お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第345話 現世はこの辺で一旦終了

「光を操る……そこまで分かったなら当然、対策もあるってことだよな!?」

「いやぁ……それが、ちょっと厳しいんスよねぇ……」

 

 ここまでの説明を耳にするや、痛む身体を動かしながら期待するように目を向ける。

 熱い視線が向けられているのを気配だけで感じながら、浦原は申し訳なさそうに軽く頬を掻いた。

 

「てか黒崎サン。光への対策手段を、って簡単に言いますけど、まさかアタシに『ブラックホールを作れ』とか期待してます? その方法なら確かに光だってなんだって吸い込みますけど……」

「そこまでの事は言ってねぇよ! そうじゃなくて……!! 鬼道とか、なんか手段はあるだろ!?」

「例えば、黒棺とかですか?」

「そうそう!」

 

 重力の奔流を生み出して敵を圧殺する黒棺の鬼道は、原理としてはブラックホールと似たようなものだ。であればアキュトロンの光の能力に対抗できるかもしれない。

 そう考える一護であったが、浦原は首を横に振る。

 

「残念っスけど、とても実用的じゃありませんね。相手が能力を四六時中ずっと使っているのならともかく、上手いこと混ぜ込んでいますから。怪しいと感じるその度に使ってたら、あっという間に霊圧スッカラカンになりますって」

「な、なら……」

「ですけど、光の対策ならサングラスとかどうです? お安くしておきますよ? 正確には遮光グラスなんスけどね。ほら、例の金環日食騒動で一儲けしようと思いまして――」

「知らねえよ!! てかなんで、そんなモン持ち歩いてんだよ!?」

「あらら、そりゃ残念」

 

 ただの太陽光ならともかく、相手にするのは滅却師(クインシー)が能力で操る光だ。遮光グラスを掛けたところで気休め程度だろう。

 懐から取り出した、厚紙にフィルムを貼り付けただけのような安っぽい遮光グラスを片手に、わざとらしく肩を落としながら浦原は内心次の手をどうするか考えを巡らせ、ふと気付いてアキュトロンを見る。

 

「……しかし、アタシらがこうやって馬鹿な話をしてるってのに、全然動こうとはしないんスね……いや、こっちが言う事じゃないとは思うんスけど。けど、弱っている相手にトドメを刺すって、基本だと思うんスよ。それに今みたいに、能力をベラベラ解説されるのって結構困りません?」

「その通りだな。機会があれば、迷わずそうしていた」

 

 その問いかけに、一護と浦原の二人に銃口を向けながら。けれども引き金に掛けていた指を少し浮かせながら首肯してきた。

 

「だが特記戦力二人を相手にして、どちらかだけに意識を分散させるような無謀は犯さん。特に浦原喜助、貴様が相手となればなおさらだ」

「アタシっスか?」

「下手に動いて今の均衡を崩せば、貴様は確実に裏を掻いてくる。どうせ、こうしている間にも頭の中で場を引っかき回す算段を立てているのだろう? ならば必要なのは、堅実な手段。それが私が導き出した(かい)だ」

「はぁ……なんだか知らない間に、随分と高く評価されちゃってるみたいっスねぇ……」

 

 気落ちしたような演技を見せながら、浦原は胸中でも「やりにくい……」と零す。

 最初、敵が言っていたのは「尸魂界(ソウルソサエティ)への侵攻中」と「黒崎一護の足止め」の二つであり、どうやら相手はそれを忠実に実行しようとしている。

 

 だから、相手は無理をせず堅実な手段を選んでくる。

 効果は小さくても確実に効果を発揮する戦術を用いて、可能な限り手の内を見せようとしない。死神達が解析するであろう情報を、少しでも少なくしようとしている。

 自分の力を誇示するように大技を連発しながら、次々に攻めてくる相手の方がよっぽどやりやすいだろう。

 相手の癖や、動作の起こりなどを観察しても、それが「正しい情報なのか?」という疑念が常に付き纏う。

 

「……とはいえ、ここでボーッと遊んでいるわけにも……うっ……!?」

 

 とはいえ自分のやることは、相手の観察と分析。それらの情報から対応策を死ぬほど用意すること。

 動きだそうとしたところで、浦原もまた肉体の猛烈な不調を感じ始めた。

 手足が重くなり、意識が途切れそうになるのを気力で必死に堪える。

 

「ぐ……こ、これは……」

「浦原さん!?」

「どうやら……黒崎サンと同じ症状みたいっスね。あはは、こういうのも兄弟って言うんでしょうか?」

「ンなこと言ってる場合かよ!」

「……ようやく効いてきたか」

 

