お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第340話 戦闘開始

「待て! そのような勝手、許すと思ったか!?」

 

 ――我々破面(アランカル)は、滅却師(クインシー)討伐に動かせて貰う。

 

 そう告げたハリベルに対して、山本は抜き身の刃を突きつけながら告げる。

 刀身は持ち主の内なる感情を吐露するかのように炎が燃えさかり、見ているだけで気を失いそうになるほどの殺気と霊圧が込められていた。

 だが、その恐ろしい刃を真っ正面から見据えながら、ハリベルは臆することなく口を開いた。

 

「剣を突きつけたところで、私たちの意思は変わらぬ。先ほど述べた通りだ……各地から漂ってきているのは同胞たる破面(アランカル)の霊圧だ。あのユーハバッハという男の合図と共にそれが感じられたことから考えれば、尖兵として扱われていると考えるのが妥当だろう」

 

 山本ら死神たちの背後に広がる瀞霊廷の街並み――そしてその中に何本も立ち並ぶ火柱へと僅かに視線を向けながら、彼女は訴えかける。

 

「死神に対しては、我々にも忸怩たる思いはある。それは認めよう……だがそれ以上に、滅却師(クインシー)どもに手綱を握られ、好き勝手に扱われるような真似は我慢ならない!! 同胞を助けようとするのがそれほどまでに不可思議か!?」

「その想いだけならば、汲んでやらぬこともない……だが! だからといって儂らが『はいそうですか』と破面(アランカル)どもを瀞霊廷内部に通すとでも思うたか!?」

「こちらの目的は滅却師(クインシー)の殲滅と同胞の救助だ。本来ならばお前たち死神に伝える義理はないが、敢えて情報を共有してやった。まだ不服というのなら、死神への手出しはしないという条件も付け加えてやろうか? このまま私たちだけで好き勝手に動いても構わないのだぞ?」

「…………」

 

 奥歯を噛みしめる様なギリリという音が山本から微かに聞こえてきた。

 斬魄刀を構えたまま眉間にシワを寄せているその姿は、諸々の考えを必死で天秤にかけ続けているようだ。

 

「なかなかやるもんだな、ハリベル。あの死神の爺さんから譲歩を引き出させるとは」

「……半分はハッタリだ。後ろから斬られるような真似はできるだけ避けたい」

 

 交渉の最中のため、相手に悟られぬようにこっそりと。

 小声で囁くスタークに対して、ハリベルもまた小声で僅かな弱気の本音を漏らす。

 

 破面(アランカル)たちがそんな会話を交わしているその一方で、死神たちの側にも動きがあった。

 

「山じい、もうその辺にしとこうよ」

 

 不動となっている山本の背中に向け、まずは京楽が口火を切った。

 

「悩むだけ勿体ないよ。そうやって考えている間にも時間は過ぎるんだからさ。ほら、立ってる者は親でも使えって言うじゃないの」

「元柳斎先生がそのように、斬魄刀を構えながらも未だ振り下ろさずにいる。それが答えではないでしょうか?」

 

 浮竹が続き、やがてそれに倣えとばかりに各隊長も口を開く。

 

「……せやな。信用できひんのは分かるけども、今は緊急事態や」

「ゆっくり悩んで答えを出してる様な暇はねえってことだ」

「監視役でも付けておけば、少しは安心できますかね?」

「チッ……」

「私はどちらでも構いません。ただ、部下や瀞霊廷の被害の方が気がかりです」

「儂は、納得しきれません……ですが、それが元柳斎殿のご命令とあれば従います」

「こんな奴らと肩を並べろだと!? くっ……!」

「いいじゃありませんか。邪魔するなら斬り捨てれば」

「全ての事象を観測しておきたまえヨ! ああ、影だ! 滅却師(クインシー)どもは影を使った侵入経路らしいからネ!! それから検体も捕獲しておくんだヨ!! あとで私が一体一体丁寧に解剖する!!」

 

 各々が思い思いに――約一名、我関せずとばかりに技術開発局に連絡を取っているものの――意見を述べる中、山本はようやく口を開いた。

 

「……よかろう、今は火急の事態じゃ。じゃが先ほどの言葉、翻すような真似をすれば全員即刻斬り捨てられると思え!!」

 

