第331話 ラスボストーリーは突然に
集中治療室に入院だったはずの浮竹隊長ですが、十三番隊のみんなからの猛烈な抗議とお願いの結果――
というか"そうすること"を了承させられました。
なにしろ全治二ヶ月の大怪我ですからね。
なので。
毎日、私が通って治療しています。
もう二ヶ月くらい、通い妻ならぬ通い医者をやってます。
『まあまあ、平和なのは何よりでござるよ!』
それもそうね。
ということで、今日も私は通い医者のお仕事の真っ最中です。
「……はい、もういいですよ」
「いやぁ、助かるよ湯川隊長」
治療を終えたところで、後ろにいた浮竹隊長がお礼の言葉を口にしてくれました。
……もう一度言いますね。
私が治療を終えると、私の後ろに控えていた浮竹隊長がお礼を言ってくれました。
普通、治療するなら目の前にいますよね? じゃあ私が治療をしていたのは一体誰なんだ!? ということになるわけですが――
「おう、すまねえな湯川!」
「一応礼は言っておく」
その相手は、海燕さんと銀城です。
えっとですね……ご説明しますと……
お二人は模擬戦をしていました。なので私がやったのは、その時に出来た傷の治療です。
『多分、まだ分かんないと思うでござるよ? 情報がタランティーノでござる!』
そう?
じゃあまず、銀城と月島君の
下手人として手配されていた銀城らが連行されて来たことは、瀞霊廷や四十六室に軽い衝撃を与えました。
即座に取り調べをしろ! いや、取り調べなど不要で罰を与えるべきだ!
などの過激な意見も飛び交いましたが、浮竹隊長はそれらの意見を一喝。
――彼らは確かに罪を犯したが、それは騙されていたことが引き金だったと供述している。そのため、それらの事柄について調査・精査するだけの時間が欲しい。
――ここで彼らを罰することは簡単だ。だがそれは、かつて藍染惣右介の策略によって浦原喜助らを追放したことの繰り返しになるのではないか? それも、今度はもっと巨大な力となって、
――なにより過去、自分は四十六室や貴族に訴えた。銀城空吾は信頼できる人物だと。監視など必要なかったのだと。だが当時の訴えを聞き入れて貰えなかった。それが今回のような事件を起こす遠因でもあったのだから、今回は自分に任せて欲しい。
――また、彼らは怪我を負っている。医師の見立てでは全治に少なくとも二ヶ月は掛かるため、快癒を待ってから本格的な調査や取り調べを行いたい。
と、大体こんな感じで。
過去の事例を引き合いに驚異を訴えたり、怪我を理由にして引き延ばしたりと、あの手この手で四十六室から譲歩を引き出させることに成功しました。
勿論その裏では、京楽隊長や朽木隊長の影がチラついていたりもしましたけどね。
『そしてお気づきかと思いますが、浮竹殿は「医師の見立てで全治二ヶ月」と言っております!! つまり!!』
……ええ、そうよ。証言させられたわよ!! がっつり片棒担がされちゃったわよ!!
と、とにかく! 譲歩を引き出せたのは事実です。
どうにか捻り出した二ヶ月という時間を使い、浮竹隊長ら十三番隊は色々と調べて回っています。
さらにはそれと併行する形で、銀城らの修行も行われています。
何しろ銀城は復讐に燃えていますからね。自分を騙した張本人に必ず報いを受けさせてやると、固く決意しています。
その手助けの一環として、海燕さんが模擬戦相手をやっているわけです。
なので私が治療に来ているのも、もっぱらこの模擬戦の時の怪我の治療ばかりです。
……あ、だからといって冒頭の説明は嘘じゃないのよ?
それから、浮竹隊長らの怪我が治ってからはずっと、銀城らの模擬戦の時の怪我の治療をしていたの。
怪我人を治療していたのも本当。少なくとも浮竹隊長も治療していたし。
全治二ヶ月というのも、証言して診断書も書いたから本当。少なくとも書類の上では。
ほらね? 嘘は全くついていないでしょ?
