お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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久しぶりの、昔の藍俚(あいり)殿の口調。



第363話 マッサージをしていたことが判明しました - 修多羅千手丸 -

 くすん、くすん……

 待ってぇ……行かないでぇ……私の桃源郷ぉ……

 キャバクラ……鳳凰殿……斬魄刀の中の人ハーレム……

 最初から知っていたら、文句言わずに霊王宮まで付いていったのにぃ……

 射干玉だって差し出したのにぃ……

 けれど、そんな破廉恥な真似、今更できるわけないじゃない……

 

藍俚(あいり)殿藍俚(あいり)殿。ご落胆中の所、誠に恐縮でござるが質問があるでござるよ』

 

 べそべそ……

 

 …………

 

 で、何? 何が聞きたいのかしら? 何でも聞いて! 何でも答えちゃうわよ!」

 

『では藍俚(あいり)殿のスリーサイズとバストサイズを……ではなく!! あ、いえそちらも聞きたいのですが今は置いておくとして!! 千手丸殿のことでござるよ!!』

 

 千手丸さんのこと?

 良いけど、そこまでは私も知らないわよ?

 裁縫技術の指導を受けたのと、マッサージをしたくらいが精々だから……

 

『やはりマッサージをなさっていたのですかな!? ぷりーず! 是非ともそのときのお話を詳しくぷりーず!! 千手丸殿のおっぱいについてくやしく!! いえ、詳しく!!』

 

 あの頃の話っていうと、そうね……

 あれは今から少なくとも六百年近くは遡るんだけど――

 

 

 

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「……そこ、留めが甘い。そんな下衆な縫製では歩くのにも耐えられぬぞ?」

「っ!! も、申し訳ありませんでした! ご指摘、ありがとうございます!! すぐに直します!!」

 

 繕いの最中、千手丸さんの手が私の手を容赦なく叩きました。

 叩かれた拍子に手の甲から"ピシャン!"と音が鳴り、うっすらと赤く染まります。

 鋭い痛みに一瞬だけ手を止めてしまいましたが、泣き言や弱音・文句を言う暇なんてありません。

 指摘に対するお礼の言葉を口にしながら、私は注意された箇所を必死で直します。

 

「どうした、糸が歪んでおるぞ? 直すと口にしておきながら、何をやっておるのやら……」

「も、もうしわけありません……」

「たわけ、力が強すぎる! 布を殺す気か!? 妾より一尺(30cm)もデカいその図体は飾りか? それとも急に襤褸雑巾を作る気にでもなったか? 妾はそのようなことを口にした覚えはないぞ!」

「いえ、申し訳ありませんでした!! すぐに直します!!」

 

 ……うん、ちょっとだけ訂正。泣き言くらいは言いたい……

 言いたいんですけど、言ってる暇はありません。

 なにしろ千手丸さんの貴重なお時間を削って、指導をして貰っているんですから。

 

 四番隊では、戦いの最中に破れた死覇装の修繕も業務として行っています。

 その修繕業務をもっと効率的に、もっと高品質にするために、死覇装の生みの親である千手丸さんから指導を受けることになったんです。

 その指導を受けるべく白羽の矢が立ったのが、私なんですけどね。

 

 なのでこうして、直接指導を受けているわけです。

 ただ、何と言いますか……千手丸さんは針仕事に対して甘えや妥協は一切許さない性格なので、自然と指導も厳しくなっています。

 私も四番隊では上手な部類に入っているものの、それはあくまで四番隊の中ではの話。千手丸さんとでは比べるのも烏滸がましい程度の腕前です。

 けど千手丸さんは、そんなことはお構いなしに厳しい指導をしてくれます。当然と言えば当然なんですけどね。

 

 しかも千手丸さん、ご自分の手足を絡繰仕込みの義肢に置き換えたばかりか、さらに追加で背中から三対六本の義手を仕込んでいます。

 これら全て、作業の為だというのですから……針仕事に対するどこまでもまっすぐ過ぎる性格には感服するほどです。

 

 そして、ちょっとでもミスをするとその義手で叩かれて注意されるわけですから、痛くて痛くて……

 痛みから逃れるためにも、腕前は自然と必死に上がっているのは決して悪いことではないんですけどね……

 

「……ふむ。まあ、お主の腕前ならこの程度であろ。よくやった」

「あ、ありがとうございました」

 

