お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第303話 その頃の破面たち

「ほら、チルッチ! 行くわよ!!」

「ハァ!? 行くってどこに……ちょっと、説明をしなさい!!」

 

 伝令神機を無理矢理奪い取り、藍俚(あいり)と何か話をしていたと思えば、今度は突然動き出そうとしている。

 ネリエルの行動は、チルッチの目にはそう映っていた。

 最初に連絡を受けたのは自分なのに、説明の一つも無いのはちょっと失礼すぎるのではないのか? ――と、思わずそんな不満が口から漏れ出そうな程だ。

 

「……いた。ちょっと違うけど多分、この霊圧……! ペッシェ、ドンドチャッカも! ロカちゃんのためなの! 一緒に来て!」

「はっ! ネリエル様!」

「それがネリエル様の願いとあれば、当然でヤンス!」

 

 だが漏れるよりも先に、ネリエルは更に動いた。

 軽く周囲を見回したかと思えば、とある方角にて視線を止める。続いて二人の従属官(フラシオン)に命令すると真っ先に駆け出していく。それをペッシェたちが慌てて追っていった。

 

「あんたら二人も何を当然のように従ってるのよ!! 行き先くらいは尋ねるものでしょうが!!」

 

 迷うこと無く走り出していく三人の様子に数秒呆気にとられるも、気を取り直したチルッチはすぐに後を追うと、まずは真っ先に追いついた二人に向けて文句を言う。

 続いて響転(ソニード)の速度を上げるとネリエルと併走し、お腹の底から声を出す。

 

「それよりもネリエル、それ!! 手に持ってるやつ! 伝令神機を返しなさい!!」

「え……ああ、これ? はい」

「ちょ……!!」

 

 響転(ソニード)の高速で併走しながら、ネリエルは手にしていた伝令神機を投げて渡してきた。

 その行動に驚きながらも、チルッチは慌てて飛び上がると優しく掴み取った。

 

「ちょっと! これ結構繊細なのよ!! 壊れたらどうするつもりよ!? 連絡取れなくなるでしょうが!!」

「あ、そうなの?」

 

 手の中で簡単に操作をして壊れていない事を確認したものの、それでも腹の虫が治まらずに文句の言葉をぶつける。

 なにしろ言いたいことはまだ他にもあるのだ。

 

「それとネリエル! アンタはどこに行こうとしてるの! ちゃんと答えなさい!!」

「どこって、ザエルアポロのところよ!!」

「ザエルアポロ!?」

 

 そう言われて、チルッチは少しだけ思い出した。

 藍俚(あいり)とネリエルが話をしていたときに、少しだけだがその名前は確かに出ていた。

 

「でもザエルアポロって、標本として持って行かれたじゃない。あの変態化学者みたいな死神に。それがどうして今になって名前が出てくるわけ!?」

「知らないわよ! でも湯川さんが言ってたの。ザエルアポロが尸魂界(ソウルソサエティ)で暴れたって! あと本物じゃなくて複製とか偽物らしいわ!」

「複製!? ……まあ、アイツも負けず劣らず変態化学者だったからね……そのくらいの準備をしていてもおかしくはない、か……」

 

 本人はやられて標本にされているのに、複製のザエルアポロが暴れている。

 そんな、一聴しただけでは理解しがたい説明を聞いて一度は驚くものの、けれども次の瞬間チルッチはどこか腑に落ちた表情を浮かべて納得していた。

 そうして二、三度頷いたところでハッと気付く。

 

「――ってことは、あたしたちはザエルアポロのいる場所に向かっているってこと!?」

「ええ、そうよ。そうしないとロカちゃんが戻ってこられないの! 彼女、ザエルアポロの偽物に縛られているみたいだから!!」

「……はあ、やーめたっと」

 

 まだ不確定要素が混じっているのだが、やたらと断定的に言い切るネリエル。

 その声を聞きながら、チルッチは響転(ソニード)の速度を落とし、ついには完全に足を止めた。

 

「ちょ、ちょっとチルッチ! どうしたのよ!?」

 

