お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

361 / 406
ゾンビがクルリと輪を描いた、というタイトルをどこかで使いたかったんですが。
無理そうなので、とりあえずココで晒します。



第359話 次に向けて - 滅却師たちの後始末 -

 さて、ようやく四番隊の仕事に戻れ……たら良かったんだけどね……

 それとは別で、先に片付けないといけない案件があるのよ。

 

 一言でいうなら、滅却師(クインシー)達の後始末ってところかしらね。

 

『今話のタイトル回収でござるな!!』

 

「浮竹隊長、ご無理を言って申し訳ありません」

「いや、湯川の話を聞く限り仕方ないだろう。それに早く手を打たなければ、他の隊にまで被害が出たかもしれないからな」

 

 急に依頼したのに、無理を通してくれた浮竹隊長には本当に感謝よね。

 それから――

 

「銀城君と月島君も、ありがとうね」

 

 浮竹隊長の後ろにいる完現術者(フルブリンガー)の二人に向けて、お礼の言葉を口にします。

 すると二人はまんざらでも無い表情を浮かべました。

 

「あの滅却師(クインシー)って奴らには、俺たちも襲われたんだぜ? やっと片付いたと思ったらまだこき使われるのかよ」

「十三番隊の隊舎にいたんだから、当然だろ銀城。それに、嬉々として参戦してたじゃないか。訓練ばっかりじゃ身体が鈍るとか言って」

「……覚えてねえな」

 

 ということで、お久しぶりのお二人の登場です。

 お忘れかも知れませんが、銀城君たちは以前に起きた事件の真相究明のため、身の潔白のために尸魂界(ソウルソサエティ)に来ています。

 また、真相究明までの間は暇だろうということで、十三番隊の隊士を相手に訓練もおこなっています。

 

 そんな折に、今回の滅却師(クインシー)達の襲来です。

 十三番隊の隊舎にいた彼らもまた、当然のように戦いに巻き込まれてしまった――どうも話を聞く限り自分から首を突っ込んだみたいですが――ようです。

 なので現状については彼らもある程度知っているわけで。

 

 今回はその延長というか、治療のためにご足労願いました。

 この患者は、私じゃちょっと手が出せないからね。

 

「それで? 僕は彼らにブック・オブ・ジ・エンドを使えば良いのかい?」

「ああ、すまないが頼むよ月島君」

「ほら日番谷隊長も。頭を下げましょうね」

「……頼んだ」

 

 シロちゃんの隣に立って、彼の頭を掴んで無理矢理頭を下げさせます。

 すると、すっげー不機嫌な顔をしながら、シロちゃんはそう言いました。

 

『端から見ると、まるで子供と母親のようでござるな!!』

 

 言わないで……私も一瞬、そう思っちゃったんだから……

 

 不承不承のシロちゃんの姿を鼻で笑いながら、月島君は病人たちへと向かいます。

 ちなみに今回の患者ですが――今現在氷漬けにされて身動き取れなくなった状態で、それでも「ぺぺ様の為に!!」と叫んでいる十番隊隊士の皆さんでーすっ!!

 では張り切ってどうぞ!!

 

「やれやれ、面倒だな」

 

 口ではそういうものの、月島君は一人一人に栞を差し込んでいきます。

 するとどうでしょう! 彼らの瞳にはみるみる理性の光が戻り、あっという間に大人しくなっていきます。

 

『これには巧もインド人もビックリでござるよ!!』

 

 というわけで、月島君にはぺぺの愛の能力を解除して貰いました。

 彼に過去を改変してもらって「愛の能力を受けなかった」ということにして貰ったってワケなの。

 ほら、今回ばかりは私じゃあ治療はできなくって……頭の中がイっちゃってる人の治療はちょっと……その、ね……私の管轄じゃないっていうか……

 本当に、月島君がいてくれて助かったわ。

 

『ちなみに銀城殿はどうして呼んだでござるか? この流れだと完全に役立たずだったわけでござるが……?』

 

 依頼したときなんだけど「月島君一人にさせられないから、自分も一緒に行く」って言ったわ。心配してたんでしょうね。

 

「これでいいのかい?」

「あ、ああ……すまねえな。ウチの隊士が世話を掛けた」

 

 あら? 説明している間にもう治療は終わったみたいね。

 能力の影響を受けていた全員、すっかり良くなってる。

 ホラ見て、乱菊さんなんて何が起きたのか分からなくって、目を白黒させてる。彼女からしたら、気がついたら氷漬けにされているんだから、仕方ないんでしょうけどね。

 

「さて、それじゃここからは四番隊の出番ね。みんな! 氷を溶かして、それから凍傷の手当もするわよ!!」

「「「はい!!」」」

 

 過去を挟み込んで正気に戻すだけなら、私も不要のはず。

 にも関わらず、私がいた理由がこれです。

 

 氷漬けにされたまま、数時間経過しているからね。立派な怪我人なのよ。

 なので彼らも治療しないといけなくて……

 はぁ、もう本当に……

 誰よ! こんな迷惑な能力を使ったの!! その能力、私に寄越しなさい!!

