お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第334話 直談判へ

「消え、た……?」

 

 煙のように忽然と姿を消す滅却師(クインシー)たちに、ハリベルたちは目を丸くする。つい先ほどまで感じていた多数の霊圧も、眼前にいた人間の痕跡も、その全てが一瞬で霧散したのだ。驚きもするだろう。

 

 すでに滅却師(クインシー)たちの霊圧も気配もなにもかも。存在していたという残滓のようなものの一切が感じられなくなっていた。

 どうやら言葉通り本当に退いたのだろうと判断し、破面(アランカル)たちは帰刃(レスレクシオン)を解除する。

 

黒腔(ガルガンタ)……みたいなもんかね?」

 

 誰に向けたわけでもなく呟くスタークの言葉だったが、それは当たらずとも遠からずといったところだ。

 死神の使う穿界門(せんかいもん)(ホロウ)が使う黒腔(ガルガンタ)と同じように、彼らは影を用いて三界の移動を行う。

 千年前、死神に敗れた滅却師(クインシー)たちは、追っ手の目から逃れるために影の中に霊子の空間を作り、そこへ自らの帝国を築き上げた。

 影の中を領土とし、領土となった地点とは影を通して自由な行き来を可能とする。 

 その影を使って退却されたということは、すでに虚圏(ウェコムンド)の大半が滅却師(クインシー)たちの領土にされつつあるということなのだが、スタークを含めて今の破面(アランカル)たちにそこまでの事が分かるはずもない。

 

「わからん。だが少しだけ分かったことがある」

 

 疑問の言葉に、ウルキオラが頷く。

 深い背景は分からずとも、影を用いて移動する主観を実際に目で見たのだ。そこから分かることは山のようにある。

 

滅却師たち(やつら)は影を使って移動しているようだ。おそらくは虚圏(ウェコムンド)に攻め込んできたときも同じようにして現れたのだろう。付け加えれば、現れる瞬間まで察知が不可能ということくらいか?」

 

 滅却師(クインシー)どもが現れる、前触れのような何かを感じた覚えがないからな――と最後に付け加えると、ため息を一つ吐いた。

 

 影を使って移動しているらしいということがわかっても、常に闇夜に包まれている虚圏(ウェコムンド)でどうやって対処をすればよいのか、まるで想像も付かない。

 事前に現れる前兆も無ければ、そもそもどこから姿を現すのかも分からない。

 無い無い尽くしでは対策も立てようがない。

 

「ザエルアポロがいれば、何か分かったかもしれんな」

「……アイツはとっくに死神に殺されてるだろうが」

「傷はもういいのか、グリムジョー?」

「うるせえよ」

「そうか。それだけ減らず口を叩く元気があるのなら、問題はなさそうだな。もう二つ三つ、身体に穴を開られるくらいで丁度よさそうだ」

「テメエ、ウルキオラ!」

 

 挑発するような物言いに激昂し、掴みかかろうとしたグリムジョーだったが、その直前で手を止めるとネリエルへと向き直る。

 

「……いや、テメエなんざどうでもいい。オイ、ネリエル!」

「な……なによ……?」

「あの技はなんだ? 王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)を喰ってそれ以上の物を撃ち出した。あの弱え3桁(トレス・シフラス)でアレだけの威力なら、俺の喰らえば――」

「アンタじゃ無理よ……」

「はぁっ!? そりゃどういう意味だテメエ!!」

 

 未だに大技を放った消耗から回復しきれておらず、ネリエルは言葉も少なく弱々しくかぶりを振る。

 だがそれは、グリムジョーが未熟だからという意味では無い。

 相手がハリベルでもスタークでもウルキオラでも、王虚の重奏閃光(グラン・レイ・セロ・ドーブル)を使うのは不可能だ。

 彼らでは虚閃(セロ)の威力が強すぎて、ネリエルが吸い取れる許容量を超えてしまう。十刃落ち(プリバロン・エスパーダ)のチルッチが放った弱い攻撃だから吸い取れ、ネリエルがよく知る相手の放った相手の攻撃だからこそ、王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)であろうとも受け止め、自らの力を上乗せして打ち出せるのだ。