 そうこうしている内に、本日の指導がようやく終わりました。

 指導は時間区切りではなく千手丸さんが納得するまで続けられるので、下手を打ち続けると夜中になっても終わらない……なんてこともあったりします。

 ……あの時は、辛かったわぁ……

 

 真っ赤に腫れた両手の甲の具合を目の端で確認しながら、お礼を口にして帰り支度をしようとしていたところ、千手丸さんから待ったの声が掛かりました。

 

「待て湯川。今日の指導は一段と骨身に響いてのう。このままお主に帰られては、妾の仕事に差し支えそうじゃ。揉んでは貰えぬか?」

「また、ですか?」

 

 わざとらしく肩に手を当てる千手丸さんの姿に、私はせめてもの抵抗をします。

 

「また、とは酷い物言いじゃな。確かこの前は、用事があるからとお主の意思を優先させてやったじゃろう。それともお主は、師である妾の頼み事は聞けぬと? もしやそなた、妾が歳を取ったとでも……」

「いえ、そういうわけでは……わかりました! 今すぐ準備しますので、少々お待ちください!!」

 

 根負けしたように、私はそう言いました。

 口元に手を当てながら含んだ物言いをするその姿は……なんというか、ズルいです。半分以上脅迫です。

 

 千手丸さんをマッサージ……いえ、決して嫌なわけじゃないんですよ?

 ただ厳しい指導をずーっと受け続けて精も根も尽きた状態からのスタートなので、結構大変なんです。

 なんていうか、倍は疲れるんですよねぇ……

 

 

 

 

 

 

「準備は良いか? ならば、頼むぞ」

「はい、では失礼します」

 

 施術用の簡素な寝台の用意を終えたところで、千手丸さんから声が掛かりました。どうやらあっちも準備は終わったようです。

 なので私は、彼女が身につけている死覇装を一枚一枚脱がせていきます。

 その手つきは、貴族の着替えを手伝う従者の様に慎重かつ丁寧に。

 相手の負担にならないように、それでいて相手が好んで脱ぐ順番とリズムを崩さないように心がけていきます。これも修行――らしいです。

 

「ふむ、よいぞ。その調子じゃ。物裁の才はともかく、こちらの才はあるようじゃのう」

 

 くすくすと含み笑いをしながらも、手腕はお気に召してくれたのでしょう。千手丸さんは私にされるがままに羽織った衣を脱いでいきます。

 そうして少しずつ、千手丸さんの身体が露わになっていきます。

 

 肌は白粉(おしろい)を塗ったかのように白く、そしてとても細身です。

 少し力を入れたらぽっきりと折れてしまうのではないかと思うくらいに痩身。けれども不健康な細さというよりも、モデルのような体形です。

 無駄な贅肉など見られないすらりとした肢体は、視線を外せなくなるほど。

 

 ですか千手丸さんの肩から先と足の付け根から先――いわゆる腕と脚は、ありません。

 その代わりに、絡繰で作られたすらりと長い手足が。まるで本物のように存在感を放っています。

 

「どうした? そちにはもう、幾度か按摩を頼んでおる。妾の手足など、とうに見慣れておろうに」

「いえ、そうなんですが……何度見ても、見とれてしまいます……」

「ふふ、そうかえ? まあ、妾の自信作じゃ。穴が開くまで見つめても構わぬぞ」

 

 先ほども言いましたが。

 千手丸さんは元々の位置に存在する腕と脚も、絡繰に置き換えています。ですが普段はそれらを使わず、背中から伸ばした六本の腕を使って作業をしています。

 

 ――では、その置き換えた本来の腕と脚は不要なのでは?

 

 そう思って以前尋ねたことがあるんですが、その問いには「手足のある者の着心地は分からぬであろう?」と言われました。詰まるところ、着物を作るための手段の一つだったようです。

 ですがなるほど。義肢なので、脱着は簡単。両手両足を失った者や、片腕だけを失った者の身を慮ることもできるわけで。 

 そんな考えから生み出された手足は、ずっと見ていても飽きないほどです。

 

 ですが何時までも見とれているわけにもいきません。

 千手丸さんを簡易施術台の上へとうつ伏せに寝かせると、肩から背中に掛けてゆっくりと揉みほぐしていきます。

 

「よいぞ、よいぞ。相変わらず心地良い限りじゃ……極楽極楽……」

 

 千手丸さんの痩躯は、触れてる側からすれば少し物足りなく感じます。

 ですが、自ら至高と口にしている衣に常に守られているからでしょうか、肌つやはとても滑らかで、指先が踊るように滑ります。

 

