お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第346話 共同反撃

 視点は再び尸魂界(ソウルソサエティ)へ、時間は滅却師(クインシー)たちが死神たちと死闘を繰り広げている時へと再び戻る。

 

 

 

 

 

「……チッ! やりにくいったらありゃしねえぇ!!」

「その言葉、そっくりそのままお主に返してやるわ!!」

 

 (ティー)聖文字(シュリフト)――"雷霆(ザ・サンダーボルト)"の能力を持った滅却師(クインシー)、キャンディス・キャットニップは口汚く悪態を吐いた。

 その言葉に、四楓院夜一はキャンディスの顔面へ向けて拳を放つものの、それは相手の身体を僅かに掠めただけに終わる。

 

「……またか……やりにくいのぅ……」

 

 空振りに終わった拳へと一瞬だけ視線を落としながら、しかし夜一は悔しそうな様子を見せることはなかった。

 夜一が放ったのは、瞬鬨にて背中に雷を纏った状態での一撃だ。

 持ち前の速度で放たれたそれは、掠っただけでも相手へと鬼道が叩き込まれる。

 

「ぐ……っ……! いってぇ……んだよ!! なんだよその雷は……」

「ふふん、いいじゃろ?」

 

 頬を掠めた拳から雷の鬼道が流れ込み――本来の威力にほど遠いとはいえども――瞬鬨が発動する。

 受けたダメージに苦しめられながらも、キャンディスは夜一を「キッ!」と睨みつける。

 

「ってかテメエ! 死神なら斬魄刀を使え! 卍解をしろ!!」

「嫌じゃ!」

 

 相手を小馬鹿にするような表情を見せながら、夜一は「べー」と舌を出す。

 

「何を使って戦おうが、儂の勝手じゃろ。そもそも卍解が奪われるっちゅう連絡はとっくに受けておるのに、なんで使わにゃならんのじゃ……」

「……チッ」

「大体お主も雷を操って戦っておるじゃろうが……」

 

 キャンディスが二番隊の担当地域に出現してから、すでにある程度の時間が流れている。

 だがその間ずっと、彼女は夜一に押さえ込まれ続けている。

 運の悪いことにキャンディスが出現した場所は夜一が一足飛びで駆け付けられる程度の距離しか離れておらず、即応されていた。

 捨て駒として利用された破面(アランカル)も現れてから数秒で夜一に制圧され、僅かな傷跡を残すのが精一杯という有様。

 

 なので、ぶっちゃけ二番隊全体で見ても結構余裕があった。

 他の隊士たちが周囲に応援に行くくらい余裕があった。

 夜一だけでキャンディスの動きを封じておけるくらい余裕があった。

 単純な肉弾戦だけを比較しても夜一の方が一枚も二枚も上手だ。しかも瞬鬨で雷を操るだけあってか、同じ雷を使う相手との戦いはお手の物らしい。

 とはいえ、決して楽観視が出来る相手ではない。

 キャンディスの強さを肌で感じながら、雷の速度で動く相手を確実に仕留めるべく、慎重に戦いを組み立てていく。

 同時に、戦局を動かす一手を待ちながら。

 

「……まさかとは思うが、その挑発で儂が卍解を使うとでも思っておったのか……?」

「…………」

 

 キャンディスが視線を逸らすのを見て「阿呆が……」と夜一は胸中で嘆息する。

 と、そこに――

 

「夜一様!」

「おお、やっと来おったか隊長殿!!」

 

 集まっていた北門から距離があったので多少時間が掛かった物の、砕蜂が戦場へと躍り込んできた。

 ようやく現れた、この状況を大きく動かせる相手の姿に、夜一はニヤリと笑う。

 

「道中、報告は受けておるかもしれんがの。他の者たちは各地の戦場に散らばっておる。儂は今、この痴女を押さえ込んでおるところじゃ」

「痴女だぁ!? テメエに言われたくねえんだよ!!」

 

 胸元を強調したヘソ出しノースリーブにショートパンツ、長手袋とブーツという露出度の高すぎる改造軍服の女性が、両肩と背中が剥き出しの装束を付けた女性へと怒鳴る。

 

