お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第318話 チェーンメール

「そう言われて、わかりましたって言えるような立場じゃないことくらいはご存じですよね?」

『アハハハ! またまたぁ、湯川サンでしたら楽勝でしょう? よく目を盗んで虚圏(ウェコムンド)に行ってるじゃありませんか!』

 

 ぐぅっ! そ、それを言うんじゃないわよ……

 

「……ちょっと前のピカロ関連もあって、出来ればもう少しほとぼりを冷ましてから――」

『まあ実はですね、今回の依頼については湯川サンは必ずしも来て貰わなくても問題は無いんですけどね』

「――は?」

 

 おい、ならなんで私に連絡した? 理由を言いなさい!!

 

『昨日連絡をいただいたので、お誘いさせていただきました。そもそも最初にご依頼をいただいたのも湯川サンでしたからね。筋を通すとでも言いましょうか?』

 

 ッ!! それって……!!

 

「まさか、力が戻せるようになったの?」

『ええ、まあそういうことになります。ですけどそのためにはまず、朽木サンのご協力が必要不可欠なんスよ。あ、朽木サンっていってもルキアサンの方ですよ?』

 

 でしょうね。

 朽木隊長の方だったら、多分私大声で叫んでいたと思うわ。

 

「じゃあ、私からルキアさんに連絡した方がいいかしら?」

『いえいえ、アタシの方から朽木サンに連絡させていただきます。説明も彼女にしますので、湯川サンもご協力をお願いしますね』

「わかりました。でしたら、ルキアさんから追って連絡があるまで待つことにしますね」

『んじゃ、そういうことで』

 

 といって、浦原からの連絡は終了しました。

 

 ……うーん、何をやるのかしらね……? そもそも力を取り戻すって、一体どんな方法で……

 ……まあ、考えても仕方ないわよね。

 

「とりあえず、ルキアさんから連絡が来るまで待ちましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

「……ああ、なるほどね。こういうこと」

 

 翌日、始業開始の鐘の音が鳴ってから少し経った頃。

 ルキアさんから届いた電子書簡(メール)を眺めながら、私は呟きました。

 

 届いた電子書簡(メール)の本文には「浦原喜助が、黒崎一護に死神の能力を取り戻させる方法を完成させた」ことが。

 その方法が「特殊な刀に複数名で霊圧を込めた後、その刀で一護を貫いて力を注ぎ込んで再び死神化させる」ということが。

 さらには「死神能力の譲渡に該当するので、罰せられる」ことも明記されています。

 そして最後に「それでも御助力いただける方は、本日終業後に西流魂街の志波家までご足労を――」と締めくくられていました。

 

 ……複数名で霊圧を注ぎ込んでも平気って、またどんな方法で実現したのかしらね……

 やることが相変わらず、ぶっ飛んでるわねぇ……

 

 しかも複数名ってことは多分だけど、注ぎ込めば注ぎ込んだだけ、一護が強くなるわよねきっと……

 ……大丈夫なのかしらね……本当に大丈夫なのかしらね……

 

 主に更木副隊長とか更木副隊長とか、あと更木副隊長とか。

 刀、壊れないわよね? あと一護も、壊れないわよね……?

 

『場所は志波家なのですな』

 

 え……まあ、仕方ないでしょ。

 海燕さんだって、親戚のお子さんのことなんだから。

 滅却師(クインシー)の王様のことも含めたら、自衛の力が戻るのは悪いことでは無い……いえ、逆に今の力が無い状態の方が安全ということも……

 

 ……やめましょう。

 親御さんがそう考えたのなら、外様はあれこれ言わない。

 というか展開的に、力が有っても無くても襲われてそうだもん。どう考えても元に戻った方が良いに決まってるわよね。

 海燕さんも一心さんも公認で、力を取り戻させるための一大イベントってわけね。会場が志波家の時点で、もうほぼ確定イベントってわけなのね。

 それに現世の方でも石田君が襲われたって言ってたし、その事件も一護が後々になって絡んでくるんでしょ?

 だったら、とっとと元に戻した方が絶対にマシだもの。

 

 むしろ、問題があるとすれば――

 

「私、隊長のはずなんだけど……こんな電子書簡(メール)を送ってくるのは、どうなのかしらね……? ルキアさんに隊長だと思われてないのかしら……勇音はどう思う?」

「え……ええぇぇっ!!!!」

 

 部屋の隅で、悩んだり慌てたりと百面相していた副隊長へ話題を振ります。

 彼女の手には伝令神機が握られており、つい先ほどまで小声でボソボソと会話をしていたところでした。

 

「その通話の相手、清音さんでしょ? 話の内容は、黒崎君の力を元に戻すための協力依頼だった。違うかしら?」

「ど、どうしてわかるんですか……?」

「同じ内容をルキアさんから貰ったからよ、ホラ見て」

 

 一昨日に続いて、再び勇音に伝令神機の画面を見せつけます。

 そこにはルキアさんから貰った文面が――これ、今気づいたけど複数相手に送ってるわね。先遣隊で現世に行った面々や、彼女の個人的な知り合いであろう相手の連絡先が丸わかりになってる……

 

