お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第300話 三人揃っても一人分の知恵

「逃げた……いや、件の女(ホロウ)を追ったと考えるべきじゃろうな」

 

 痣城が姿を消した空間を眺めながら、総隊長が口にしました。

 

『そうそう、流石に察しがいいね!』

 

 誰だって気付くでしょう……それで、痣城はどこに行ったの?

 

『今は尸魂界(ソウルソサエティ)をもう一度探しているよ。けど、これはあくまで念のため。剣の字は遅かれ早かれ、空座町に行くだろうね』

 

 空座町? またあの町に……

 けど、なんで? 一護がいるから??

 

『ありゃ、藍俚(あいり)ちゃんは知らないのかい? あの町の周辺にゃ、ロカって女(ホロウ)の目撃報告が何度も上がってるのさ! それこそ一年以上前からね! だから技術開発局が調査してるし、剣の字もその情報を頼りに動いているのさ! キハハハ!!』

 

 うわぁ……スパイって便利なのね……

 藍染もこんな気持ちだったのかしら……?

 

『これ、本当に大丈夫でござるか……?』

 

 射干玉が心配する辺り、相当よね……

 

『ちなみに報告していたのは、十三番隊の……なんだっけ? ほら、あ、アフロ……?』

 

 車谷君かぁ……でも、私は聞いてないわね。

 管轄が違うし、隊も違うから当然といえば当然なんだけど……

 

藍俚(あいり)殿! 一年以上前から目撃例が出ていたということは、コン殿を連れて現世に行ったあの時! ひょっとしたら!!』

 

 ……ああっ!! 確かに、可能性があったかもしれないのね!!

 あそこで接触できたら、もしかしたらこんな事件は起きなかったかもしれないのに! 今頃は普通にロカちゃんのマッサージが出来たかも知れないのに!!

 

 ……正座させてお説教してる場合じゃなかったわ……車谷君!! 恨むわよ……!!

 

『(と、このように。昔の行動の裏の理由説明を行う健気な射干玉ちゃんでござるよ)』

 

「となれば当然、こちらも追いかけるべきでしょう。あのような計画、断固として許すわけにはいきません」

「そうだね」

「せやな」

「無論だ!」

 

 卯ノ花隊長の言葉に、隊長たちが頷きます。

 

「しかし、問題の痣城はどこへ行ったのか……刑軍もいまだ捜索中ですが、発見の報告は上がってきておりません」

「ピカロとかいう破面(アランカル)の小僧は捕まえたんじゃがのう……」

 

 夜一さん、何やってるの……? 希ノ進さんがまた怒るわよ……?

 いや、それよりも。

 せっかくの雨露柘榴からの情報、使わせて貰いましょう。

 

「痣城剣八ですが、おそらく空座町へ向かったのだと思います」

「む?」

藍俚(あいり)さん、それはどうして?」

「空座町で、女性破面(アランカル)の目撃情報があったそうです。それも、一年以上も前から。おそらく十二番隊と、十三番隊はご存じだったかと思いますが」

「え、ウチかい? ……そういえば、車谷から報告があったような……」

 

 浮竹隊長が記憶の底から引っ張り出して来ました。

 どうやら殆ど覚えていなかったみたいですね。

 

『雲を掴むような話でございますからな!!』

 

『あのロカちゃんってのは元は蜘蛛型の(ホロウ)だからね! まさにクモを掴む話ってわけだよ! キハハハハ!!』

 

「ふむ……その情報が事実であれば、痣城双也が現れる可能性は非常に高かろう」

「では、痣城剣八退治の役目は十一番隊にお任せください」

 

 総隊長が納得したように頷くと、卯ノ花隊長がにっこりと微笑みました。

 

「彼は八代目の剣八……間が開きましたが、更木剣八が刃を交えるには丁度良いでしょう。それに、私も初代としての責任がありますから」

 

 責任って何なのかしらね……

 見物するって意味かしら……

 

『ああ、剣八といえばあの戦い! 凄かったねぇ!! 卯ノ花のお婆ちゃんと更木のがとんでもない斬り合いをして! 剣の字がビビってたよ! 負けるって感情を何度私の中に注ぎ込んだことか!! あんなにいっぱい受け入れられないよ、溢れちまう!』

 

 何を!? ……刀傷かしら?

 

『刀傷なんてついたら、剣の字が死んじまうよ! だって、能力の代償で身体は貧弱なお坊ちゃまなんだから!!』

 

 え?

