「
力強く剣を振り下ろすと同時に霊圧を放ち、斬撃を飛ばします。
「……なんちゃって」
勿論、嘘です。
あ、月牙天衝が嘘ってだけで攻撃自体はしてますよ。
やったのは単純に、斬撃に合わせて
現在、流魂街から離れた山中にて自己練習の真っ最中です。
何の練習だ? 勿論、必殺技ですよ!
いいじゃないですか! 必殺技みたいなのの一つや二つ、考えたって!!
自分だけの技の一つや二つ欲しいじゃないですか、やっぱり!!
始解できたなら、そういう手段の一つも覚えてみたいんです!
なのでとりあえず、主人公殿の技を真似てみたのですが――
「これ、使えない……」
――決して悪いわけではないのですが。普通の死神でも代替可能なんですよねぇ。
「破道の七十八
これは斬魄刀に霊圧を纏わせ、そのまま斬撃を飛ばすようにして放つ術です。
やっていることは月牙天衝と同じです。多分。
細かい部分は異なるのでしょうが、鬼道で同じ事ができます。おそらく。
というか鬼道と組み合わせると大体が代替可能なんですよね……オリジナルな使い方って何か無い物かしら……?
『
射干玉! たしかにそうだけれど、あれは戦闘に使えないじゃない!
……ん? 待って、ちょっと待って……射干玉を使えば……
「あ、そっか!」
やってみなくちゃわからない! わからなかったらやってみる!!
ということで地面を軽く斬り付けて、射干玉の粘液を塗っておきます。そして精神を集中して……
『あ、
「破道の三十三
粘液を塗りつけた場所に向けて炎を放ちます。
低い温度でも発火する性質を利用して火勢を強められるかと思ったんですが、どうも失敗みたいですね。
「うーん……火力、上がっているかしら……? これ、むしろ弱めてる?」
一瞬で燃え上がって燃え尽きてしまうので、着火剤代わりが関の山ですね。もしもこれがガソリンや灯油を撒き散らしたみたいな効果があればよかったのですが。
『拙者と
「それが出来たら苦労しないんだけどねぇ……」
そんな土地4つと4点ダメージみたいな破壊力を出せればいいんだけどね。
仕方なしと、代わりに粘液を手の平に塗りつけます。
「今のところは難しいわね。まあ、こういう剣術には使えるけれ……どっ!!」
続いて片手で斬魄刀を持って勢いよく振り回します。
本来ならすっぽ抜けていきそうな程ですが、そこは摩擦を思い切り高めているので。握力が続く限りは、そうしたヘマはしませんね。
ぶんぶんと振り回してもしっかりと握り続けていられるのを確認してから、続いて地面に転がっていた小石を片手一杯になるまで拾うと、軽く上に投げます。
「……はっ!!」
落ちてきた石礫目掛けて斬魄刀を一閃させます。
「難しいわね」
全てを真っ二つに切り裂いてやろうと思ったのですが、重さが足りないのが原因か、斬れずに当たった瞬間に吹き飛んでいってしまいました。
「コレを全部斬れるようになりたいんだけど……」
全部当てるまでは成功したんだけど。
『さすがにそれは無理ではござらんか……?』
「隊長は切り落とすわよ?」
なぜか射干玉が心配そうに聞いてきたのですが、何かおかしかったでしょうか?
そりゃあ、私の今までの成長速度から考えると、そこまでの域に達するのは凄く難しいって思うかも知れないけれど。
秋に山中に入って銀杏の木辺りを思いっきり蹴りつけて、落っこちてくる葉っぱを全部中空で切断して"秘剣・木の葉落とし"とかやってみたいのよね。
あ、
『
……はっ! いけないいけない。いつの間にか考える方向が明後日に向かってたわね。ちゃんと考え方を……!!
