お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第330話 信じてくれる者

「銀城! どうしてだ! どうして僕たちを捨てるんだ!!」

 

 絶叫を上げながら、すさまじい形相でこの場へ現れたのは月島君でした。

 シャツから多量の血が滲んでいることと口から血を流していることから、胸に深い傷を――それも内臓にまで達するような傷を負っているのが分かります。

 

 あれって、朽木隊長に負けて付いた傷よね?

 かなり重傷の筈なのに、よくもまあ……このままだと持って、十分(じゅっぷん)くらいの命ね……

 

 ……っていうか、阿散井君!? 九条さん!?

 「余計な侵入者は追い払って」って、私お願いしたわよね!? なんで月島君が堂々と姿を見せているの!?

 

『い、いやぁ……藍俚(あいり)殿、それは……何というか……この場の流れと言いますか……その……ほ、ほら! お二人もお話に聞き入っていてしまったとか! 瀕死の重傷の相手が凄い勢いで飛び込んできたからそのギャップで見逃してしまったというか!! 第一、それを言ってしまうと藍俚(あいり)殿も全スルーだったわけでござるが!?』

 

 わ、私は治療してたもん! だから気づかなくてもセーフ! ノーカンなの!!

 

「月島……」

「嫌だ! 僕は嫌だ!! 来いと言ってくれたのは! 今日から二人だって言ってくれたのはお前じゃないか!! そんなお前が、勝手にいなくなるなんて……ごぶっ!!」

「……! いけない!!」

 

 心の底から訴えを続けている最中、月島君が盛大に吐血します。

 ドス黒い色をした血を大量に吐き出すその姿を見た途端、私の身体は無意識に動いていました。

 ふらつきいて今にも倒れそうな月島君の身体を片手で支えながら、もう片方の手で回道を使います。

 

「が、ごはっ……! げほっ! おぐぅ……っ!」

「落ち着いて! 今から治療するから!」

「じ……死神(じにがみ)……!」

「喋らないの! ルキアさんは浮竹隊長をお願い! 重要器官は最低限治療したから、出血を抑えるのを優先して!」

「え……あ……はいっ! ……ですが、その……その者は……」

 

 戸惑いつつも私の命令に従い、ルキアさんは浮竹隊長の治療を引き継いでくれました。

 ですがその顔には「納得できない」と思いっきり書いてあります。

 

「……月島君の命を救うのが、納得できない?」

「え……い、いえその……! ……正直に言いますと、はい……」

 

 ルキアさんだけではありません。

 他の死神や一護たちまで、全員が揃って不服そうな表情を見せています。

 まあ、当然かもしれませんね。

 

「そうね……でもね、この月島君には、まだ仕事が残っているの……改ざんした、織姫さんたちの過去を元に戻して貰わないと……」

「あっ……!!」

「……はぁ……はぁ……ば、ばか、じゃないのか……? ぐ……っ!」

 

 その言葉に、私の顔を見ながら月島君は血まみれの唇で薄く笑みを浮かべました。

 

「僕が、死ねば、能力は消える……のさ……お前たちからすれば、助ける必要なんて、ない……お前が、やろうとしているの、は……無駄な、こと……だ……くは、はははっ……!」

「……それが、どうかしたの?」

「なっ……!?」

 

 そう告げられましたが、私は手を止めません。

 平然とした表情と声で治療を続ける姿に、むしろ月島君の方が驚かされています。

 

 ……だって。

 

 死んで能力が消えるって、誰が保証してくれるの!?

 そもそも、あなたと私たちって一応は敵同士なのよ!? その敵の言うことを全部素直に信じろと!?

 

『えっと……藍俚(あいり)殿? 一応、原作では月島殿が死ぬと織姫殿の記憶は元に戻って……』

 

 元に戻る!? そこに障害が全くないって誰が保証してくれるの!?

 死んだら能力が消えるってのは、百歩譲って他の完現術者(フルブリンガー)が死んだ時に確認したとしましょう! でもね、それが月島君の能力でも全く同じって、誰がいつどこで確認したの!?

