医療系っぽい専門っぽい用語っぽい言葉とかノリが出てきます。
が、私の知識がゼロ未満なので、それっぽく書いているだけです。
なんとなくそれっぽい雰囲気だけ感じ取ってください。
(技術とか医療機器も「ごちゃ混ぜ上等!」って感じです)
「それじゃあ、お先に失礼します」
「はい、お疲れ様でした」
「湯川班長、後はお願いしますね」
口々にそんなことを言いながら、綜合救護詰所からは多くの隊士たちが出て行きます。後に残ったのは、私を含めた数名の隊士だけです。
「それじゃあここから夜勤になります。皆さん頑張っていきましょう」
「「「はい!」」」
「特に虎徹隊士は今回が初めての夜勤だったわね?」
「は、はいぃっ! よろしくお願いしますっ!」
勇音さんはなんとも緊張した面持ちでそう返事をしました。
「そんなに緊張しないで。夜勤って言ってもやること自体は昼間と変わらないから」
「そうそう。何も無ければそれでよし、何かあることなんて滅多にないから」
「そ、そうなんですか……?」
先輩隊士たちの言葉に、目を白黒させながら答えています。
入隊式の頃から変わらないその様子に、私は思わず笑みを浮かべてしまいました。
「まあ、あんまり気を抜かれすぎても困るけれど。彼らの言っていることも事実よ。やること自体は昼間と変わらないし、今回は夜勤がどういうことをするのか。実際に体験して身体で覚えて貰えばそれでいいから。だから力は抜いてね」
「が、頑張ります!」
私の言葉に力一杯答えました……だから力を抜いてったら。
以前、四番隊は病院みたいな物なので不夜城であると言ったかと思います。交代制で早番・遅番・夜勤・非番を回しています。
基本的に
それが新人隊士です。
来たばかりの新人隊士にあれもこれも夜勤もしろとはさすがに言えませんので、仕事を覚える一年ほどの間、つまり新しい新人が来る直前くらいまでは夜勤抜きで回します。
そして今日からは、今年配属された新人たちが初めての夜勤を経験する日です。
なので彼女はこんなに緊張していて、他の夜勤の隊士たちは「こんな頃が自分にもあったっけなぁ……」なんてことを思い出ながら、からかったりアドバイスを送ったりしているわけです。
とはいえ、彼女の性格とまだ新人の立場ですから、その言葉も簡単には届きませんね。
ついでに言えば、今日は隊長も副隊長も揃って別件で隊舎を離れています。それがまた、彼女の不安を助長させているのかもしれませんね。
……もう少し、頼れる席官になれるように頑張らなきゃ。
「ほらほら、落ち着いて。お茶でも飲む? 私、煎れるわよ?」
「そんな! 湯川四席にお茶を煎れて貰うなんて! わ、私が煎れますからっ!!」
勇音が後を追うように慌てて立ち上がりました。
「……じゃあ、二人で一緒に煎れましょう。みんなも飲むでしょ?」
「勿論!」
「ごちそうさまです!」
ということで、私と勇音は並んで給湯室へと入ります。
……私って一応はこの面子の中で一番年上で席次も高いんだけど……他の子は手伝う素振りすら見せてくれないのね。
別に良いんだけどさ。
「それじゃあお湯を沸かすから、虎徹隊士はお茶請けの用意をお願いね」
「お茶請け……ですか?」
「ええ、戸棚に入っているでしょう?」
そう告げると、彼女は素直に戸棚を開けます。
「
するとそこには"夜勤用・手を出すべからず"という紙に包まった羊羹がありました。
「今夜は夜勤だからね、遅番で出勤する前に買っておいたの」
「え!? これ、四席の自腹ですか!?」
そうです、遅番から夜勤の連続です。
お仕事楽しいなっ!!