 ……うんまあ、二人とも相手をそう呼んでも仕方ないかな……

 二人とも非常にナイスバディでエロい格好をしていて、目の毒というか目の保養というか……

 

「……あー、そういうわけじゃから攻撃を任せるぞ隊長殿」

「お任せ下さい!! 卍解……」

「待て待て待て!」

 

 意気揚々と斬魄刀を引き抜いた砕蜂の姿に、夜一は大急ぎで待ったを掛ける。

 

「忘れたのか! こやつらは卍解を奪うと連絡があったじゃろ!!」

「……ッ!!」

 

 ――あの挑発、案外有効だったのかもしれんの……

 

 心の中だけで頭を抱えながら、夜一は砕蜂に瞬鬨で戦うように指示する。

 多少、先走りする面はあるものの、隊長格が二人掛かりでの相手である。

 

「ヘッ……! テメエら纏めてブチ殺してやるっ!!」

 

 キャンディスは僅かな焦りを感じつつ、特大の雷を放った。

 

 

 

 

 

 副隊長一人で耐えていたところへ、隊長が加勢に来る。

 一見すれば心強く感じられるが、それは常に当てはまるわけではない。

 戦いには必ず相性が付き纏う。

 

「どうしたよ!? 二人揃ってもその程度かぁ!?」

「ぐ……ぅ……っ……」

 

 バズビーの猛火に晒されながら、雨貝は苦痛の呻き声を上げていた。

 

「そっちの副隊長サマも、卍解が奪えなかったのは残念だったけどな! けどこれなら、むしろ奪わなくて正解だったってわけだ!!」

「言って、くれるね……」

 

 そしてもう一人、卍解を発動させてなおローズは後手に回っていた。

 星章(メダリオン)による卍解強奪を免れてこそいたものの、金沙羅舞踏団はバズビーを相手にするにはお世辞にも効果的とは言いがたかった。

 

「負け惜しみに聞こえるかもだけど、君が相手じゃなければかなり便利なんだよ!!」

 

 そう叫びながら、ローズは金沙羅舞踏団の新たな演目を奏でた。

 数十体にも及ぶ金色の人形たちが流麗な動きを見せながら攻撃を仕掛けていく。だがその動きは、どこかぎこちない。

 まるで錆び付いた歯車を無理矢理動かすように、本来持つはずの精細さを欠いている。

 

 金沙羅舞踏団は音楽を操り、それを聴いた者に幻覚を見せる卍解だ。

 だがその幻覚はただの幻覚にあらず、現実に影響を与えるほど強烈な幻覚。

 幻覚の中で焼かれたと思えば肉体が焼け焦げ、洪水が起きたと思えば全身が水中に絡め取られたと本気で思い込んでしまう。

 それはすべて、心を奪うほど素晴らしい音楽を耳にすることで起こるものだ。

 

 逆に言えば、音を聞けない者。もしくは奏でられたのが陳腐な音であれば、金沙羅舞踏団は本領を発揮できない。

 鼓膜を潰すことで音を強制的に遮断したり、音の震動を外部から変化させることで、対処は可能となってしまう。

 

「……君とは芸術センスが合わないみたいだね」

「そうかぁ? 音楽性の違いだろ……こんなヤワな音楽じゃあ、全然燃えねえんだよ!!」

 

 禍々しい笑みを浮かべながら、バズビーは二本の指先から炎を放ち振り回す。

 その炎は金沙羅舞踏団の人形たちを貫てなお勢いは衰えず、周囲の建物や空気までもを燃やしていく。

 

 高熱が景色を歪ませるように、音もまた熱の影響を受けて変化する。

 音域のほんの僅かな違いが不協和音を生み出して、心を奪うほどの名曲を駄作へと変えてしまうように。

 ローズが奏でる音は、バズビーの放つ高温の前に苦戦を強いられていた。

 

「となると、隊長に期待したいところなんだけど……」

「はは、面目ない……」

 