 ネリエルが今よりも強くなれば、スタークらを相手にしても発動可能だが、あいにくと悠長に成長を待っていられるような時間も無い。

 

 それらを加味しての言葉だったのだが、疲労困憊のネリエルが言葉が足らずに断ったこととで、間違った意味に伝わってしまったようだ。

 今にも襲いかからんほどに興奮するグリムジョーを、肩を掴んでウルキオラが止める。

 

「よせ。まさかとは思うが、あのユーハバッハという滅却師(クインシー)を倒すつもりか?」

「当然だ! あの長髪野郎を今度こそ……」

「俺もハリベルもスタークも湯川も、誰一人として叶わなかった。お前が少々強化された程度で届くわけがない」

「テメェ……」

「やめろ!」

 

 一触即発の空気になりかけたところへ、ハリベルが一喝する。

 その怒声と、同時に放った霊圧と殺気に襲われて二人は動きを止めた。

 

「内輪揉めをしている場合ではあるまい。今はこの状況を立て直し、滅却師(クインシー)たちが再び攻めてきたときに備え――」

「いや、大丈夫だろ? 敵さん、俺たちの相手をする必要はないって言ってたし」

 

 虚圏(ウェコムンド)の代表として、冷静に場を取りまとめようとしていたところ、その話の腰を折られた。

 だが彼女が文句を言うよりも先に、リリネットがスタークへ蹴りを入れる。

 

「敵の言うことを信用するってのかよスターク!?」

「いてっ! おいおい、そう怒んなよリリネット。あの滅却師(クインシー)の王様の話、嘘はねえと思うぜ」

「……その根拠は?」

「勘、じゃダメだよな。分かってる、もう少し根拠を説明するからよ」

 

 リリネットとハリベルの二人からジト目で睨まれ、スタークは面倒くさそうに続く言葉を口にした。

 

「って言っても、コレも勘みたいなものなんだが……あの王様の目だよ」

「……目……?」

「帰り際の時の目……ありゃ、俺たちなんざ掃いて捨てる程度の存在くらいにしか思っちゃいねえ。手を出すだけ時間の無駄、そんな風に思ってる目だったぜ」

「……くっ! 舐められたものだな……」

 

 スタークの言葉を反芻するように数秒ほど黙り続けたハリベルだったが、やがて思い当たること部分もあったのだろう。

 ギリッと奥歯を噛みしめた。

 

 

 

 

 

 ――と、ハリベルらが真面目な議論を繰り広げている頃。

 

「……な、なあ? 戦闘が終わったので近寄ってみたのだが……これはひょっとして、我々が入ってはならない場面なのではないだろうか……?」

「場違いな空気がプンプンしてるでヤンスよ……」

 

 その様子を、十歩ほど離れた岩陰から見守りながらペッシェとドンドチャッカの二人が話し合う。

 とはいえ、特に何か大きな理由があって近寄ってきたのでは無い。

 

 離れた場所で推移を見守っていたところ、なんだかよく分からないが滅却師(クインシー)の一団が姿を消した。

 まともに認識している流れは、そんなところなのだ。

 結局どうなったのか? 藍俚(あいり)が連れ去られた様に見えたが、どんな展開があったのか?

