お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第361話 零番隊からのありがたいお話

「さておんしらにはまず、儂らが降りてきた理由から話そうかの」

 

 真面目な雰囲気で仕切り直しとばかりに、和尚がそう口を開きました。

 総隊長は真剣な面持ちで、和尚の言葉に耳を傾けています。

 そして私たち護廷十三隊の隊長たちも、総隊長の様子からただ事では無いのだと自然と察し、静かに黙って言葉を待ちます。

 

「まずは山本! ユーハバッハの侵攻への対処、誠にご苦労! よくやったと褒めておこう」

「……勿体なく。しかし結局のところ、千年前と同じ。彼奴を再び獲り逃がしました」

「うむ、それもわかっとる」

 

 口惜しそうな総隊長の言葉に、和尚はうんうんと頷きます。

 

「ならばこれから儂が話す内容も存じているでしょう? ユーハバッハ共の潜伏先を特定し、こちらから攻め込み、今度こそ彼奴の首を――」

「ああ、それは止めておけ」

 

 あっけらかんと口にされた中止命令に、総隊長は眉を跳ね上げました。

 

何故(なにゆえ)、そのような言葉を……? 返答次第では、兵主部殿とて……」

 

 続けて手にしている杖に力を込めます。

 あの杖は斬魄刀ですからね。零番隊の指示とはいえど、納得出来なければ刃傷沙汰も辞さない、というところでしょうか。

 

「よい霊圧じゃの、殺気が心地よいわい。じゃがおんし、卍解を奪われとるのじゃろ?」

「それが理由、か……? 卍解を取り戻す術は既に研究を命じております。ほどなくして……」

「違う違う。そんなもんは理由ではないわい」

「まだわかんねえのかよ?」

 

 和尚の後を引き継ぐように、麒麟寺さんが口を挟んできました。

 

「護廷十三隊が、瀞霊廷をほっぽり出してどこに行こうってんだ? その背負った"護廷"の文字は飾りか? それともまさか、王属特務(オレら)に守って貰えるとでも思ってんじゃねえだろうな山本?」

「む……」

「ま、それも理由の一つじゃ……先に言われてしもうたがの」

「あががががが!」

 

 麒麟寺さんの頭を掴んでギリギリと締め付けながら、和尚が頷いてます。

 

『台詞を取るな! というアピールでござるな』

 

 この辺、どう考えてもギャグっぽいんだけどね……でも、零番隊の皆さんから感じる霊圧は、本当にすごいのよね……

 五人揃えば護廷十三隊(わたしたち)全員より強いのは嘘じゃないって、つくづく思い知らされるわ……

 

「行くなというのは、霊王の御意志じゃ」

「な……!!」

 

 あら、ついに霊王様の名前が出てきたわね。

 けど霊王様をお守りするのが零番隊だし、今回の件で降りてきたとなればその辺は当然ってことかしら。

 

「ユーハバッハの狙いを考えるに、わざわざ出向かずともこちらで待ち受ければ問題なかろう? その際には必ず、再び瀞霊廷を攻めてくる。そこで片付けば(よし)。足らねば儂らが、今度こそ叩き潰すだけのことじゃ」

「しかし、ならばこそ! こちらから出向き――」

「出向いたその隙に、ユーハバッハに瀞霊廷を蹂躙されるのか?」

「……ッ!!」

 

 総隊長が、痛いところを突かれたとばかりに押し黙りました。

 たしかに、こっちから攻め込むってのもアリだけど、そうすると相手の陣地(アウェー)で戦うことになるのよね。どこに罠が仕込まれているか分かったものじゃない。

 

『特に藍俚(あいり)殿が暴れましたからな。二の舞とならぬように仕込みをしていても不思議ではありません!!』

 

 藍染の時にはこっちから動いたけど、あの時は王鍵を作らせないようにって意味合いもあったからね。今回とはちょっと違うわよね。

 和尚の「引きつけて、まとめて叩く」っていうのは理に適っているわよね。

 

「ならば、かつての虚圏(ウェコムンド)へ侵攻したときのように、選抜した精鋭だけを送り込み……」

「それでその精鋭を閉じ込められ、防衛力を低下させるんか?」

 

 ああ、藍染にやられたアレね。

 

「山本。おんしが腹に据えかねておるように、儂らもユーハバッハには色々とある。なればこそ引きずり込み、全力で確実に叩かねばならぬ。わかるな?」

「……承知、しました……」

「それに儂らは、霊王宮を離れられんからの! 攻め込まれたら参加もできん!!」

 

 え? まさかそれが最大の理由じゃないでしょうね……?

