すっごい! これ、何コレ……!? 何なのこの空間!?
ゲーム!? ひょっとしてゲームの中に入っちゃったの私!?
ひょっとして私、これからゾンビと戦ったりしちゃうの!?
辿り着いた古くさい洋館をさ迷いながらクランク回したり柱時計の時刻揃えたり宝石集めたり除草剤調合したり巨大な蛇と殴り合いしたりするの!?
……どうしよう射干玉! 私、ピアノ弾けないしパズルも苦手なんだけど!!
全部、物理的に壊して突破しちゃって良いかな!?
『ランダムで青くて巨大な化け物が襲ってくるかもしれませんので、タンスの位置は把握しておいてくだされ!!』
そっか! 了解!!
……って、言いたいんだけど……この様子だと……ねぇ……
『銃もナイフもカギもMOディスクもバッテリーも不要ですな』
なにしろ周囲には古い洋館なんてありませんからね。
基本的には森の中だけど、川とか流れているし岩山とかもあるの。お空には三日月のお月様が登っていて……
具体的に言うと、さっきまで一護と一緒にいた場所をベースにしているんだけど、もう少しだけ野外要素を足した場所。とでも言えば良いのかしら?
キャンプとかしたら楽しいかもしれないわね。
「それで……私の相手は、あなたたち――って事で良いのよね?」
周囲の確認を終えたので、今度は対戦相手の確認です。
私は、視線の先にいる
「あーあ、まったく……なんでアンタと一緒なのよ!?」
「それはこっちのセリフだ! こんなヤツ、あたし一人で十分だよ!!」
「気が合うわね! あたしだって同じ気持ちよ! アンタと一緒だとせっかくのヌイグルミが汚れちゃうの!」
……喧嘩、してるわね……? ひょっとして仲が悪いのかしら……?
でも喧嘩するほど仲が良いって言うし……うん、この二人はきっと仲良しね!
「ところで、お話中のところ悪いんだけど」
「「何!?」」
声を掛けると、二人揃って同じタイミングで私に顔を向けました。
……やっぱり仲良しね。
「二人の名前、教えて貰えるかしら?」
「はぁ!?」
「あたしたちの名前? ……知ってどうすんのさ?」
二人とも不可解な表情を浮かべます。
そんなに変なことを聞いたかしら?
「だって……困るでしょう?」
「困るって何がよ!?」
「
「…………」
あら、どうしたのかしら?
唖然とした顔をしたかと思ったら、そのまま表情がゆっくりと怒りに変わっていくわね。
「……それはひょっとして……あたしたちを病院送りにするつもりってことかい?」
「病院送り? うーん……私がこの場で診察するつもりだけど?」
顎に指を当てて思案しつつ答えると、もっと怒りが強くなりました。
なんでかしら……?
『(マユリ殿がザエルアポロ殿に「瓶詰めにしたときに瓶に名前を書くためだヨ」と発言したのと同じことを言っていますが……
「だから……」
二人から一瞬視線を切って、代わりに背後に意識を向けます。
同時に立ち位置を一歩、横にずらしながら続く言葉を口にします。
「そっちの君も名前を教えて貰えるかしら?」
「ジブンの! 名前は!!
そう叫びながら、学ラン姿の少年が襲いかかってきました。
飛びかかりながら殴ってきましたが、私が移動したことで拳は空を切り、そのまま落下して地面に叩き付けられます。
すると、地面を殴った衝撃で小さなクレーターが生み出されました。
……どう見てもそれほど強い一撃には見えなかったし……どんな能力、なのかしらね?
「月島さんのお役に立つためにも、死神ィ! お前にゃ死んでもらうぜ!!」
「そう、獅子河原君ね。私は湯川
殴った衝撃で土埃を浮かび上がらせながら、獅子河原君はゆっくりと立ち上がり、名乗る私の顔を見て――
「はうああああああぁぁぁっ!!」
――何やら可愛らしい悲鳴を上げながら倒れました。
え……なんで……?? ま、まあいっか……
「こっちの獅子河原君は名乗ってくれたけど、あなたたちは?」
「……リルカ。
「ジャッキー・トリスタン……」
獅子河原君が名乗ったからか、水を向けると二人ともようやく名前を教えてくれました。
なるほどなるほど……リルカさんにジャッキーさんね。
リルカさんは白い肌がまぶしい、大学生くらいの少女です。
今までのやりとりからの印象だけど、勝ち気で物怖じしなそうな性格みたいね。
体格は普通で
他に目立つ部分といえば、髪型かしら? ピンクのツインテールだもの。
『
え、私!? 私はピンクじゃないから! 清純派だから!!