 ジャッキーさんみたいな単純な能力ならまだしも、過去を変える能力なんでしょう!? どこかで歪みが出ても不思議じゃないでしょうが!!

 何より、死に逃げなんて許さない! 自分でやったことくらいは、全部自分でケツを拭きなさい!!

 

「私の前で、死ねるものなら死んでみなさい! あなたは生きて、自分が勝手に変えた過去を全部元に戻して、それから――」

 

 それまで月島君の顔を見ていた視線を、一瞬だけ銀城へと移しながら続きを口にします。

 

「……彼に言いたかったことを、全部残さず言いなさい。それまでは、たとえ身体を引き裂かれても私が絶対に死なせない」

「……っ……」

「……あーあ、ったく……! わざわざもう一回、言わなきゃならねえのかよ……」

 

 銀城は後頭部を軽く掻くと、月島君に冷たい表情を向けます。

 

「今回の騒動は、全部俺が悪いんだよ。月島、お前だってそうだ。能力が使えると思ったから、仲間に引き入れただけだ。だからコイツらは悪くねえ。月島だってそうだ、コイツは俺のいうことを聞いていただけの、一番の被害者だ」

「嘘だッ!!」

 

 叫ばないで!! そんなに叫ぶとほら、塞がりかけた傷口がまた開いちゃうから!!

 

「僕と出会ったとき、僕の能力を、お前は知らなかった……利用できるなんて、考えられる筈が無い! どうしてそんな――っ!! ま、まさか……!!」

 

 あ、言葉に詰まりました。

 どうやらようやく、銀城が何を言おうとしていたのかに気付けたみたいです。ただでさえ血の気を失った顔がさらに真っ白になっていき、わなわなと震えています。

 

 もう少しだけ冷静なら、自分たちが庇われていることにすぐ気付けたんでしょうけど。

 痛みやらなんやらで思考能力が低下していたんでしょうかね?

 それに加えて、大事な仲間であるはずの銀城が死神へ服従する姿勢を見せている。自首するように両手を差し出しているところを見たことで、色々と間違った考えに囚われてしまったんだと思います。

 

「……ち、違う!」

 

 そうして気づいてから絞り出されたのは、全てを否定する言葉でした。

 

「この騒動の、全ての原因は僕だ! 僕が過去を挟み込んで、操ってきただけだ! だから銀城は何も悪くない! 悪いのは、全て僕だ!!」

「……月島……」

 

 月島君の訴えに対して、銀城はゆっくりと首を横に振ります。

 

「俺はお前に二度斬られた……お前の能力はもう……」

「違う!」

 

 二度斬られた……? えっとつまり、過去を挟み込まれた者がもう一度斬られると能力が解除されるってこと……??

 ……なるほど、そんな解除条件があったのね。

 

「そんなものは嘘だ! その記憶だって、僕が挟み込んだものだ! だから……だから僕が悪いんだ! 銀城は何も悪くない!!」

 

 けれども月島君も引き下がりません。

 銀城を庇って、自分が全て悪いと主張し続けています。

 

 この二人の関係がどういうものなのか、私にははっきりとは分かりません。

 ですが、少なくとも月島君は銀城のことが命よりも大切で、守るためなら自分の命だって捨てられる……

 彼に熱い恩義? 熱い想い? 上手く言えませんけど、そういった感情を抱いているのだけは、私たち全員に伝わりました。

 

『どうも月島殿は、幼い頃に完現術(フルブリング)の力で人から疎まれてボッチだったようでござるよ! そこを銀城殿に助けてもらい、以後ずっと行動を共にしていたようでござる!!』

 

 あ、やっぱりそういうバックストーリーがあるのね……

 

 それはそれとして。

 銀城と月島君の熱い想いの丈のぶつけ合いに、私たちは全員が口を挟めずにいました。

 静寂が数秒ほど続いて……

 

 そろそろ言って良い、わよね……?

