「ユーハバッハ……!!」
山本が怨嗟の様な声を上げる一方、
山本とはまた違った意味で、だが。
「あの男は……」
「チッ、あの野郎……!!」
ウルキオラは即座に警戒体勢を取りながら斬魄刀の柄に手を掛けた。
グリムジョーもまた、現れたユーハバッハに苛立ちを隠そうともせずに敵意を剥き出しにする。今にも飛び掛かりそうなほどだが、一度手痛い目に遭わされた経験が二人を僅かに慎重にさせる。
「馬鹿な!
「そこまで驚くことじゃないだろ?」
理解できないといった様子のハリベルに向けて、スタークは当然のことのように告げる。
「つまり、敵はそれだけ巨大な相手だったってことだ」
「……くっ!」
藍染に率いられ曲がりなりにも組織立った動きが出来ていた頃とは違い、今の彼ら彼女らは小さな集まりに過ぎない。
一度追い払った程度では焼け石に水でしかなかったのかと歯噛みしつつも、敵意と戦意だけは燃え上がらせる。
「よくぞ儂の前に姿を見せた! 千年前は寸での所で逃がしたが、二度目は無い!!」
「貴様こそ良いのか? 今、私の背後に雀部長次郎は隠れておらぬぞ?」
「ぬかせ!!」
姿を見せたのならば容赦手加減それら一切が不要とばかりに、手にしていた杖を斬魄刀へと変化させると同時に始解させ、猛火を叩き付ける。
猛り狂うその炎は黒稜門の全てを覆い包み込んでなお余り、周辺の建物を地面ごと炭化させるほどの勢いを誇っていた。
生み出された炎の大津波は瞬時にして周囲一帯へと広がりながらユーハバッハへと襲いかかる。
「うわっ!!」
「あちっ! あちちちっ!!」
「なんという熱量だ……」
「山じい、ちょっとは手加減……は期待できそうにないねコリャ……」
その熱量は近くにいた各隊長たちが余波だけで大きく下がるほどだった。
炎を眺めながら京楽は思わず呟く。
ほんの僅かではあるが、彼の知る山本の技量と比較して斬魄刀の扱いが荒くなっている事に気付いたからだ。
見た目からはそこまで感じ取れないものの、その内面では沸き立つ溶岩のような感情が煮詰められているのだと悟り、仲間の隊長たちをもう一歩ほど下がらせることに注力する。
「大したものよ。私の顔を見るなり躊躇うことなく炎を放つとは」
業火を避けることなくまともに受け止め、その炎の中心で影しか見えなくなっている。にもかかわらず、その炎の向こうからユーハバッハの声が響いてきた。
声だけでしか判別できないが、ダメージを負っているようには感じられなかった。先ほどまでと同じ調子のままさらに言葉を続ける。
「だが、そこの
「……それがどうかしたのか?」
人質と利用することも出来ると告げられた言葉に、山本は一切の感情を揺らすことなく答えた。
「彼奴も死神じゃ、死神は護廷のために死んで当然。そこに命を省みる必要は無い。儂の邪魔をするのであれば、切って捨てるまでよ」
「ちょ、ちょっと爺さん!! アンタ
「ふははははははっ!! 己の腕を再生させた恩人を相手に、そこまで言い切るか! 結構結構! それでこその山本重國よ!!
