お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第35話 色々新しくなりました

「湯川十四席、あなたを四番隊の第四席に任命します」

「……はい?」

 

 卯ノ花隊長の言葉を思わず聞き返します。

 

「聞こえませんでしたか? 第四席に任命する、と言ったのですよ」

 

 綜合救護詰所内に、同僚たちの拍手の音が響き渡りました。

 

 

 

 

 

 一体何が起こっているのか皆さんには理解が追いつかないと思うので、初めから説明しますね。

 

 まず、滅却師(クインシー)殲滅作戦は恙無(つつがな)く終了しました。

 最終的には山本総隊長が斬魄刀を始解して残って抵抗を続けていた滅却師(クインシー)たちを殲滅したそうです。

 これで生き残った滅却師(クインシー)は多くても数千人程度。生物学的に言えば、数世代で種の限界を迎えて勝手に滅ぶってところです。

 そのくらいにまで減ってしまえば、尸魂界(ソウルソサエティ)も問題ないと思ったのでしょう。生き残った滅却師(クインシー)たちに監視をつけることこそすれど、それ以上の手出しは無用という命令が下りました。

 

 ……私と戦った彼女たちは無事に逃げられたのでしょうか? それだけが心残りです。 是非とも生き延びていて欲しいですね。

 

 ともあれ、戦争は終わりましたので、そうなると生き残った者たちへの報償・恩賞が必要になります。

 だって命を賭けて戦ったわけですからね。ある程度のご褒美を出さないと下からの不平不満が物凄く突き上げてくるのも世の常です。

 なので現在、四番隊でもあの作戦に参加した死神たちに恩賞を授与していました。

 

 そしてどうやらその恩恵は私も受けられたようで、第四席まで出世することが……

 

 ……いやいやいや!! ちょっと待ってください!! 第十四席が第四席にまで!?

 

 今までのペースからすると考えられないくらいの上がりっぷりなんですけど!?

 こう、ボーナスをちょっと貰う、とかその程度だと思ってたんですけど!?

 

藍俚(あいり)殿の同僚はもう十四席どころの騒ぎではござらんほどに出世しているので、このくらいはむしろ当然かと……』

 

 射干玉! ちょっと黙ってて!!

 

「あの、隊長……」

「なんですか?」

「私、そこまで活躍した覚えはないのですが……何かの間違いでは?」

 

 私がしたことなんて、普通に最前線一歩手前の救護テントで怪我人を治してただけです。砲煙弾雨の間を駆け巡り戦っていた死神たちならまだしも、安全な場所にいた者がそれほどの評価を受けるというのは……

 いえ、出世できるのはありがたいとは思いますが、それでも上がりすぎなのではないでしょうか?

 

「間違いではありませんよ? あなたは先の戦いにおいて、立派に任務を務めましたから」

 

 立派に、ですか? 身に覚えが……

 

「それだけではありません。天幕を強襲してきた滅却師(クインシー)の一団を前に、こちらの被害は一切無しで追い返したそうではありませんか。曳舟隊長や、あの場にいた他隊の席官からも報告は上がっていますよ」

 

 あ、そっちはなんとなくわかります。

 

「いえ、あれはそんなに大したことでは……」

「湯川班長……あの、差し出がましいのですが、最前線の天幕ですよ? 私たちそこから生きて帰ってこれたのは班長のおかげです」

「そうですよ! 大怪我した人たちをたくさん治療したじゃないですか!!」

「あの襲われた時、俺もう駄目だって本気で思ったんです!! あんな強い連中なんて無理だって!! 班長がいなかったらどれだけ犠牲が出てたか分かりませんよ!!」

 

 あの時、最前線で同じ班員だった子たちがそう言ってくれました。

 

「……え? あれが? ……卯ノ花隊長、そこまで強い相手だったんですか……?」

「ええ。私は直接相手をしていないので分かりませんが、曳舟隊長の言うことには、最低でも副隊長クラスの実力がなければ危険だったということです」

「そう、なんですか……?」

 

 ……どうやら私が撃退した滅却師(クインシー)たちはかなりの強者だったようです。

 

藍俚(あいり)殿、ご自身の中の物差しがブレブレのようで……これは修正必須でござるよ! 修正パッチはよ!! アプデはよ!! アプデしたらまたバグが!! なんでアプデの度にナーフされるでござるか!! 運営はユーザーのことなんて全然考えてないでござる!!』

 

 はいはいそうね侘び石配るわね。

 

 でもそう言われれば、なんとなく納得です。

 無人の拠点に攻めるわけじゃないのですから、誰かが守っていると想定するのは当然。その守りを突破する以上は相応の実力がないと、普通は無理ですよね。

 つまり、決死隊に選ばれてなおかつその任務を成功させられるはずだと見込める程度には強かったようで。

 

