ふぅ。
通話は終了しましたが、情報量が多かったわね……
『大変でございましたな。ですがこれから、もっと大変になりますぞ?』
あら射干玉、いたの?
『電話の最中に拙者が割り込むと、紛らわしいかと思いまして自重しておきました』
ああ、そうよね……どっちも台詞を『』で括ってるからねぇ……
「あのぉ、隊長? 今のお話は一体……」
「そうよ! ボヤボヤしている場合じゃないわ! 勇音、現世に行ってる全死神に連絡して!
「え……あ、はい!」
「伝令神機で連絡を入れるのが一番手っ取り早いでしょうから、まずは十二番隊に連絡を入れて。私は今から総隊長に報告してくる! だからそれまで迂闊に手を出さないように伝えておいて!」
そう指示を出すと、隊首室を飛び出します。
廊下を進んだところで、一人の隊士に声を掛けられました。
「あ、隊長。丁度良いところに。先ほど連絡がありまして……」
「ごめんね、後にして貰える?」
「そうですか? それでは隊首室にメモをしておきますのでご確認ください」
その声を背中越しに聞き、一番隊へ連絡を入れながら。
――子供みたいな
頭のどこかで、そんなことを考えていました。
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「何、これ……」
「アン? どーしたよ望実?」
九条望実は突然、明後日の方向へと首を向ける。
その様子を、肩に乗ったヌイグルミのコンが不思議そうに眺めていた。
「感じないかコン? なんだか妙な霊圧が、それも……複数! いや、もっと無数に……!!」
「無数の霊圧だぁ!? まさか
そのときコンは、過去の出来事を思い出していた。
撒き餌を使って有象無象の
結果的に色々なことがあって、
無数の
だがコンの予想の言葉を、望実は首を横に振る。
「いや、
「もっと強いだぁ!? ……ってことはまさか、
「
だが、知識だけだ。望実は
また、
少なくとも現世や
だが、今彼女が感じている霊圧がその
「まず、先輩に連絡を……む?」
「なんだ、どーしたよ?」
連携して対処する必要と、
それを見たコンも、彼女の肩から身を乗り出して画面を覗き込んだ。
「なんだこりゃ? 緊急連絡??」
「『現世に
「お前にこんな連絡が来てるってことは、
「いや、これは現世にいる全死神に向けられたものだ。どこに出現するかまでは掴んでいないらしい……」
「んで、それが運悪く
額に手を当てながら、コンは天を仰いだ。
「せっかく望実とデートしてんのに、どんだけタイミング悪ィんだよコラァ!!」
「なっ、だ、誰がデートだ!! おい待てコン!! い、いやまずは
文句の一つでも言いに行くつもりなのだろう。
コンは望実の肩から飛び降りると、ヌイグルミ姿のまま両脚を肥大化させて駆け出していく。
その後を小走りで追いかけつつ、望実は「空座町に
……あ、ちなみに
「で、伝令神機!! 伝令神機はいずこに!? なんだか妙な霊圧の
捜し物の真っ最中でした。
「やいやいやい! テメーらか勝手に出てきた
「あれー? キミ、誰? ぬいぐるみ??」
「……って、よく見りゃガキじゃねえか!!」
感情の赴くまま全力疾走するコンが出会ったのは、ピカロの一人だった。
集団ではなく、たった一人。それも十歳にも満たない子供のような姿をしているということもあってか、コンは思わず拍子抜けする。
「ねえねえぬいぐるみくん、女の人知らない? この辺に来ていると思ったんだけど」
「女の人だぁ? なんだなんだ、最近のガキはマセてんのな」
「マセてるって何?」
「そんなことも知らねえのか? いいか――」
相手が何も知らない子供だと思い油断したコンは、ふんぞり返りながら説教をしようとする。
そこに望実の切り裂くような声が突き刺さった。
「よ、よせコン! それから離れろ!」
「――お、なんだよ望実じゃねえか! おいおい、なんだよその顔……は?」
「あれ、女の人? うーん、でも死神だし、違うよね」
青ざめた表情でコンを心配そうに見つめる望実の様子にただならぬものを感じとり、そして隣のピカロは望実を見ながら思案顔を浮かべる。
「そいつは……そいつ
「……ら?」
「あ、でも死神だったら遊んでくれるかも! みんなー! 死神がいたよ!!」
どうして複数形なのか? その理由は、すぐに理解できた。
「えー、死神!?」「本当だ、死神だ!」「藍染様みたいな格好してる!」「あー、ぬいぐるみが動いている!」「ボク初めて見たかも!!」「僕たちと遊んでくれるって」「それ本当!?」「かわいいー! アレ欲しい!」「でも現世の人と勝手に遊んじゃ駄目だって……」「死神だからへーきだよ!」「ハリベル怒らないかなぁ?」「ぬいぐるみなら、バラバラにしても大丈夫だよね!?」
「な、なななななななんだコイツらぁ!?」
「くっ!!」
一人の呼び声に、どこに隠れていたのやら何体ものピカロたちが次々と姿を現す。
雲霞のごとく集まってくるピカロの姿に、望実は「むやみに手を出すべからず」という連絡を無視して斬魄刀を引き抜き構える。
最初にいたピカロは、コンの近くにいた。
そこから仲間を呼んだことで、ピカロたちはコンの近くへと集まっている。それはつまり、意図したのかは分からないが、コンを人質に取られたようなものだ。
「あー、斬魄刀!」「ほら、やっぱり遊んでくれるんだ!」「でも、あっちのオジサンとの約束はどうするの?」「あー、そっかぁ……」「オジサンに負けたくないし……」
「オジサン……?」
抜刀したことで戦う気配を見せかけたピカロであったが「オジサンとの約束」という言葉に彼ら彼女らの動きが鈍った。それぞれが顔を見合わせながら、何やら考え込んでいる。
その言葉が何を意味しているのかは分からないが、意識が逸れた今は好機だった。
「コン、今のうちに……」
「お、オウ……」
殆ど口を開けただけの、小さな小さな声でやりとりをする二人。
ピカロからそーっと距離を取り続けるコンと、それを迎えるように望実も動く。やがて二人がようやく手の届く距離まで近づいたときだ。
「あれー、何やってるの?」
「「ッ!!」」
考え込んでいるピカロたちの隣で
まさかの増援の登場かと、二人は息を呑む。
「何って、なんだっけ?」「オジサンとの勝負をどうしようかって思ってたんだ」「えー、ヌイグルミで遊ぶんでしょ?」「違うよ、死神だよ」「それよりこっちこっち! 女の人の痕跡があったんだ!」「それ本当!?」「あー、本当だ」「あれ、でもそっちって……」「Qrrrr……藍染様の……来た方向……」
だが幸いにも、ピカロたちは二人に興味を失ったように
「「は、はああぁぁ~~~っ……」」
やがてピカロたちの姿が完全に見えなくなり、
「すまねえ望実、助かったぜ……」
「いや、私は結局何もできなかった……まさか
互いに反省しようとしたところで、望実が顔を上げる。
「……! そうだ、連絡……!」
「連絡?」
「聞いていなかったのかコン!? 今、アイツらは"藍染が来た方向"と言っていた! それはつまり……」
「まさかアイツら、
確かにピカロたちは
かくして、ピカロ襲来の報は護廷十三隊へ知らされることとなった。
……微妙な勘違いを含みつつ。
本来なら。
ピカロがドン・観音寺と知り合いになったり、ロカちゃん捜索競争の約束とかしますが。
(その辺は原作通りなので省略)
軽くバトル(九条とピカロ)でも挟もうかと思いましたが、無くても全く問題ないので止めました。