きっぱりと冷酷なまでに告げる山本の姿に、チルッチが意義を申し立てようとする。だがそれよりも先に、ユーハバッハが笑い出した。
山本の言葉を賞賛するかのごとく一頻り上機嫌に笑い、そして急激に止める。
「だが、思い上がるな。お前の相手をしに来たのでは無い……
「……ッ!!」
その言葉を合図として、瀞霊廷の各所から無数の青い火柱が立ち上った。
地獄の釜の底が抜け、押し込められていた怨霊たちがそこから吹き上がってきたかのような現実味のない光景。だが火柱から放たれる圧倒的な霊子濃度は、それが幻覚ではなく実際に起きた現実なのだということを死神たちへと知らせる。
天にも届く火柱が各所に上がる中、猛火の向こうのユーハバッハの姿がゆっくりと薄くなっていく。
「待てッ! ユーハバッハ!! 逃すと……む!?」
「消えた……?」
「例の、影を使った移動……だったか? それを使ってどこかへ……?」
「ホウ……なるほど、これは興味深いネ……」
まるでその場から一切の痕跡を消し去ったかのように姿を消した敵の首魁の様子に、死神たちは首を捻る。
だが混乱で思考を止めるよりも早く、山本が声を上げた。
「先手を取られる羽目になるとはの……だがある意味では好都合じゃ! こちらも
「「「「「はっ!!」」」」」
十人の隊長が同時に声を上げ――慣れない勇音だけが少し遅れて小さな声だったが――ながら、準備は整っていることを返答する。
そもそもが「ユーハバッハが
それに加えて、
今回も、その演習の延長線の様なものだ。
黒稜門に各隊の隊長を集めると同時に、山本は副隊長以下の死神たちに対
敵が瀞霊廷まで攻め込んできた場合、逆に敵地へと攻め込む場合――そのどちらであっても問題ないように、けれども
「ならばよし! 全隊長に告げる! 今この時より各隊を指揮し、
山本の言葉を裏付けるかのように、瀞霊廷内部のあちこちから新たな霊圧が湧き上がってきた。
その瞬間、
「こ、この霊圧って……!? ハリベル!!」
「ああ。そのまさか、だろう……!!」
「嘘、でしょ……!?」
「メノリも感じた? じゃあ間違いない、気のせいじゃないわね……」
ハリベルたちが頷き合う中、二人ほどが困惑の声を上げ、チルッチに怒られていた。
「な、なんなのだ一体!? お前達は何を言っているのだ!?」
「れれれれ霊圧でヤンスか? え、えっとえっと……」
「馬鹿! あんたたち気付かないの!? これは――」
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「なんだこの火柱は……!?」
「わからんが……だが、
「霊子調査班、分かるか!?」
「待ってください、もう少し……」
つい先ほども述べたが、死神たちは
その準備が功を奏し、おかげで火柱が上がった瞬間には何班もが急行して炎を取り囲むことに成功していた。
各班の死神たちはそれぞれが斬魄刀を構えて油断なく火柱を睨み続け、それとは別に測定用の計器を持った死神が霊圧のパターンから現象の正体を探ろうと躍起になる。
「……でました! これは!!」
やがて霊子の分析を終えた計器は、火柱の向こう側に潜む相手の正体を伝えた。
だがそれを口に出すよりも早く、炎の向こうから凄まじい勢いで影が飛び出してきた。
「うおおおおおおっっ!!」
「なっ! コイツは……!」
「
「
「馬鹿! んなもん見りゃわかるんだよ!! ぐあああぁっ!!」
現れたのは白を基調とした衣服に身を包み、顔の一部に仮面の名残を付けた男だった。
だがその様子は尋常ではない。
目は血走り、息づかいは荒く、余裕といったものの一切が感じられない。現れた
「これで二人! お前で三人目! 三人目だ!!」
「ぐっ!! なんなんだコイツは!? 敵は、敵は
誰か説明をしてくれ!! ――叫ぼうとするが、それよりも先に
血の泡を吐き出し、不細工な楽器のような音を立てながら彼の意識は闇に沈んでいく。
だが、この状況は今この瞬間にとっては珍しいものではなかった。
「がああぁっ! く、くそ……死神……め……」
「どうして
「危なかった……四席がいてくれて助かりました……」
「礼には及ばないさ。だが気を抜くな! すぐに副隊長に連絡を取れ! まだ新手の
火柱の向こうから
だがその戦況は様々だ。
そもそもが火柱の調査を目的として班を組んだのではないため戦力にバラつきがあり、加えて火柱の近くにいた班が真っ先に接近している。
そのため偶然強い死神がいたり、力の弱い
当然それとは逆で、先のように全滅させられる事態もあるのだが……どうやらこの班は運がよかったらしい。
打ち倒し、瀕死となった
「待ってください四席!