 さらに話を聞いたところ、なんでも、あの時に天幕にいた怪我人たち――あの人の中には他隊の上位席官もいたとか。

 そして彼ら曰く、あの滅却師(クインシー)たちが襲ってきた時、情けない話だが自分では仮に完調状態であっても勝てなかっただろう。あれだけの強さを持った死神(わたし)が、下位席官でいるのはおかしい。

 そういったことを、卯ノ花隊長や上層部に申請したそうです。

 

 どうやら彼女たちは、下手に前線に出てきた滅却師(クインシー)たちよりもよほど強かったようです……全然知りませんでした。

 

「――以上が主な理由ですが。まだ必要ですか?」

「い、いえ。ありがとうございます」

 

 そんな理由を教えていただきましたが、個人的にはさっぱり実感が湧きません。

 だって毎月、隊長に殺されかけているんですよ? そんな私が上位席官だなんて! それも第四席だなんて!

 なにより……!!

 

 あの戦い、卯ノ花隊長の稽古よりもずっと楽だったのよねぇ……なのにこんな厚遇でいいのかしら……?

 

「湯川藍俚(あいり)、第四席を謹んでお受け致します」

 

 まあ、それを言う必要もありませんよね。

 頭を下げながら素直に報償を受け取ります。

 先程の巻き戻しのように、再び綜合救護詰所内に拍手が巻き起こりました。

 

 

 

 

 

 さて、上位席官になったならまず始めにやることは――

 

 役所巡りです! 申請し直さないと!!

 

 ――半日で終わると良いなぁ……行きたくないなぁ……

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 結局、届け出は全部終えるのに丸二日はかかりました。

 

 仕方ないのです。

 

 滅却師殲滅作戦では、死神側にも犠牲者が多くでました。だって滅ぼそうと襲い掛かってきたのですから、ならば滅却師(クインシー)側が死に物狂いで抵抗するのも当然です。

 そういうことを考えると、最前線で生きて帰ってきただけでも充分凄いことなんですよね……

 そして私のように恩賞で出世した死神もでました。

 

 なので、手続きの人数が物凄く多くなっていました。

 死神の死亡手続きを行う者もいれば、所属の手続きを行う者もいるので。普段の倍以上は混んでいたのだと思います。

 

 私の場合、それに加えて引っ越し届けも出しました。

 上位席官――九席以上――になると、隊舎内に私室を与えられるのですが。

 なんと! それ以外に隊舎の外に家を持つこともできるのです。

 まあ、小さい家なのですがね。今までは隊の寮みたいな場所に住んでいたので、それと比べると自由度が違います。

 

 私室に住むことも出来ますが、ついでに家も希望しました。ここをキャンプ地……じゃなかった、マッサージ専門に使いたいと思います!

 

 ここが私の……私だけの城……なんだか燃えてきました!

 

『萌え萌えキュン★ でござるよ!』

 

 あんたはちょっと自重しなさいよ……

 

藍俚(あいり)殿、卍解を!! そろそろ卍解に向けて本腰をいれて欲しいでござるよ!! 拙者の本懐のためにも是非!!』

 

 わかってるわよ!! そうでなくても卯ノ花隊長にせっつかれているんだから!!

 あとちゃんと本腰入れてるから!! 本腰入れて三百年位は経ってるけど!!

 

 というか、アンタ最近は勝手に出てきてるわよね!? 始解しないと出てこられないって設定はどこにいったのよ!?!?

 

『テヘペロでござる★』

 

 

 

 

 

 さてさて。

 

 前述の通り、滅却師殲滅作戦は多くの犠牲者が出ました。

 その結果、各隊の面子が色々変わりました。

 今までもある程度は変動がありましたが、今回のはその比にならないくらいの大きな変化です。

 変化の結果、私でも知っている人がチラホラと目立つようになってきました。

 

 具体的に言うと、某眼鏡を握り潰した人とか、某盲目の人とか、某虚無僧みたいな大きな笠を被って顔を隠している人とか。

 ……ひょっとして、あの人たちも殲滅作戦に参加してたんでしょうか?

