お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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タイトル、延々出てこない時と一瞬で浮かぶ時の差が激しいんですよね。
(ちなみに今話は、後者です)



第298話 (絶対に笑ってはいけない)隊首会(参加者一名)

「事態は火急である!」

 

 山本総隊長が手にした杖を床に叩き付けながら、声を響かせました。

 

 ……ええ、そうです。

 予想通り、緊急隊首会が開催されて各部隊の隊長が招集されました。

 

 しかも半刻(一時間)後に。

 

 商店街での出来事を総隊長に報告したと思ったら、すぐに呼び出されて、気がついたら隊首会の開催ですよ。

 けど仕方ないんですよね。

 何しろ、無間に囚われていた罪人の脱走ですから。大事件です。昨日の今日でまた隊首会が開催されるのも当然のことなんです。

 昨日の今日なので、前回同様に十二番隊の涅隊長は相変わらず欠席したままですけどね。

 

 さて、隊首会の開始が宣言されたわけですけが。

 まずは砕蜂の地下監獄の調査結果報告から始まりました。

 痣城剣八以外に、この機に乗じて逃げ出した囚人が他にもいるかもしれないので。

 とはいえ、幸いなことに、と言うべきでしょうか? 逃げたのは痣城一人だけだったことまで確認済みとのことです。

 

 ……そうそう、忘れていました。

 

 先ほど私は「前回同様」と説明しましたよね? けど当然、前回と違う点もありますよ。

 まずは二番隊ですが、砕蜂の他に夜一さんも参加しています。

 最初からこの場にいるってことは、何か報告することがあるのかしら? 砕蜂が報告していたときには無言のままだったけれど……

 

 それと、一番違うのは……

 

「痣城剣八……まさか、こんなにも早くその名を耳に出来るとは思いませんでした……ふふふ……」

 

 十一番隊です。

 招集された時から今までずっと、卯ノ花隊長はニッコニコの物凄い良い笑顔をしていました。

 今も、痣城の名を聞いた途端に、笑顔が更に強烈なものになりました……

 

 うわぁ……ほら、見てよ射干玉。卯ノ花隊長のあの笑顔。 

 あんな良い笑顔なんて、滅多に見られないわよ?

 

『うひゃあ……うっかり惚れてしまいそうな表情でございますな……』

 

 あれ絶対に「良い遊び相手ができた」みたいな事を考えてると思うの。

 更木副隊長にプレゼントしようと考えているのか、それとも自分で食べちゃおうとしているのかまでは分からないけれど……

 

『多分、前者だと思うでござるよ……』

 

 奇遇ね、私もそう思うわ……

 

「知らねえ奴だな。『剣八』ってのは、なんかの冗談か? それとも単なる偶然か?」

 

 卯ノ花隊長に注目していて気付くのが遅れましたが、隊首会の話題は「痣城剣八って誰?」という内容に、一時的にシフトしていました。

 京楽隊長や浮竹隊長、出戻りの平子隊長みたいな古参の隊長は名前を聞いただけで即座に反応しました。

 反対に朽木隊長とかシロちゃんとか天貝隊長とかは聞き覚えが無いらしくて、反応が鈍いです。

 

 そっかぁ……かなり有名人だと思ってたんだけど、隊長の中にも知らない人がいるようになっちゃったのね……若いから仕方ないんだろうけどねぇ……

 

 …………

 

 えーっとぉ、藍俚(あいり)ちゃんも隊長になってからまだ十年くらいの若輩者だから、しらなーい☆

 だって私、まだ20代だもん♪

 

『……藍俚(あいり)殿?』

 

 な、なによ! 嘘じゃないもん!!

 

『下三桁目を隠すのはいかがなものかと……そもそも、勤続年数は七百年を超えておられますよね? 山本殿や卯ノ花殿に続く実力者として、もう少し自覚や責任感を……』

 

 う、ううぅ~……

 

「……まだ若いお主らの中には、痣城の事を知らぬ者もおろう。そこでじゃ、湯川」

「はい」

 

 ほ、ほら射干玉! 総隊長からのご指名だから!

 こっちに集中させてもらうわよ!!

 

『仕方ないにゃあ……いいよ?』

 

 ……アンタがそこでボケちゃ駄目でしょ……?