「い、嫌だ! 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!! 死にたく――」
それ以上、言葉が発せられることは無かった。
代わりに発せられたのは爆発音だ。
倒したはずの
「……い、一体、何が……?」
先ほど
キルゲ・オピーが「捕まえた
今の状況が、その妙案の結果だった。
捕らえた
だが捕らえた
無論、彼らもそれは理解している。無策で最前線に投入しても逃亡するか、はたまた反逆するのは目に見えている。
故に、言うことを聞かせるための
彼ら
役に立たなくなった瞬間、
「ハァ……ハァ……や、やった! やったぞ!!」
一人の
周囲には数十人もの死神が倒れており、その誰もが血の海に沈んでいる。彼は、そんな地獄絵図のような状況の中心に立ちながら、その表情は歓喜に打ち震えている。
「ハ、ハハハハハッ!! これで、これで俺は自由だ! なあ、そうだよな!?」
「ええ、見ていましたよ。おめでとうございます」
背後の火柱へと必死に確認するような声を投げかければ、そこから一人の
「ざっと数えても
「な……!! まさか、ケチを付けるのか……!?」
「いえいえ、そこまで文句は言いませんよ。では、約束通り……」
倒れた死神たちを見回して太鼓判を押すと、
至近距離で、油断した状態で霊子の矢を受けた
「ギッ……!?!? な、なじぇ……だずけ……で……」
「出撃前に教えたでしょう? ノルマだけの死神を殺せば
トドメとばかりにもう一撃を、今度は相手の顔面目掛けて放つ。
それで周囲は完全に静寂に包まれた。
「我ながら素晴らしい。これで雑魚も多少は片付いて動きやすくなったことでしょうし、
自らの立てた計画を自画自賛しながら、キルゲは瀞霊廷を進み始めた。
「――これは
それらの、
「
「手駒にして使おうってワケ!?
「ロリ、落ち着いて……」
「真っ先に使い捨てられているってわけか……どうするハリベル?」
スタークの言葉に、その場にいた
その視線と、視線に込められた意味を正確に受け止めた彼女は、山本をまっすぐに見据えながらハッキリと宣言した。
「……死神たちよ。私たちは同胞を救うため、
●タイトルの説明
(瀞霊廷を中心として考えて)
遠:
近:
早い話が「同僚が酷い目に遭ってるから最低限は協力してあげます。仲間になったわけじゃないんだからね! 同じ相手を叩きのめすだけなんだから勘違いしないで!」です。
(ロマン全振り)
●捕まえた
原作では「捕まえて、洗脳?(教育?)して尖兵として利用」していた。
(しっかり忠誠心まで植え付けて、装備も渡している)
拙作では「お前らも死神が憎いだろ? 一緒に戦おうぜ! お前先頭な!!(超マイルド表現)」という感じで利用。
(手っ取り早く脅迫して、身一つ最前線に送り出す)
せっかく捕まえたんだから、無駄にしちゃ勿体ないですから。
(戦う価値もない弱小死神を選別できて、邪魔な
キルゲ君はこういうことやってくれそう(偏見)
死神側は、宣戦布告は受けてないが戦争準備は整っている状態。
そこに突然火柱が上がったので、近くにいる班を向かわせたら破面が暴れた。班決めで分けられているけど、全部の班が均一に強いわけじゃないので、こういうこともある。
(あと副隊長とかは、隊長に代わって後方で指揮を執ってるので反応がちょっと鈍い)
●
・一般隊士 :100人
・席官 : 10人
・副隊長以上: 1人
合計100人以上倒せば自由の身です。
居場所は常に把握していますので、迷っても問題ありません。
さらにベテランの滅却師が控えていますので、何も問題ありません。
( ≒ 逃げられません。常に監視されています。処刑人が常に後ろにいます)
まあ原作も
・(ほぼ無理だと確信しているが)一護の所に行って卍解奪ってこい
・(二千年以上最強を誇っている)総隊長のところに行って宣戦布告してこい
・(口で言えば済む話なのに)片腕を落としてから「足も要らないかな?」と聞く
・(任務が終わって用済みだから)陛下の糧にする
・(回収・選抜の任務なのに)並んだ端から槍を刺していく
・(部下を爆弾に改造してから)侵入者を連れてこい
みたいな目に遭っています。滅却師の破面への扱いは酷いですね。
(1つ全く関係ない死神のやらかしが混じってる? またまたご冗談を)