続いてジャッキーさん。
彼女は褐色肌で黒髪をショートカットにしています。
年齢は二十歳を過ぎたくらい?
けれど長身でスタイルも抜群みたいね。リルカさんと比べると、立派な
それと、名前や容姿からも思ったんだけど、外国の人みたいね。
なんていうか、こう……攻めてるというか……彫りが深くて、姉御肌っぽい感じよね。
『ハリベル殿と被っておりますな!!』
……あ、そう言われればそうね! 別のこと考えていたから、全然気づかなかったわ!!
『別のこと……ですか? ……ああ、なるほど! 分かったでござるよ!!
違うわよ! そんなこと考えてない!!
私が考えていたのはね……
この二人、ひょっとしてプリキュアなんじゃないの!?
『またですか!? またですかな!! またプリキュアが登場してるでござるよ!!』
だって見てよアレ! どう見てもシロとクロ!! しかもコンビ!!
おまけに片方はこう……なんて言えばいいのかしら!?
モロに魂の調べとかを爪弾きそうなタイプなのよ!!
『そ、そうですな……』
もう片方は……こう……ゾンビに囲まれても平然としていそう!!
ハーブ食べながらハンドガン片手に化け物退治してる気がするわ!!
『冒頭と同じネタが出てきたでござるよ!!』
だからね、あの二人ってやっぱりプリキュアなんじゃないかなって……
もうプリキュアで良いんじゃないかなって……
『お、お気を確かに!!』
「そう、リルカさんにジャッキーさんね。教えてくれてありがとう」
二人の名前を口の中で反芻しながら、私は心の中で決意します。
これはきっと試練……
プリキュアに打ち勝てという「試練」と私は受け取ったわ……!
『
決まってるでしょ、ネタの枯渇よ!!
「それじゃあさっそくだけど――リルカさんもジャッキーさんも、喧嘩しちゃダメよ? 二人とも私が相手をしてあげるわ」
「二対一で勝てるって言うの?」
「舐められたもんだね……!!」
「あら……? 舐めてなんかないわよ」
そうしろと、囁くのよ。私の中の
『え……拙者は別に……何も……というかこれっぽっちも何も言ってないでござるよ!? ですが、リルカ殿の相手をしていただけるのは大賛成でござる!!』
ジャッキーさんは?
『聞くまでもないでござるよ!! 右の
良いわね! その言葉を待っていたわ!!
いつだって射干玉はギラギラしてて、ヌルヌルしてて、あとネバネバしてる!! その心意気が大好きなのよ!!
よし! やるわよ!!
「あなたたちなら、三人を一度に相手にしても問題はないもの」
「ッざけんなコラアァッ!!」
二人の名前を聞いている間に復活したらしく、獅子河原君が再び殴りかかってきました。
「三人でよってたかって一人をボコるみてぇなダサいことが、できっかよ!!」
「あらあら、元気いっぱいね」
殴りかかってきた右手を脇に抱えて動きを封じながら、彼の顔を覗き込みます。
その途端、獅子河原君の頬が真っ赤に染まり、視線は一瞬にして横を向きました。
「どうしたの? さっき突然倒れたから、心配してたんだけど……ひょっとして、持病か何かがあるの……?」
「そっ、そんなもん……ねー……です……こら……」
何で急に……そんな初々しい反応してるの……?
あれだけオラついていた言葉も、一瞬で弱々しくなっちゃって……
『うーん……実はコレは、ネタバレになってしまうのですが……』
なになに、何がどうなってるの!?
『すし河原殿は、その……非常に純真でして……織姫殿を見ただけでも「可愛すぎて無理! 正視できない!!」とやられてしまうくらいの……』
だ、男子高校生なのね……
……ん? ということは、今は私を見て可愛いって思ってるの?