 

『拙者も!! 拙者も欲しいでござる!!』

 

 心の中で文句を言いながら処置をしている最中、正気に戻った隊士の皆さんが口々に文句を言い始めました。

 とくに乱菊さんなんて、凄い剣幕でシロちゃんに文句を言い始めましたよ。

 

「ちょ、ちょっと隊長! なんですかコレ!? なんであたし、氷漬けにされてるんですか!? 早くコレ解いてくださいよ!!」

「あーもう、ウルセェな……」

「ウルセえな、じゃないですよ!! 早く早く! ほらもう、あたし冷え性になっちゃう!!」

「だー! もう!! いいから少し黙ってろ!!」

 

 激昂しながらも、シロちゃんは携帯用のモニターを用意し始めました。

 それを氷漬けの隊士の皆さんによく見える所に置きます。

 

「いいかお前ら。これからお前達がどうしてそうなったのか、その時の映像を流す。月島の能力じゃ、過去が変わって記憶まで変わるからな。自分たちに何が起きたのか、その目ではっきりと見ておけ!!」

 

 そして、映像が再生されました。

 

 

 

 ……詳しくは省くけど、阿鼻叫喚の悲鳴が上がったことだけ言っておくわね。

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

「ホホウ、これが捕まえた滅却師(クインシー)かネ?」

 

 十番隊の皆さんの解凍作業を区切りの良いところまで終えたところで、部下の皆に後を引き継ぎ、私は一足早く抜けさせて貰いました。

 なにしろ、涅隊長へのドリスコールの譲渡が残っていたので。

 

 やってきた涅隊長を案内し、四番隊の獄舎に閉じ込めている彼のところまで連れてきたわけですが……そのドリスコールを見た途端、涅隊長は興味がそそられたとばかりに声を上げました。

 

「なるほどなるほど、中々頑丈そうだヨ。これならもう二百万秒は期待できそうだネ。結構なことじゃないか……」

 

 二百万秒……?

 ああ、隊首会の時のアレですね。あの時は五百万秒とか言ってたっけ。

 となると二百万秒は……ひーふー……二十三日くらい……?

 

 うん、頑張ったわね。

 

「ご覧の通り、動き出さないようにガチガチに固めてあります。それから麻酔も打っておいたんですけど……」

「――ッ! ――ッ!!」

「意識を取り戻しています、ね……」

 

 チラリと見れば、硬化薬剤(射干玉の体液)でガチガチに体中を固められて声を発することすら出来なくなっているものの、視線を私たちに向けながら必死で足掻こうとしています。

 まあ、だからといってビクともしないんですけどね。

 

「結構なことじゃないか、イキが良ければそれだけ期待も出来るということだヨ」

「……一応、再度の忠告になりますけど。一番隊と共同で情報を聞き出す、ということもお忘れなく。勝手に実験とかしないで下さいね」

「そんなことは解っているんだヨ! 五月蠅いネ!」

 

 キレられました……でも言っておかないと、勝手にやりそうなんだもん!!

 下手したらそれで総隊長に怒られるんですもん!!

 

「それからこれが例の――卍解を奪うメダルです」

「コレが……! なるほどなるほど、興味深いネ……見た目はタダの金属の円盤に過ぎぬというのに、はてさてどのような技術が詰まっているのやら……楽しみだヨ」

「……取り扱いには注意して下さいね」

 

 続いてメダルを差し出せば、それをひったくるように奪い取って凝視し始めました。

 誤作動とかして、自分の卍解が奪われたらどうするのかしら……?

 ……いえ、きっと嬉々として自分の身体で実験するわね。

 

「それと、ご迷惑ついでにもう一つお願いしていいですか?」

「断る! 私はこれからこの実験体を調べなければならないのだからネ!! ククク、まさかこんなにも早く滅却師(クインシー)の研究が再び出来るとは、思ってもみなかったヨ……ネム! 何をグズグズしているのかネ!? さっさとソイツを運び出すんだヨ!!」

「はい、マユリ様」

 

 ネムさんがドリスコールの塊を担ぎ始めました。

 ああ、これはもう完全に、私の言葉なんて涅隊長の耳には入っていませんね。足が出口に向かっていますし。

 

「そうですか……これとは別の滅却師(クインシー)が原因で、ゾンビの様になった隊士たちの治療をお願いしたかったのですが……仕方ありません。こちらで治療します」

「……ナニ?」

 

 なので、もう少しだけ。

 涅隊長の興味を擽るような言い方をすれば、足が止まりました。

 

