お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

301 / 406
第299話 絶対に笑ってはいけない隊首会(延長戦)

 何が延長戦よ! むしろここからが本番になるんでしょうが!!

 タイトル! 適当なことを書くんじゃないわよ!! 怒るわよ!?

 

藍俚(あいり)殿~、そんなに怒ると血圧が上がりますぞ?』

 

『そうそう! 人生もっと楽しく生きなきゃ。剣の字もあんな仏頂面ばっかりしてるんだから、つまんないんだよ!!』

 

『つまりもっとこう、自由に生きるべきだと?』

 

『キハ! そうなんだよ! あんた、真っ黒な鞠みたいな姿なのによくわかってるじゃないか!』

 

『当然でござるよ! 懐の深い射干玉ちゃんとして業界では誰もが知っていますからな! さあ、悲しければ拙者の胸でお泣きなさい! 涙は粘液が隠してくれますぞ!!』

 

『おおー、いいねぇいいねぇヌルヌルだねぇ!! この粘液で擦られたら、私も一瞬で虜になっちまいそうだよ!! キヒッ! けどさ、射干玉ちゃんの胸ってどこだい?』

 

『おお、これは一本取られました!! 実は拙者の胸はここに……』

 

『へぇ、これが射干玉ちゃんの胸……ほら、もっと良く見せてごらん』

 

『いやん、エッチ♥』

 

『いいじゃないか、減るもんじゃないだろう?』

 

 あーもう! あんたたち! ちょっと黙ってなさい!!

 のっけからボケの連発でこっちの身が持たないのよ!!

 

『おおっ! 流石だね藍俚(あいり)ちゃん! そうやって文句を言ってるのに、オモテのアンタは表情一つ変えやしない! この射干玉ちゃんってのと長年よろしくやっていたからかな? それともスケベなマッサージで鍛えたせいかなのかー? キハハハッ!!』

 

 え、な、なんでそれを……

 えっと、違うからね……

 

『ああ、駄目でござるよ雨露柘榴殿! まずは毎回恒例、前回のあらすじから始めないと!! これはもはや様式美でござる!!』

 

 え? そんなのやってない……

 

『では拙者から! あらすじの"あ"ーっ! "あ"っちのほうで!!』

 

『キハ! じゃあ次は、あらすじの"ら"だね? 裸体("ら"たい)が見れると聞いたので! さ、次は藍俚(あいり)ちゃんだよ?』

 

 え、えーっと……す、す……"す"っ飛んでいったら! って、違あああぁぁうっ!!

 

『"じ"いさんだった――と、なんでござるか藍俚(あいり)殿! 今、綺麗にオチがつく所だったのでござるよ!? 奇跡の瞬間に立ち会えなかったでござる!!』

 

『キハハ!! 山本のお爺ちゃんの裸かい? そりゃ残念だったね射干玉ちゃん』

 

『いえいえ雨露柘榴殿! これが中々、山本殿の裸は一見の価値がありまして……』

 

 えーい!! だからいい加減にしなさいっての!!

 

 まず雨露柘榴!!

 あなた本当に雨露柘榴なのよね!? 痣城剣八の斬魄刀の!?

 

『キハッ! そうだよ。正真正銘、私は剣の字の斬魄刀さ。そこで一生懸命説明している夜一ちゃんの前に出りゃ、間違いなく太鼓判を押してくれるよ』

 

 そんなに自信たっぷり……

 ……じゃあ、もう一つ質問。あなた、なんでここにいるの?

 

『キヒヒヒッ!! 藍俚(あいり)ちゃんも野暮な事を聞くね? 元々は藍俚(あいり)ちゃんがやったんじゃないか。転神体のまねごとができるんじゃないか――ってさ』

 

 それはそうだけど……まさか成功するなんて……

 

『こっちも懐かしい話が聞こえてきたと思ったら、転神体の気配まで出てきたんだ。そりゃあ、顔の一つくらい見せるってもんだろ?』

 

 ……いやいやいや! ここ、私の中だから! 外で具象化したのとは全然違うから!