 不調を見せ始める浦原の様子に、毅然とした表情を崩さぬままアキュトロンは「やっとか」とでも言いたげに呟いた。

 

「けど、不思議っスね……? カラクリに気付いてから、ですけどアタシは、別に、アナタを……見ちゃいませんけど……」

「知っている。一見、私を見ているように見せかけながら、巧みに光を視界に入れない様に心がけていた事もな。だが視線を逸らしたり、遮光グラス程度で破られるほど惰弱な能力ではない……その程度は当然認識していると思っていたが?」

「あはは、こりゃ申し訳ありません。何分(なにぶん)、準備の時間が足らなかったもので……」

 

 こうやって話をしている間にも、浦原は視覚から飛び込んでくる光を可能な限り抑えようとしてる。だが相手も、その程度は計算済みだったらしい。

 考えてみれば、何もアキュトロン本人から馬鹿正直に光を放つ必要もない。

 別の角度から放っても良いし、そうでなくとも街中には反射物が山ほどある。それらを駆使しながら、目でも追いきれぬほどの速さで明滅を繰り返して、ゆっくりと術中に嵌めていったのだろう。

 

「特記戦力といえど、神の……いや、陛下の威光の前には膝を屈し魂魄までもが焼かれるということだ。さて、その無様な状態でどこまで私の裏を掛ける?」

「あれ……? 足止めだけって話じゃぁ……」

「足止めが主任務だが、特記戦力の抹殺という命を放棄した覚えは無い」

 

 拳銃を構え直そうとする相手の姿に、遠慮がちに提案する。

 だが返ってきたのは強い殺気だ。

 

「不調となった相手だけならば、多少は冒険するのも当然だろう?」

 

 唇を微かに歪めて笑いながら、銃口から神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)を放つ。

 

「ボ、ボクが先っスかぁ!? 特記戦力って言うなら、黒崎サンだって……!!」

「おい!」

 

 情けない悲鳴を上げながら、絶不調に落ちつつも、それでも浦原は初撃を何とか避け……そこでアキュトロンの姿が消えている事に気付く。

 

「あ……!」

「どちらも脅威だが、あえて順位を付けるとすれば貴様が優先だ! 浦原喜助!」

 

 能力にて身を隠し、あたかも瞬間移動をしたように現れる。

 出現した場所は、浦原が回避を行った方角だ。

 完全に誘い込まれたことで浦原は小さく悲鳴を上げ、アキュトロンは強い感情を込めながら引き金を引く。

 再び放たれた神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)の光に浦原の身体が飲み込まれたのを確認しながら、アキュトロンは小さく息を吐いた。

 

「あ――ぶな……かった~~……」

「携帯用義骸、だったか?」

「もうバレちゃいました、か……」

 

 相手のお株を奪うかのように、全く別の場所から浦原は姿を現すものの、その表情は苦々しい。

 発作に苦しめられながらも、余裕のない状況を携帯用義骸を囮にしてやり過ごす。あわよくば反撃を……と思ってたのだが、完全に見切られている。

 そうやって浦原を相手にしながらも、一護への警戒も怠っていない。

 

 どうしたものかと策を練り直そうとしたところで、アキュトロン目掛けて明後日の方向から霊圧が放たれた。

 だが、その攻撃など「最初から知っていた」と言わんばかりに、身体を軽く捻って易々と躱す。

 放たれた霊圧が完全に通り過ぎるのを待ってから、アキュトロンは納得したように口を開く。

 

「なるほど、今の動きは仲間を呼ぶためか。だが、段取りが悪いようだな?」

「いやぁ……別に、呼んだわけ、じゃないんスけど……」

 

 ちらり、と浦原とアキュトロンは揃って視線を動かす。

 その先には茶渡とネリエル、そして九条の三人が並び立ち、アキュトロンを目掛けて敵意を放っている。

 

「大丈夫か……」

「さすがにもう……黙ってみてられないわ」

「何かあったら、遠慮無く頼む――そう言ってただろう?」

 

 遠目からとはいえ、アキュトロンの実力を目にしてた弊害だろうか。

 三名とも口ではそう言うものの、僅かに気後れしている様に見える。

 

「そこの破面(アランカル)と死神は例外として……黒崎一護の友人よ。お前は何故この戦いに参加する? 黙って見ていれば、死ぬことは無いのだぞ?」

「決まっている。一護の為だ」

「……そうか。ならば私も陛下の為に、貴様を殺すとしよう」

 

