お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第354話 頂上決戦

 ――ジゼル、あなたの敗因はたった一つの単純な理由よ……あなたは何かこう、射干玉に気に入られていた……ただ、それだけ……

 

 

 

 ……知らない人が聞いたら「なんのこっちゃ?」とか、ジゼル本人が聞いても「何ソレ、納得いかねぇ!」とか、間違いなく言われるわねコレって。

 

『いやいや、事実でござるよ。マジの話で。これ大事な話』

 

 むしろ、ちゃんと生かしておいた私にもちょっとは感謝してよ。

 大量虐殺(ジ・オーヴァーキル)のドリスコールを捕縛して、死者(ザ・ゾンビ)のジゼルも捕縛する。

 どっちも命と私に喧嘩を売っているような能力と存在なのに、ちゃんと生かしているのよ!!

 もうこれでユーハバッハに捕まったのだってチャラになるくらい働いているのよ!?

 

『(そして親衛隊二人を大怪我させて、加えて二人分の能力に関する情報を得ているわけですから、それが死神側に周知されて……もしかしたら零番隊が、もしかしちゃったりなんかして、良い感じに勝ってしまうかも……? むむむ……それは、困……らない? どころか、何も問題はありませんな)』

 

 そんなことを考えながら、ジゼルの捕縛処理も終わらせました。ドリスコール用に準備していた麻酔とか手錠とかがあったから、その一部を回してもらったの。

 それに加えて、卍解を使って全身をガチガチに固めておいたわ。琥珀で固めるみたいに。

 

 ……そうそう、その処理の途中に気付いたんだけど。

 ジゼルの血って、危険なのね。触れたらちょっと「ピリッ!」てしたわ。

 多分この血を相手に浴びせることでゾンビを生み出しているんだと思う。一般隊士だったらあっという間。油断していると隊長クラスでも危険だと思う。

 早めに無力化できたのは、ありがたかったわ。

 

 この、血を被って生まれたであろうゾンビたちも、涅隊長に引き渡しておきましょう。こういうのはあの人の役割だもん。解析して治してくれるでしょう。

 問題は、嬉々としてゾンビ軍団を作りそうで怖いってことくらいだけどね。

 

『いやいや、もう出来ていてもおかしくは無いと思うでござるよ? そして研究所で謎の事故が!!』

 

 そこから始まるサバイバルホラーってわけ……? 勘弁してよ…… 

 っていうか「もう出来てる」はありえそうで笑えないわねぇ……

 

『(破面(アランカル)の死体で作ったゾンビはもう存在していたように記憶していますが……黙っておきましょう。もしかしたら藍俚(あいり)殿の驚き顔が見られるかもしれんでござるよ)』

 

「さて、これでこの男(ジゼル)の処置と、ゾンビにされた隊士たちの無力化処理も完了したわ」

「ありがとうございます隊長。お手数をおかけしました」

「いいのいいの、この子の血はちょっと危なかったからね。繰り返しになるけど、迂闊に触っちゃ駄目よ? 生ける屍の仲間入りをしたくなければ……ね……?」

「き、肝に銘じておきますぅ……」

 

 最後だけ怪談話の口調を真似しながら注意を促すと、勇音や他の部下の子たちは背筋を震わせながらコクコクと激しく首を振りました。

 これなら、下手な手出しはしないでしょうね。

 

「さて、と……それじゃあ、来たばかりで悪いんだけど、私はまだ用事が残っているの。だから、行くわね」

「え……ええっ!!」

 

 そう告げると、一瞬ポカンとした表情の後に勇音が目を見開きました。

 

「このまま四番隊に留まって、指揮を執ってはいただけないんですかぁ!?」

「それはもう、勇音がやってくれてるでしょう?」

「で、ですけどぉ……」

「それに、今まで私不在の体制だったんでしょう? そこに突然私が入ったら、却って混乱させちゃうわよ」

「うー……っ……」

 

 涙目で上目遣いに文句を訴えかけてくるものの、勇音からは唸る以上の文句はありませんでした。

 一応それでも何度か謝りつつ、後ろ髪を引かれながらも、私は四番隊を後にします。

 

『あのぉ……藍俚(あいり)殿? 一応お伺いいたしますが、一体どこで何を……ひょっとして、ユーハバッハ殿のお相手を……?』

 

 当然、決まってるでしょ!?

 

『ですが山本殿の因縁のお相手、先約済みなのでは……?』

 

 それはそうなんだけどね……

 でもほら、私言ったじゃない。

 

『な、何をでござるか……?』

 

 ――あの男、絶対に許さない!! 私を怒らせたこと、後悔させてやるわ!!