 

『私もこんなのは初めてだよ。いつもは剣の字と話してばっかりだったからね、他の死神とこれだけ話せるのが新鮮で新鮮で。村正が斬魄刀を実体化したあの事件、アレに一枚噛めなかったのがようやく帳消しにできそうだよ』

 

 あの事件、知ってるの?

 

『知ってるも何も、ずーっと見てたからね。剣の字と一緒に、あの真っ暗で退屈な牢屋で。ああ、ほらほら。夜一ちゃんが丁度その辺りのことを説明してるだろ?』

 

 ええまあ……確かに説明してるわね。

 

 斬魄刀の能力で、痣城剣八は瀞霊廷全体と融合している。

 だから瀞霊廷内の様子は全てが筒抜け、自分のことのように見聞きできる。

 けど無間の封印で斬魄刀の能力が弱められているから、見聞きするのが精一杯。

 これが完全解放された状態だったら、霊子単位で融合して色んな物質に干渉が可能。それこそ当時十一番隊で活躍していたときみたいなことができる、と……

 

『キハ! そういうことだよ、藍俚(あいり)ちゃん。よくできました』

 

 ……ってことは、今もこの会話を聞いてるってこと!?

 

「そうじゃな? 痣城剣八」

 

 私の疑問を肯定するかのように、夜一さんが虚空を見上げながら言葉を紡ぎました。

 

 

 

 

 

 えっとね……今までのシーンはね……

 雨露柘榴の能力を説明したり、瀞霊廷全体と融合しているから痣城剣八の霊圧を探ろうとしても上手く探れなかったんだって納得したり、痣城剣八が脱獄したのはザエルアポロのそっくりさんが暴れて封印が緩んだのが原因だとかで。

 それで今まさに「脱獄したのは破壊や混乱が目的じゃなくて、何か狙いがあるんだろ?」って夜一さんが尋ねたところで……

 

『そんなことしなくても、私に聞いてくれたら剣の字の居場所から何から全部おしえてあげるのにさぁ……夜一ちゃんもつれないね、キハハ!!』

 

 あのここ、一応真面目なシーンだから……

 そうしたら問い掛けに答えるように痣城剣八が部屋の中に突然現れて、隊長のみんなが驚いたの。

 

「説明を省いてくれたことを、感謝すべきだろうか」

 

 それよりも雨露柘榴は、痣城の居場所を本当に教えてくれるの? 持ち主に対する利敵行為になるんじゃ……

 

『おおっ! ほらほら見てみなよ藍俚(あいり)ちゃん! 射干玉ちゃん! 剣の字が出てきたよ!! 相変わらず不機嫌そうな顔つきだね』

 

『うーむ……イケメンでございますなぁ……』

 

 ええ、その評価だけは同意ね。

 見た目は良かったから、当時も隊長就任した最初の頃だけは女性隊士の噂になってたけど、でも性格がとっつきにくくって……

 

『ん、剣の字の居場所かい? いいよそのくらい、家賃代わりに教えてあげるさ。キハハ!』

 

 本当に!?

 

「丸くなられましたな総隊長。その失った腕を治したと同時に、かつての厳然さを取り戻したとかと考えましたが……少しだけ残念です」

「……何が言いたい、小童」

「黒崎一護と朽木ルキアの一件が、変えましたか? それともそこの湯川にでも絆されましたか? ならば、少しだけ残念です」

 

『嘘はつかないよ。けど、剣の字はどこにだって行ける。何せ空気とすら融合できるんだから。今この瞬間にも、一瞬で別の場所に現れることだってできるのさ』

 

 ……それ、まさかとは思うけど、どこかで何かをやってきた後ってこと?

 

『さすが、鋭いね! 剣の字はちょいと、弱点の対策をしてきたんだよ。万が一にも邪魔をされないために』

 

 弱点……?