 それは、妥協とも覚悟ともとれる言葉だった。

 一時的とはいえども破面(アランカル)と協定を結び、肩を並べて戦う。それを許可するのに、抑えきれないほど膨大な感情が積み重なっていたほどだ。

 阿修羅の様な憤怒の様相となりながらも彼は決断を下し、ハリベルもまたそれを受け入れる。

 

「ああ、理解している」

「話は終わったか? ……ったく、長えんだよ。死神どものご機嫌を伺おうがどうしようが、やることは変わらねえだろうが?」

 

 両者のやりとりや感情など知らぬとばかりに、それまで無言のままだったグリムジョーがハリベルと並ぶように前へと出てきた。

 そして、苦悩する山本を嘲るかのように犬歯を剥き出しにしながらニヤリと笑う。

 

「まあ、せっかくの死神サマのお墨付きだ! 滅却師(クインシー)どもは皆殺しにして、ついでにあのユーハバッハってヤツにも借りを返してやるよ!!」

「お、おい待て!! グリムジョー!!」

 

 もはや話すことなど何もないとばかりに、グリムジョーは駆け出していった。

 響転(ソニード)を全力で用いながら死神たちの横を一瞬にしてすり抜け、瀞霊廷内へと飛び込んでいく。

 

「貴様! 死神と交わした約定は覚えているだろうな!?」

「んなモン『滅却師(クインシー)は殺せ! 死神は殺すな!』だけ分かってりゃ

十分だろうが!!」

「くっ! ……あいつめ……!!」

 

 背中へ叩き付けられた疑問の言葉に、速度を落とすことなく叫び返すことでグリムジョーは答える。

 だがその言葉を耳にしたハリベルの心には不安が広がっていた。

 

 死神は殺すな! ――それは確かに間違いでは(・・)ない。

 だがその表現では「殺さなければ手出しをしても問題ではない」という解釈の余地が残ってしまう。

 悩むハリベルに、ウルキオラがそっと声を掛けた。

 

「おそらくは、大丈夫だろう」

「ウルキオラ!? それは一体どういう意味だ……?」

「今のグリムジョーには、滅却師(クインシー)たちしか目に映っていない。死神の相手をするよりも、そちらを優先させるだろうからな」

「それにグリムジョーのヤツは、因縁のある死神がいただろ? そっちの件もあるんだ。そこそこは大人しくしてるだろうさ」

「……むぅ……」

 

 さらに続くスタークの言葉に、完全ではないもののハリベルは一応の納得を見せた。

 だが、疑問が解消したところでまた別の問題が持ち上がる。

 

「ねえ、ハリベル。悪いんだけど、私たちは一護のところに行って良い?」

「一護? 黒崎一護のことか……まさか現世に行くつもりか!?」

 

 申し訳なさそうな態度で、控えめに告げてきたのはネリエルだった。

 彼女は両手を拝むように合わせながら、現世に行くことを告げる。

 

「ええ、そうよ。だってホラ、一護も死神でしょ? それに力を取り戻したって話だったし、せっかくだから会って力を借りたいかなって……」

「アンタねぇ……突然何を言い出してんのよ!!」

「チルッチ!?」

 

 突然最前線から離れると聞かされ、しかも理由が気になる相手と会いたいからと聞かされては良い感情を持てないだろう。

 ましてやそれが、ネリエルとそこそこ付き合いのあるチルッチならばなおさらだった。

 鼻息も荒く詰め寄っていくものの、ネリエルはどこかのらりくらりとした反応を見せる。

 

「べ、別にイイでしょう……? チルッチだって、湯川さんに連絡取ってたし……」

「それとこれとは話が別! 大体アンタ――ッ!!」

 

 ネリエルに掴みかかろうとしたチルッチであったが、彼女はその瞬間動きを止めた。続けて掴みかけていた手を放すと、クルリと背中を向けながら不貞腐れたように叫ぶ。

 

「あーもう! だったらもう勝手にしなさいよ!! さっさと行けば良いじゃない!!」

「なんなのだ? チルッチは一体どうしたと?」

「急にネル様から興味を無くしてるでヤンスね?」

 