「――あっ! そうか! 考え方が間違ってたのね! 射干玉が刀身から粘液を休まずどんどん生産して、私が鬼道で着火すれば炎の剣みたいになるじゃない!!」
『あ、
「大丈夫よ、私は基本的に干物は陰干派だから。イケるイケるって! あと塩水につけないといけないし、みりんとお酒と醤油で味付けするのもいいわね」
『ああ、確かに。それはお酒も進みそうで……って
そういえば。
隊長と稽古をする時に持参していたおむすびですが、足らないと言われて段々持って行く量が増えて、最近ではとうとう重箱を持って行く羽目になっています。
舌が肥えたんですかね。
「ふむ」
必殺技はまだ私は早かったみたいですね。
どうせ覚えも悪いのですから、地道に基礎能力を高めて派手さは無いけれど強い方向を極める方が正解なんだと思います。
まだ始解の能力すらも完全に使いこなせていませんからね。
……摩擦を操れるので攻撃は無力化できるはずなのに、なんで卯ノ花隊長は防御の上から攻撃をぶつけてこられるのでしょうか?
この世界お得意の"霊圧が圧倒的に高ければ大体は無力化できる"な法則の結果――なのかもしれません。
だって――
「くそっ!! この死神、なんで攻撃があたらねぇんだ!!」
「殴っても蹴っても切り裂いても!! 通らねぇ!!」
「聞いてねぇ!! こんな死神がいるなんて聞いてねぇぞ!!」
――三体の
その悉くを射干玉の能力によって無力化しています。
現在、久しぶりに
私が始解できることを知ったお祝いにと、隊長が他隊から依頼を持ってきてくれました。
ああ……まだ四番隊の業務もあるのに……新人隊士の研修の途中なのに……うれしいな……
今回の相手は野性の獣のような姿形をした相手ですね。何かの切っ掛けで知り合って意気投合したのでしょうか、三体同時に襲い掛かってくるのが特徴といえば特徴です。
狼が群れで狩りするのを真似たような連携攻撃は中々どうしてサマになっています。
サマになっているのですが、どうやら
今の私程度の死神が少し集中しただけで動きは簡単に見切れますから。
「少し角度を変えるだけで攻撃は完全に受け流せる、攻撃を直角に合わせても滑って有効打からは程遠い……」
なので、実戦訓練と称して射干玉の能力による防御を試しているところです。
結果は上々、というより大成功ですね。
「ねえ、あなたたち……本気でやってこの程度なの?」
「なっ……! なんだと
ふむふむ、ちょっと挑発すれば簡単に逆上してくれてます。
ならやはり攻撃は本物、こちらでも把握はしていましたが、殺意たっぷりの私を殺さんとする攻撃だったわけですか。
「お、落ち着け!! こいつは剣こそ抜いちゃいるが、今まで一度も攻撃してねぇ! つまり、囮か偵察役だ!」
「そ……そうか!」
「なら、こんな奴にいつまでも構ってやる必要もねぇな!!」
おっといけない、さすがに手を緩めすぎましたかね。
私が攻撃をしないと踏み、これ以上戦う必要はないと判断したようで。
三体の
「駄目よ」
とはいえここで逃がしたら隊長に何をされ――もとい、何を言われることやら。
「ぐえっ!?!?」
「兄弟!? 何時の間に!?」
「は……速えっ!!」
やっぱり、スピードもたいしたことはありませんね。
頭を掴んで投げ飛ばした辺りで何が起きたのか気付いたのでしょう、そこでようやく悲鳴が上がり、受け身も取れずに地面に叩きつけられました。
「な……なんだこりゃ!?」
その地点には、予め射干玉の粘液をたっぷりと塗りつけてあります。
しかも粘度と滑りやすさはマシマシ。ネバネバでヌルヌルでベットベトです。
『拙者としては、こんな男に触れられるのは嫌でござるなぁ……どうせなら女性の
その意見には少しだけ同意。
「さあ、次はあなたの番よ?」
「うおぉっ!? もう来やがったのか!?」
二体目も同じように捕獲すると、同じように投げつけます。
「ぐわっ!? きょ、兄弟そこをどいてくれ!!」