 

『キヒヒッ! ちょっと考えればすぐにわかるよ。霊子単位で融合する能力、じゃあその弱点はなーんだ?』

 

『はいはーい! 霊圧を直接どうにかすることでございますな!?』

 

『射干玉ちゃん正解!』

 

 ……双魚理! ……あ、違う! 瑠璃色孔雀!!

 

『おおー! 藍俚(あいり)ちゃんもようやく正解だよ!! 双魚理もある程度は効果があるから、完全に間違いじゃないけどね』

 

 そっか……双魚理は受け流すから、結局は融合した霊圧を回収されちゃう……

 でも、瑠璃色孔雀は吸収する。天敵ってわけか……

 

『そうそう、抑えておけば敵はほとんど(・・・・)いなくなる。そうすりゃ剣の字の目的も達成しやすくなるのさ』

 

 目的って?

 

『ああ!』

 

『それってあのロカちゃんって破面(アランカル)!?』

 

 どこの遊戯王のアニメなのよ……

 ……え!!

 

「ロカちゃんを狙ってるの!?」

「……ッ!?」

 

 油断していたようです。とうとう口に出してしまいました。

 途端に、それまで総隊長とやりとりをしていた痣城が私の方に鋭い目を向けます。いえ、痣城どころかこの場にいた全員が私の方を向きました。

 

『あーらら、とうとうやっちゃったね藍俚(あいり)ちゃん! それでも剣の字に比べれば千倍くらいは耐えてたけど』

 

『ある意味最悪のタイミングでやってしまいましたな! 再び視線を独り占めでございますぞ!!』

 

「湯川、一体どういう事じゃ……何を知っておる?」

 

 えーっと……まず外のやりとりのおさらいだけど……

 総隊長と痣城が会話していたのよ。ただ痣城が言うには「瀞霊廷や尸魂界(ソウルソサエティ)には現時点では危害を加えない」とだけ言ったの。

 そこに私が口を挟んだ形になるってわけね。

 

 ……それって、最悪のタイミングじゃない!!

 

『ほらほら、頑張って藍俚(あいり)ちゃん!』

 

『頑張れ頑張れ藍俚(あいり)殿!!』

 

 ううー……

 

「……なるほど。湯川はあの半面が髑髏に覆われた破面(アランカル)と知り合い。加えてかつて現世学の講師も務めていた。ならば、可能性に気付くのも道理か」

 

 道理か、じゃないわよ!! 何を勝手に納得してるのよ!!

 あんたの恋人に茶化されてつい声に出しちゃっただけだから!!

 

『こ、恋人だなんて……』

 

『照れますなぁ……ねえ、雨露柘榴殿?』

 

『そうだね射干玉ちゃん……そりゃま、剣の字とは離れられない関係だけど……』

 

『がーん! でござるよ!!』

 

 黙ってなさい! 

 えっと……ヒントがあるとすれば、現世学。それとあのロカちゃんの能力……

 痣城が姿を消した能力とちょっと似てるあの能力……

 そういえば昔、痣城が投獄されることになった理由って……!!

 

『キハハ! じゃあもう一つヒントだ! 剣の字は、あらゆる"物"と融合することができるんだよ』

 

 …………あっ! 刳屋敷隊長との決闘!! あのときは直接刃を生やしてた!! それを応用すれば!!

 

「ロカちゃん――あの破面(アランカル)の能力を取り込んで、生物を改造するのが目的、かしら? かつて、流魂街の人の魂魄を改造して対(ホロウ)用の兵士を作ろうとしたように……」

 

 いえ、何かしっくりこないわね。同じ事の繰り返しじゃ芸が無いし……

 現世学って言ってたから……

 

「……まさか、現世の人間を改造する気……?」

「なんじゃと!!」

 

 総隊長が強烈な反応を見せます。

 痣城からも、無表情ではあるものの驚いたような気配が伝わってきました。

 

「ほぼ正解だ。私が行おうとしているのは、現世の人間達の脳髄と魂魄の一部を改良し、人を(ホロウ)へと導く要素の一切を排除すること。完遂の暁には地獄送りになる人間もいなくなるだろうが、(ホロウ)となる人間もまたいなくなるだろう」