 その辺りの事情を聞こうと思って近寄った。だが予想以上に深刻な雰囲気に気後れしている。

 あえて理由を挙げるのならそんなところか。

 

「お前達はどう思う?」

「私たちに話を振らないでくださいますこと?」

「というか一緒にすんじゃねえよ。気になるんなら直接尋ねりゃ良いだろうが」

 

 首だけで振り返り意見を求めれば、スンスンとアパッチがジト目を二人に向けながら言い返してきた。

 彼女たちが近くにいる理由もまた、ペッシェらと同じような物だ。強いて挙げれば、ハリベルのことを第一に心配していることと、臆せず踏み込めるだけの胆力があるということだろう。

 なので「これ以上は話すことは無い」と言うようにハリベルのところへと近寄っていく三人の背中に向けて、ペッシェは所在なさげに手を伸ばす。

 

「あっ……お、おーい……いや、その、なんというか、予想だにしていなかったガチバトルに腰が引けてしまったというか、戦っていない我々がしたり顔で出しゃばりすぎるというのもネル様に失礼というか……」

 

 どうやら、ペッシェはペッシェで色々と思うところがあるらしい。一通り理由を口に出したところで、自分たちに近寄ってくる気配に気付き顔を上げる。

 

「ん、んんっ!! おおっ! チルッチではないか!! どうしたのだこんなところで!?」

「うっさい、邪魔」

「お、おお……!? そ、そうか、すまんな……悪かった、申し訳ない」

 

 ほんの二言、単語だけが返ってくる会話。

 それを耳にしながらチルッチを目にした瞬間、ペッシェとドンドチャッカはその場から飛び退いていた。

 立ち振る舞いは幽鬼のような、それでいて表情だけは覚悟を決めたように鬼気迫る様子のチルッチの姿を前に、および腰で後ずさっていく。

 それを特に一瞥することもなく、チルッチは進んでいった。

 

「なあドンドチャッカ? 我々はそんなに邪魔だっただろうか?」

「いやぁ……多分、違うと思うでヤンス。何か、あの戦いの中で何かがあったでヤンスよきっと。オラたちの知らない何かが……」

「私たちの知らない、何か……か……」

 

 妙にカッコいい声と、全てを知っていますと言わんばかりの雰囲気を醸し出しながら、ペッシェは頷いていた。

 

 ……それはそれとして。

 

「ちょっと待ちなさいよ!」

「なによ、うるさいわね」

 

 ペッシェとドンドチャッカを追い払ったチルッチを、今度はロリが問い詰める。

 

「それ、あの死神の持っていた鞄でしょ! なんでアンタが持ち出してるのよ!? それよりもなんであの死神は、滅却師(クインシー)たちに連れ去られたのよ!? あの女が負けるわけないじゃない!! ちゃんと説明しなさいよ!!」

「うん、教えて。何があったの……?」

 

 ロリの視線がチルッチの手元を注視する。

 そこには彼女の言う通り、藍俚(あいり)虚圏(ウェコムンド)に来たときに持っていた診察用の鞄が握られていた。

 だがどうしてそれをチルッチが持って行くのか。どうして藍俚(あいり)が負けたのか。それが理解できず置いてきぼりを喰らっている状態なのだ。

 故にロリとメノリは説明を求めた。近くにいて事情を知っているであろう者へ。

 突き刺すような眼差しで自分を見つめてくる二人の少女の姿をしばし忌々しそうに見下ろしていたチルッチであったが、やがてポツリと口を開いた。

 

「……――からよ」

「は? 何よ、よく聞こえない――」

「あたしが迷惑掛けて足を引っ張ったから藍俚(あいり)は負けて、あのユーハバッハってヤツに連れて行かれたのよ!!」

「なんで? どうして滅却師(クインシー)が死神を……」

「そんなの知らないわよ! ただ、あたしが連絡して巻き込んで、そんであたしが調子に乗って足を引っ張ったから藍俚(あいり)は連れ去られた! これで全てなの! それでいいでしょ!?」

「ハァ!? 馬鹿じゃないの! いいわけないでしょ!」

 

 自暴自棄になったように叫ぶチルッチの声に負けじと、ロリが叫び返す。

 

「アンタが足手まといなのはこの際どうでもいい! けどなんでそれで、あの死神の鞄を持って行くような事に繋がるのよ!?」

「今のあたしにやれることは一つしかないでしょ!!」

「何をやるっていうのよ!?」

「死神たちに知らせに行くのよ! 藍俚(あいり)が連れ去られたことを!!」

 

 ――!?!?!?