「それでは、次は浮竹隊長。よろしいですか?」
「ああ、すまないが頼むよ」
海燕さんたちの治療が終わったので、続いて浮竹隊長の治療です。
といってもこっちは模擬戦の怪我じゃなくて、肺の具合を診るんですけどね。
「湯川に診て貰うようになってから今まで、滅多に不調になることはなかったんだが……」
「そうですね。私も、浮竹隊長がここまで弱っている姿を見るのは久しぶりです」
治療をしながら、軽く世間話を交わします。
浮竹隊長の調子が悪くなったのは、つい最近のことです。
それまでは本当に、本人が言っているみたいに大暴れ出来るくらい元気だったんですけど……
突然、肺がざわつくようになりました。
何か悪い影響でも受けたのか、それとも銀城の刃を受け止めた時の怪我の後遺症が今頃になって出たのか、その辺は不明です。
まだ私が通っている期間なのが幸いして、ほぼ毎日こうやって回道で治療していますし。本人も「銀城の為に真実を解き明かす」と熱心なので、入院などもさせていません。
……本当なら、きっちり検査した方が良いんでしょうけど。浮竹隊長の肺は、厄介ですからねぇ……
「けどまあ、俺にしてみれば長い付き合いだからね。この不調もなんだか久しぶりで、懐かしいというか……ははは……」
「ははは、じゃないですよ……本当なら健康が一番なんですから」
「そうだな。けど、まだ倒れるわけにはいかなくないし、倒れられない理由もできてしまったからね……」
浮竹隊長が遠い目をします。
中空へと注がれる視線ですが、きっと心の中では銀城のことを考えているのでしょう。
……まあ、銀城に稽古を付けさせているのは、本人への自衛のためでしょうね。
本気で銀城の手で復讐を果たさせるつもりは、無い……と思います。手を汚させたくないというか、むしろ自分の手で決着をつけるべきだと思っている、のかもしれませんね。
『(下手人は四大貴族の一人ですからなぁ……)』
「……この不調が、悪い前兆にならなければいいのだけど……」
遠い目を続けている浮竹隊長の姿を見ながら、私は思わず言葉を零してしまいました。
「それでは、また明日」
やがて、治療も全て済んだので十三番隊を後にします。
……やれやれ、ようやく終わったわ。これでようやく四番隊に戻れる……
……あれ? まだモノローグが続いてる、わよね……??
……ということは……まさか!!
そろそろ何か、厄介ごとが起きるんでしょ?
『ちょ、ちょちょちょちょっと待った
『!!!!』
だからルール無用!
メタ読みだってしちゃうし、対策だってバンバン打っちゃうわよ!!
『(ああ……まあ、この次に登場するであろう相手はそういう対策バンバン打ってきているのですが……というか、そのルビの振り方はご自分的に良いのでしょうか……?)』
さしあたっては――って何!?
「伝令神機……? それもチルッチから……?」
突然鳴り響いた着信音に驚きながらも、胸元から伝令神機を取り出します。
……なんだかこんなやりとり、二ヶ月くらい前にもあったわねぇ……
ピカロ騒動の時みたい!
……まさか、またピカロが
「もしもしチルッ――」
『
通話を始めた途端、信じられないほど焦った声が響いてきました。
それも、以前のピカロの時とは比べものにならないほど。
なにしろこちらが言い切るよりも早く、悲鳴のような声で助けを求めているのですから。
「もしもし、チルッチ!? チルッチ、どうしたの!?」
『――! ――!!』
問い質しますが、返事は返ってきません。
代わりに聞こえてくるのは、喧騒のような音。それから大人数が言い争う様な声と、破壊音――いえ、これは戦闘音?――だけです。
そんな彼女が、返事も出来ないような状況に陥っている。
つまり……
「今すぐ行かなきゃ!!」
『
ごめんね射干玉! 会話している時間も惜しいの!!
あと勇音とか四番隊のみんなも!! 診療終わったらそのまま業務をするって言ったのに、行けなくなっちゃってごめんなさい!!
心の中で何度も何度も謝りながら、大慌てで
「……ッ!?」
周囲の霊子はざわざわと落ち着き無く戦慄き続けており、続いて
「あそこっ!?」
発光現象のあった場所へと目をやれば、なるほど。
霊圧知覚を働かせるまでもなく、強大な霊圧が漂って来ているのが分かりました。
その場所からは、チルッチら見知った
先ほどの連絡と併せて考えれば、何者かがチルッチやハリベル達を襲っていると考えるのが自然でしょう。
「間に合って……!!」
私は全力で
ああもう、私の馬鹿!! なんでもうちょっと近くに出るようにしなかったの!?
数秒の時間の無駄すらも後悔しつつ、戦場とおぼしき場所へ躍り込んで――
「……う……っ!」
思わず小さな呻き声を上げてしまいました。
そこにいたのは予想通り、まずチルッチたち
そして、そんな一団を率いるように立っている男。
――嘘、でしょう……!?