 

 平然と言ってのけましたが、隊長たちは驚いています。

 

「それが、お主が言っていた敵対する気がないという根拠か?」

「そうだ。尸魂界(ソウルソサエティ)にとっても利しかないだろう? とはいえ、それが如何なる影響をもたらすのか、逐一精査する必要はあるだろうが……」

「アホか」

 

 平子隊長が口を開きました。

 

「そんなん何年かかる思っとんねん。東京だけで一千万人はおんねんで?」

「一日千人を改造したとしても、一万日か……いや、それを可能とするための、あの女破面(アランカル)か?」

 

 浮竹隊長が言葉を繋ぎます。

 日本だけで億単位だもんね……それがましてや、世界全体となれば……

 

 ……ロカちゃんの能力って、そこまで万能なの?

 

『ああ、そうだよ。なにしろあの女の能力は剣の字をまねた物だからね。あらゆる物質と繋がって霊力や情報を共有するのさ』

 

『痣城殿とつながって共有することで、改造をしやすくするということでございますな? まさしくお前の物はオレの物! オレのものはお前の物! 大事な物は貸金庫へ!!』

 

 えー……それでも十年くらいは掛かるんじゃ……

 

「その通りだ。だがあの女(ホロウ)の力を私が使えば、一万日とて一日で終わるだろう。それでも完遂までにはある程度の時間は掛かるだろうが……」

 

 チラリと私に視線が向けられました。

 やだ、顔に出ちゃったかしら?

 まるで私の考えていることを見透かされたような痣城の言葉に、一瞬ドキリとしてしまいます。

 

『ん……? ああ、大丈夫だよ。剣の字のあの顔は、そんなこと勘付いちゃいないから』

 

 わかるの!? 昔からよく見た無表情のままなんだけど……!?

 それに視線も私の方に向いているわよ? 疑問を口に出した平子隊長とかを見るものじゃないの?

 

『それはね……キヒヒヒヒヒッ!!』

 

 ……?

 

「そこで、もう一人。湯川、お前だ」

「……私?」

 

 ご指名が掛かったんだけど……

 

「お前の持つ、卍解の能力。それを貸せ。生物と物質の中間に位置するその能力を仲立ちにすることで、改造は更に容易となる」

「な……ッ!!」

「事実、総隊長の腕を治したのもその能力によるもの。それと同じことを現世の人間全てに行うだけだ。湯川、私と共に来い」

 

『キハハハハハ!! 言っちゃったよ剣の字! 私って女がいるのに、まるで愛の告白じゃないか!!』

 

 愛の告白って……

 

『完全に拙者の身体だけが目当てでござるよ!! 男の人はこれだから嫌でござる!! 拙者のことをなんだと思っているでござるか!! ちょっと顔が良いからってホイホイ粘液を分泌すると思ったら大間違いでござるよ!!』

 

『大丈夫だよ藍俚(あいり)ちゃん! 射干玉ちゃんの言う通りさ! 剣の字が本当に藍俚(あいり)ちゃんに愛の告白の一つでも出来るような男だったら、私ももっと楽だったんだけどね』

 

『では拙者が雨露柘榴殿に告白を!! そして二人は結ばれて、雨露柘榴殿と拙者のコンビプレイ! 初めての共同作業!! これはもう結婚!! そして出産!!』

 

『けど産むのは射干玉ちゃんで、私は突っ込む方だけどいいのかい?』

 

『問題ありませんな! 雨露柘榴殿がお相手ならば差しつ差されつ前から後ろから! どうぞご自由にでござります!!』

 

『じゃあさ、さっそく子供の名前を考えなきゃね?』

 

『お任せ下され! 男だったらケンタロウ、女だったらカツヨでいかがかな!? あ、ちなみにこの名前はカタカナを適当に集めただけのランダムな名前ですので、万が一にも実在の人物・団体などを連想しても全て完全に余すところなく気のせいでございます!!』

 

 うわー、なぜだかさっぱりわからないけれど、料理が凄く上手そう……

 なぜだかさっぱりわからないけど!!