 

「お主は脱獄した痣城と刃を合わせたと報告を受けておる。お主の目から見て、二百五十年前と比べて、痣城はどうなっておった?」

「そう、ですね……」

 

 過去と比べて、かぁ……

 

「……出会えたのは偶然でしたが、何も変わっていないように感じられました。かつて、十一番隊の隊長だったときの活躍ぶりと比較しても、遜色は一切見受けられませんでした。性格も以前のまま、無感情な合理主義者でした」

「無間に閉じ込めたとて、二百五十年程度では何も変わらなかった……ということかの……」

「それより湯川、おまえがいたのに取り逃がしたのかよ?」

 

 あ、ちょっとムカ。シロちゃんから嫌み言われたわ。

 あとで桃に言いつけてやろーっと。

 

「おいおい日番谷隊長、そりゃちょっと厳しすぎるよ。痣城元隊長は二百五十年前、隊長総出でも捕まえられなかったんだから」

「そりゃ、どういうことだよ?」

「どうもこうも、そういうこと。言葉通りの意味だよ」

 

 苦笑いしながら京楽隊長が助け船を出してくれました。

 それと同時に浮竹隊長が尋ねてきます。

 

「そうだ湯川、彼の斬魄刀はどうだった? 見えたか?」

「いえ、何も見えませんでした。ただ、嫌な予感というか気配というか、そう言った事は感じられたので一撃を防ぐことはできました」

「斬魄刀が見えない、と……?」

「もしや、藍染の鏡花水月と同じ、幻術系ということか?」

 

 こちらの話に食いついてきたのは、朽木隊長と狛村隊長です。

 この二人も知らないからねぇ……これはまず最初に、痣城の詳細な情報について共有させた方がよかったかしら?

 あ、そうそう。情報の共有といえば。

 

「一つ、忘れていましたが追加して良いですか?」

「何じゃ?」

「痣城に逃げられる前のことですが……突然、妙な独り言を言ったんです」

「独り言、とは?」

「例えばですけど、心の中にお巫山戯(ふざけ)が大好きなもう一人の自分がいて、チャチャを入れ続けてくる。無視していたけれど我慢の限界が来て、つい『黙れ!』と言ってしまった――そんな様子でしたね」

「ふむ……」

 

 総隊長が髭を撫でながら思案顔です。

 

『おおーっ! さすがは藍俚(あいり)殿!! まるで自分がいつも体験しているかのような説明でございますな!!』

 

 でしょう? 今のは自信があったの!!

 

「あー、おほんおほん! 話し合っているところ悪いんじゃがの」

 

 と、そこに夜一さんが割って入ってきました。

 わざとらしい咳払いをして、控えめに挙手をしながら遠慮がちなその態度は、ひょっとして夜一さんなりの副隊長らしさを演出してるのかしらね……?

 

『そういえば夜一殿は死覇装でございますからな! 相変わらず背中がガバッと開いてて横チチが丸見えでセクシーでござるよ!! くはーーーっ!!』

 

「そろそろ儂がこの場におる理由を説明してもよいかの?」

「おお、そうじゃったな。任せる」

「うむ! 任された!」

 

 総隊長の言葉に尊大な態度で頷くと、夜一さんは何故か私の方を見ました。

 

「――といっても、半分くらいは藍俚(あいり)が喋ってしまったんじゃがな」

「え? 半分も……? 私は一体何を……??」

「お主が見たという痣城剣八の独り言、それは"雨露柘榴(うろざくろ)"と話をしておったにすぎん」

 

 雨露柘榴……? 話をしていた……あのときの既視感……

 え、まさか……?