その男の顔を見た瞬間私は、心の中だけとはいえ、驚愕の声を全力で叫んでしまいました。
なにしろその男は、私ですら目にしたことのある相手だったんですから。
むしろ声に出さなかったのを褒めて欲しいくらいです。
『おお!
洞爺湖! 洞爺湖の仙人様よね!?
『……は?』
木刀に宿ってて、あと「お前、必殺技の一つもないとゲームになったときに困るから」って忠告してくれる親切な仙人様よね!?
でもなんで!? どうしてこんなところに……!?
死んだ魚のような目をした銀髪の侍のところにいるんじゃないの!?
炎髪灼眼の討ち手みたいな子がいないと出てこないんじゃないの!?
『
冗談よ、冗談。
この世界にプリキュアはいても、洞爺湖の仙人はいない……そのくらいのこと、私だって分かっているから。
……アレ、一護の斬月の中の人でしょう? なんで出てきたの?
まさかまた斬魄刀の中の人の実体化事件が!?
『惜しい、惜しいのですが……!! というか
だって、こんな風に巫山戯ないとやってられないくらい相手の霊圧が高いんだもの……
分かってるわよ、
知ってるわよ!! 総隊長が教えてくれたから!!
アレがユーハバッハなんでしょ!?
それよりも、なによアレ!? なんで
何が目的なのよ!?
なんで
言っておくけどね、もうチルッチもハリベルもアパッチもミラ・ローズもスンスンもネリエルもロリもメノリもリリネットも私が揉んだの!!
横からしゃしゃり出てきてかっ攫おうとするようなら、容赦しないわよ!!!
『ちなみにこのまま放置しておくと、ハリベル殿が半裸で
なにそれ、すっごい見たい!!
見たい、んだけど…………そんなことするなんて絶対に許せない!!
「よく分からないけど、チルッチたちを襲っているってことは、あなたたち……敵でいいのよね!?」
私が登場したことで
そこへ注意を引くのと宣戦布告代わりに大声を張り上げれば、
突き刺さるような殺気が、一瞬にして襲い掛かってきます。
いいわよ、やってあげるわよ!!
チルッチたちに手を出した挙げ句、ハリベルを半裸で磔にしようとしたこと、心の底から後悔させてあげる!!
……ねえ、射干玉。
ああ言っておいて、今更なんだけどさ……
『何でございましょうか?』
弱音、吐いて良い……?
『よ、弱音……? 一体何を……』
……斬魄刀、置いて来ちゃった。
『ほ、ほええええええええええええぇぇぇっっ!!
だ、だって、仕方ないでしょ!!
十三番隊に治療に行って、そのまま帰ってくる予定だったのよ!?
このスケジュールのどこに斬魄刀を持って行く必要があるっていうのよ!!
『そ、それはそうですが……』
だから今、お医者さんごっこ用の鞄くらいしか持ってないの!!
医療用の道具くらいしか入ってないの!!
……今からでも「やっぱり今の無し! 刀持ってくるまで待ってて!!」って取り消……せないわよねぇ……
●斬魄刀レス
ガチ。
●電話で緊急連絡
「(ピカロの時とかもそうだったし)ほぼ絶対にこうなる(連絡入れる)よなぁ……」
「(前例があるから)連絡が来たら(藍俚は虚圏に)行っちゃうよなぁ……」
なので、ラスボスがファーストエンカウンターです。
イーバーンでもリューダースでもドリスコールでもありません。
●洞爺湖の仙人様
漫画、銀魂より。
一護の斬魄刀の中の人(陛下の姿のアレ)のパロディ。
主人公・坂田銀時が持つ木刀"洞爺湖"に宿る仙人……という設定の夢の中の存在。
拳西、もとい、銀時に必殺技の"モモパーン"や"ローキック"を伝授させようと頑張った。
●物凄い当初の想定
一番最初の頃に想定していた流れは
・(前提)各部隊が滅却師襲撃に即応できるように、各門の前で備えている(前線基地みたいな感じになっている)
・(前提)四番隊は、前線基地の隊士たちに色々とバックアップをしている。
・四番隊が補給物資(着替えとか医薬品とか食料とか?)を各部隊へ持っていく場面から開始。
・藍俚、北門に補給物資を自ら持っていく(北流魂街の出身なので、ちょっと職権乱用)
・北門には雀部らがいる。隊長と副隊長、ちょっと話をする。
補給も終わって帰ろうとするとドリスコール登場。
(藍俚らが帰って、少し離れたところで霊圧を感じて引き返す、とかもアリ? 多少なりとも死者がでるからコッチ?)
・ドリスコール……良い奴だったよ……
みたいな感じでした(メモ書きそのまま掲載)