 突然止まった彼女に付き合う形で、ネリエルも足を止める。

 虚圏(ウェコムンド)の砂漠に急ブレーキが原因で砂煙が立ち上る中、チルッチは近寄ってきたネリエルへ苛立ちを隠そうともせずに告げた。

 

「どうしたの、じゃないわよ! なんであたしが、付き合わなきゃならないわけ!? それも話からすると、ザエルアポロを倒すのよね!?」

「ええ、そうよ。似たような霊圧を感じたから、そこに向かっているの。そこで問い詰めて、もしロカちゃんを苦しめているようなら、今度こそ……」

「今度こそじゃないっての! それになんで、あたしが付き合わなきゃならないの!?」

「えええっ!!」

 

 チルッチの言葉に、今度はネリエルが不満の声を上げた。

 

「手伝ってくれないの!?」

「あのねぇ……当たり前でしょ! そもそもあたし、そのロカって()のこと全然知らないんだけど!? それなのに全面的に手助けするとか、虫が良すぎるわよ!! どうしても頼みたければ、アンタの従属官(フラシオン)二人だけ連れて行きなさい!!」

「そういえば……」

 

 キョロキョロと周囲を見回す。

 

「ペッシェとドンドチャッカは?」

「知らないわよ!!」

 

 

 

 

 

 ――その頃二人は、

 

「どこでヤンスか~!! ネリエル様~!!」

「ううむ、速い……速すぎる……探査回路(ペスキス)にも全く引っかからなくなってしまった……」

 

 完全に置いてけぼりになっていた。

 元とはいえ十刃(エスパーダ)従属官(フラシオン)では、移動速度に差がありすぎたようだ。

 まして「ロカのため」と一心不乱になっている今のネリエルでは、どうやら二人を気に掛ける余裕は一切無かったらしい。

 

 

 

 

 

「多分、ずーっと後ろの方でしょ。探してきたらいいんじゃない?

「でもそれじゃあロカちゃんが……それにザエルアポロの霊圧のすぐ近くまで来ているのに……」

 

 キッ、と睨むような瞳でネリエルは前方を見つめる。

 少し探査回路(ペスキス)に意識を集中させれば、なるほどザエルアポロに似た霊圧があるのがチルッチにも分かった。言葉通り、ここからならば響転(ソニード)で十数秒の距離といったところだろう。

 

「湯川さんにも頼まれたのに……虚圏(こっち)にザエルアポロがいないか探してくれって……」

「……あっそ。好きにすれば? それじゃあね」

 

 さらりと藍俚(あいり)の名を出してみるものの、それがどうしたと言わんばかりにチルッチはその場から去って行く。

 その姿を遠目に見ながら、ネリエルは一人呟いた。 

 

「……うん、決めた! 待っててロカちゃん! 今行くから!!」

 

 ペッシェとドンドチャッカを待つ、あるいは迎えに行くという選択肢もあったが、彼女は今回それを選ぶことはなかった。

 

 過去、二人はザエルアポロの策略で仮面を無理矢理剥がされている。その後、死神たちと共にザエルアポロへと一矢報いたという報告は聞いている。だが再び同じ相手と戦わせて、過去の苦い経験を思い出させるような真似をする必要もないだろう。

 そう判断したネリエルは、前へと一人で駆けていった。

 

 

 

「呆れた。まさか一人で行くなんて……」

 

 砂丘の陰に隠れながら、チルッチは呟いた。

 付き合う程の義理は無いが、かといって完全に無視するのも寝覚めが悪いような気がして、一度は確かに去ろうとしたものの、こっそりと様子を窺うことにしていた。

 だが、ネリエルの行動は意外だった。

 てっきり従属官(フラシオン)を拾ってから行くと思っていたのだが、まさか一人で行くとは思ってもみなかったからだ。

 

「あの霊圧に、気付いていないわけじゃないでしょうに……」

 