 

「……とりあえず、言いたいことは全部言えたかしら?」

 

 治療を続けていたので、月島君も結構余裕が出てきましたね。

 血色も少しだけ良くなったのを確認してから、浮竹隊長に話を振ります。

 

「さて、どうしましょうか浮竹隊長? 二人とも、自分が全ての原因だと言っています。これではどちらかが嘘を吐いているのか? それとも二人とも嘘を吐いているのか、私たちには判断が出来ません。そこで……」

「……?」

「二人とも尸魂界(ソウルソサエティ)に連れて行って、真実を明らかにする。しかる後に裁く、というのは? ああ勿論、責任は十三番隊が取るということで」

「……は、あはは……それは、良いかもね……」

 

 私の言いたいことを察してくれたようで。

 ルキアさんの治療を受けながら、浮竹隊長は力無く、けれどにっこりと微笑みました。

 

 ……まあ、落とし所としてはこんなところよね。月島君、このままだと自殺しかねない勢いだし……

 被疑者として連行する。十三番隊で二人とも一緒にいさせる。

 後は浮竹隊長が上手いことやってくれることでしょうし、銀城だって月島君っていう見知った顔がいれば心強いでしょうからね。

 難点があるとすれば、月島君を巻き込みたくないっていう気持ちだけは叶えられないことくらいかしら?

 

「そういうわけだ、銀城……二人とも尸魂界(ソウルソサエティ)に連れて行き、真実を明らかにさせて貰うとするよ……」

「ああ、わーったよ……月島も、それで良いだろ?」

「ああ……仕方ないな……」

 

 銀城と月島君、どちらも不承不承といった様子を見せますが……それが演技だということは誰の目にも明らかでした。

 

 

 

 

 

 

「はー……馬鹿馬鹿しい。これじゃ、全部茶番じゃないか……」

 

 話がひと段落したかと思えば、雪緒君がため息交じりに口を開きました。

 

「結局銀城の全部勘違いで、けど死神も騙されていて、そんな空回りのために僕たちは集められて、用がなくなったから全部解散してなかったことにする? 付き合ってられないよ、一抜(いちぬ)けたーっと」

 

 そう言いながら、この場から去ろうとして――

 

「……オイ、コレ解いてよ! これじゃ帰れないだろ!!」

 

 自分がまだ縛道で上半身を縛られていることに気づき、抗議の声を上げました。

 その、キメようとして盛大に失敗した姿に、ジャッキーさんが笑い声を上げます。

 

「ぷっ! あはははは!! ダッサイねぇ雪緒!!」

「うるさいな! そっちだって負けたくせに!!」

「あはは……朽木、縛道を解いてやってくれ」

「よ、よろしいのですか隊長!?」

「ああ、もう俺たちは敵対する意味が無いからね。それに今回の件は、彼らは被害者なんだろ? だったら捕えておく必要も無い」

 

 浮竹隊長の言葉に、ルキアさんが術を解きます。

 ようやく解放された雪緒君は、身体の自由を確かめるように軽く両腕を動かしてから、やっぱり私たちに背中を向けました。

 

「……行くのかい?」

「まあね。元々仲間なんていなかった。XCUTIONだって、利害関係が一致していただけの繋がりだろ? 終わればこんなもんさ」

 

 ジャッキーさんの言葉にも背中を向けたまま、淡々と返事をします。

 かと思ったところ、そこでふと足を止めました。

 

「……ま、でもさ。みんなと(つる)んでいたの、そこそこ楽しかったよ。だから、三年だ」

「さん、ねん……?」

「三年の間にもう少し大人になって、会社を三倍に大きくする。そうしたら戻ってくるよ……戻ってきてみんなを、僕の下で働かせてあげる……どうせみんな、僕のお金が無いと生きられない不適合者なんだから……」

 

 振り返ることもなく、表情を見せないままそう言うと、雪緒君は再び歩き出しました。

 歩きながら最後に、誰にも聞こえないような小さな声で呟きます。

 

「……それに、銀城だって戻ってくるところは必要だろ?」

 

『まあそれを、藍俚(あいり)殿のお耳は聞いてしまったわけでございますな!! クールにかっこつけたつもりか!! こっそり仲間思いアピールか! という盛大なツッコミを入れたい所存でござるよ!!』

 

 そういうこと言わないの!!