「ん……っ……はぁ……たまらぬ……のう……」

 

 関節の辺りのコリをじんわりと温め、柔らかくなるように按摩を施せば、千手丸さんの口から妖しくも艶めかしい吐息と言葉が零れ落ちました。

 京の公家のような言葉と、艶やかな声色。それから相手を手玉に取るような喋り方とが相まって、指で触れているだけなのに私の心がかき乱されていくのが解ります。

 

「まこと、お主を預かったときにはどうしてやろうかと思っておったが……あなや、まさかこのような才能があったとはのう……これがなければ、とうの昔に放り出しておったわ。ほれ、そこ。もそっと強くして良いぞ?」

「はい……このくらいですか?」

「ふ、ぅっ……んっ! ……よいぞ、その指使い。褒めてやろう」

 

 再び紡ぎ出される鼻に掛かった甘い吐息に動揺してしまい、思わず指先が震えました。

 すると肌からそれを感じ取ったのでしょう。千手丸さんがニヤリと意地悪い笑みを浮かべました。

 

「しかし、そなたも幸せ者よのう? 妾から直接指導を受けられるばかりか、妾の珠のような肌にまで触れられるのだから」

「そ、そうですか……?」

「そうとも。ほれ、肩はもう飽いた。次は腰を頼む。ああ、それから尻もじゃ。特別に許可してやろう、たっぷりと撫でて良いぞ」

 

 チロリ、と舌先を覗かせながら、今度はここに触れとばかりに腰を振ります。

 その震動で、お尻が誘う様に揺れ動きました。

 

「で、では。失礼します」

 

 私はリクエスト通り、彼女のお尻に指を這わせます。

 ゆっくりと円を描くように揉んでいくと、千手丸さんの腰がビクッと一瞬跳ね上がりました。

 

「ふ、うぅ……っ……どうじゃ、妾の尻の触り心地は? 余人に触れさせたことなぞ、指で数えられる程度しかないのじゃが……ほれ、どうした湯川? 感想の一つも言うてみい? ん?」

「えっと……大変素晴らしいお尻だと思います」

「くく、そうかそうか。ならば好きなだけ揉んでおけ。そうそう機会はないぞ? ……きゃっ!?」

 

 好きなだけ揉めと言われたので思う存分技量を発揮してお尻を撫で回したところ、千手丸さんの口から突然少女の様な可愛らしい悲鳴が上がりました。

 びっくりして思わず指の動きを止めれば、肩越しに振り返りながらジト目で私のことを睨み付けてきます。

 

「……見たか? 聞いたか?」

「な、何をでしょうか……?」

 

 私にはそう答えるのが精一杯でした。

 油断したところにそんな反応をしちゃって、けど恥ずかしくって口止めしたかったみたいですね。

 かわいい。

 

 その後はお尻から太もも、足の指先までをしっかりとマッサージしました。

 一度反応してタガが少し緩くなったのか、時々小声で「あんっ」と可愛く鳴く千手丸さんはすごく可愛かったです。

 

 

 

 

 さて背中側は終えて、もう半分の按摩をすることになったのですが――

 

「…………」

 

 仰向けになったところで、思わず手を止めて千手丸さんの胸元を凝視してしまいました。

 そこには立派なお山(おっぱい)――は存在しておらず、それどころか乳房自体がありません。

 なんでも「作業の邪魔」ということで、自ら切除したとのことで……

 ああ、なんでそんな勿体ないことをしたんでしょうか……? 体形から推察するに、本来ならば控えめに膨らんでいたであろう部分には、目立たないものの手術痕が残っているだけです。

 

「手足以上に見慣れていると思うておったが、やはり気になるか?」

 

 少し注視しすぎたからでしょうか、千手丸さんがご自身の胸元を軽く一撫でしました。

 

「まあ、お主も女じゃ。妾の胸が気になるのも理解は出来るがのう。じゃが、お主に理解して貰おうとは思ってはおらぬ。稚児(ややこ)を孕む気も無し、後悔はしておらぬ」

 

 そして、くすくすと笑ったかと思えば今度は私の胸元を見つめてきました。

 ……えっ? な、なんでしょうか……?