 

 そう叫ぶチルッチの声に、この場の全ての破面(アランカル)たちの視線が集中した。

 各々が口を開き次の方針を決めようと頭を捻っていた中、その全てを一時中断して彼女の周りへと焦った様子で集まってくる。

 

「待て! 知らせに行くだと……? それがどういうことか、どうなるかを分かって言っているのか!?」

「ええ、分かってるわよ。尸魂界(ソウルソサエティ)に行くの。んで瀞霊廷、だっけ? 死神たちの住処まで行って、あたしが原因で藍俚(あいり)滅却師(クインシー)にやられましたって、教えてくんのよ! 今のあたしに出来ることって言ったら、このくらいしかもう無いじゃない!!」

 

 巻き込んでしまった者に対するケジメ、とでも言えば良いだろうか。

 藍俚(あいり)に連絡して、虚圏(ウェコムンド)へと呼び寄せたのはチルッチだ。そして藍俚(あいり)が倒れる姿を最後に見たのもまたチルッチだ。

 また最後を看取った者が背負う責任感が、彼女の心を突き動かしていた。

 

「そう上手く行く保証はあるのか?」

 

 そんな悲劇のヒロインのような心持ちのチルッチに、ウルキオラが冷静に疑問を投げかける。

 

「死神たちへの復讐に来た。あるいは藍染様を奪還しようと攻め込んできた……数ヶ月前のピカロたちの騒動もまだ記憶に新しいだろう。問答無用で殺される可能性の方が遙かに高いはずだ」

「馬鹿にしてんの!? そのくらいはあたしだって考えてるのよ」

 

 口を突いて出たのは当然の疑問だった。

 その問いかけに対して、手に持った鞄を突きつけながら胸を張り答える。

 

藍俚(あいり)の持ってた鞄よ。これを持って行けば、相手だって問答無用で攻撃はしてこないでしょ!」

「……湯川を殺して奪ったと思われたらどうするつもりだ?」

「――ッ!?」

 

 ハリベルの言葉に、チルッチの動きが固まった。

 

「なあ……確か、死神に通じる通信機を貰ったよな? ワザワザ出向かなくても、アレで連絡を入れりゃ――」

「スターク、アレは藍俚(あいり)とあたしたちにしか通じないぞ?」

「なに? そうなのか!?」

 

 妙案を思いついたとばかりに口を挟もうとしたスタークだったが、リリネットがすかさず訂正を入れる。

 そして残念ながら、これは事実である。

 

 破面(アランカル)へ、死神が、連絡手段を渡すのだ。もしも他の死神に通じてしまえば、そこから余計な迷惑へと発展するかも知れない。逆探知のようなことをされて、居場所を突き止められて事件が起こるかも知れない。

 

 そう考えての、藍俚(あいり)なりの気遣いなのだが……

 「こんなことになるのなら、他の死神の何人かにも繋がるようにすべきだった」と、そんな声がどこからか聞こえてきそうである。

 

「はぁ……仕方があるまい」

 

 何か別の解決策は無いかと頭を捻るチルッチの姿を見かねたように、ハリベルが口を開いた。

 

「私も行こう」

「……は!?」

「馬鹿言ってんじゃないわよ! アンタの立場は……」

「ああ、そうだな。一応私は、現在の虚圏(ウェコムンド)を取り仕切る立場だ」

 

 自分が行くのとでは、意味が違うと言わんばかりに今度はチルッチが慌てるものの、ハリベルも引き下がる様子を見せない。

 