 

『おお、準備がいいね? けど射干玉ちゃん、もしも同性の双子だったらどうするんだい?』

 

『むむっ、それは盲点でした! 双子……うーむ、ソウでござるなぁ。そのときはじっくりとミクラべてから――』

 

 それ、よくわからないけど双子よね!? どう考えても双子でボケてるわよね!?

 

『おいおい射干玉ちゃん。その名前、つけるのがカノウかどうか、ちゃんとしらべなきゃ――』

 

 そっちは双子じゃなくて姉妹! てか、実際の姉妹ですらないでしょうが!!

 というより雨露柘榴はどこからその知識を持ってきたぁぁっ!!

 

『さすがは藍俚(あいり)殿! 打てば響くとはまさにこのこと! だから藍俚(あいり)殿は大好きでござるよ!!』

 

『ホントホント、羨ましい限りだね。ウチの剣の字じゃ、こうはいかないよ。どうしようかね、私もここん家の子供になっちゃおうかな?』

 

『なんと! それは誠にござるか!? でしたらこの部屋をお使いください! 少々同居人もおりますが――』

 

 あ、それは嘘でしょ? さすがにわかるわよ。

 卍解まで至れるような斬魄刀が、持ち主をそう簡単に見捨てるわけが無いからね。

 

『……ホント、藍俚(あいり)ちゃんはよく気がつくね。剣の字に似たようなことを言ったら"清々するから消えろ。ただし能力だけは置いていけ"とか言いそうなもんだってのに』

 

『ええーっ! 嘘でございますかぁ!?』

 

『ところで使って良い部屋ってのはここかい? どれどれ……ってうわ!! ……射干玉ちゃん、これは駄目だよ……』

 

 ……ブランって覚えてる? ほら、私の中で同居している(ホロウ)。アレの名前なんだけど……

 雨露柘榴がドン引きしてるわ……テンションが下がりすぎて地面を這いずってるレベルになってる……

 

「…………」

「その沈黙は、否定ということか」

「え……?」

 

 いや、ゴメンね……無視してごめんね……

 でもだって、アンタは知らないだろうけどさ……今私の中が大変なことになってるのよ!!

 中で大変なことになっているのに、そこへさらに外からも爆弾を投げ込むような真似は止めて!! てか私がこうなった半分くらいはアンタが原因なのよわかってんの!?

 

『いいねいいね! もっといってやんなよ!! キハハハハ!!』

 

「それとも、お前が築いた新たな繋がりが邪魔をしたか? もっと早くに気付いていればあるいは……現世の人間や(ホロウ)におもねるような真似を……」

 

 ……なんだか呟いているけれど、何が言いたいのかしら?

 多分だけど、織姫さんとかハリベルと知り合う前に勧誘すればよかった、とか思ってるのかしら?

 

『そういえば藍俚(あいり)ちゃん、知らないだろうから教えてあげるよ』

 

 唐突ねぇ……けど、何を?

 

『剣の字はさ、自分の不要な感情を私の中に捨ててくるんだよ。邪魔だからゴミを押しつけてくるなんて酷いだろう?』

 

 ……それって、自分の弱さとか不安とかから目をそらしているってこと?

 

『そういうこと! その中にはさ、ほら……みてごらん?』

 

『おおおおっ!! こ、これはなんと!!』

 

 あらこれって、私がマッサージしているところ?

 

『そうそう! 藍俚(あいり)ちゃんが女性死神をマッサージしているところも、剣の字はバッチリ見ているんだよ! けどそんな感情は不要だからって、私の中に捨てたのさ!! キハハハハ!!』

 

 ええーっ! 意外(いっがーい)!! 絶対「そんなことには興味ない」って済ました顔で切って捨ててると思ったのに!!