 ザエルアポロの霊圧は、彼女も知っている。十刃(エスパーダ)となってから、どの程度の強さを持っているのかも、何となくではあるがチルッチは理解している。

 この先にいるザエルアポロらしき(ホロウ)の霊圧は、その頃の霊圧よりもっとずっと強い。

 そのことに気付いていないのか、それとも気付いた上でなお一人で行動しているのか、離れた場所に居るチルッチには判断が付かなかった。

 

「別に、藍俚(あいり)が頼んだからとか関係ないし……ネリエルのことはまあ、知らない訳でもないから、万が一のために一応隠れて様子を見ているだけだから……」

 

 彼女は「はぁ」と一つ息を吐き出すと、自らの霊圧を最大限まで抑えながらこっそりと動き始めた。

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

「ザエルアポロ!!」

「おやおや、懐かしい霊圧が近づいていると思えば、やはりネリエルだったか」

 

 ネリエルが乗り込んだ場所に、ザエルアポロはいた。

 彼は十数人ほどのピカロたちを従えながら、何かを探しているようだった。

 周囲のピカロたちが突然やってきたネリエルへ向けてワイワイと騒ぐ中、彼はネリエルが近づいていることに気付いていたような口ぶりを見せると、くっくと喉の奥で笑う。

 

「残念だけど、今は君と遊んでいる暇はないんだよ。僕にはやらなければならないことがあるのだから」

「それは、ロカちゃんを苦しめるってことかしら?」

「……へえ、少しは察しがいいね。頭を砕かれたことで風通しがよくなったおかげかな? まあ、それは僕の知ったことではないのだけれど……」

「っ!」

 

 まるで過去を懐かしむように、毒々しい不気味な笑みを浮かべると、言葉を続けた。

 

「そうだ、一つ訂正しておこう。今の僕はザエルアポロではない。100(シエン)だよ」

「シエン……?」

「そうだよネリエル! シエンお兄ちゃんなんだよ!」「ザエルアポロじゃないんだって!」「ネリエルも一緒に遊ぼうよ!」「宝探し! 宝探しゲーム!!」「糸のお姉ちゃんを探す方でもいいよ!」「ネルはいないの?」

 

 どうして別の名を名乗っているのか、ネリエルには見当が付かない。

 当然だろう。目の前にいるのがロカの糸から再生されたザエルアポロの複製品であり、かつて自身が捨てた力を拾い集めることでザエルアポロ以上の存在になろうとしているなど、分かるはずもない。

 ただ、周囲のピカロたちが受け入れていることから「そういうものなのだろう」とだけ理解しておく。

 

「シエンでもザエルアポロでも構わないわ。何を考えているのか知らないけれど、ロカちゃんを今すぐに解放しなさい!!」

「解放……解放ねぇ……ククク……」

 

 見当外れな口ぶりから、かつての縁だけでここまでやってきたのだろうと判断したシエンは、一度ネリエルを無視してピカロたちに告げる。

 

「ああ、君たち。悪いのだけど君たちはゲームを続けてくれたまえ。ネリエルは僕に用事があるみたいだからね」

「ええーっ!」「じゃあシエンはどうするのさ?」「ネリエルと遊ぶんでしょ!」「ずるーい!! 僕も遊びたい!!」「わ、私は、真面目に、やろうって……」「ゲーム ちゃん と やる」「PRRRRRR……」

「頼んだよ」

 

 ゲームとやらを続けることに決定したらしく、はしゃぎながらもシエンのところから散らばっていくピカロたち。

 その全てがこの場から離れたところで、ネリエルが口を開いた。

 

「ピカロたちを下がらせるなんてね。何か企んでいるのかしら?」

「まだアイツらには利用価値があるのさ。迂闊なことを言って疑われるわけにはいかないだけだよ」

「……それはロカちゃんだけじゃなくてピカロたちまで利用しているってことよね!?」

 

 当然のことのように告げられた言葉を皮切りに、ネリエルが飛びかかった。

 斬魄刀を手にシエンへと襲いかかると、切りつけるべく刃を振るう。だがシエンは悠々とその攻撃を避け続けていく。

 

「以前より霊圧も上がっているようだ。ザエルアポロだったら、倒せていたかもしれないな」

「くっ……!」

 

