拙者、ひとりぼっちは寂しングでございますので。
『…………』
『…………』
あのぉ……いい加減、そろそろ起きないと凄い勢いでお仕置きされてしまうので……
あ、でもなんだかこれって大昔の、
あの頃の
『…………』
……あ! あんなところにハリベル殿とチルッチ殿とネリエル殿が!!
『どこっ!? なんであの三人が半裸で敵に捕まって「好きに汚せ……だが私の心までを汚せると思うな!」みたいな展開になってるの!? そうならないために私が頑張ったのに!! でもそれはそれとして私も見学して良い? なんだったら参加して良い!? 私頑張るから、絶対絶対頑張るから!! ちゃんと百合の花を咲かせてみせる……あら??』
おはようございます、
『えーっと……そうねぇ……なんというか、ハリベルとチルッチとネリエルの間に挟まって幸せな、感じ……みたいな?』
なるほど、問診結果に異常は無し。極めて正常な状態だが脳に重篤な異常アリっと……
『問診!? 何がなの!? っていうか此処はどこ!? なんだかもの凄く寂しげな場所なんだけど!?!?』
――ジャラッ!
あー、それに答える前にですな……
『え? なんで? 時間とか必要なの?』
いえその、なんといいますか……ちょっとオシリがムズムズするというか……体裁を整えたいというか……
『詳しい説明――』
――が欲しいんだけど! そもそも射干玉のお尻ってどこ!? 診察した方がいい!?
『いいえ、もう用事は完全に済んだので問題ナッシングでござるよ! それで先ほどの疑問ですが、
色々!?
まさか捕まって縛られて、ウッフンでアッハンなことをされちゃったの!?
意識のない所で色々やられて、心は清純なのに体は汚れきってたりしちゃうの!?
『えーっと……捕まってから数時間といったところですので、まだそこまではされていませんでござるよ』
え……数時間!? 嘘でしょ!?
気のせいか三ヶ月くらい経過してるような認識してるんだけど……
『気のせいでございます!! 地球からナメックな惑星に行く時も、六日間が一年くらい掛かったような気がしますので! よって今はまだ、
私、怪我してるの?
――ジャラッ!
射干玉の言葉に慌てて胸元の傷を確認してみれば……あら、本当。大きな傷跡が。
言われて、段々と思い出してきた。
ユーハバッハに貫かれて、チルッチを泣かせちゃったんだった!!
……あー、思い出したら腹が立ってきた!!
あの男、絶対に許さない!! 私を怒らせたこと、後悔させてやるわ!!
目玉が飛び出るくらい悔しい思いをさせてやる!!
泣いたり笑ったり出来なくしてやる!! 絶対に!!
射干玉! あなたも協力するのよ!!
『拙者も!?』
――ジャラッ!
でもそれはそれとしてこの怪我、上手に処置してあるわね……
やったのって
いえ、医療従事者から見れば正しいんだけどね。
でも本当に上手……
――ジャラッ!
ただ、ちょっとだけ傷の処置が甘いかしら。
でもおそらく、ワザとこうやってるんでしょうね。
死なないけれど、術後の回復が遅くなるようにっていうか、適度に弱らせたままにしておく為に。
だって私、死神だもん。敵だもん。
『その辺は実は、色々と事情があったのでございますよ』
――ジャラッ!
『というのもですが、
――ジャラッ!
あーもう! さっきからジャラジャラ鬱陶しいわね!!
『
両腕両足に繋がれた鎖を力任せに引きちぎってやりました。その勢いで口の枷も同じように破壊してやりました。
それにしても鎖、予想外に脆かったわねぇ……錆び付いてたのかしら?
バキッ!! って音を立てながら粉々に砕けちゃったわ。
『……あの、
え、でも私の知ってる映画だと、こんな風に脱出してたわよ?
『……参考までに、なんという映画ですかな?』
えっと……タイトルが思い出せないんだけど、確か主人公が「
『あ、もう結構でござる』
そうなの? でもあの映画、なんてタイトルだったかしら……?
『(もうご自分で答えを言ってるでござるよ……というか囚われのヒロインがゴリラの隠語のように感じてきたでござる……)』
ところで、なんで私は生きてるの?
『ああ、それはですな。かくかくしかじか……』
まるまるうまうま……
なるほどね。
つまり、また射干玉の身体目当てじゃないの!! あなたどれだけ好かれているのよ!?
『拙者も困ってしまって……知らない間に厄介なファンが大勢いるわけでござるよ! 嗚呼……この真っ黒ヌルヌルゴムボールぼでぃが憎い!! 一体どれだけの厄介ごとを引き寄せれば良いのか……いかがいたしましょうか
しらんがな。
でもまあ、何かされる前に気がつけたのは不幸中の幸いね。
『(男二人に色々と乱暴はされましたが……黙っておきましょう)』
射干玉の斬魄刀を狙っているということは、逆に言えばそれまでは私の身は安全。
だったらここはもう少し慎重に行動を――
『あの、それとでござるが。色々と予定が繰り上がりまして……現在絶賛、瀞霊廷が火の海の真っ最中で油断大敵火事ボーボーになっているはずでござるよ』
……ええっ!! ちょ、ちょっと待って!
マジで!?
『マジでござるよ!! ハリベル殿やチルッチ殿と
契り……? 結んだ、かしら……?