 

 

 

 

 

「……銀城」

「黒崎か……」

 

 一方。

 一護は銀城に声を掛けていました。

 一触即発の雰囲気――に、見えなくもない様子ですね。

 一件落着になったとはいえど、銀城は恨まれてもおかしくありません。

 一方的に一護を争いに巻き込んで完現術《フルブリング》を奪ったわけです。

 一概に銀城だけが悪いとは言えないまでも――

 

『あの、藍俚(あいり)殿……? その(いち)で始まる言葉を連呼しているのは何か意味が……?』

 

 あ……その……ごめんね……

 二行目くらいから、なんだか面白くなって来ちゃって……どこまで続けられるかなって思っちゃったから……つい……

 

 と、とにかく! 一護は銀城に話があるみたいです!!

 

「俺はよ、お前と違って仲間を失ってねえ……そりゃ、月島に操られていた時は似たような状態だったかもしれねえけど……けどあれは、まだ元に戻せるはずだって希望があった……だから、お前の気持ちが完全に理解できるなんてことは、言えねえ……」

 

 口に出したのは、銀城を気遣う様な言葉でした。

 たしかに二人は同じ死神代行の初代と二代目、下手をしたら二人の立ち位置はそっくり入れ替わっていたかもしれません。

 

『これはやはり、銀城殿は二代目にすべきだったでござるよ!! そして二代目は人間に絶望して魔界と繋がる門を……!!』

 

 ……あー、なるほどね……確かに、ちょっと似てるわね……

 霊の関係とか……

 

「けどよ! 俺とお前以外全員、月島に操られているって思ったときに、コンが来てくれた……そんとき、なんていうか……すっげぇ嬉しかった。俺のことを信じてくれるヤツがまだいてくれたんだって、心が救われた気分だった」

 

 ふむふむ……九条さんがコンちゃんを連れて、一時的に尸魂界(ソウルソサエティ)に来ていたからね。

 織姫さんたちみたいに襲われることもなくって、それが上手いこと作用したと。

 偶然の産物って言ってしまえばそれまでかもしれないけれど、でもその偶然を引き寄せるような強い力を一護が持っていると考えられなくもないわよねぇ……

 

『主人公補正でございますな!! かーっ! うらやましい!!』

 

「お前にも、月島って信じてくれるヤツがいるんだろ? んで今度は、浮竹さんも絶対に信用できるんだってことがわかった……ならよ、もう間違うんじゃねえぞ!」

 

 銀城の胸元を拳で軽く叩くと、一護は「言いたいことは全部言った。要件はそれだけだ」とばかりに銀城に背中を向けました。

 

「……おい、待てよ黒崎! お前の完現術(フルブリング)――」

「いらねーよ。俺にゃもう、死神のみんなから貰ったでっけぇ力があるんだ。完現術(そいつ)は餞別代わりにくれてやりゃあ!」

 

 思い出したかのように、そして贖罪の様に完現術(フルブリング)のことを口にする銀城でしたが、顔だけ振り返ると一護は軽い口調で片手をヒラヒラとさせながら拒絶の意を示します。

 

「……相手はお前と浮竹さんを同時に手玉に取るようなヤツなんだ。そのくらいの力、あっても困るもんじゃねえだろ?」

「……悪いな」

 

 かと思えば、深刻な表情でそう付け足しました。

 一護は一護なりに、思うところがあるのでしょう。彼なりの、先輩への激励というかエールというか、相手をしてくれたことへのお礼というか……そんなところだと思います。

 

 なにしろ浮竹隊長を騙すなんて、そうそう出来ることではありません。となれば、相手がとてつもなく厄介であろうことだって簡単に予想できます。

 完現術(フルブリング)だけしか持ってなくて後れを取った銀城への配慮なんでしょうね。

 そして銀城も、そんな一護の気遣いを察したのか。小声で礼をお言いました。

 