 

「それよりも、妾としてはお主の方が理解できぬわ。なぜこのような脂肪の塊をぶら下げておるのやら……」

「……ひ……んっ……!?」

 

 少し呆気に取られた隙に、気がつけば私は胸を鷲掴みにされていました。

 千手丸さんの義手が私のお山(おっぱい)をしっかりと掴んだかと思えば、やわやわと感触を確かめるように揉んでいきます。

 

「これでは邪魔で仕方なかろう? ん?」

「あっ……! あ、あの……っ……! せ、千手丸、さ……んっ……!」

「どうじゃ、妾の義手の性能は? 妾は"てくにしゃん"じゃからのう。指先は真と変わらぬどころか、真の以上の動きをするぞ?」

 

 た、確かに……千手丸さんの指の動き……す、凄いです……!

 お山(おっぱい)を撫で回される度に、お山(おっぱい)の先が甘く疼いて……

 思わず腰砕けになり、そう……で……ぇ……

 

「あっ! ん、だ、駄目ですよ……い、今は私が……按摩、を……ふ、あ……っ……!」

「なるほどなるほど、ずっと邪魔だとばかり思っておったが、男共の気持ちも少しは解るのう。このように乳房をこね回して女の身体を昂ぶらせるのは……くくく……」

 

 私の声と反応を見ながら、千手丸さんは巧みに指を操って刺激を叩き込んできます。

 その感触に耐え切れず、背中を丸めて身構えるような姿勢を取ってみれば、その指先はさらに繊細に、ねちっこく私の胸元を這い回っていきました。

 

「どうじゃ湯川? このまま妾の指でたっぷりと、天上まで昇らせてやろうか? お主が望むのなら……」

 

 ほんの一瞬だけ、指先でお山(おっぱい)の頂点を緩く絞り上げられ、て……

 そ、それだめぇ! ほ、本当に止めてぇ……!!

 そればかりか、もう片方の手が私の袴の中へと忍び込んで来るのが……

 

「~~~っ!! もうっ!! いい加減にしてください!!」

「すまぬすまぬ。じゃが、お主の反応があまりにも可愛らしいのが悪いのじゃぞ?」

 

 そこまで弄ばれたところで、渾身の力を振り絞って全力で抗議をします。

 ですが千手丸さんは口ではそういうものの、全く悪びれた様子がありませんでした。

 

「もう今日は終わり! おしまいです!! これで帰らせて頂きますね! 失礼致します!!」

「なんじゃ、つれないのう……まあ、その方が、仕込む楽しみがあるというものじゃ……くく……」

 

 荒々しく帰り支度をしているところで、そんな呟きが聞こえてきました。

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 ――とまあ、毎回こんな感じだったかしら?

 

 私が、お裁縫の指導を受けに千手丸さんのところに出向いて、時々マッサージをした。

 要約しちゃえば、そのくらいなのよ。

 けど毎回毎回、揶揄われて、オモチャにされて、でも指導は厳しくて……

 

 ……って、あら? どうしたの射干玉? 神妙な態度になっちゃって。

 

『いやいや藍俚(あいり)殿、中々興味深いお話でした。拙者、何と言いますか……烏滸がましいというか、その……』

 

 そう……? まあ、気持ちは分かるけどね。

 

 それにしても、今思い返すと凄い経験だったわねぇ……

 やっぱり零番隊に招かれる人は違うわね。

 




●千手丸
以前に後書きで記述しました(&今作でも書いています)が、私の中の千手丸のイメージはこんな感じの女性です。

・手足は作業効率アップのためにカラクリに置き換えている。
・背中に手のカラクリを複数仕込んでいるので、作業効率さらにアップ。
・おっぱいも、作業の邪魔なので切り落としている。
・基本は、背中のカラクリの手を使って作業を行う。
・自分の腕や足もちゃんとある(カラクリだが義手や義足のように存在している)
 これは「手足が無いと着物を着たときの感覚が理解できない(自分以外が着る時の気持ちを忘れない & 身に纏ったときのシルエットも分かり易くなるし)」ため。
 (ついでに、普段から背中のカラクリ手を使うことで「本来の腕は無い。背中の腕だけ気をつければ良い」と相手に思い込ませて、戦闘時に意表を突けるかもしれない)
・針作業は妥協を許さない。昔カタギの職人気質ですごく厳しい。
・基本自分が上位で相手を揶揄うのが好き。余裕の態度は崩さない。

上記の無駄なセルフ縛りプレイという制約。
一般隊士時代の藍俚(あいり)殿が、当時でも雲上人みたいな千手丸を相手にしているという状況。
それらが無駄に合わさった結果、気がつけばこんな感じに。

(ないならあるところ(あいりのおっぱい)をもむ)
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