 アキュトロンは神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)を放つ。

 

 

 

 

 

 

「黒崎くん、待ってて。今すぐ、治すから」

 

 茶渡とネリエルが前線に立ったのと同じ頃。

 密かに一護を回収した織姫は、自身の能力を発動させて治療を始める。

 

「すまねぇ……くそっ……」

 

 座り込んだ状態の一護は、織姫の言葉に頷きながら茶渡たちを心配そうに見つめる。

 アキュトロンの問いかけに「一護の為だ」と口にしていたように、彼らは一護を回復させるまでの間、引きつけておくための役割を買って出ていた。

 三人が陽動、織姫が援護。

 最大戦力を立て直し、起死回生を狙う。そう考えての行動だ。

 

 ただ、石田だけは動かなかった。

 未だに滅却師(クインシー)と仲間たちとの間で気持ちが揺れ動き、腹を決めかねているようだ。

 離れた場所で悩み続けている石田の様子を、一護は視界の端に捉えながらその気持ちを慮る。

 

 ……ペッシェとドンドチャッカ? 木の陰に隠れて応援しているよ。コンと一緒に。

 

「――私は拒絶する」

 

 僅かに緊張を孕みながら、織姫は拒絶の能力を発動させる。

 今まで、何度も仲間たちの怪我を治してきたが、今回は少し毛色が違う。

 一護が今苦しめられているのは、体内の不調。神経の乱れによって生じた発作だ。

 拙い知識とはいえど、それらを理解している織姫は興奮を抑えるように意識しながら、今まで以上に慎重に集中しようとして――

 

「よっ、一護」

「……えっ!?」

 

 突然真横に現れ、暢気に片手を上げながら挨拶する一心の姿に目を丸くした。

 

「おや――」

「しーっ」

「――……!?!?」

 

 遅れて一護も気づき声を出そうとするが、それより先に一心の手が伸びてきて物理的に口を塞がれる。

 その数秒後。

 二人が落ち着いたと判断したところで、一心は手を放しながら恨みがましそうに呟く。

 

「おーおー、織姫ちゃんに献身的に介護してもらって、羨ましいなコノヤローが」

「……何しに来たんだよ」

「お前な。これだけの霊圧を放ってたら、馬鹿だって気付くぞ? ましてや相手は滅却師(クインシー)だ。様子くらいは見に来て当然だろうが」

 

 遠くでアキュトロンと戦いを続けている浦原たちをちらりと見て、軽く舌打ちすると一心は真面目な表情を向ける。

 

「んで、大体の事情も察した。けどま、あのくらいの相手なら大丈夫だ」

「…………」

「不貞腐れてんじゃねえよ。わざわざ、とっておきを教えてやろうってのに」

「とっておき、だと……?」

「ああ、とっておきもとっておきだ。つっても、俺にゃ出来なかったんだけどな」

 

 "とっておき"という言葉に一護は珍しく素直に驚きながら、期待するような眼差しを見せる。

 一心もまた、息子の反応にニヤリと笑う。

 

「一度しか言わねえから、良く聞けよ……あ、織姫ちゃんはそのまま一護(コイツ)の治療を続けて」

「あ……はい……」

 

 

 

 

 

 

「悪ぃ、チャド。ネル。九条。浦原さん。待たせちまったか?」

「いやぁ……なんとか生きてますんで、ギリギリセーフですかねぇ……?」

 

 織姫の治療を受け、一護は再び戦場へと舞い戻る。

 だがそこは、燦々たる有様となっていた。

 離れていたのは十分(じゅっぷん)にも満たない程度だが、全員がそれぞれ大小の傷を負っている。

 一人も戦闘不能になっていないのが、不幸中の幸いというところか。

 おそらくは浦原が巧みに戦況をコントロールした結果と思われる。 

 

「黒崎一護……だが、少し様子が……? ああ、なるほど。治療を受けたか。だが同じ事、またすぐにでも膝を着かせてやろう」

 

 一方、アキュトロンは再び姿を現した一護を油断なく見据える。

 先ほど発症した症状の影響など微塵も無いかのように立ち塞がるその姿は、数分前まで為す術なくフラついていた相手と同一人物とはとても思えなかった。

 だがそれを「織姫の能力で何度でも治してもらえる余裕から」と判断する。

 故にその余裕を打ち砕かんと、強烈な光を目に見えぬ速度で明滅させ始めた。

 

 目で捉えられず、霊圧知覚すら誤魔化すほどの光。

 放たれているかすら感じ取ることの難しいそれを、一護は肌で感じながら意識を集中させ始める。

 

 ――血液を意識する……血管の中、血が流れるのと同じように霊子を流す……

 

 思い返すのはつい先ほど、一心から聞かされた"とっておき"の内容。それらを心の中で反芻しながら、同時にぶっつけ本番で実践していく。

 失敗するのでは? という不安は、微塵も無かった。

 

 ――こいつはな、母さんが得意だった技だ。

 

 教えられた"とっておき"。

 その講義の最後に、たった一言。オマケのように付け足された言葉だが、その一言が一護に無限の自信と信頼を与えてくれた。

 

 ――だったら……俺が失敗するわけにゃ行かねえよなぁ!?