「分かってるのなら――」

「だがその虚圏(ウェコムンド)滅却師(クインシー)が攻めてきた。死神の力を借り、見逃された様な形とはいえ、撃退してもらったのだ。ならばせめて、死神たちに借りを返したい。そのためには王である私が直接出向くのが、こちらなりの誠意だと思うのだが……何か間違っているか?」

 

 当然のことのように告げるハリベルの姿に、難色を示したのはアパッチたち従属官(フラシオン)だった。

 

「いえ、ですが……ハリベル様が仰られたように死神に襲われる可能性が……」

「なんだアパッチ? お前ハリベル様をお守りする自信が無いのか?」

「んだとミラ・ローズ! 誰もそんなこと言ってねえだろうが!!」

「……そういうイザコザを避けて、極力穏便に済ませたいのだとハリベル様は思っていらっしゃるのではなくて?」

「「ッ!!」」

 

 スンスンの言葉に二人は顔を見合わせると、やがてどちらからともなく肩を竦める。

 

「……仕方ねえな。手を出すんじゃねえぞ?」

「そりゃこっちのセリフだ!」

「つまり、アンタたちも来るって事?」

「当たり前だろうが!」

「ハリベル様が出向くんだ! 従属官(フラシオン)のあたしたちがお供しないでどうすんのさ!」

「この二人が暴走しないように、微力ながら力を尽くします」

「頼む」

「「テメエ、スンスン!!」」

 

 ――と、彼女たち三人が漫才のようなやりとりを繰り広げている横では。また別の者が名乗りを上げる。

 

「あたしも行くわよ! あの死神には、まあ……ちょっとは世話になったし……」

「あたしも、その、一応着いていく。どこまで役に立つかは分からないけど」

 

 ロリとメノリだ。

 だが二人とも心のどこかで不安を感じているのだろう。口調がいつもよりもずっと弱々しい。

 

「……ならば、俺も行こう」

「ウルキオラ!? アンタ、一体何のつもりよ……?」

「そう睨むな、他意は無い。ただ、お前たちの護衛代わりくらいはやるつもりだ」

 

 そう素っ気ない態度を見せるものの、ウルキオラもどこか恩義に感じている部分があるのだろう。

 でなければ、わざわざ自分からこんなことを言い出すことは無いのだから。

 

「なー、スターク」

「リリネット……まさかお前まで行くつもりか?」

「だってさー、もう大半が参加してるじゃんか。ならもう一人二人増えても良いだろ?」

「物見遊山に行くんじゃねえんだぞ? ……大人しくしてろ」

「良いのか!?」

「断ったら勝手に抜け出しそうだからな。なら、目の届く範囲にいた方がまだマシだ……」

 

 片手で額を抑えながら、スタークは諦めたように呟く。

 それを聞いたリリネットは、ニコリと邪気のない笑みを浮かべた。

 

「へへっ、ありがとスターク!」

「……じゃあ、私も行って良い?」

「おいおい、お前さんもか?」

 

 リリネットに続けとばかりに声を上げたのはネリエルだった。

 まさかの相手からの言葉に、スタークはさらに気を重くしつつ尋ねる。

 

「私も湯川さんにはお世話になったし……それに瀞霊廷ってところもちょっと見てみたいし……えへへ」

「完全に観光気分じゃねえか……行ってすぐに殺されても知らねえぞ?」

「あら、そのときは二人が助けてくれるもの。ねえ、そうでしょ?」

 

 ネリエルの言葉に、彼女の従属官(フラシオン)二人が即座に反応した。

 

「ネ、ネル様の行くところ、我らもまたお供いたしますとも! ええ、たとえ火の中水の中、可愛い女性死神の着物の中であろうとも!!」

「そうでヤン……ペッシェぇ!? 最後のは同意しかねるでヤンスよぉ~!!」

 

 ……若干ヤケクソ気味なのは否めないが。

 とにかくこれで、ほぼ全員が参戦表明をしたわけだが……

 

「ハッ、馬鹿馬鹿しい」

 