 雨貝の斬魄刀もまた炎熱系だ。金沙羅舞踏団の音を邪魔する恐れがある。

 ならば純粋に炎で勝負というのも、卍解が奪われる恐れがあるため二の足を踏む。

 

「ボクが頑張らなきゃダメってわけだ」

 

 三番隊の苦戦は続く。

 

 

 

 

 

「相性って、あるんだよねぇ……」

 

 (アイ)――"鋼鉄(ジ・アイアン)"の聖文字(シュリフト)を持つ滅却師(クインシー)蒼都(ツァン・トゥ)と対峙しながら、京楽は辟易していた。

 

 八番隊の担当区域へ向けて京楽が急ぐ最中、蒼都(ツァン・トゥ)は行く手を遮るように進行方向から現れた。

 敵の動きと霊圧知覚から察するに、八番隊担当の地域で暴れていたところ、京楽の霊圧を感じて優先順位を変更し、襲いかかってきたようだ。

 自分の部隊の負担が軽くなったことに安堵するも、すぐにそれが甘い考えだと知る。

 

 相手の能力は「身体を鉄のように硬化させる」という、至極単純なもの。

 ただ、単純なだけに対処が厄介なのもまた事実だった。

 

「……よっ!」

「……」

 

 高所から斬撃を放つものの、蒼都(ツァン・トゥ)は素手で斬魄刀を受け止め、反撃の蹴りを放つ。

 

「参ったねこりゃ……」

 

 その攻撃を飛び退いて躱しながら、京楽は被った笠を軽く上げる。

 笠の下の表情は、七面倒くさいという感情を隠そうともしていないものだった。

 

 ――嶄鬼(たかおに)でこれだけって、ちょっとズルいんじゃないの?

 

 斬魄刀の一撃を受け止めながら、赤い線を微かに浮かべる程度の変化しか見せない敵の姿に、そう泣き言を口にしたくなるのをグッと堪える。

 

 子供の遊びを現実の物とする花天狂骨の能力ならば、身体を硬化させる相手には有効……そうなるはずだった。

 だが最初の遊びの影鬼(かげおに)にて放った一撃を、蒼都(ツァン・トゥ)は平然と受け止めて見せた。

 続く嶄鬼(たかおに)による高所からの一撃も、今し方防がれたところだ。

 これが艶鬼(いろおに)――宣言した色を攻撃する遊びならば、蒼都(ツァン・トゥ)の防御力を突破できるかもしれないが……

 

 ――まさかね。

 

 硬化の能力一つで、全てを強引に押し切られるのではないだろうか?

 そんな考えが浮かび、弱気を振り払おうとすれば、それを見越したかのように鋭い蹴りが放たれた。

 

「おわっと!」

 

 下がりながら蹴りをを避けるものの、蒼都(ツァン・トゥ)の攻撃は止まらない。

 流れるような動きで拳や蹴りを続けざまに連続して放ちながら、京楽を追い詰めていく。

 

「ふん!」

 

 蒼都(ツァン・トゥ)の両手の鉤爪の攻撃を、京楽が大小二振りの斬魄刀でそれぞれ受け止めることで、攻撃がようやく止まった。

 一瞬の静止の時間が流れ、二人とも軽く距離を取る。

 

「見た目通りの戦い方なんだね……ボク、泣きそうだよ本当……」

 

 真面目で堅物の青年といった風体から受けるイメージに違わない蒼都(ツァン・トゥ)の戦い方に、思わずそう漏らしながら、霊圧知覚で遠くを探る。

 

 ――誰かに手伝って欲しいってのが本音なんだけど……みんな忙しそうだしねぇ……おや……?