「けど、借りるだけだ。全部が終わったら必ず返しにくる!」

「おー、期待しねぇで待っとくわ」

「チッ……黒崎のヤロウ……」

 

 親友同士で軽口をたたき合うような気楽さで、そんなやりとりが交わされます。

 けど感謝の気持ちは本当らしく、銀城は一護に深く深く(こうべ)を垂れて気持ちを表明していました。

 

 

 

 

 ……しかしあの事件、証拠映像も一緒に提出されたのよね……

 

 証拠映像が偽物だった……つまり、証拠映像を改ざんできる……

 けどその後のカバーストーリーが全然用意されていない……となると仮に改ざんしたことが露見しても怖くないということ……?

 え、そうなると犯人……一気に絞り込まれちゃったんだけど……!!

 

『あのぉ~……ウチのかみさんが、犯人わかっちゃったでござるよ……』

 

 どこの刑事ドラマよ!! あと私、射干玉の奥さんだったの!?

 

 

 

 

 

 

「……はい。これでよし、と」

 

 ――とまあ、そんなやりとりを横目にしながら。私は浮竹隊長と月島君の治療をなんとか終えました。

 治療を終えたといっても、あくまで今すぐに倒れなくなった程度です。完治させるほどではありません。

 

「助かったよ湯川隊長、随分楽になった」

「一応、包帯代わりも巻いておきましたから、多少は動いても平気です。けど暴れたりしないでくださいね。尸魂界(ソウルソサエティ)に戻ったら、即入院ですよ」

 

 浮竹隊長のお礼の言葉を聞きながら私は、胸元がきつくなるように死覇装の帯を締め直します。

 

 え? なんで帯を締め直しているのか?

 ……言ったでしょ? 包帯代わり(・・・・・)って。

 

 その"代わり"に使ったのって、私が胸に巻いているサラシなのよ。

 それを浮竹隊長と月島君の二人に巻いたものだから、もう全部使い切っちゃって……

 なんとも収まりが悪いのよね……頼りないって言うか……

 

『つまり、今の藍俚(あいり)殿は……ノーブラ……で、ございますかな!?』

 

 あー、うんまあ……そうなるわね……

 

『なるほど、だからこんなに……ちょっと動いただけでたゆんたゆんしているわけですな!! コン殿がガン見しているわけでございますな!!』

 

 凝視した後で、九条さんに両手で力一杯掴まれているけれどね。

 

「これで全員、元通りだよ」

「それを信じるには、ちょ~~っと信頼が足りないんスけどね」

「信じてくれ、としか言えないね。嘘だと分かったら、いつでも僕の首を刎ねるといいさ……その頃には重要な容疑者として捕まっているはずの僕の首を、刎ねられればだけどね」

 

 そして月島君の前には、彼が過去を挟み込んだ現世の人たちが並んでいます。

 とはいえ全員、意識を失っていますけどね

 

 

 

 ……あら? あれって、一護の妹たちよね?

 えっ!? うわぁ、ええっ!! そろそろ中学生くらいの年齢だっけ? うわぁ……お年頃じゃない!!

 モテるんでしょうねぇ……きっと……あんな子が同級生だったら、同じ学校の子も毎日ドッキドキでキュンキュンしちゃうでしょうね! お年頃だからねぇ……

 

 ……ちょ、ちょちょちょちょちょちょちょーーーっと待って!! 何あの……誰!? ちょっと母性が満ちあふれていて、ちょっと陰があって、お山(おっぱい)が大きなお姉さんは!?!?

 誰アレ!? 射干玉、何アレ!?

 

『……あ? 拙者でござるか?? んー……ああ、アレは一護殿のバイト先の鰻屋殿でございますよ!!』

 

 鰻屋さん!? え、鰻屋さんでバイトしてるの!? 高校生が!?

