「くそっ……殺せ……!!」
「なんで? なんでアンタ、こんなことをしたのよ……?」
さて二人の意識を覚醒させたわけですが……正気に戻った途端にコレです。
ジャッキーさんは姫騎士みたいなことを言っていますし、リルカさんは涙目で私を上目遣いに睨んでいます。
『ジャッキー殿はお肌のお手入れから
じゃあ今度、四番隊に男の患者さんが担ぎ込まれたらお願いするわね。
『それは……それはそれで……!! 蒸れた
う、うーん……
……ごめんね、話を振った私が完全に悪かったわ。
その話はもう打ち切って、リルカさんたちの話に戻すわよ。
「なんで、って……言ったでしょう? これはお仕置きだって。だから、殺したりはしないわよ」
「仕置きだってのかい!! アレが!?」
「ええ、そうよ。ちょっと大げさにやったから、とっても屈辱的だったでしょう?」
噛み付いてくるジャッキーさんの言葉を首肯します。
「でもまあ、黒崎君や織姫さんたちを裏切ったんだから……このくらいで済ませてあげたことを感謝して欲しいくらいだわ」
「感謝、だって……!!」
「くうぅっ!! ジャッキー、この死神やっぱり今からでも殺すわよ!!」
まあ、ひどい。
せっかく誰も傷つかないで、穏便に終わる手段で許してあげたっていうのに、なんて言い草なのかしら!?
『
「あらあら、そんなこと言って良いのかしら?」
なので私は、わざとらしい口調で二人に次の一手を投げかけます。
「二人の恥ずかしい姿、言いふらしちゃおうかなぁ~?」
「ハァ!?」
「だ、誰に言いふらすっていうのよ!?」
「それは勿論、お友達とか」
「友達? フンッ! 言っとくけどね、
そのただの人間と違うはずの
よくそんなセリフ言えたわね……
いえ、というよりも侮っているのかしら? 死神が現世の人間に噂をばら撒けるようなツテなんて持ってない、と思っているのかしら?
まあどっちにしても……リルカさんは、一番手っ取り早い手段を忘れているわね。
「……獅子河原君」
「うっ……!!」
蚊帳の外に退避させておいた少年の名前を口にすると、リルカさんの声が詰まりました。
その隙を逃さず、私はさらに言葉を続けます。
「二人は気づいていないと思うけど。あの子、もうとっくに気絶から目覚めているの。今はこの空間の外にいるんだけど……どうする? 今度は獅子河原君も一緒に参加してもらう? まだまだマッサージはしてあげるわよ?」
具体的な事は言わないまま。
けれども相手に連想させるような言い回しで外堀から順番に埋めていけば、二人の顔色が段々と悪くなっていくのが分かります。
「あのくらいの男の子って、遠慮を知らないのよね……ちょっと背中を押してあげれば……」
「い、いやよあんなヤツなんて!!」
「わ、わかった! 悪かったよ!! 一護たちにゃ、後で詫びを入れとく! それでいいんだろ!? リルカもそれでいいだろ!?」
「……わかったわよ」
まあ、今言ったことは全部嘘なんだけどね。
まだ気絶したままだし、そもそも彼を参加させるつもりなんて私は微塵もありません。
けれども、脅しの材料としては効果抜群でした。
『獅子河原殿ェ……良いところが何にもなかったでござ……いえ! 彼は
うん、話はまとまったわね。
「ええ、それでそれで良いわよ。はい、これで万事解決。めでたしめでたし」
「「…………」」
パン、と手を一つ打ち鳴らしながらシメの言葉を口にします。
二人から恨みがましい目線を向けられていますが、気にしません。
「さて、後はここから出るだけね」
「雪緒の空間から出られるわけ無いだろ」
「そんなことないわよ、ほら」
二人の視線を誘導するように指差しながら、同時に卍解を解除します。
私たちの周囲を覆った黒い空間が消えたそこには、元通りの光景が広がっていました。
私たちを囲んでいた空間も解除されており、霊圧もこれといって感じられません。
「どうやら雪緒君、だっけ? 彼がこの空間を解除したみたいね」
「雪緒が自分から……? まさか!」
「多分、そのまさか、でしょ……あたしたちと同じようにやられたのよ……」
二人も空間が解除されたことに気づいたのでしょう。
軽く状況把握をしながら、仲間に何があったのかを推測しています。
「いたいた」
そんな二人の話し声を背中で聞きながら、私は獅子河原君をようやく発見しました。
何しろこの子、未だ気絶したままで霊圧とか気配とか全然感じられないんだもの。探すのにちょっとだけ苦労したわ。
このままずっと放置しちゃおうかなぁ? とも思ったけど、さすがにそれは可哀想だからね。連れて行ってあげましょう。
『今夜中に目覚めますかな?』
うーん……かなりイイのが入っちゃったからねぇ……
望み薄ってところかしら……?
「あ、先生。ようやく見つけましたよ、お疲れ様っス」
「あら阿散井君」
声を聞きつけたのか、阿散井君が木々の向こうから姿を現しました。
「んで、早速で悪いんですけど……治してもらえませんか?」
「え!?」
申し訳なさそうに両手を合わせる阿散井君の姿に、私は思わず反射的に彼の身体を視診します。
「……どこも怪我してないみたいだけど?」
「いや俺じゃなくて! 俺の対戦相手だったヤツっスよ!! それと朽木隊長も怪我してるんで、そっちもお願いします!!」
「あら、朽木隊長も? わかったわ、すぐに案内して!」
朽木隊長の相手は確か、月島君っていう過去を操る能力の持ち主だったはず……どうやら手強い相手だったみたいね……
獅子河原君を肩に担ぎながら、阿散井君に案内を頼みます。
……あ、忘れるところだったわ。
「それとジャッキーさんとリルカさん? 二人も一緒に来なさいな」
「え……!?」
「なんであたしたちまで!?」
「事の顛末くらいは見届けたいでしょう? それに……そんなこと言って良いのかしら?」
難色を示す二人に、私は切り札を使います。
「二人が来てくれないと悲しくて、つい口が軽くなっちゃいそう……」
「わ、分かったよ!!」
「行けばいいんでしょ、行けば!!」
よよよ、と稚拙な演技込みで語ったところ、二つ返事で来てくれるそうです。
『こうかは ばつぐんだ!! というヤツでございますな!!』
阿散井君に案内された先で、沓澤さんという名前の
治療しながら、空中に浮かぶ黒く四角い空間に視線を集中させます。
あの空間の中には、一護と浮竹隊長と海燕さん、それと先代死神代行の銀城がいるはずです。
浮竹隊長が「話したいことがある」と言って意気込んでいたけれど……さて、どうなるのかしら?
上手く行ってくれると良いんだけどね。
……あら?
一護、浮竹隊長、海燕さん、銀城……
ひーふーみーよー……もう一度、ひーふーみーよー……
…………何か、足りないような気がするんだけど……気のせいかしら……?
●スカトール
ニオイの物質。悪玉腸内細菌とかが原因で作られる。
特に豚の雄とかがキツイらしい。
(Wikiに「豚の雄臭」というタイトルでページがあるくらいだから、相当キツイ臭いなんでしょうね……)