 

 心の中で叫び声を上げると、斬魄刀を握りしめながらアキュトロンへと斬りかかる。

 

「馬鹿な! これは……」

 

 襲いかかる一護の姿を見ながら、アキュトロンは驚嘆していた。

 発症させるだけの光は、既に放たれている。先ほどまでの手応えからすれば、確実に影響が出ているはず。

 だが今の一護からは、そんな様子は毛ほども感じ取れなかった。

 その代わり、まるで発症の代わりだとでも告げるかのように、一護の肉体に青い紋様が浮かび上がっている。

 

血装(ブルート)……! 静血装(ブルート・ヴェーネ)だと……!?」

 

 それは、アキュトロンら滅却師(クインシー)ならば当然の様に目にするものだった。

 術者の防御力を飛躍的に向上させ、あらゆる攻撃や害への耐性を獲得させる能力。

 血装(ブルート)を操る一護の姿に、アキュトロンは目に見えて平静さを失う。

 

 ――こうならないために、黒崎一護に情報を与えぬように、滅却師(クインシー)としての技術は可能な限り使ってこなかったというのに……どこで知った!? 学んだというのか!! この短時間で!?

 

「おらあっ!」

「くっ……!!」

 

 心の中で逡巡する間に、一護はもう目前まで迫っていた。

 凄まじい速度で振り回された斬魄刀の攻撃を回避しようとするも完全には避けきれず、肩から胸元までを浅く切り裂かれてしまう。

 

 ――アレは静血装(ブルート・ヴェーネ)だ……攻撃力は変わらないはず……ならばどうして、最初に見たときよりも刃が鋭い……!? 血装(ブルート)を覚えたことで単純な霊圧も強くなったとでもいうのか……!? 馬鹿な……そんな馬鹿なことが……いや、まさか……!!

 

「使うべきか……? 滅却師完聖体(クインシー・フォルシュテンディッヒ)を……」

 

 そこまで考え、アキュトロンは仮説を立てる。

 黒崎一護が特記戦力と呼ばれているのは、未知数の【潜在能力】の為だ。

 一つを能力を覚えることで、連鎖してくように別の能力までもが開花するかもしれない。

 

 ならばこれ以上手が付けられなくなる前に、全力を以て叩き潰すべきか――そこまでを脳裏に浮かべた瞬間、彼は片手を突然耳元へとやった。

 

「……なに!?」

「……あん?」

 

 一護へと注意を払いながら、だが片手で耳を抑えながら意識の大半をそちらへとやっているその姿は、一護にもなんとなく見覚えがあった。

 それはまるで、イヤホンで音楽を聴いてる時や街中で通話をしている時に、流れてくる音や声を必死で聞き取ろうとしている姿によく似ている。

 

「しかし……! そうか、わかった……」

 

 誰かと通話をするようなアキュトロンの姿から、その連想は正解だったと判断する。

 死神だって伝令神機や天挺空羅を利用してやり取りをするのだ。同じような技術が滅却師(クインシー)にあっても不思議ではない。

 

 通話を終え、未練がましく一護を一瞥するものの、それ以上手を出す事は無かった。

 突如として空間に生み出された影がアキュトロンの身体を包み込んだかと思えば、その姿を一瞬にして完全に消してしまった。

 

「……な、何だったんだ……? 逃げた……? いや……」

 

 飾燈(ザ・ネオン)の能力で姿を誤認させたのではない。

 ただ、霊圧も気配も痕跡も感じられないことから「敵が退いた」ということだけは理解出来た。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

「一護!」

「お前ら! もう、大丈夫なのか!?」

 

 戦いが終わった気配を感じとったらしく、茶渡やネリエルが駆け寄ってくる。

 それを見た一護は、完全にスッキリとはしないまでも、今は持ち込むべきでは無いとばかりに彼らの様子を伺う。

 