『ですので、死神側の準備が整っていないウチに叩いて、ついでに
だったら、ここでのんびりしていられないじゃない!!
えっと、まずは連絡! 伝令神機で情報を……
……無いんだけど!? 嘘、どこかに落とした!?
可能性があるとすれば
仕方ない!
『何をなさるおつもりで?』
勢いよく立ち上がった私に射干玉が尋ねてきました。
やることなんて、決まってるでしょ! 脱獄よ!!
『だ、脱獄!?』
このままここから抜け出して、
ついでにその途中、行き掛けの駄賃みたいに司令所とか補給施設とか、そういった場所を見つけ出して破壊する!! 情報の偽装とかもできれば、もっと良いわよね!!
今は大勢の
『脱獄はよろしいのですが、
任せて!
テロリストが乗っ取った戦艦に偶然居合わせた、元海兵隊出身のコックみたいな活躍をしてみせるから!!
『今回は映画ネタが多いでございますなぁ……』
というわけで、脱獄することにしました。
ですが幸いなことに、牢の出入りは自由でした。
なんで此処には鉄格子とか鍵付きの扉とか、そういうのが用意されていないのかしら……?
『あえて! あえて言わせて頂きますが!!
そうだったの!?
『(まあ、おそらくは……
……? どうしたの射干玉? 急に黙っちゃって。
『(ですが
とにかくもう、ここから出るわよ? いいわよね?
急に無言になってしまった射干玉を心配しつつ、牢から外に出て慎重に進んでいきます。
幸いなことにというか、予想通りにというか。誰にも会うことはありませんでした。
でも、なんなのココ……?
謁見の間みたいな大広間があって、そこを抜けると長い廊下があって……
土地勘が無いから、どこをどうやって進んでいるのか今ひとつ分からないわねぇ……
誰かに聞いてみようかしら?
『……え? い、いや拙者は道順までは知らんでござるよ!!』
分かってるわよ。
そうじゃなくて、もっと詳しい相手がいるでしょ?
『詳しい相手……???』
あ、噂をすれば……
「今頃は陛下たちが大暴れしてんだろうな……あー、全くツいてねぇ! 俺も
「腐るな腐るな、俺たちの出番だってあるはずだ」
世間話をしながら二人組の
多分、見回りか何かかしらね。
『あの~……まさか、詳しい相手というのは……』
絶対に私たちより詳しいでしょ? 大丈夫、イケるイケる!!
気配と霊圧を慎重に消しながら、見回りをしている二人にそーっと近づきます。
「それに
「そりゃまあ、そうだけどよ……」
「分かったら今は任務を――」
「ねえ、お手洗いってどこにあるのかしら?」
「あん? それならこの道を……」
「……?」
「……??」
「……???」
「だ、脱走だあああぁぁっ!! 死神が逃げたぞおおおっっ!!」
なんで!? フレンドリーに話しかけたのにぃっ!!
絶対に油断してくれるとおもったのにぃぃっ!!
『その考えの極地がトイレでございますかぁ!?』
お手洗いは万国共通でしょう!?
やっぱり、
『いえいえ、ドイツ語とは……
『……なんで!?』
これだけはイケるの!
他には「
『せ、拙者だってその……お、オッパイプルーンプルン! と 畜生めえぇっ!! くらいはイケますからっ!!』
(……「
あ、こんな会話を繰り広げているけれど、状況は割と深刻なのよ。
私の存在を認識した途端、
けたたましいサイレンが鳴り響く中、私は一目散に逃げていきます。
道順も目的地も、不明だけどね!!
『ところで
大丈夫! さっきの
ここにいるのは精々、保守点検業務要員くらいでしょ?
引きつけて、纏めて叩く!
なにも完全に考え無しに逃げているわけじゃ……
「騒ぎを起こす者がいると聞き駆け付けてみれば、件の死神か!!」
建物の中を勘を頼りに走り回り外に出ようとしていた私の前に、一人の
いえ……現れました、って表現していいのかしら? 壁を破壊しながら強引に私の前に立ち塞がったといった方が正しいのかもね。
現れたのは筋骨隆々の大男。
頭部と眼の周りは仮面で覆われていて、マントと盾と西洋剣を身に付けています。
手甲や足甲は付けているのに、何故か鎧は着けておらず上半身はまっ裸。
見た目から受ける印象は騎士……というより、ギリシャ神話に出てくる英雄……?
……ああっ! 思い出した!! あの映画のタイトル、ヘラクレスよ!!
『今更ですかぁ!? というか、明らかにヤバそうなのが出てきている点はスルーでございますかな!?』
「身勝手に息を吹き返すばかりか、陛下のお膝元たる
名乗りを上げながら、ジェラルドは手にした剣で斬り掛かってきます。
……ちょっと! まだ私、丸腰なんだけど!!
人質からテロリストにクラスチェンジ。
(なお留守番部隊)
●アイ アム ヘラクレスっていう映画
ドウェイン・ジョンソン主演のヤツ。
後半の暴れっぷりがたまらない。
●コックが無双する映画
沈黙の戦艦。セガールがたまらない。
●三か月ぶりくらい
書いてる人が「こんな感じだっけ?」と困惑するレベルで間が開いている
●ドイツ語
間違ってても気にしないで下さい。