 ――目玉が飛び出るくらい悔しい思いをさせてやる!!

 ――泣いたり笑ったり出来なくしてやる!! 絶対に!!

 

 ……って、何話か前に。

 言ったからには、ちゃんとやらないと! 私の仇は私が取るわよ!!

 

『おお、ひわいひわい……じゃなかった、怖い怖いでござるよ。つまり、このまま倒してエンディングまで一直線の勢いでござりますかな!? RTA最速更新のノリでござるな!?』

 

 ええ、やってやるわよ! 私はガバらない!!

 きっとこの後で一護が来てなんやかんやするんでしょうけど、私は知らない! 知るもんですか! 知ったことじゃないわよ!!

 

 ただ霊圧の感じからすると、総隊長がユーハバッハの相手をしているみたいね。すごい気配と殺気と闘気が立ち上っているし。

 ッ!! 今、もの凄い勢いで火柱が上がったわ……気付けば瀞霊廷全体の空気が乾燥しているみたいだし……

 つまりこれ、話に聞いていた総隊長の卍解がついに解禁したってこと……よね……!?

 

 い、急がないと!!

 

『間に合いますかなぁ……?』 

 

 間に合わせるわよ! 間に合わせてみせるわ!!

 それから、控えめに言って、泣かすくらいのことはしてやる!! チルッチやハリベルに手を出した報いを改めて受けさせて、ケジメ案件にしてやるわ!!

 

『ちょっと前まで"殺すのは私の矜持に反する"とか口で、すげーこと言ってるでござるよ……どの口が言うのやら……』

 

 この口だけど、それが何か?

 

『むむっ! そ、そんな風に唇を突き出されると……ハァハァ、ちゅ、ちゅーしてもいいでござりますか!?』

 

 ……うーん、それにしても、ちょっとだけ変なのよね。

 ユーハバッハの霊圧、虚圏(ウェコムンド)で戦った時と比べると随分と弱いような……風邪でも引いて弱っているのかしら……?

 

 

 

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 湯川藍俚(あいり)尸魂界(ソウルソサエティ)へと帰還したのに近い頃合い。

 

「先ほど振りじゃの、ユーハバッハ」

 

 護廷十三隊総隊長山本元柳斎重國は、敵の首魁たるユーハバッハが待ち構える地点まで辿り着いていた。

 無論、その道中には敵の滅却師(クインシー)達――聖兵(ゾルダート)と呼ばれる、一般兵たち――が立ち塞がったものの、その数は少ない。

 まるで山本をユーハバッハの元へと案内するかのように、まばらに現れては、山本の刀の錆となって消えていく。

 誘われていると理解しつつも、山本はあえてその誘いに乗った。どのような罠を仕掛けていようとも、その全てを踏み潰し灰燼に帰してしまえばよい。そうするだけの時間も準備も整えてきたのだ。

 

尸魂界(ソウルソサエティ)の全てを殲滅する。そう言い残して消えておきながら、このような場所で暢気に見物とは……随分と余裕じゃな?」

 

 睨む山本の視線の先には、ユーハバッハの姿があった。

 その傍には側近にして見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)皇帝補佐・星十字騎士団(シュテルンリッター)最高位(グランドマスター)でもあるユーグラム・ハッシュヴァルトも控えている。

 

 そして、彼ら二人の周囲には死神たちが倒れていた。

 おそらくは偶々近くにいて、山本よりも早くが到着したのだろう。だが彼らは、既に全員が事切れているのが一目で分かる。

 

「余裕? なるほど、お前にはそう見えるのか」

「ああ、見えるとも。儂の記憶と過去の記録が確かならば、完全に力を取り戻すにはまだ幾ばくかの猶予があったはず……閉じた瞳では、そこまで見誤るということか? のぅ、ユーハバッハよ」

 

 ――完全に力を取り戻していない状態で自分に勝てるのか?

 

 そう豪語する山本に向けて、ユーハバッハは挑発仕返すように不敵に笑って見せた。

 

「見誤ってなどおらぬ。それよりも、そちらこそよいのか? お前一人で私の相手をしても。この場には身を隠せるほどの死体の山は無いぞ?」

 

 それは千年前、ユーハバッハが初めて瀞霊廷へと攻め込んだときのこと。

 一人の死神が滅却師(クインシー)達の亡骸の山に身を潜め、ユーハバッハに奇襲を仕掛けた。その身を刺し貫かれ、動きを止めたところにとどめの一撃を受けて滅却師(クインシー)達は敗北した。

 その、苦い経験を意趣返しのように口にしているのだ。

 

 ――お前こそ、不意打ち無しに勝てるのか? と。

 