 突然そんな真逆の態度を見せれば、疑問に思わないわけがない。

 ペッシェとドンドチャッカがヒソヒソと相談するのを、指を突きつけながらチルッチはさらに叫んだ。

 

「そこ! うるさい!! どうせあんたら二人も現世に行くんでしょ!? だったらこの女が逸らないように見張っておきなさい!! ほら、行くわよアンタたち!!」

「ちょ……! 仕切ってんじゃないわよチルッチ!!」

 

 そこまで口にすると、他の破面(アランカル)達の背中を押すような態度で瀞霊廷へ向けて動き出し、ハリベルらは疑問に思いつつもそれに続く。

 

「……ありがと、チルッチ」

 

 仲間たちの姿を見送りながら、ネリエルはお礼の言葉を呟いていた。

 

 

 

 

「全隊士への連絡でしたら、お任せ下さい!」

 

 破面(アランカル)たちがそんなやりとりをしている一方では、死神たちもまた山本を中心にこれからの対応方針についての指示を受けていた。

 

 まずは破面(アランカル)たちが味方……というよりは、相互不干渉の共同戦線辺りが正しいだろうか?

 とにかく手出し無用の関係になったと知らせなければ、死神たちが迎撃に動きかねない。

 その周知役に立候補したのは、雀部だった。

 彼はそう言ったが早いか天挺空羅の縛道を用いて、この事態に対処に回っているであろう死神たちに連絡を飛ばす。

 

 雀部が連絡をしている間に、山本は各隊長たちへと再度の指示を出して滅却師(クインシー)達への迎撃へと向かわせた。

 繰り返しになるが、ユーハバッハ出現の事態を死神達が知った瞬間から、最悪の事態に備えてある程度の迎撃準備を各隊は整えている。後は各隊の担当区域に各隊長たちが向かい、現場指揮を取るだけだ。

 

「……さて、待っておれよユーハバッハ。今度こそ、欠片も残さずに焼き尽くしてやろうぞ」

 

 全隊長たちが動き出したのを見届けてから、左拳を強く握りしめながら山本は独り言を呟いた。

 その左腕は、一度は消失しながらも完全なる再生を果たし、元の姿を取り戻したもの。

 だが山本はそこからさらに腕を身体へと馴染ませ、それどころか今まで以上となるように苛め抜き、鍛え上げていた。

 ユーハバッハが「特記戦力」として挙げるのに相応しいだけの威容を放ちながら、彼もまた宿敵の霊圧を追って動き出し始める。

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

「……全員、無事か!? 生きている者は返事をしろ!!」

 

 各隊長たちが黒稜門から各々の持ち受け現場へと移動するまでの間。

 副隊長以下の死神たちは突如立ち上った火柱と、そこから現れた死兵と化した破面(アランカル)の対処に追われていた。

 ここはその現場の一つ、三番隊が担当している地域である。

 運の悪いことに現れた破面(アランカル)は中々の霊圧を持った固体であり、三番隊の隊士たちはその多くが倒れ犠牲となってしまった。

 だが運が悪いのは、破面(アランカル)側も同じだった。

 幸運にも副隊長の戸隠李空が戦場からほど近い場所にいたのだ。

 自らが傷つくことも厭わない戦法に苦戦させれたものの、彼は見事に破面(アランカル)を打ち倒し、そして……倒れた敵は多くの死神を巻き込んで自爆して果てた。

 

「戸隠副隊長……はい、なんとか……」

「こっちもなんとか……ただ、仲間までは……」

 

 まだ爆風が収まる気配すら見せない状況ながらも戸隠が声を張り上げて部下の死神たちの安否を確認したところ、返ってきたのは予想よりも少ない数だった。

 立っていた者たちでこれならば、負傷して倒れていた死神たちの安否は絶望的だろう。

 

破面(アランカル)め! まさか自爆するなんて……」

「そんなに藍染を取り返したいのかよ!!」

「わりーな、そういうわけじゃねえんだ」

 

 激怒して叫ぶ死神たちに向けて、火柱の向こうから耳慣れぬ声が聞こえてきた。

 途端、残っていた死神たちは警戒して斬魄刀を構える。

 