 

『そうでござるよ! 鰻屋殿の下で何でも屋さんをやってるでござる!!』

 

 鰻屋で……何でも屋さん……配膳、レジ打ち、接客、ゴミ出し……調理は任せて貰えないでしょうけど……あ、ウナギの血には毒があるってことは知ってるのかしらね?

 

『(あー……そりゃあ、そうでございますよな……鰻屋という名字であって、ウナギを売っている訳では無いのですが……面白いので黙っておきましょう……)……そんなことより藍俚(あいり)殿!! 彼女は貴重な人妻枠でございますぞ!!』

 

 うーん……緋真さんや都さんと同じだから、別にそれほど……

 

『(そのお二人は、本来は不在ですので……よって貴重でござるよ……)』

 

 でも、あのお山(おっぱい)は確かに貴重よね!! 

 あーもう!! 何をどうやったら、今から何とかして登山が出来ないのかしら!? 出来る……やる……無理、タイミングが……気絶しているんだし今からでも尸魂界(ソウルソサエティ)に連れて行って……ダメダメ! そんなこと出来ない!!

 そもそも接点無いし、浮竹隊長と月島君の看病もあるし……

 くっ! 今回は涙を呑んで諦めるしかなさそうね……!!

 

 

 

 私が魂を削るような葛藤をしている間に、月島君は全員の能力を解除し終えたようです。

 彼らですが、話が決着したのを見計らって浦原たちが連れてきてくれました。言うまでもありませんが、月島君に能力を解除させるためです。

 私もそれをさせるために、彼の治療を優先しました。

 

 とはいえ、過去が元通りになったというのも月島君の口約束だけ。

 完全に回復したのか? それとも何か別のことをしてはいないか? と疑いの眼差しを向ける浦原に、月島君は不敵な笑みと言葉を浮かべました。

 

 ですがきっとそれは、お遊びだと思います。

 だってほら、月島君は持っていた栞を浦原に渡していますから。

 

「僕のブック・オブ・ジ・エンドは栞がなければ発動できないからね。これで今の僕は、ただの完現術者(フルブリンガー)。過去を挟み込む様な真似はできっこない……犯罪者を捕まえるんだ、このくらいは必要だろう? さあ、さっさと連行してくれ」

「……偉そうだな、コイツ」

 

 阿散井君に両手を差し出す月島君でしたが、一瞬だけ視線を逸らしました。

 その先にあるのは、未だ気絶したままの獅子河原君です。

 

 彼も起こして、月島君と話をさせようかと思ったんですが……だってほら、しばらくお別れになるわけですから。

 けれど私の提案は、月島君本人から「不要だ」と断られました。

 その代わり、月島君は何やら手紙を書くと獅子河原君の隣にそっと置きました。

 

 手紙を置くときに、少しだけ申し訳なさそうな目をしていたのを覚えています。

 彼なりに、獅子河原君に思うところがあるんでしょう。

 

 ……ちっちゃい獅子河原君を叩いて気絶させる、なんて雑な処理しちゃってごめんね……

 

 

 

 

 

 まあ、ですが……これで全部終わりました。

 このまま尸魂界(ソウルソサエティ)に戻ることに――

 

 

 

「よーし、全部終わったな? んじゃ、ちょいとお話だ一心」

「海燕!? い、いやちょっと待て! 今回のことはだな……」

「あー、言うな言うな! お前にもお前の教育方針ってのがあんだろ? そりゃわかる。わかるけどよ、こっちとしても言いたいことを言う権利くらいはあるよな? 親戚なんだからよ」

 

 

 

 ――……あー、忘れていました……

 海燕さんのお話が残っていました。

 




落とし所としては、こんなトコロかな……と。

んで、次からようやく千年血戦になる予定です。
……長かったですね……無駄に長かった……


●銀城は二代目にすべき
漫画、幽遊白書より。
(主人公が三代目で、二代目が敵になってかなり暴れるエピソードがあった)

●刑事ドラマ
「あのー、犯人わかっちゃったんですけど」(ケイゾク)
「ウチのかみさん」(刑事コロンボ)

●鰻屋さん
……忘れていたなんて言えない。
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