 今までで一番良い笑顔で笑っていますけど……? 他の零番隊の皆さんも、思い思いにニヤニヤしてますけど……

 あなたたちが動くことになるってことは、割とピンチなんじゃないの!?

 

 私と同じような気持ちなのか、隊長達もちょっと不安そうな顔になっています。

 

「なぁに、ユーハバッハも当分は攻め込んでこんよ! 山本の炎が随分と堪えたようじゃからの!! その間に、儂らもしっかりと準備をすれば良い!!」

 

 その辺の理由を口にするって事は……まさかユーハバッハの現状が見えてるのかしら?

 

「それはそれとしてじゃが、黒崎一護という死神はどこにおる?」

「なぜ、その名を……?」

 

 なんとびっくり、和尚の口から黒崎一護の名前が出てきました。

 やっぱり主人公なのよねぇ……絡むかなって思ってたけど、出てくるのね……

 私が内心で感心している最中、浮竹隊長が一護の名前に真っ先に反応しました。

 

「どうして、一護君が必要なのですか!? 彼は……まさか……!!」

「それもまた、霊王の御意志じゃ――ちゅうわけで、どこにおる?」

 

 霊王の御意志って理由、便利よね……

 そのまま和尚は周囲を見渡して――

 

 ……あら? 見渡してない、わね……私のことを見てる……?

 というか、みんな一斉に私のことを見ている……? なんでかしら……?

 そりゃまあ、確かに一護のことは預かってるけど? 四番隊に泊めたけど? けどだからって……

 

『ご自分で全部の理由を仰っているでござるよ? 有識者に尋ねるのは基本でござる』

 

 ……そう、よね……私だってそうするもんね……

 

「えっと、黒崎君でしたら――」

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

「な……なんだよ、コイツらは……? げ、芸人……?」

「黒崎サン、さっき説明したじゃないスか。この方達は零番隊と言いまして、護廷十三隊の全員より強くてエラーイ方々なんスよ」

「なん、だと……」

 

 ――しばらく後。

 

 私の連絡を受けて一護たちがやってきたわけですが……零番隊を見るなり、失礼なことを言ってくれやがりました。

 一緒に来ていた浦原が思わずフォローするくらい失礼です。

 連絡を入れたときにザワザワ騒いでいたので、ちょっと心配だったけど……やっぱりちゃんと伝えておくべきだったかしら……?

 

『おや藍俚(あいり)殿、伝令神機がもう直ったのでござるか?』

 

 ううん、まだよ。今使っているのは、仮で持たされた物なの。

 だから連絡するときに、ちょっとだけ手間取ったんだけど――

 

「零番隊、初めて見たぜ……」

「王属特務……まさか実際にお目にかかれるとは……」

「零番隊ってそんなにすごいの?」

「ム……よく、わからん……」

 

 織姫さんと茶渡君に、阿散井君とルキアさんまで一緒に来ています。

 どうやら、一護に連絡をしたときに一緒にいたみたいで。一護から話を聞いて、来ちゃったみたいね。

 

「あなたたちも来たの?」

「ええ、まあ……先生のところに入院してましたけど、おかげで結構元気になってたんで、一護の相手をしてたんですよ。そしたら連絡があったんで、つい……」

「わ、私は止めようと言ったのですが……その、一護のヤツが……」

 

 こっそり二人に話しかけたところ、そんな返事が来ました。

 その根性だけは認めても良いかもねぇ……

 零番隊とか、普通は恐れ多くて遠慮しておきますってのが一般的な死神の反応だもの。

 私も、勇音を無理矢理にでも連れてくるべきだったかしら……?

 

藍俚(あいり)殿は卯ノ花殿に無理矢理連れてこられたのですかな?』

 

 当然でしょ……

 

「おんしが黒崎一護か。霊王が気に掛けるのも、当然じゃな。こうして顔を合わせるとよくわかるわい」

「へ……? 気に掛ける、だぁ……?」

 

 あら、すっごい……流石は主人公だわ……

 霊王様が気に掛けるって言われた瞬間、この場の全死神が驚いてる。ピンと来てないのは当人だけ、か……

 

「王悦、おんしの方はどうじゃ?」

「んン~~……なるほどNe()! コイツはスゴイNe()、ゴイスーだNe()

「おわぁっ! な、なんだよアンタ!? しかもそれ、俺の斬魄刀じゃねえか! いつのまに!?」

 

 一護が気付かないウチに、彼の斬魄刀を手に取ってしげしげと眺めているのは、二枚屋王悦さんです。

 斬魄刀を作った凄い人です。私は、絡んだことはないんですけどね。

 