 

 探すのは、他の隊長の霊圧だ。

 だが当然、手の空いている者などいるわけもない。

 その代わりというか、感じたのは破面(アランカル)の霊圧だった。

 

 藍俚(あいり)の危機と滅却師(クインシー)の侵攻を訴えるためにやってきた破面(アランカル)たち、その中でも弱い側から数えた方が早い霊圧が二つ、近くから感じられた。

 京楽は知らないが、それはロリとメノリのもの。

 二人は、自らの実力が十刃(エスパーダ)に劣ることを理解しながら、それでも少しでも役に立つべく聖兵(ゾルダート)と呼ばれる滅却師(クインシー)に狙いを絞り、暴れていたところだ。

 

 ――いやいや、それは流石に……

 

「……(ホロウ)に助けを求めるのか?」

 

 心の中で頭を振った瞬間、蒼都(ツァン・トゥ)が初めて口を開く。

 それはまるで、京楽の心を読んだかのような言葉だ。

 

「どうやら死神というのは、僕の想像を超えて恥知らずな存在だったらしい」

「あれ、ひょっとして……ボク煽られてる?」

 

 軽蔑するような眼差しの相手に向けて、京楽は不敵に笑う。

 

「でもさ、手段を選んでいられない状況だし……その手もアリかなって考えただけだよ。それに破面(アランカル)たちが来たのは、藍俚(あいり)ちゃんの人徳だからね。ボクに言われても困っちゃうよ」

「湯川藍俚(あいり)か……安心しろ。あの女は既に陛下が処理済みだ」

 

 

 

 

 

 

 

 京楽が「手を借りるのはちょっと……」と考えた相手――破面(アランカル)の一人、コヨーテ・スタークは、とある滅却師(クインシー)に手を焼いていたところだった。

 斬魄刀を帰刃(レスレクシオン)させ、両手の拳銃を相手へと向けながら尋ねる。

 

「……滅却師(クインシー)ってのは全員、お前みたいに無茶苦茶なのか?」

「あん? 何言ってんだテメーは。ボケてんのか」

 

 短めの金髪をした、一見すると小柄で可憐そうな少女。

 だが彼女は、スタークの問いかけに毒を含んだ言葉を返した。

 

 その口の中で、先ほどスタークが放った虚閃(セロ)の霊圧を咀嚼しながら。

 

「いや、どう考えも無茶苦茶だろうがよ。霊圧を喰う……ってのはまあ、そんな能力を持ってる奴もいる。けどそこまで直接的に喰うってのは……いない、わけじゃねえよな……いや、でもやっぱりおかしいだろ!? 滅却師(クインシー)ってのはどいつもこいつも霊圧を喰うのか!?」

「喰うわけねえだろ。頭腐ってんのか」

 

 "喰う"という能力に、かつての十刃(エスパーダ)仲間であるアーロニーロの喰虚(グロトネリア)をなんとなく連想してしまい、どうにも歯切れ悪い返事となってしまう。

 だが、まるで漫画のように口を巨大化させ、ギザギザ歯で霊圧を物理的に喰うその姿は、やはり無茶苦茶な物としか映らなかった。

 

「ところでよ……俺の霊圧って美味いのか?」

「全然。破面(アランカル)の霊圧って、ゲロみてえな味がすんのな。こんなマズ(マジ)ィもん、俺だって喰いたくねえよ」

「じゃあなんで喰ってんだ?」

「そりゃ、こうするためだ」

 

 そう言いながら、少女はスタークへと霊圧を放ち攻撃する。

 その攻撃を、スタークは必要以上に大きく距離を取って回避した。

 

「スターク! 今のって……!!」

「分かってるぜリリネット」

「ちっ……」

 

 一瞬のやり取りの後、三者三様の言葉が口にされる。

 

 少女が放ったのは、スタークの虚閃(セロ)そのものだった。

 まるでスタークがスタークへ向けて虚閃(セロ)を放ったような、それほどまでに見分けの付かない一撃。リリネットが驚き声を上げるのも当然のことだった。

 そんな二人のやり取りを見ながら、少女は忌々しげに呟く。

 

「……つまりこれが、お前の能力ってワケだ。霊圧を喰って、同じ能力を使える……ますますアーロニーロみたいだなお前」

「誰だよアーロニーロって。テメエらだけが知ってる名前を出してんじゃねえよ」

 