『そうござるよ! 中身は七百歳を超えていますが、死神は見た目から年齢を読み取れないでござるからして!! 加えて右腕を脇固めしているのがまた!!』
そっかそっか、私の胸が腕に当たってるのね。
だから獅子河原君ってば、中腰になってるのね……
……じゃあ、もう少しだけ、からかってもいいわよね?
『
「本当に? 本当に病気とか怪我とかしてない? 熱とか出てないわよね? 具合の悪いところがあったら遠慮しなくて良いのよ?」
「あ、あ……や、やめろ……こら……」
相変わらず脇固めは解かないまま、空いているもう片方の手で彼のおでこに触ります。
うわぁ……結構熱くなってるわねえ……なんて可愛い反応なのかしら……
それにしても、リルカさんもジャッキーさんも襲いかかってこないわね……
これって結構大きな隙を見せているつもりなんだけど、連携の「れの字」すら見せないとか……
この子、仲間なのよね……?
「どうせなら、勝負の方法を変えましょうか? 四人居るんだし、現世らしく麻雀で決着を付けるとかどうかしら?」
「ま、マージャンだぁ!?」
「現世だと負けたら一枚脱ぐんでしょう? 私たちで勝負して、裸になった人から抜けていって……」
「は、はだか……」
あら、獅子河原君の視線が一瞬だけリルカさんたちの方に向いたわ。
一体何を考えたのかしらね……? どっちを集中的に狙おうか、とか思ったのかしら?
「でも、私の方が不利かしら……ねぇ、獅子河原君はどう思う……?」
「おっ! おおおおおっっ!!」
おでこから手を放して、今度は死覇装の襟元を軽く緩めます。
黒い着物の下からはまず白いサラシが顔を覗かせ、続いてサラシを盛り上げるように胸の膨らみが露わになります。
獅子河原君は一瞬たりとも見逃すまいと目を皿のように丸くしながら、顔ごと覗き込んできました。
「で、でか……――」
「はい、隙あり」
「いぎいいいいっっ!!」
全てを忘れたように凝視に没頭した瞬間を狙って、脇固めを解除すると同時に彼の股間を手の甲でビンタします。
『油断しまくりでございましたからな!! おかげで「キーーン!!」と甲高い金属音が聞こえてきそうな程、素晴らしい一撃でござるよ!! 教本に載せたいレベルでござる!!』
本当にね。凄く簡単に決まったわ。
なんだか手の甲に硬い感触が残っているけど……それはそれとして。
獅子河原君は股間を両手で押さえ込みながら、泡を吹いて気絶してしまいました。白目を向いて涙を流しながら……でも、表情はちょっとだけ幸せそうです。
『天国から地獄でござるな……いやですが! かつて偉い人は言いました!! 我々の業界ではご褒美です、と!!』
男って難儀な生き物よねぇ……
でも、これで一人は脱落。残る二人に集中できるわ。
……それにしても……
「まさか、全然手を出さないとは思わなかったわ」
「別にソイツ、仲間じゃないしぃ」
「協力者だと聞かされていたが……正直に言って、邪魔だったからな。お前が倒してくれるなら、それはそれで好都合だった」
あらら、獅子河原君ってば……かわいそうな扱いなのね……
「それじゃあ、続きをやりましょうか? 安心して。今度は色仕掛けじゃなくて、もっとちゃんと戦ってあげるから」
私はようやく、斬魄刀を抜きました。
●獅子河原くん
オマケのオマケで参戦。
原作で織姫を見た瞬間にグダグダになっていたので、その流れを踏襲。
それと原作で「命(タマ)もらいに来たぜ」「タマって?」「(ズキュゥゥン)」のやりとりがあったので、オチもタマ。
(書いている途中で「我々の業界でも拷問です」というワードが頭をよぎったので、そのままタイトルにまで流用)
●プリキュア
・リルカ:声の人が、キュアビート
・ジャッキー:声の人が、ジル(バイオ)
よってプリキュア。
(湯屋さんはプリキュアの母親役で出ていたりするので)