「……ッ!! なんだ!?」

「全員注視! まだ誰かいるぞ!!」

「ウチのキルゲが捕まえた破面(アランカル)を有効利用するとか言い出しやがってな。んで、このザマってわけよ。藍染ってのは関係ねえ」

 

 軽い口調で喋りながら姿を現したのは、若い男だった。

 真っ白な、どこか暴走族の特攻服を連想させる格好と、紅いモヒカンの頭髪が悪目立ちをしており、死神たちの視線を色んな意味で引き寄せている。

 だが悪目立ちする格好とは裏腹に、彼の言葉を戸隠は聞き逃さなかった。

 

 捕まえた破面(アランカル)の有効利用。

 藍染は関係ない。

 

 その二つの言葉から、現状と目の前の相手の関係性とを瞬時に理解する。

 

「ま、こうして邪魔なのを蹴散らして死神どもを集めてくれたんだ。ちょっとだけ感謝してやらねえとな!」

「つまり貴様が本命……滅却師(クインシー)!!」

「燃えろ! バーナーフィンガー1!!」

 

 だが戸隠が動くよりも早く、目の前の相手が動いた。

 彼は人差し指の先から熱線を放つと、周囲にいた死神たちを一瞬にして切り裂いた。

 その熱線は戸隠にも当然襲いかかるものの、彼は一瞬早く反応して何とか身を躱して直撃をなんとか避ける。それでも完全に避けきれず、片足を軽く抉られていた。

 

「へえ、やるじゃねえか! そうでなけりゃ面白くねえよな!!」

「悪いんだけど、あんまりウチの隊士をいじめないでくれるかな。ボクが千鉄(ちかね)に怒られちゃうからね」

「なにっ!?」

 

 さらに追撃をしかけようとするものの、そうはさせじとローズが割って入ってきた。

 火柱から離れていた場所に配置されていたものの、異変に気付いて急いでやってきたのだろう。呼吸がほんの少しだけ乱れている。

 けれども彼はそんな疲れなどおくびにも出さずに目の前の滅却師(クインシー)の斬魄刀を振るうと、戸隠への追撃を強制的に中断させた。

 一方、攻撃を邪魔された滅却師(クインシー)は、ローズを見るなり意外そうな顔を見せる。

 

「オオーーッ! お前、知ってるぜ! 席が足らねえからって、無理矢理副隊長にされた死神じゃねーかよ!!」

「ありゃりゃ、こりゃ耳が痛いね……でも、副隊長の気楽な立場も悪くはないんだよ。業務はそこの戸隠君が大体やってくれるし、ボクは好きな楽器をのんびり奏でる時間が増えた」

 

 いや、あなたそのせいで毎日のように千鉄(ちかね)さんに怒られているでしょう! ――という言葉を、戸隠は必死に飲み込んだ。

 今言うことではないし、なによりローズに助けられたのは事実だ。彼がいなければ、この足では追撃を避けきれなかっただろう。

 

「けど、今ばかりはのんびりしてられないからね。三番隊元隊長、現副隊長、鳳橋楼十郎が相手をしよう……生きて帰れると思うなよ滅却師(クインシー)!!」

「こりゃご丁寧にどうも! 星十字騎士団(シュテルンリッター)"(エイチ)"! 灼熱(ザ・ヒート)のバズビーだ!!」

 

 灼熱の名を現すように、バズビーは片手から炎を吹き上げる。

 周囲に倒れる死神たちの姿を見ながら、ローズは暗く重々しい表情でそれを睨んだ。

 

 

 

「ハッハッハ!! やはり破面(アランカル)などに任せてはおけぬ!! やはりワガハイ自ら死神どもを成敗せなばならぬ!!」

 

 三番隊がバズビーと戦っている頃。

 六番隊もまた犠牲者を出しながらも破面(アランカル)を倒したものの、その次に現れた滅却師(クインシー)から一方的な被害を受けていた。

 

 格好だけならば、他の滅却師(クインシー)と同じ白い軍服のような姿。

 だが星マークが刺繍された覆面とチャンピオンベルトを腰に巻いた2(メートル)近い体躯を誇る筋骨隆々の大男が、徒手空拳ながら死神たちを相手に縦横無尽に暴れ回っている。