 

「まさかそれ、斬魄刀ですか……?」

「なんじゃ、察しが良すぎるのもつまらんのぉ。その通り、正解じゃよ」

 

 当たっちゃった……

 

「聞いての通りじゃ、皆の者。痣城剣八の斬魄刀について詳細を知っておるとの報告を受け、副隊長の立場であるものの四楓院夜一を隊首会に最初から参加させておった」

「そこまで固いこと言わんでも良いじゃろうが。百年ほど前までは儂もこの場におったわけじゃし」

 

 あっけらかんと言い放つ夜一さんに、総隊長は厳しい視線を向けました。

 でも、そうなのよねぇ……立場が複雑怪奇すぎるわよねぇ……

 

『隊長だったはずの人が何人も副隊長になっているとか、死神って大変なお仕事でございますな……』

 

「それが仮に本当だとして、だ。どうしてそんなことを知っていやがる?」

「雨露柘榴――その銘が真実だという保証もないだろう」

「なんじゃなんじゃ、若い奴らはせっかちじゃのう……じゃが儂は嘘は言っておらんぞ」

 

 不敵な笑みを浮かべつつ、夜一さんは苦言を口にした二人に指を突きつけました。 

 

「何しろ、直接聞いたからの! 雨露柘榴本人から!!」

 

 

 

 

 

『さてここから夜一殿の回想シーンが入るわけでございますぞ!!」

 

 情緒もへったくれも無いわね……

 

 回想シーンだけど、転神体(てんしんたい)って覚えてるかしら? ほら、一護が卍解を覚えるために使ったアレ! 白くて奇妙な人型の模型みたいなアレよ!

 斬魄刀を強制的に具象化させる道具!!

 

 アレを浦原が作ったから、試してみようとしたんだって。

 でも斬魄刀を刺すより先に具現化が始まって、やがてできあがったのが雨露柘榴だったとのこと。

 つまりは、雨露柘榴が勝手に転神体に入って、具象化まで果たしたってわけ。

 自己紹介を始めるなり「無間に入っている痣城剣八の斬魄刀だよ」とか言い出したものだから、同席していた夜一さんも度肝を抜かれたみたいね。

 

 ――とまあ、そんな説明をされたわけなんだけど……

 

 そんなことってあるのね……不思議だわぁ……

 

『ええ、本当に……不思議でございますなぁ……』

 

 本来なら転神体に斬魄刀を突き刺さないと具象化は始まらないのに、一体何で――

 

『そんなことが可能なら! 拙者の身体を使って山のように具象化しまくってやるでござるよ!! とりあえずは灰猫殿と花天狂骨殿と飛梅殿と袖白雪殿から!! ふひひ、拙者の身体を使っているわけでございますから、家賃代わりに……』

 

 だめーっ!! アンタ何を言ってるのよ!!

 ダメダメ、そんなのオーナー権限で認めません!!

 

『いやいや、藍俚(あいり)殿……夢はでっかく! 斑目は一角!! と言いますし……』

 

 言わないからね!?

 大体ねぇ、そんなこと出来るわけ無いでしょうが! いくらアンタが黒と白でプリキュアってジョグレスな感じになったからってね、出来ることと出来ないことが……

 

 あれ、ちょっと待って……?

 

 ……えーっと……ここのラッパー関数を半金半手して、こっちの有償支給原材料をL/Cして……

 

『あ、藍俚(あいり)殿……そ、そんなところ駄目でござるよ……拙者、そこは初めてでござる! 初めては好きな人に捧げるって昔から……!』

 

 ……最後に消費税と手数料をピンハネして、構造化データを照会して……

 

『だめでござるよおおおおぉぉぉっ!!』

 

 ……って、さすがに無理よねぇ。

 

『そうでござるよ藍俚(あいり)殿! そんなに上手くは行くわけが無いでござるよ!!』

 

『キヒッ! そうそう、そう簡単に上手くいけば、剣の字(けんのじ)も今頃こんなに面倒なことしてないっての!!』

 

 

 

 ……あのー、どちらさま?

 

 

 

『キハッ! 私の名前は雨露柘榴だよ! あんたのことは隅から隅まで識ってるつもりだったけれど、どうやら勘違いだったみたいだね! こりゃあ反省しなきゃ!! キハハハハッ!!』

 

 黒い革帯で目隠しをした、扇情的な格好をした艶めかしい女性が、いつのまにか私の中にいました。

 




五話くらい前に
「(三人称が混ざっているのは、某斬魄刀に備えるためでもあります)」
って、どこかの誰かが書いたらしいんですよ。

……たいへんたいへん! 三人称ちゃんが息してないの!!





あ、どうでもいい話なんですけど。

今話で、全体通して300話らしいです。
……まだ終わらないのね。
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