「ほう、なるほど。言うのぉ……」

 

 ユーハバッハの言葉を耳にしながら、山本は動じること無く涼しい顔で髭を撫でた。

 意識を逸らさせるためか、それまで相手を睨み付けていた視線をほんの一瞬だけ逸らして注意を引きつけながら、開いている片手を腰に置く。

 その動きはあまりにも自然で、対峙しているユーハバッハも、離れた場所から見ているユーグラムも、思わず見落としてしまうほどだ。

 

「安心せい! 今の貴様など、儂一人でも十分すぎるほどよ!!」

 

 静から動へ。

 スイッチを一瞬で切り替えると、山本は自らの斬魄刀を引き抜き雄々しく斬りつけた。鞘走りの最中、両手で柄を掴み勢いよく放たれた鋭利な斬撃だ。

 

「一人で十分といえども、始解すらせぬのは甘く見すぎだな」

 

 その攻撃を、ユーハバッハは自らの腕で易々と受け止め防ぐ。

 刀身と腕とが拮抗しあい、お互い少し手を伸ばせば相手の顔に触れられるほどの距離を挟みながら、ユーハバッハは自らの剣を抜こうとする。

 

「甘く見ておるのは貴様の方よ――」

「なっ……!!」

 

 その瞬間、山本の霊圧が急激に高まった。

 ユーハバッハはそれを感じ取ると剣を抜く手を止め、反射的に距離を取ろうとする。

 だが山本の動きは、それよりもずっと早い。離れようとするユーハバッハの耳に、絶望的な声が聞こえた。

 

「卍解、残火(ざんか)太刀(たち)

「ぐ、ああああぁぁぁっ!!!!」

「陛下!!」

 

 山本は卍解を発動させると同時に、ユーハバッハの片腕目掛けて斬魄刀を振るう。

 一瞬前まで拮抗状態にあったその刀身は、目にも止まらぬ速さで切っ先を食い込ませると、片腕そのものを跡形も無く消し飛ばした。

 

 腕一本が一瞬にして消失し、ユーハバッハは悲鳴を上げる。

 腹心たるユーグラムは主の危機に反応して剣を抜き、そして思わず硬直した。

 

「卍解……? あの焼け焦げた小さな刀が卍解だと……?」

 

 山本の卍解。

 それはユーグラムが疑問を零したように、とても矮小でみずぼらしいものだった。

 見た目そのものは浅打と変わらず。ただ刀身は黒く焼け焦げ、一筋の煙がくすぶっているのが特徴といえるだろう。

 ただ、いってしまえば見た目の変化はその程度でしかない。

 

 担ぎ上げるのも一苦労するほど巨大な刀へと変化したり、見上げるほどの巨体を召喚したり、視界を埋め尽くすほど無数に枝分かれしたり、天候すら左右する巨大な氷の竜を纏ったりといった、他の使い手たちと比べれば劣化していると思っても仕方ない。

 

 だが同時に、ユーグラムは気を引き締めなおす。

 その小さな刀がユーハバッハの片腕を消し飛ばしたのを目撃したばかりだ。油断は出来ない。

 

「加勢に入る気か、若造? じゃが貴様にはホレ、腕白(わんぱく)小僧が遊び相手を求めてやってきおったわ」

 

 身に纏った外套の下から剣と盾とを構えるユーグラムの姿を一瞥することもなく、山本は口を開いた。

 気配を察知しユーグラムが後ろを振り向けば、その視線の先には野晒を担いだままの更木剣八の姿があった。

 

「なんだジジイ、楽しそうなヤツと斬り合ってるじゃねえか。俺にも斬らせろ……いや、ソイツよりもジジイ、テメエと斬り合いてぇな……」

「たわけ。こやつの相手は儂が先じゃ。貴様の相手は、そこの若造がしてくれるそうじゃぞ?」

 

 間にいるユーグラムを無視して、二人の死神は好き勝手に自分の立場と都合を口にする。

 だが山本の言葉を受けた剣八は、それなりに納得したように破顔する。

 

「……ヘッ! なるほど、コイツも楽しませてくれそうじゃねえか……!!」

「特記戦力め……!」

「さっき、俺に化けようとして自爆しやがったヤツがいてよ。ちょいと欲求不満なんだ……お前はすぐに潰れんじゃねえぞ!?」

 

 斬魄刀、野晒を手にしながらユーグラムへと襲いかかっていく。

 一方ユーグラムも、手にした剣と盾を剣八へと向け直して相手をし始めた。

 