 その戦い方は、見た目通りのプロレスリング。相手に腕を叩き付けるラリアットや、抱え上げた相手を地面に叩き付けるパワーボム。両足を揃えてのドロップキックといった見た目重視の派手な技を多様しているものの、その威力と被害は本物だ。

 周辺から集まってきた死神たちはその全員がマットに――もとい、瀞霊廷の地面へと沈んでいく。

 

「悪党共!! 正義の拳を受けてみよ!!」

「なんだコイツは……!?」

「む!? そういえばまだ自己紹介をしておらんかったな!! ワガハイは"(エス)"! "英雄(ザ・スーパースター)"マスク・ド・マスキュリン!! 正義の滅却師(クインシー)である!!」

滅却師(クインシー)ってことは……コイツ、倒していいんだよな……?」

「新手か! よいぞ! 卑怯な悪党を正々堂々倒してこその正義だ!! 正義は決して負けぬ!!」

 

 ようやく参戦できた恋次は、マスキュリンのノリにやや毒気を抜かれそうになるものの、敵の望み通りに斬りかかっていった。

 

 

 

 

 (ケー)聖文字(シュリフト)を持つ星十字騎士団(シュテルンリッター)BG9(ベーゲーノイン)は、七番隊の死神たちを蹂躙していた。

 

「消去、消去、消去」

「ぐあああああああぁぁっ!!」

 

 全身に鎧を纏ったような風貌。その上から純白のコートを身に纏った姿のBG9(ベーゲーノイン)は、コートの隙間から何本もの金属の触手を伸ばし、死神達を切り裂いていく。だがその言動は機械的で、感情というものが感じられない。

 ただただ作業を続けていくように淡々と、倒した死神を確認する度に「消去」という言葉を発していた。

 まるで、機械仕掛けの無人兵器を相手にしているかのようで、今まで戦ったどんな相手とも違う異質さ・不気味さに死神たちはゆっくりと呑まれていく。

 

「くそっ! お前みたいなヤツに……!」

「そうだ! 俺たちが負けるわけがねえ!!」

「不可能だ。お前達の霊圧数値はいずれも私を下回っている。仮にお前達全員が一人に霊圧を集中させたところで、対処は容易だ」

「じゃかましいいいぃぃっ!!」

 

 霊圧の比較から勝てないという事実を淡々と突きつけたBG9(ベーゲーノイン)の言葉に対し、射場が叫び声を上げる。

 

こがぁ(こん)なカラクリ人形に儂らが負ける思っちょるんか!! おどれら(お前ら)! 根性入れんかい!! 隊長に笑われるぞ!!」

「はいっ!!」

「申し訳ありません!!」

 

 叱咤激励の声に、気落ちしかけていた隊士たちの心に再び火が付く。

 BG9(ベーゲーノイン)は鉄仮面の奥のモノアイを通してそれらを確認すると、金属製の触手を軽く振り回し始めた。

 

「……その精神論、どこまで続けられるか確認させてもらおう」

 

 

 

 

「ふむ、成果はまあまあといったところですか……ですが陛下の御為に働け、散っていったのです。彼らも満足でしょう」

 

 十三番隊所属の死神たちが倒れ伏す姿を見下ろし、キルゲはやや満足そうに呟いた。

 自らが立案した、捕縛破面(アランカル)の有効利用法については概ね予定通りの効果を発揮しているのを、自らの目で確認できたのだ。

 機嫌が悪いはずがない。

 

「さてでは、残った死神たちは私が相手をしてあげましょうか……志波海燕?」

「ケッ! 俺のこと知ってんのかよ……気持ち悪ぃな……」

 

 サングラスを指先で押し上げながら名を呼ばれ、海燕は思わず吐き捨てる。

 相手の正体が分からぬまま、けれども相手にはこちらの情報を知られているという事実を直感的に察知し、両手それぞれに斬魄刀を握る手にも思わず力が入る。

 

「ええ、勿論。陛下から頂いた情報(ダーデン)に記載されていますから……ああ、それから貴女のことも知っていますよ。朽木ルキア」

「私のことまで!? 貴様、何者だ!!」

 