『世が世なら情報流出ですな!! CCではなくBCCで送る!! これもまた必要なことでございます!! でないと福があって武も誇った書店みたいなことになりますぞ!!』

 

 また随分古いわね……って、言ってる場合じゃないわよね。

 

「隊長……どうしましょうか……?」

「そうねぇ……」

 

 軽く外の景色に視線を向けながら、わざとらしく呟きます。

 

「新人の子たちも疲れているだろうし、今日は特別に早めに業務を終了させましょうか」

「え……い、良いんですか……?」

「あら、何のこと? 今日は特別に業務終了時間を早めただけよ。その後に何をするかは、私は知らないわよ」

 

 そこまで告げると、私は手を軽くパンパンと叩きます。

 

「ほら、どうしたの? 隊長が特別なお達しを出したんだから、副隊長はちゃんと部下の子たちに連絡しないと」

「は、はいっ! 申し訳ありませんでした!! 虎徹勇音、これより各班へと通達してきます!!」

 

 深々と頭を下げると、勇音は執務室を飛び出していきました。

 

 

 

 

 

 ……でもコレ、確実にバレるわよねぇ……

 浦原が隠ぺい工作をしているだろうけれど、ある程度まとまった数の死神が動けば間違いなく察知されるだろうから……

 

藍俚(あいり)殿? 何をお考えで?』

 

 ん? いやまあ……

 

 

 

 謝るにしても抵抗するにしても、早いほうが良いかなって思っただけよ。

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 こうして――

 

「ええっ! 黒崎さんが力を取り戻す!? 吉良君、これって……」

「ああ、そっちにも来たんだね。知らない仲じゃないし、協力しようと思ってるんだ」

「やっぱり、そうだよね……うん、私も協力する! 織姫さんも喜ぶだろうし……そうだ! 部下の子たちにもお願いしちゃおうっと!!」

 

 

 朽木ルキアの送った電子書簡(メール)は――

 

「ん、ルキアのヤツから……? へえ……」

「どうしたんですか恋次さん? ……この書簡、転送してもらって良いですか!?」

「いいのか? お前らみたいな一般隊士がこんなことしたら……」

「平気です! 僕たちだって少しは協力させてください!!」

 

 

 様々な死神たちのところへ――

 

「ルキア? ふむ、なるほど。昨日悩んでいたのはこれか……ああ、緋真か? すまない、今日は少し特別な催しがあるんだ。もしよければ、お前たちも……」

 

 

 送られて――

 

「隊長、副隊長も! これ見てくださいよ!!」

「あら、どうしましたか斑目三席? あら……?」

「霊圧を込めるだって? でもこれ、違法だよね?」

「つまり、込めた霊圧が強ければ強いほど、黒崎さんも強くなるということですね」

「へぇ……なら、ちっとは楽しめそうだな。何しろ藍染のヤツを倒したんだ。ようやく斬り合えそうだ」

 

 

 行きました――

 

「おや? 一体……ふむふむ! なるほど、面白そうじゃな! よし砕蜂、儂らも行くぞ!」

「行くのは構いませんが、今日の仕事は終えてからお願いしますね」

「お主……こういうのは勢いも大事じゃとは思わぬか……?」

「そういうことは、私から一本取ってからおっしゃってください」

 

 

 それは様々な死神(ひと)から死神(ひと)へ――

 

「あん? なんやこれ……ははっ! なんやルキアちゃん、オモロイこと考えるやん!」

「どないしたん真子?」

「リサ、お前もこれ読んでみい!」

「どれどれ……人が、集まりそうやな。新規顧客開拓のチャンスかもしれん……」

「ローズと拳西んトコにも送っとくか」

 

 

 様々な相手から相手へと――

 

「あれ、浮竹から……? あらら、すごいことになってるんだね。ちょっと七緒ちゃん、コレ見てよ」

「どうしましたか隊長? え、えええぇっ!?」

「どうしようか? ボクは行こうと思ってるんだけど」

「私も行きます! 今の状況は、彼が多大な犠牲を払ってくれたおかげなんですから……でも隊長、仕事はちゃんとしましょうね」

「え……やっぱサボっちゃダメ?」

「ダメです!」

 

 

 彼らの繋がりを示すように――

 

「おや、電子書簡か……ふむ、鉄左衛門! 少しコレを見てみろ」

「どうかしましたか隊長? おや、湯川隊長からの書簡……いや、これは!?」

「泰虎も心配しておったのを覚えている。故に、儂も協力しよう思うのだ」

「あの隊長どちらへ……? 書簡には業務終了後と……」

「案ずるな。今から元柳斎殿のところだ。あの方が是と言えば、儂も存分に力を注げるからな」

 

 

 広がっていきました――

 

「なんだこりゃ、真子から? ……修兵! ちょっと来い!」

「隊長! もしやようやく編集長の仕事を……」

「それはやらねえって言ってんだろ! じゃなくて、これだ。お前んとこにも来たろ?」

「……いえ、初見です」

「あ……す、すまねえ……」

「気を遣わないでくださいッ!!」

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

「さて、行くとしますか」

 

 一番隊の隊舎の前までたどり着くと、私は気合いを入れ直しました。

 

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