 そして片腕を失ったユーハバッハは、山本の卍解を目にしながら「信じられない物を見た」とばかりに全身を震わせていた。

 眉間に皺を作り、滝のような冷や汗を流しているのは、痛みからかそれとも卍解への恐怖からか。

 

「馬鹿、な……ッ! 千年前と、卍解が違う……だと……!? 炎は……炎をどこへやった!?」

 

 斬るもの全てを爆炎で焼き尽くす豪火の剣。

 それがユーハバッハが千年前に体験した山本の卍解だった。

 だが今しがた受けた卍解は、ユーハバッハは記憶と異なっている。斬られたのに炎が生み出されない。ただ、斬られた部分が一瞬で跡形も無く消し飛んだだけ。

 その理由が分からず、だが卍解が変化するなどあり得ないことと自らに言い聞かせながら、ユーハバッハは必死に考えを巡らせるものの、片腕を失った痛みと衝撃が正常な判断を下すことを許さない。

 

「さて? それは死したあとでゆっくり考えろ」

「ま……ッ!!」

 

 振るわれた斬魄刀を受け止めようと、ユーハバッハは自らの剣を抜こうとする。

 だが山本の持つ斬魄刀はそれよりも早く翻ると、抜きかけた剣を腕ごと、それどころか身体までもを、その切っ先で消し飛ばしていた。

 

「ち……ちから、及ばず……か……」

「フン」

 

 上半身だけ――それも胸から上だけとなったユーハバッハは、それでも残った力を振り絞るようにしながら天を仰ぎ言葉を紡ぐ。

 その様子を山本は、冷ややかな目で見ていた。

 卍解を解除せぬまま、最期の言葉を鼻で笑う。

 

「貴様、やはり偽物か」

「……ほう。気付いていたか」

 

 誰に向けるでもなく呟いた言葉に、返事が返ってきた。

 それと同時に一番隊舎の方角から霊圧の柱が上がり、山本の背後にユーハバッハが姿を現した。同時に、今までユーハバッハだと思っていた相手の亡骸は「その役目を終えた」とばかりに禿頭の男へと姿が変わった――いや、元の姿に戻ったと言うべきだろう。

 細かな理由は不明だが、今まで相手にしていたのはユーハバッハの影武者なのだということは見て分かる。

 

 だがそれらの異常事態を認識しながらも、山本は眉一つ動かすことは無かった。

 ゆっくりと振り返ると、ユーハバッハへ厳しい視線を向ける。

 

「……途中までは騙されておったわ。違和感を感じたのは、あの偽物に最初に斬りつけたときか。とはいえ理屈では無く勘。少し前、僅かでも顔を合わせたのが効いたかのぉ……おかげで気付けたわい。礼を言うぞユーハバッハ」

「なるほど。アレは悪手だったか」

 

 そう嘯く山本の様子に、ユーハバッハは薄く笑う。

 滅却師(クインシー)たちが瀞霊廷へと攻め込む直前、北門の周囲に死神達が集結していた時のことだ。ユーハバッハはそこに割り込み宣戦布告を行った。山本のユーハバッハは、僅かな時間とはいえども直接顔を合わせているのだ。

 千年前の記憶と、その僅かな邂逅の間での印象。それらと今し方の戦いとを比較し、違和感を感じ取って偽物だと断じる。

 敵も然る者だ。

 

「とはいえ……星十字騎士団(シュテルンリッター)(ワイ)――貴方自身(ジ・ユアセルフ)(アール)のロイド・ロイドよ」

 

 だがユーハバッハの考えでは、あのときに顔を合わせたのも決して間違えではない。

 ああして本人が姿を現すことで山本の注意を引きつけ、こうしておびき寄せることに成功したのだから。

 

「ご苦労だった。山本重國の卍解を引き出したのだからな」

「引き出した、か……思い違いも甚だしい」

 

 既に息絶えている禿頭の男、ロイド・ロイドの亡骸に手向けの言葉を贈る。

 けれどもその言葉を、山本は一笑に付した。

 

「分かっておるのか? 儂は、手の内全てを見せたわけでは無い。貴様を殺すのに、まだ余力は十分過ぎるほど残っておるということを」

 

 余力は十分に残っている――その言葉が真実だとばかりに、山本は卍解を操るとその全身に炎を纏ってみせた。眺めているだけで全身全てが灰になりそうな温度が放たれ、ユーハバッハの身体へと襲いかかる。

 まるで炎の化身、あるいは太陽そのものへとその身を変じさせたかのようだ。

 

 それでいながら、山本の表情は硬く険しい。

 油断なく、冷静かつ冷酷な瞳でユーハバッハを見据える。

 