 そんな雰囲気をぶち壊すかのごとく、グリムジョーが吐き捨てるように言う。

 

「なんでわざわざ死神共の巣窟に出向いて、ご親切に教えるような真似をしなきゃならねえんだよ!?」

「グリムジョー……でも湯川さんは……」

「黙ってろネリエル! 行くならお前らだけで勝手に行ってろ!」

 

 なんとか取りなそうとするネリエルだったが、グリムジョーは聞く耳を持たないとばかりに背中を向けてしまった。

 別段、グリムジョーの力が必須というわけではない。だが未知の場所へと乗り込む以上、少しでも戦力が欲しいと思ってしまうのも、また仕方ないことだ。

 ――とはいえこれは無理だろうと周囲が諦めムードの中、ネリエルが光明を見いだしたように口を開く。

 

「……でもあなたがご執心の……なんだっけ、志波? あの死神に会えるかもしれないわよ?」

「……」

 

 グリムジョーの動きが止まった。

 

 お忘れかも知れないが、グリムジョーは志波海燕と少々因縁がある。

 海燕が現世に先遣隊として出向いた際に繰り広げた戦いに端を発し、最終的には自らの斬魄刀を取り戻して卍解に目覚めた海燕によって破れている。

 つまり、負け越しだ。

 

「上手く交渉すれば、知らせてくれたお礼ってことで、戦う機会がもう一回くらいは――」

「あーあー、もう良いわよネリエル」

 

 その辺りを上手く擽るような言い方を見せるネリエルだったが、そこにチルッチが割り込んできた。

 援護ではなく、さらに煽るために。

 

「あのユーハバッハってヤツが次に狙うのは死神でしょ? 滅却師(クインシー)と死神には因縁があるって話だし。だからアンタは大人しく一人で待って――」

「なにしてやがる! さっさと行くぞ!!」

 

 効果は覿面だったようだ。

 海燕に加えて滅却師(クインシー)にも雪辱を果たせるかも知れないと聞かされ、さらに挑発までされてグリムジョーが黙っているはずもない。

 

 

 

 ――とまあ、そんなこんなで。破面(アランカル)たちは瀞霊廷へ向かうことに――

 

 

 

「あ、ちょっと待って!」

 

 シメに入ろうとしたところで、ネリエルが忘れていたとばかりに声を上げた。

 

「ロカちゃんはどうしよう!? 連れて行く?」

「……む、そうだな……だが連れて行くとなれば、あのピカロたちも来ることになるだろう……」

「アイツらが大人しくしているとは思えないでヤンス~!!」

「というかアイツら、数ヶ月前に悪さをしたばかりだろう! いくらネル様の頼みであっても、私は反対だ!」

「……仕方あるまい。今回は諦めて貰おう」

「ハリベル!?」

「二人の言うことは尤もだ。それにアイツらは大虚(メノス)の森にいる。仮にユーハバッハたちが再度虚圏(ウェコムンド)まで来たとしても、そう易々と辿り着けるとは思えん」

「うーん……仕方ないか……」

 

 完全ではないものの、ネリエルが一応の納得を見せる。

 

 

 

 ――とまあ、そんなこんなで。破面(アランカル)たちは瀞霊廷へ向かうことになったのだった。

 




次回、初めての瀞霊廷

王虚の重奏閃光(グラン・レイ・セロ・ドーブル)
 ネリエルとチルッチのコンビがなんとなくお気に入りで「相性良いよな」とか妄想していたら、いつの間にか出来ていた技。
 コンビ技だし、タネが割れてしまったのでもう滅却師たちには通じない。

●瀞霊廷に行きます
 色々と責任を感じちゃった結果。

●みんなで行こう♪
 ご都合です

●ロカちゃんとピカロたち
 申し訳程度のフォロー……
 (出したら絶対に管理しきれないのが目に見えているんですよ……)
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