 (ジー)――"食いしんぼう(ザ・グラタン)"の聖文字(シュリフト)を持つ少女、リルトット・ランパードは、再びスタークに向けて虚閃(セロ)を放つ。

 

「そりゃ、悪かった!」

 

 響転(ソニード)にて瞬時にリルトットの背後に回り込むと、二丁の拳銃から虚閃(セロ)を放つ。

 回り込んだのは食いしんぼう(ザ・グラタン)の能力で奪われないようにするため、どれだけ巨大な口であっても絶対に喰われない角度と位置とを意識した攻撃だ。

 

 相手の強さは未知数だが、これならば確実にダメージは与えられるはず。

 そう考えたスタークの目論見は、けれども一瞬で崩された。

 

 リルトットの口がゴム製の鞭のように伸びており、そのまま背中へと続いている。

 一瞬にして背中に回り込んだ口は、スタークの放った二発の虚閃(セロ)をあっという間にかみ砕いてしまう。

 

「ゲロ味が二倍かよ……」

「う、うぇぇ……なんだコイツ……気味悪ぃな……」

 

 リリネットの変貌振りに、リルトットが……あ、間違えた。

 リルトットの変貌振りに、リリネットが思わず悲鳴を上げる。

 

「おいおい……やっぱり無茶苦茶じゃねえか……」

 

 

 

 

 

 

 

「死ねええぇぇぇっ!!」

 

 己に向けて放たれた巨大な虚閃(セロ)を、キルゲは飛廉脚(ひれんきゃく)にて避ける。

 そして、己に虚閃(セロ)を放った相手を目視すると、大きく溜息を吐き出した。

 

「……貴方ですか、陛下に手も足も出なかった破面(アランカル)風情が……」

「よぅ、志波。苦戦してんじゃねえか」

「グ、グリムジョーかよ! お前、なんでここに……!?」

「海燕殿、破面(アランカル)は一応味方だと先ほど連絡が――」

「いや、それは俺も知ってるけどよ。だからって、此処に来る理由が……まさか!!」

 

 だがグリムジョーはキルゲの言葉に一切の反応を示さず、海燕へと声を掛ける。犬歯を剥き出しにした凶悪な笑みを浮かべながら、ギラギラとした眼を隠しもしない。

 その姿に、海燕は最悪の可能性を思い浮かべた。

 

 かつて虚圏(ウェコムンド)にて二人は戦い、グリムジョーは海燕に敗れている。

 この混乱に乗じて、その時の雪辱を果たしに来たのではないか。という可能性だ。

 

「お前に負けた借りを返しに来た……って言いたいところだが……」

 

 海燕が危惧した通りの言葉を一瞬だけ口にすると、グリムジョーはその魔獣のような瞳をキルゲへと向け直した。

 

「まずはテメエからだ! あのユーハバッハって奴の影に隠れていた陰険野郎!!」

「愚かしい。(ホロウ)ならば(ホロウ)らしく死神を襲い、滅却師(わたし)に滅ぼされていればよいものを……いえ、むしろ丁度良いのかもしれません」

 

 クスクスと小馬鹿にしたように笑いながら、キルゲは星章(メダリオン)を掲げる。

 

「神罰を真っ先に受けられるのですから、光栄に思いなさい。卍解、白霞罸(はつかのとがめ)

「な……っ!!」

 

 キルゲの姿が、一瞬にして純白の装束へと変化した。

 頭髪までもが雪の様に白く変わり、認めるのは非常に腹立たしいものの、見た者が「美しい」と認めてしまうほどの威容を誇っている。

 

「下がって下さい!!」

 

 その姿を見た途端、ルキアは強く警告を発しながら、自身も大きく下がる。と同時に、全身を刺すような冷気が周囲の全てへと襲いかかってきた。

 身を斬るような寒さに身を震わせ、迫り来る冷気から逃れようと顔を腕で庇いながら、けれどルキアは小さく喝采を上げた。

 

「これなら……!」

 