 襲いかかるネリエルに、反撃するまでもなくただ回避に徹する。シエンの狙いが読めず、観察されているようで何とも気味が悪い。

 それでも臆することなく刃を振るう。

 

「おっと危ない。もう少しで斬られるところだったよ」

「何を……っ!!」

 

 何度か回避を続ける内に、シエンの身体が僅かにブレた。その隙を逃すことなく、ネリエルは斬魄刀を突き出す。

 やや崩れた体勢のまま、けれどもシエンはその一撃をも躱してみせた。それでいて余裕たっぷりの態度にネリエルは苛立ち、攻めの手を強く意識する。

 

「おかげで、ほぉら!」

「えっ!?」

 

 それを待っていたかのように、シエンは最小限の動きでネリエルの攻撃を避けた。さながら闘牛士が突進を直前で回避するかのように、鮮やかに躱す。

 攻めを意識しすぎていたネリエルは反応が一瞬遅れ、気付いた時にはシエンの足払いを受けて(つまづ)いた様につんのめった。

 全ての動作が誘い水でしかなかったと、ここに来てネリエルは悟る。

 視線を巡らせれば、シエンの手には霊圧が集まっていた。虚閃(セロ)を放とうとしているのだと理解するものの、もう遅い。

 

重奏虚閃(セロ・ドーブル)は使わせないさ」

「しま……っ!!」

 

 シエンの狙いはネリエルの背中。

 彼女には相手の虚閃(セロ)を飲み込んで自分の虚閃(セロ)を上乗せして放つ、重奏虚閃(セロ・ドーブル)という技があるが、吸い込むには全てが遅すぎた。

 発動する暇もなければ、吸い込むほどの余力も無い。

 思わず身を竦めるネリエルであったが、その一撃が放たれることはなかった。

 高速で回転する鋭い円盤が飛び出し、シエンの腕を両断する。

 

車輪鉄燕(ゴロンドリーナ)……ッ! そこか!!」

「あ、ヤバっ! バレた……!!」

 

 切断された片腕を、もう片方の手で掴みながらシエンはその場から飛び退いた。

 そして円盤が飛んできた方向を睨みつければ、そこにいた女破面(アランカル)と目が合った。

 

「チルッチ・サンダーウィッチ!!」

「チルッチ! 助けに来てくれたんだ!!」

「べっつにー! そんなんじゃないから! ただザエルアポロのこと、あんまり好きじゃなかったって思い出して、一発くらいは殴ってやろうって思っただけだから!」

「そうなんだ、奇遇ね。私も昔、ザエルアポロにちょっとした借りがあるのよ。もしかして私たち、良いコンビなのかもね」

「誰が!!」

 

 信じていたと言わんばかりに、澄んだ視線をネリエルは向ける。

 それがどうにもくすぐったくてそう嘯けば、相手もまた同じ気持ちだとばかりに軽口を叩いてきた。

 

「……上手く隠れたものだな。3桁(トレス・シフラス)になってから逃げ隠れの腕前だけは上がったらしい」

「はっ! 何を言ってんのよ! 逃げ隠れ、と……か……」

 

 チルッチの言葉が勢いを失っていった。

 忌々しげに吐き捨てたシエンは、おもむろに切断された片腕を食いちぎる。するとまるでトカゲの尻尾のように、そこから腕が生えて来た。

 せっかく不意を打って片腕を駄目にしてやったというのに、それを一瞬で無に帰されては、語尾も弱々しくなるというものだ。

 

「まったく、霊子を無駄遣いしないように注意していたというのに、とんだ出費だよ。どうてくれるんだい?」

 

 言葉の端々に怒りを纏わせ、それと同時にシエンの霊圧が強くなっていく。

 自らの探査回路(ペスキス)で処理しきれないほど高まっていく霊圧に、チルッチは思わず一歩退いていた。

 

「君たちで補うべきだと理解しているんだが、その前に少々やり返させてもらうとするか」

「ぐうううううぅっ!!」

 