「なんだこりゃ……ひいいいいぃぃっ!?!?!?」
うわぁ……二体の
なんとも正視に耐えがたい光景ね。
残った一体も唖然とした表情で見ています。
「さて、残ったのはあなただけ。大人しく倒されるのもよし、それとも仲間を見捨てて一人だけ逃げ出してみる?」
「ク……クククククッ!! やっぱり死神はバカだなぁ!!」
「……?」
一体何を言って――
「えっ!?」
「負けるつもりも!」
「逃げ出す必要も!」
「ねぇんだよ!!」
――なんと、目の前の
「俺は、俺たちは三体で一体なのよ! どれもが本物!! どれもが偽物!!」
「俺たちを倒せる死神なんざ、いねえってことだ!」
「じゃあな! 間抜けな死神よ!!」
なるほど、やけに連携が上手いと思っていましたが、そういうカラクリでしたか。
一体が無事なら残る二体はどうなってもいい。どうせ分裂すればまた増えますし、基準になるのは無事だった一体なのだから、ソイツさえ無事なら良い。
二体が注意を引いている間に三体目が逃げるなり攻撃なりする戦法ですね。
まあ、永遠に分裂し続けるのは不可能でしょうから、囮の二体を延々と倒し続ければ霊圧不足でいつかは倒せるでしょう。
ですが、こういった相手を倒すにはある意味お約束の戦法があります。
「遅いっ!!」
三体が逃げようと一歩を踏み出したところで、瞬時に剣を振るい
「げえぇっ!?」
「な……馬鹿な……!?」
「これじゃ……分裂できねぇ……」
「秘剣・木の葉落とし――なんてね」
力無く倒れる
少しは練習した甲斐がありました。
やはりこういう相手は、同時に倒すのがセオリーですよね。斬られた
『いやぁ、お見事! お見事にござる!!
まあ、ねぇ……
『それにこれほどの
ああ、それはないわよ。
『……は?』
これ、他隊から回して貰った仕事だから。私の評価にならないのよ。
だから公的な査定に、ちょっと色が付くくらい。まあ、卯ノ花隊長はそれとは別に評価してくれるかもしれないけれど、この程度の相手じゃねぇ……
『な、なんと……(いや、この
これじゃ、卍解に辿り着くのに何年掛かるのかしらね……ちょっと! 聞いてる、射干玉?
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修行ばかりではありません。
席官になると、狭いながらも一応自室が貰えます。
アパートの一室みたいな感じですが、それでも隊舎の寮と比べれば自由度は比べものになりません。
「ん……ふあぁ……気持ち、いい……」
「この辺りですか?」
「あ、そこ……湯川さん、もっと……」
なのでこうして大手を振ってマッサージも出来ます。
寮の一室でやっていた頃とは比べものになりません。
お給金も上がっていますので、紙製の下着を付けて貰ってそこでオイルマッサージになっています。
オイルも特別調合した自家製ですよ。
トロットロのオイルをたっぷりと使い、女性隊士の肢体をゆっくりと丁寧に触っていきます。
指先から伝わってくるヌルヌルの感触がなんとも言えませんね。
一度私の施術を受けた方はほぼ必ずリピーターになってくれますし、口コミで評判を広がっています。
他の部隊の隊士が「予約できますか?」って就業中に聞きに来るくらいですから。
色んな子の肌を触れられてとっても嬉し――
――コホン、大変ですが皆さんが喜んでくれると私もとても嬉しくなります。
それに最近は評判がいいんですよ。
肌がいつにも増してツルツルになってて、まるで赤ちゃんみたいな肌になるって……
……ん、ツルツル……?
『テヘペロでござる★』
やっぱり、あんたの仕業か!!
●三段突き
新撰組、沖田総司の必殺技。
諸説あるが「目にも止まらぬ凄い速い突き」ということ。
正式名を無明剣と言うらしい。
●燎原の火
ジョークルホープスっぽくて好き。これに黒の再生持ちを重ねるのは基本。
知らない人は「燎原の火 MTG」で検索すると「カードゲームのことなんだ」とわかるはず。