 白霞罸(はつかのとがめ)は、範囲内の全てを一瞬のうちに凍らせる能力だ。

 その強すぎる冷気を迂闊に使えば、持ち主すら凍り付かせて粉々にしてしまうという強すぎるリスクを持っている。

 何も知らずに使えば、ただの自爆技にしかならない。

 そして相手の滅却師(クインシー)が、それらを知っているはずもない。

 

「……知っていますとも。冷気を放ち、周囲の全てを一瞬で凍らせる。情報(ダーテン)通りだ。前後で、身体を慣らさねばならないのも含めて」

「なにッ!?」

 

 聞こえてきたキルゲの声に、ルキアは目を見開いた。

 

「馬鹿な……あんな乱暴な使い方をしては、生きていられるはずが……」

「確かに強力ですが、強力すぎて持ち主すらも凍り付かせてしまう能力というのは、持ち主の死神が力を制御しきれない未熟者だからに過ぎないということ……どうやら私の方が卍解を上手く操れるようだ!!」

 

 冷気を切り裂くように現れたキルゲの姿は、当人の言うように何の損傷もなかった。

 どうやら欠点を理解しているというのは本当なのだろう。それどころか、欠点すら克服したとばかりの言動に思わずルキアは歯噛みする。

  

「はっ! それが、どうしたぁっ!!」

 

 冷気を真っ正面から受けたのだろう、全身を凍り付かせながらも、グリムジョーは帰刃(レスレクシオン)してキルゲへと飛び掛かっていく。

 その動きは、とても白霞罸(はつかのとがめ)の冷気で凍り付いてたとは思えない。

 

「使いこなせているんじゃねえ! テメエはただビビって小出しにしてただけだ!! んなタマ無し陰険野郎に俺様が負けるかよ!!」

「おのれ! どこまでも下品な(ホロウ)如きが……!!」

 

 死神達がかつて、虚圏(ウェコムンド)で見た時よりもずっと素早く洗練された動きを見せながら、グリムジョーはキルゲに攻撃を加えていく。

 

「今のうちだ! お前ら状況を立て直せ! 足らなきゃ四番隊に連絡だ!!」

 

 二人の戦いに注意を払いつつも、海燕は周囲の部下へと指示を出し始める。

 下手をすれば海燕の卍解まで滅却師(クインシー)に奪われかねないこの状況、グリムジョーの戦力はありがたい。

 死神としての矜持はあるものの、今は精一杯活用させてもらおうと決意する。

 

「……ただこれ……勝った方と俺が戦うってことだよな……?」

 

 戦いの決着が付いた後のことは一時的に棚に上げながら。

 




卍解を奪われなかった隊長たちも、それなりに描写を。
加えて破面(アランカル)たちが暴れる部分も含めて描写を。
(決着はともかくとして、最低限ある程度は抑えておかないと)

●キャンディちゃんの描写
この子、割と直情型のアホの子ですし……
(公式QAでも弱いと言われたらしいので)

(当初は「卍解を使わせるように誘った動きをしている、というのを夜一が見抜く」みたいな流れにするはずだったのに……なんでかアホの子合戦みたいに……)

●ローズの卍解って熱に弱いの?
「音の振動は温度に影響を受ける。気温が低いと音速は遅く、高いと早くなる」
なので、
「バズビーの高熱の影響で『本来の(理想とする)音を出せない(≒威力を出し切れない』ので効果が薄い」という感じ。

曲を聴かせる能力ですので、こういった外的要因でも曲が狂って、多少なりとも影響を受けるんじゃないかなぁと。
芸術なので「僅かな環境の違いが大きなブレに繋がる」みたいな、そんな感じの妄想です。

●サラッとだけ描写のロリとメノリ
この二人の戦闘力だと、仕方ないんです。
なので「この次からは破面(アランカル)側が加勢した戦いの場面になります」という前振りにしか出来ませんでした……

破面(アランカル)の霊圧を喰って「マズイ」と叫ぶリルトット
猛毒である(ホロウ)の霊圧を喰っているので、多分不味いと思います。
(能力で食べてるので無毒化してるとは思いますが、味の保証は出来ないイメージ)
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