 

 変化はもう一つあります。

 今年も新人隊士がそろそろ配属される頃です。

 あの作戦で瀞霊廷内には大きな傷跡を刻まれて、鬱屈した雰囲気が割と漂っているので。彼ら彼女ら新人隊士のフレッシュな空気で、この雰囲気を払拭して貰いたいですね。

 

 

 

 

 

「これが、今年の希望者の一覧ですか?」 

「ええ。皆さんの意見も聞きたいと思いまして」

 

 隊長室にて、今年卒業予定の霊術院生たちのリストを見ています。

 上位席官になって時が過ぎたので、こういったことも仕事に入るわけですね。だって現在は四席ですから。

 室内には卯ノ花隊長、山田副隊長を筆頭に上位席官が並んでいます。

 

「ほお、これは中々優秀な成績だな」

「うーんこの子は良さそうだけど、他隊に持って行かれるだろうなぁ……」

 

 皆さん慣れていますね、毎年のことなんでしょうけれど。

 どれどれ、私も見せて貰いましょう。

 

「ふむふむ……」

 

 ザッと目を通していきますが、やはりというか四番隊を志望している子は少ないですね。

 大変ですし、裏方なので地味ですし。

 仕方ないと言えば仕方ない。

 

 頭の中で簡単に統計を取った結果、一番人気はやはり一番隊です。

 エリート部隊、って感じですからねぇ。

 一番隊というだけで別格の扱いをされたり、特権みたいなのを得ることも少なくありません。まあ、それだけ任務や責任も大変みたいですが。

 私が治療した一番隊員の人は皆さん、礼儀正しい良い人ばかりでした。

 

 八番隊も結構女性死神から人気があるみたいです。

 京楽隊長、黙ってれば渋い感じの二枚目ですからねぇ。性格については好みがあるのでノーコメントですが、いい人には違いありませんし。

 ……この人、隊を私物化してハーレム作ってますよねこれ……

 

 同じ理由で、十三番隊も人気が高いです。

 浮竹隊長も二枚目ですし、優しそうな人柄が影響してるんでしょうかね?

 そういえば浮竹隊長は最近は特に具合が悪くなっているようで、卯ノ花隊長が雨乾堂(うげんどう)――十三番隊の隊首室のこと――まで治療に出向く事も少なくありません。

 病院に行くのも大変なくらい具合が悪いと言うことですから、心配ですね。先の滅却師(クインシー)との戦いで心労が祟っているのでしょうか?

 

 あとは――

 

 ある意味当然ですね、十一番隊が荒くれ共に大人気です。

 あそこも結構大変なことになってるのに、それでも人気は衰えずですか。

 俺が最強の死神だ! 隊長を倒して剣八の名を貰う! って身の程知らずが多いんでしょうね。

 今なら不可能ではないでしょうが……

 

「……あれ?」

 

 そんな感じで楽しみながら書類を眺めていたところ、一人の院生に目が止まりました。

 

「この子は良いんじゃないですか? 回道の成績も一番ですし、本人も四番隊を志望していますよ」

「あら、本当ですね。座学は苦手、とのことのようですが……」

「しかし、それを補って余りあるくらい回道が得意と書かれていますな」

「良い人材だと思いますね」

 

 他の人たちも口々に高評価ですね。

 どうやらこの子は決定と考えていいですね。さて、他には――

 

「あ、この子も良いですよ?」

「どれどれ……なるほど、確かに」

「ですが、先程の彼女の姉みたいですよ? 姉妹を同じ隊に置くのはちょっと……」

「駄目なんですか?」

「慣例ですが、あまり好まれませんね」

 

 駄目ですか。

 確かに、親兄弟とかは嫌がられるというか違う部署に配属って良く有る話ですね。

 

「じゃあ他には……」

 

 ――そんな感じで、会議は続きました。

 

 

 

 

 

「み、皆さん、初めまして!」

 

 月日は流れ、新人隊士が配属される日になりました。

 

「今期から四番隊に配属になりました――」

 

 結局、回道の成績がトップだった彼女は四番隊への配属直前で山本総隊長から"待った"が掛かりました。

 総隊長の鶴の一声で十三番隊に配属されたそうです。

 確かに浮竹隊長は身体の具合が思わしくないですからね。回道が得意な彼女を配属させたいという親心とのことでした。

 

「――虎徹(こてつ) 勇音(いさね)です! よろしくお願いします!!」

 

 なのでその代わり、ではありませんが。

 姉の虎徹 勇音が四番隊に配属されることになりました。

 彼女も成績は優秀です。何は無くても四番隊に引き込みたいって思うほどに。

 なにより私、知ってます。

 彼女、原作で四番隊の副隊長だった()です。

 とはいえ今は配属されたばかりの新人隊士。挨拶する姿もとても初々しいです。白い肌を真っ赤にするほど緊張していて、テンパり具合がよく分かります。

 

(みなぎ)ってキタアアアアアアアアァァッ!!』

 

 だからアンタは落ち着きなさい!!

 

 ……って、あれ?

 ひょっとして将来彼女を副隊長って呼ぶ、そんな未来もあるのかしら……

 




そろそろ(チュートリアル終わって)派手に暴れる予定
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