「けどまDa()、コイツは本調子じゃないってこTo()Do(ドウ)する? 手を貸す? ちゃんボクが?」

「……」

 

 一護に「助けてくれ、このノリについて行けねえ……」って目で見られました。

 いや、だけどね……無理、私じゃ無理……

 

「よし! ならば決まりじゃな! おんしを霊王宮まで連れて行き、そこで鍛え直してやるわ!」

「いいッ!? な、なんでそんな急に……」

「遠慮せんでもよいぞ?」

「遠慮じゃなくてだな! 俺は……」

「いやいや黒崎サン、これって大変名誉なことなんスよ?」

「そうだぞ一護君。俺たち隊長だって、霊王宮には入ることが出来ない場所なんだ。なにより、キミの為にもなると思う」

 

 あー、なるほど……

 薄々は勘付いていたけど、これって一護の強化イベントだったのね。

 ここで色々と知って、強くなって、なんやかんやあって、ユーハバッハを倒す、みたいな感じに繋がるのね。

 

『なんやかんやとは、一体……?』

 

 なんやかんやはなんやかんやです。私は知りません。

 

「だ、だったらよ!!」

 

 浦原やらの説得を聞いても、まだ迷う様子を見せる一護でしたが、そこへ脇から声が上がりました。

 

「一護の代わりに、俺を連れて行ってくれ!」

「恋次!? お前……」

「朽木隊長、すみません……けど、俺は……」

「でしたら私も!」

「朽木! お前まで!?」

 

 阿散井君が手を上げ、ルキアさんもその後に続きます。

 

 そういえば二人とも、卍解を奪われてますからね。しかも聞いた話によると、割と自信満々で卍解したもののあっさり奪われて、むしろ仲間を混乱させて大変だったとか……

 その辺の恥をそそぎたいって気持ちもあるんでしょうね。

 

『その理屈ですと、二名ほどの隊長も該当いたしますが?』

 

 何言ってるの?

 隊長が離れるわけにはいかないでしょ? 二人とも元気なんだし。

 何より修行イベントで強くなるのは、若い子の特権みたいなもの。邪魔するのは無粋ってものよ。

 

 和尚は阿散井君たちを少しの間ジロジロと眺めていましたが、やがて決心が付いたらしくニカッと笑いました。

 

「ふむ……まあ、よいじゃろう。競争相手がおれば、一護も張り合いが出るじゃろうからな」

「おいハゲのおっさん! 俺はまだ……」

「現世で随分と後れを取ったと聞くぞ? 力をつけたくはないのか?」

 

 そう言われると、一護は言葉に詰まります。

 彼も現世で滅却師(クインシー)の一人と戦って、翻弄されていましたからね。

 もっと強くなれば仲間を守れる。あの時にもっと強かったら、遅刻せずに尸魂界(ソウルソサエティ)まで辿り着いて被害を減らせたかも知れない。

 そんな風に思っているのかもしれませんね。

 

「黒崎くん! 大丈夫、私たちは待ってるから!」

「ああ、自分の心に従え……一護!」

「……わかった! 連れて行ってくれ、霊王宮へ!」

 

 そしてトドメとばかりの、お友達の援護射撃。

 どうやら心は決まったらしく、和尚に向けて力強く訴えました。

 

 

 

 ……やれやれ。どうやらこれで、終わりみたいね。

 一護も出たことだし、私たちは隊に戻って自分たちのことを……

 

「何を言っとるんじゃ?」

「……え?」

「湯川藍俚(あいり)、おんしにも用がある」

「……ええッ!?」

 

 逃さんとばかりに和尚に両肩を掴まれ、私は気の抜けた声を上げました。

 




●攻め込み禁止
街一つをまるごと入れ替えるとか、想定できないと思うので。
上から「籠城しろ」と申しつけられました。

(藍染の時にニセの空座町と入れ替える作戦をやったので、瀞霊廷との入れ替えは滅却師たちの意趣返しかもしれない)

●今日の一護
夜は知り合いと語らったりして、翌日は細々と手伝ってたら、零番隊に呼ばれた。
刀は折れてないけど、連れて行かれることになった。
(斬魄刀の中の人的にも、零番隊的にも、引きずり込むべき人材ですので)

あと、恋次とルキアは入院していたので、一護と話とかしてたら連れてこられた。
(治すだけなら下でも出来るけど)卍解を奪われてたし、丁度良いかなって。

●多分、次のあらすじ
王悦「なにその斬魄刀……しらん、こわい……」
和尚「なにその名前……しらん、こわい……」
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