「それもまた、お前の卍解か……」

「湯川を人質とし、この短時間で多くの死神たちを害した。本来ならばたっぷりを時間を掛け、その身に報いを受けさせてやるべきかもしれぬな……じゃがそのような感傷、貴様を殺すことに比ぶれば些事に過ぎぬわ! ユーハバッハ!!」

「その態度! その言葉! その卍解! どれも見事だ山本重國!! 驚嘆にすら値しよう!!」

 

 心の底から賞賛の言葉を口にしながら、ユーハバッハは星章(メダリオン)を構えた。

 

「無駄だ! 儂の卍解は――」

「そう、お前の卍解は強大すぎる。私以外では奪ったとて御しきれない。故にロイドにも手を出すなと命じていた」

「――馬鹿な……!!」

 

 そこで山本は、ユーハバッハから初めて視線を切った。

 卍解を奪われ浅打の状態にまで戻った自らの斬魄刀、信じられないとばかりに凝視する。

 

「馬鹿な、なぜ奪える!? 儂はまだ卍解の底を見せては……」

「どうした山本重國? まさか部下は奪われても、自分の卍解だけは奪われぬと思っていたのか? 自分だけは特別だと思っていたのか? お前が腕を治し、私を倒すために力を取り戻したように、私もまた千年前のお前を倒す手段を用意し続けていたのだ」

「くっ……!!」

 

 卍解を奪った証拠である黒い印が浮かぶ星章(メダリオン)を見せつけながら、ユーハバッハは不敵に笑う。

 

「全てを解析せねば、卍解は奪えぬと思ったか? ロイドを相手に余力を残したのは、私を相手にしてもこうならない様にするためか? 星章化(メダライズ)は残火の太刀を封じるためのもの」

「おのれ……ッ! ユーハバッハ!!」

「さらばだ、山本重國。貴様の仲間もすぐに送ってやる」

 

 空中に巨大な光の弓――大聖弓(ザンクト・ボーゲン)を形成すると、そこから巨大な神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)を無数に放った。

 迫り来る何本もの巨大な矢を前に、山本は斬魄刀を始解させて防ごうと試みる。

 

 そこへ――

 

火産霊命(ほむすびのみこと)玉鋼(たまはがね)!!」

 

 叫び声と共に、巨大な壁が生み出された。

 それらは山本の周囲を覆い、ユーハバッハの放った神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)からその身を守り切ってみせた。

 

「これは……!?」

「……なん、だと……!?」

 

 その光景にユーハバッハと山本は、そろって目を丸くする。

 

「遅くなり、申し訳ありません。総隊長」

 

 二人の間に割って入るように、湯川藍俚(あいり)が姿を現した。

 




恥ずかしながら帰ってまいりました。

●ユーハロイド(ロイドが陛下に化けている)に気付く山本
・気付いているので、卍解も控えめ
 (全力ではない。余力を残している。旭日刃だけで倒した)
・気付いているので、ユーハバッハと呼んでいない
 (最初だけは半信半疑のため呼んだ。途中で気付き、そこからは「お主」「貴様」などの呼び方。ユーハバッハと呼んでいない。
  剣ちゃんとのやり取りも「(ユーハロイドより)卍解した山じいの方が楽しそう」と反応してる。
  プロットでは「(山本が(陛下の相手は))千年前から予約済み」とか言う予定だったけど、ニセモノだからコイツには言わなくなりました)

 あと「長次郎が生きている」とか「両腕がある」とか「犠牲が少ない」とか「覚悟がガン決まり」などの要因で、山本が割と「お前を殺すのに手段も方法も誇りも関係ない」モードに入ってます。
(なので陛下もちょっとだけご機嫌。特記戦力に入れた甲斐があってウキウキ。そんな恐ろしい相手を倒せて「ホッ……」(のはずだった))

●剣ちゃんの相手
頑張れユーグラム。

●ロイドさん(兄の方)
 一瞬「多少なりとも活躍させられるかな?」と思ったのですが「キャラが一切不明。無理」と判断。
 なので、原作通り剣ちゃんに倒される。
 ただこっちでは「コピーしようとしたらデカすぎて破裂した。許容量超えてて無理」という感じ。
 イザ戦おうとしたら破裂して、剣ちゃん(´・ω・`)

(師匠曰く「ロイドは、記憶(力)は10割コピー。それ以外は8割コピー」だとか。
 (となると、記憶と力との認識ズレで、実数は6割くらい?))

●火産霊命(ほむすびのみこと)
火の神様。火伏せの神として、火災や災厄を鎮めるといわれている。

(総隊長の卍解が奪われたので「多分炎の攻撃だ」と思い、耐火ガード)
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