 続いて海燕の隣に並ぶルキアを名を呼ぶと、キルゲはやれやれと肩を竦める。

 

「ああ、確かに。名前くらいは知ってから死ぬべきでしょうね。私は"(ジェイ)"――"監獄(ザ・ジェイル)"のキルゲ・オピーと申します」

「じぇいる……!?」

「しかし困りましたねぇ……陛下から活躍を期待された身とはいえ、これは……いったいどちらから相手をすればいいのやら……なんとも贅沢な悩みです!!」

 

 歓喜の笑みを浮かべながら、キルゲは神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)を二人に向けて放った。

 

 

 

「ゲッゲッゲッ、ミーってばなんてラッキーなんでしょうネ♡」

 

 星十字騎士団(シュテルンリッター)"(エル)"、"(ザ・ラブ)"のペペ・ワキャブラーダは集まってきた十番隊の隊士――より正確には、そこにいる副隊長を見ながらにんまりとした下品な笑みを浮かべていた。

 

「こぉんなに大勢の死神がミーのために集まってくれるなんて♡ しかも副隊長まで早々に来てくれるなんて♡ ミーの心は嬉しくって嬉しくってもうはち切れちゃいそうだよ♡」

「うげぇ……こんなの相手にしなきゃならないの……」

 

 ぺぺの様子を見ながら、乱菊は心底嫌そうに声を上げた。

 なにしろぺぺは思わず目を背けたくなるような容姿をしているのだから。

 

 贅肉たっぷり、丸々と太った体形。

 衣服はサイズが合わず、ランニングシャツの上にマントを羽織るような格好であるものの、でっぷりとした醜悪な腹肉が否応なく目立つ。

 加えて、黒いサングラスをしているものの隠しきれない不細工な容貌。浅黒い肌や長く伸びた髭も嫌悪感を増す一助となっている。

 

 ……コレ本当にブリーチの名前アリのキャラか? 出る作品を間違えているんじゃないか? と尋ねずにはいられないほどだ。

 

「あんたたち! とっととコイツは倒すわよ!! 唸れ、灰猫!!」

「「「はいっ!!」」」

「ゲッゲッゲッ」

 

 乱菊が斬魄刀を始解させ、部下の隊士たちは鬼道の詠唱を始める。どうやら誰もぺぺに直接斬りかかりたくないようだ。

 死神達の様子を下品な笑顔で眺めながら、ぺぺはハートマークを作るように両手を合わせた。

 




●書いてる途中に気付いたこと

ウルキオラがいるから「目を抉ってユーハバッハ戦の録画データを見せられたのでは?」ということ。


陛下が半日くらいでシレッと再出撃していること。
(これは一応「(虚圏侵攻から尸魂界侵攻までに)数時間の間隔を開けたからセーフ」と自分を(やや無理矢理に)納得させる程度の言い訳は用意してあるのですが)
(いっそ「30秒くらいの広告を見るとスタミナ回復で再出撃可能」とか考えた方が気が楽かもしれません)

●ネリエルの「一護の所に行きたい」発言
早い話が「(一護をとっとと話に絡めるために)呼びに行かせた」なのですが。

そのための理由付けとして「大技を使った消耗からまだ回復しきっていない。無理に参加して足を引っ張るくらいなら強い味方を呼んでくる(一護に会えるという打算も多少アリ)」とネリエルは自己判断して身を退いています。
(チルッチが本文中で詰め寄るのを諦めたのは、それらの意図に気付いたから)

(なお、上記理由は本来、現世で一護と出会った辺りで描写する予定なのですが、書いている人が忘れてしまいそうな不安がありました。なので此処で一応記載しておきます)

●侵攻してきた星章騎士たち
神赦親衛隊(シュッツシュタッフェル)(+ニャンゾル)以外は、零番隊対策として温存しているが、それ以外は参加している(Nの人は一護の所に行っているので例外)」という状態です。
(ちょっと前の話でも陛下に言わせた気がしますが)

なので「ぺぺが乱菊(十番隊)と会敵」しちゃっても「仕方ない」んですよ。
決して「何かえっちなことに使えそう」とかはまったくぜんぜんこれっぽっちもおもっていません
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