 

『いやいや藍俚(あいり)殿! 痣城殿も男でござる!! 下半身の斬魄刀は何時だってどなただって正直者なのでござるよ!!』

 

『"湯川が女性死神へ按摩を施している場面に、奇妙な感情が沸き上がった――排除する"だってさ!! しかも毎回捨ててくるんだから、こっちとしてもムラムラしちゃって仕方ないんだよ!! なんとかしてくれないかい!?』

 

 な、なんとかって言われても……

 だ、駄目……我慢できない……

 下を向きながら、肩をふるわせて……なんとか我慢……

 

「……ふふっ……」

 

 無理に決まってるでしょ!! 吹き出しちゃったわよ!!

 ほらもう! 途端に痣城が凄い目で私のことを睨んできた!!

 

 もおおおおっ!! こうなったらやってやるわよ!! ごまかしきってみせる!! 笑ったところから繋げればいいんでしょう!?

 

「ふふふ……あははははっ! 何を言うのかと思えば……私がそんな人の尊厳を無視するような事に手を貸すと、本気で思っていたんですか!?」

「……」

 

 よし、黙った! それに他の隊長たちも不自然には思ってないみたい! このまま……

 

『ほらこれなんか、剣の字が何度もしつこく捨てたやつだよ』

 

『あーこれは……痣城殿も男ですなぁ……それにしても、こういう方が好みですか。中々お好きですなぁ!!』

 

『捨てるんなら見なきゃいいのに、見ては捨てるんだから……キハハハハ!!』

 

『ぬほほほほほほ!!』

 

 ……止めて!! 見たい! 凄く見たいけど……今は駄目!!

 

「それとも死神は全員、現世の人間がどうなろうと関係ないと割り切っているとでも? だとすればその考え、今ここで力尽くでも正してあげます!」

「湯川の言う通りじゃ」

 

 斬魄刀の柄へと手を掛けたところで、総隊長の援護射撃が飛んできました。

 正直、凄くありがたいです。これでなんとか、笑いを堪えるのに集中できる……

 

『けどね、こういう女も結構……』

 

『おおー! ムチムチですな!!』

 

 ……まだ、まだ表情を崩しちゃ駄目よ私!!

 

「現世と尸魂界(ソウルソサエティ)は表裏一体。お主の歩む道には、現世という世界への敬意が欠片も感じられぬ。それは先人たちが積み上げてきた正義への敬意を欠くに等しい行為じゃ」

「敬意、か……無駄なことを。死神はただ、世界のために回る歯車であればいい……無論、私自身も含めて」

 

 痣城は周囲の隊長達をぐるりと見回すと、嘆息しながらそう言いました。

 そして最後、再び私に視線を向けます。

 

「現世の人間や虚圏(ウェコムンド)(ホロウ)共と馴れ合う前ならば……」 

 

 ほとんど消えそうな声で呟き、その姿を空気の中に溶け込ませました。

 

 

 

 

 

 

 

 最後のアレは「織姫さんやハリベルと知り合う前に勧誘していれば、賛同しただろう」って意味かしらね?

 

『だろうねぇ。アテが外れて残念だったね剣の字!』

 

 あ、雨露柘榴がここにいても能力は使えるのね。

 

『そりゃそうだよ。意識がこっちにいるだけ、能力は剣の字の方に置いてきているから』

 

 便利……

 

『それに戻りたくなりゃ、いつだって戻れる! 私からすりゃ別荘みたいな感覚だね! キハハハハ!!』

 

 向こうにもいるって考えた方が良さそうね……

 

 ……ところで雨露柘榴。なんで痣城は、現役で隊長だった時に私を勧誘しなかったの?

 

『そりゃ、藍俚(あいり)ちゃんと射干玉ちゃんの能力を知らなかったからさ。瀞霊廷の外にゃ剣の字の目も届かない。知らなきゃ利用しようと考えることすらできないよ』

 

『そうそう! 銀蜻蛉の前で退いたのも、藍俚(あいり)ちゃんが原因の一つだよ。下手に敵対すると協力してもらえないかもね? ――って私が言ったのさ。キハ!!』

 

『やったでござるな藍俚(あいり)殿! イケメンに言い寄られていますぞ!!』

 




隊首会って何でしたっけ?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。