「ああ、応急処置程度だが井上が治してくれた」

「あの子、凄いわねぇ……」

「望実! お前、無事か!?」

「当然だ。動くくらいなら、問題は無い」

「いやいや黒崎サン、助かりましたよ。アタシもまだ身体が辛くて辛くて……」

 

 お互いにそれぞれの無事を確認し合う中、浦原はアキュトロンが消えた空間を見つめる。

 

「しかしあの方、何で帰っちゃったんでしょうかね? 多少不利になったとはいえ……何か緊急事態でも起きたんでしょうか? ああ、時間稼ぎが主目的だったんスから、稼ぎ終えたとか? でなけりゃ、何か制限時間があるのかもしれませんね」

「それもそうだけどよ。あの影で消えたのもよく分かんねぇ……あんな風に移動が出来るって事だろうけど……」

 

 頷いて同意を示してから、続いて一護は近くにいたネリエルへと目を向ける。

 

「けど、それは後回しだ。あんなのが山ほど攻めてきてるんだろ? 出遅れちまったけど、当初の目的通り俺たちも尸魂界(ソウルソサエティ)に行くとするか!」

「うん!」

「ああ」

「アタシもご相伴にあずかりましょうかね」

 

 そう告げる一護ネリエルたちは勿論、織姫や茶渡、浦原も同意する。

 ただ、九条らは現世に残ると告げる。空座町を守る立場にあるため離れられないからだ。

 

 そして――

 

「俺は行かねえ!」

 

 声を張り上げながら、一心が自信満々に反対意見を口にした。

 そのあまりにも堂々とした姿に、一護は思わず頭を抱える。

 

「……親父」

「馬鹿もん! 俺に遊子と夏梨を置いて行けってのか!?」

「う……いや、けどよ……」

「それに、またあのオッサンが攻めてきたらどうする!! そうでなくても(ホロウ)が大群で暴れ出すのかもしれねえんだぞ!! 空っぽにするわけにゃ行かねえだろうが!!」

 

 言われてみればまあ、正論であり、一護は返す言葉に詰まる。

 

「……それによ、ちょいと付き添わなきゃならねえ……かもしれねえ件もあるからな」

「付き添い?」

「ん」

 

 顎をしゃくり上げながら、視線を促す。

 その先には、所在なく申し訳なさそうな様子の石田雨竜がいた。

 それだけで一護は、一心が何を言いたいのかを察する。

 

「……黒崎」

「石田……ま、仕方ねえよな」

 

 先ほどの戦いに不参加だったことも含め、何と告げるべきかを悩んだままの雨竜に向けて、一護は「気にしていない」とばかりに明るい態度を取ってみせる。

 

「死神を助けに行くってだけで、あんまりいい顔はしねえだろうし……なにしろ同じ滅却師(クインシー)と敵対するかもしれねえんだ。無理に来いとは言わねえよ」

「…………」

 

 未練を断ち切るように、そして雨竜へと余計な気を遣わせないように。

 一方的にそこまで告げると、一護は背を向ける。

 

「……けどよ。気が変わったら何時でもいいぜ……待ってるからよ」

「……ッ」

 

 背を向けたまま、そっと語られた言葉に雨竜は動きを止める。

 その肩を、一心は優しく叩いた。

 

「今回のことについちゃ、お前さんの親父にも話を通しておくべきだからな。そりゃ、一護とは一緒に行けねえよな……アイツもその辺は分かってんだ。ま、察してやってくれよ」

「…………はい」

「それと、怖かったらオジサンも一緒に行ってやるから安心しろ! 竜弦とは顔見知りだからな」

「僕は子供か! 結構です!!」

 

 雨竜の的確なツッコミを背景に、一護たちは穿界門(せんかいもん)を通り尸魂界(ソウルソサエティ)へと向かう。

 




早い話が「一悶着あったけど、大体のメンバーが五体満足で尸魂界に行くよ」ってだけなんですよね……

●この辺りの話の時間について。
ロバートが来たのは、侵攻開始からある程度経過後。
ロバートのお帰りは、陛下たちの撤退と同じくらい。

●ロバートの撤退理由
その辺の詳細理由は、のちのち。
(プロット通りに進められたら、レッツパーリィ(戦国BASARA)的な何かが原因)

●一護が血装に目覚める
元々才能の塊みたいなものですし。
そこに「かーちゃんの得意技」とか言われれば、一瞬で完全に使いこなすって私信じてる。

(山本の炎とかも耐えるので、状態異常系も静血装で防げるはず多分)

●金環日食
2012年5月の出来事。
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