「今、なんと言ったのかネ?」

「いえいえ、お気になさらず。涅隊長はそちらのドリスコールとメダルの解析をお願いします。生ける屍のようになってしまった隊士たちは、四番隊で――」

「生ける屍! 面白そうじゃないか!! お前のことだ、どうせソイツらも捕まえているんだろう? 時間の無駄だ! 今すぐに持って来るんだヨ!!」

「治療をして頂けるんですか? ありがとうございます。では、こちらに……」

 

 やる気になった涅隊長を、別の捕縛房へと案内します。

 

 やったわ! これで面倒ごとが一つ減った!! ゾンビ化の治療はお任せしちゃって、私は報告書と怪我人の治療に専念しておこうっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あら? やっぱり起きてたわね」

「――ッ! ――ッ!!」

 

 涅隊長に諸々の依頼を済ませ、彼が帰ったその後。

 私はドリスコールを捕まえていたのとはまた別の房を開け、中の様子を覗き込みます。

 そこにいるのは、ドリスコールと同じように固められ、ドリスコールと同じように私に視線を向けてくるもう一人の滅却師(クインシー)が囚われています。

 

「目覚めの気分はどうかしらジゼル?」

「~~~~~ッ!! ッ! ッ!」

 

 ドリスコールが意識を取り戻していたから、もしかしたらと思って様子を見に来たんだけど……まさかだったわね。

 ジゼルは必死に唸るような声を上げ、目で訴えながら抗議をしてきます。

 

「威勢が良いわね……けど分かってる? あなたが気絶してから、そうね……数時間は経ったかしら? もう尸魂界(ソウルソサエティ)に来ていた滅却師(クインシー)達は、全員撤退したの」

「……ッ!?」

「つまり、あなたは取り残された。誰も助けに来ないわよ?」

 

 そう告げれば、何か思い当たることでもあったのでしょうね。

 ジゼルの動きが止まりました。瞳は意気消沈して、戸惑っているのが見て取れます。

 

「だから今は、ゆっくりとおやすみなさい。貴方の相手は、また後で……ね?♥」

 

 唯一固められていない顔の上半分を、そっと抱き締めて胸を押しつけてあげれば――

 

「ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛!!!!」

 

 とっても情けない悲鳴を上げながらジゼルは再び意識を失いました。

 

『刺さったでござるか……クッソ情けねえ悲鳴でござる……藍俚(あいり)殿ってば、ムゴいでござるよ……』

 

 ちゃんとこの後で麻酔も使うから。

 

『それだとますます、藍俚(あいり)殿がおっぱいでジゼル殿の頭を挟んだ意味がないでござるが……まあ、プラマイゼロの痛み分けというところでござるかな?』

 

 構ってあげたいんだけどねぇ……今日はまだやること山積みなのよねぇ……

 

 ……それにしても、ふと思ったんだけど。

 

『なんでござるか?』

 

 私が捕まったって話は、ハリベル達から総隊長に伝わったわよね?

 だったらその逆で、ジゼルが捕まったって事実もユーハバッハに伝わるんじゃないの?

 

『なるほど確かに!!』

 

 情報漏洩防止の為に刺客が送り込まれたりするのかしら……?

 となると警備をもっと厳重に……うーん、でもこれ以上の人を回すと間違いなくパンクするわよね……となると他の隊から応援を……いえ、でもそこまで余裕があるのは……

 

 

 

『(おやおや……? どこかで誰かが「死神と尸魂界(ソウルソサエティ)への手出しは厳禁」と言った気がするでござるよ……なので完全スルーされる未来しか見えねえでござる……不思議でござるなぁ……)』

 




●愛を無力化
やっぱり月島さんってすごい! これも月島さんのおかげだ!

と言いたいところですが。
「ぺぺ様の愛を受けていない」という過去を挟まれただけなので、もう一度愛の能力を受けるとアウトです。
また、一度過去を挟んでしまったので、(同じ相手には)同じ方法が使えません。
(栞を二回挟むと、以前の改変が消える。重ね掛けに弱い)

なのであくまで応急処置です。
(なお愛を発揮していた時の映像を部下に見せつけるシロちゃん。
 自分だって乱菊に庇って貰ったし、卍解まで奪われているのにね。
 戒めのためだから仕方ないよね)

●ぺぺ様は乱菊とかを、お持ち帰りしなかったの?
急にユーグラムが「全軍撤退」って言ったので、お持ち帰りする余裕が無かった。

ということを、本編中に書きたかったんですが……忘れていました。
(なので多分、以降のどれかの話のどこかでぺぺ様が上記のことを言うと思います)

●最後のジジのシーン、いる?
「忘れていないよ」という意味と「お前が個人で輝くシーンはもう少し後に用意してあるぞ」という意味で、差し込みました。

(あと「手出し無用!」の説明のためでもあります。勢い言っちゃった陛下の言葉が、こんな風に作用したというわけです。こうでもしないと絶対、消されると思ったので)

……片付けることが多いのよね……零番隊とか零番隊とか零番隊とか。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。