 言葉が聞こえると同時に、シエンの姿がかき消える。

 それが響転(ソニード)によるものだと理解したのは、チルッチの腹部に重い拳が叩き込まれ、吐瀉物を吐き出した直後のことだった。

 

 

 

 

 

「さて、そろそろ良いだろう」

「ぐ……っ……」

「ハァ……ハァ……」

 

 それから、何分経ったのだろうか。

 実際には二分と経過していないのだが、二人には長く長く感じられた。

 たったそれだけの時間だというのに、シエンの攻撃を受け続けた二人は身体中に傷跡を作りながら倒れていた。

 ただ、幸いなことにというべきか、シエンが斬魄刀を使うことはなかった。まるで何かの鬱憤を晴らすかのように拳で殴り続けていただけだった。

 だがそれもどうやら終わりらしい。

 

「そろそろ清算させてもらうとするか」

「おことわり、よ……!!」

 

 舌なめずりをすると、シエンは下品に口を開ける。

 先ほど、自らの腕を喰らって霊子を補給したところを見るに、次は自分たちを喰らうつもりなのだろう。

 それを察したネリエルは、傷が痛むだろうに毅然と立ち上がって見せる。

 

「……ちぇっ」

 

 チルッチは思わず舌打ちする。

 自分はまだ立ち上がれないというのに、ネリエルは立っている。これが、今の二人の差なのだろう。

 このまま、起き上がれない自分は食われてしまうのだろうか。そう考えたときだ。

 

「ねえねえシエン! ……シエンってば!!」

 

 ピカロの一人が戦場へとやってきた。

 トコトコと無邪気な足取りでシエンに近寄ると、彼の足をペシペシと軽く叩きながら存在をアピールし始める。

 

「なにか、用かな? 僕はこれから忙しいのだけど」

「それがね、僕たちの一人が糸のお姉ちゃんを見つけたんだって」

「なんだって、それは本当かい!?」

「……っ!!」

 

 その言葉に、怒りと霊圧が静かになった。

 とはいえ二人への怒りが冷めたわけではなく、それ以上に優先すべきことが見つかったに過ぎない。

 現にネリエルは、声なき声を上げていた。ロカが見つかったとなれば、シエンが次に何をするかは今更考えるまでもない。

 

「命拾いをしたね、二人とも。君たちはゆっくり、虚圏(ここ)で傷を癒やすと良い」

「あ、抱っこしてくれるんだ! シエンありがと!!」

「非常食はまだまだたくさんある。別に君たちに固執する必要もないのだからね」

「現世に行くの!?」

「くっ……待ちなさい!!」

 

 抱え上げたピカロに何をするかは、彼が口にした"非常食"という言葉から自ずと推測できてしまう。

 だがそれ以上に、ロカに手出しをさせまいとネリエルは手を伸ばすものの、その手が届くことはなかった。

 話しながら黒腔(ガルガンタ)を開くと、シエンはその中へ入り姿を消す。

 

「まだよ、まだ! 待っててねロカちゃん!!」

「ちょっと……ちょっとネリエル!?」

 

 姿を消したシエンの後を追いかけるように、ネリエルもまた黒腔(ガルガンタ)を開いてみせる。

 慌ててチルッチが止めようとするが、その言葉は彼女の耳に届かなかった。

 

「アンタ何やってんのよ!!」

 

 絶叫が響く中、ネリエルもまた姿を消す。

 そして一人残されたチルッチは、何もかも面倒になったように砂の上へ寝転んだ。

 

「……これ、絶対にロクでもないことになるわよね……」

 

 虚圏(ウェコムンド)の夜空を眺めながら、伝令神機を取り出す。

 

「一応、ね! 一応! ハリベルに連絡を入れて、あとそのついでに藍俚(あいり)! 藍俚(あいり)にも一応は連絡をしておくだけだから!!」

 

 誰に向けるわけでもなく、早口で言いながら、伝令神機を操作して連絡を入れていく。

 

「ネリエルには、後で絶対にこの代償を払わせてやるんだから!!」

 




シエンは省エネモードで戦闘中
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