 

『融合しているからね、身体が鍛えられないのさ! 単純な力比べじゃ、死神で一番弱いザコザコなんだよ剣の字は!』

 

 ふーん……それって、それもまた弱点よね……

 

 ……ってちょっと待って雨露柘榴!! あなた今、卯ノ花隊長のことなんて呼んだの!?

 

『お婆ちゃんだよ?』

 

 それはやめて! いえ、絶対に止めなさい。

 聞こえないから大丈夫とか、そういう考えは今すぐに捨てること! いいわね!?

 

『あ、ああ……』

 

『雨露柘榴殿……拙者からも、やめておいた方が良いとアドバイスさせていただきますぞ……』

 

「ですので、重ねて言わせて頂きます。痣城剣八の討伐は、十一番隊にお任せ頂けますか?」

「……よいじゃろう」

 

 あ、総隊長が首を縦に振りました。

 不承不承というか、コレは問答しても無駄だって悟ったんでしょうね。

 

『お爺ちゃんもこの十年で延々と振り回され続けたからねぇ! 悟ったんだろう? あ、でもひょっとすると……! キハハハッ!!』

 

「では此度の件、十一番隊と湯川(・・)藍俚(・・)に任せることとする」

 

 …………え?

 

『キハハハ! やっぱりそうだ、やっぱりそうなった! そりゃそうなるよね!!』

 

「わ、私もですか!? 十一番隊だけでなくて!?」

「うむ」

 

 普通に頷かれたわ……

 

「痣城剣八を相手に、あれだけの啖呵を切ったのです。湯川隊長も出るのは当然でしょう?」

「加えて湯川は、更木剣八の目付役も兼ねておる。お主ならば問題なかろう」

 

 ……出るの? やっぱり出なきゃ駄目なの……??

 

『初代護廷十三隊隊長のお二人は、やり手でございますなぁ!! 実質、面倒ごとが全部藍俚(あいり)殿に丸投げに近いですぞ!!』

 

『やったね藍俚(あいり)ちゃん! 信用されてるじゃないか!! 私も頑張ってサポートさせてもらうよ!! キハハハハハッ!!』

 

「また、彼奴はお主の能力を利用すると言っておった。裏を返せば、お主の斬魄刀は雨露柘榴への対抗策となるのではないか?」

 

 ……ああ、なるほど。

 

 で、なるの?

 

『なるんじゃないかな? まあ、やってごらんよ! 物は試しって言うだろう!?』

 

『はははは、なるほど! ではまず拙者たちだけで試してみましょう!! 行きますぞ雨露柘榴殿!! そーれっ!』

 

『レシーブ!』

 

 トス……と見せかけて、アターーック!!

 

『おおおおおおおっっ!! なんだか懐かしいでござるううぅぅぅぅっ……!!』

 

 まだ原作開始前の時期に、こんなこともやってたわね……

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

「――というわけで」

 

 隊首会が終わり、四番隊に戻るなり炊事場へと向かいました。

 そこでお菓子作りをしながら、勇音に事情を説明しているところです。

 

「私も明日、現世に行くことになったの」

「隊長~……またですかぁ~……」

「総隊長命令だから、ごめんね勇音……」

 

 謝りながらも、作業の手は止めません。

 ちなみに材料は、最初の痣城騒動で駄目になったやつです。まだ使えるのを拾い上げて、加工中ってわけです。

 再利用って素敵な言葉だと思いませんか?

 

『隊長ってのも大変だねぇ……』

 

 そう思うんなら、持ち主を説得してよ雨露柘榴!!

 

『ああ、無理無理。そう簡単に言って聞くようなタマじゃないんだよウチの剣の字は!』

 

『牢獄暮らしでこじらせましたかな?』

 

『さて、どうだろうねぇ……キハハハ!!』

 

 この二人は……

 でも、こんなのでも今は大事な情報源なのよね……

 

 ……そういえば、ザエルアポロっぽい人ってどうなったのかしら……?

 全然出てこないけれど……

 

 涅隊長に捕まってたら楽なんだけどなぁ……

 

 

 

「ところで隊長、何を作ってるんですか?」

「これ? 秘密兵器よ」

「秘密兵器ですか……?」

「そう、出番があるかは分からないけどね」

 




話数も300……
これ、いつ終わるのかしら……
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