……人数足らないんだから仕方ないじゃない! ある程度の責任者がいないと駄目なのよ! それにもういい加減慣れたし。
「気にしないで」
「い、いただきます!」
ということで、しばし給湯室には水を火に掛ける音と急須や湯飲みを用意する音、それと羊羹を用意する音が響き渡ります。
「四番隊にはもう慣れたかしら?」
「……え、あっ! はい!!」
「本当なら新人のことも一人一人丁寧に見てあげたいんだけどね、席次が上がっちゃうとこれがなかなか難しくって……」
「そんなことは……先輩には良くして貰っていますし、それに四席に業務を見て貰っていますし。ありがとうございます」
作業をする傍ら、なんとなくそんな会話をします。
まあ、原作で副隊長まで上り詰めるって知ってますからね。なんとなく他の新人よりもちょっとだけ贔屓して、目を掛けてしまうわけです。
勇音の方は嬉しいのか、それとも困惑しているのか、なんとなく戸惑っているようです。
しかし、こうして二人並んで作業していると部屋が狭く感じます。
まあ無理もないんですけどね。
私が
……見た目だけだと勇音はこう、背を低く見せるような姿勢を取るので、私の方が高く見えてますけど、数字だけだとこうなります。
そんな二人がいればそりゃ狭く感じますよね。手伝われなかったのは案外正解かも。
「さっきみんなも言ってたけれど、夜勤だからといって変に構えたりする必要はないわ。急患が担ぎ込まれたり、入院患者の容態が急変するなんて早々起こらないし。ちゃんと見回りとか通常業務だけしてれば、一晩なんてすぐだから。ね?」
未だ緊張の解けぬ様子の彼女を落ち着かせるように、戯けた口調でそう言います。
『まあ、こうして話のネタにされている以上は何か事件が起こるのは確定しているわけでござるが』
射干玉! メタ読み禁止!!
『むむむ……』
何が"むむむ"よ!
夜勤だけど何もありませんでした。お疲れ様でした。ちゃんちゃん。
――でいいじゃない! そんなオチでも私は問題ないわよ!!
『それでは尺が足らんでござるよ!! 実尺を23分として、前回のあらすじと回想シーンで10分、同じシーンをアングルを変えて何度も表現して5分稼ぐとして……』
別に良いのよ! そんな無茶な尺稼ぎしなくたって!!
……まあ結局、何か起こるんですけどね。
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「……ッ!?」
反射的に立ち上がり、正面玄関の方へ勢いよく振り向きました。
突然の行動に他の皆は吃驚した様子で私の方を向きます。
「あの、何かあったんですか?」
「ごめんなさい、ちょっと……取り越し苦労ならそれで問題ないんだけど……」
虫の知らせ、とでも言うのでしょうか?
何らかの予感めいた物を感じて、急いで外に出ます。
「あれは……」
敷地の外まで出たところで気付きました。
そこには一人の小さな少女――黒髪をおかっぱにした、まだ幼い幼い少女がこちらに向けて全力で走ってきています。
夜勤中ですから今は当然ながら夜、それも深夜です。普通ならこんな歳の子供が出歩くはずはないのに、どうして……?
「どうしたの? 何か四番隊に用事?」
ほんの少しだけ怪しさを感じましたが、何かあっては一大事です。慌てて駆け寄ると、しゃがみ込み視線を合わせながら優しく問いかけます。
「助けて……っ!」
「助けて?」
近くで見ると、よく分かりました。
目は大きく鼻筋も整っているかなりの美少女なのですが、今は目から大粒の涙を零しています。
何度も転んだのでしょう、顔といわず寝間着といわず土埃や砂で汚れており、寝所から抜け出してきた少女が何者かに襲われて逃げてきた――まるでそんな風にも見えます。
ひっくひっくと嗚咽の声を上げながら、必死で絞り出したようなその声は私に危機感を抱かせるのに十分です。
「にいさまを! にいさまを助けてっ!! おねがいっ!!」
「兄様……? ……ッ!!」
そう言われたところで、微かな霊圧を感じました。
ですがそれはとてもとても小さく、今にも消え入ってしまいそうなほど弱々しいもの。仕事柄、何度も感じたことがあります。
私の予感が正しければ、この感覚は――
「先輩!」
「湯川班長!!」
「あれ、その子は……?」
私が外に飛び出したのを何事かと思ったのでしょう。夜勤のみんなが後を追って出てきました。
ですが、それを説明している暇はありません。
「緊急事態! 新村隊士と堀田隊士は集中治療室の準備!! いつでも使えるようにしておいて!!」
「え……っ!?」
「あの……?」
「返事ッ!!」
「「は、はいっ!!」」
ただならぬ雰囲気を放ちながら怒鳴るような私の様子に異変を感じ取ったのでしょう。
二人は慌てて駆け出して行きます。
「平家二十席と戸隠十八席は薬の準備! 最悪の事態を想定して、効果が強いのを上から順に揃えておいて!!」
「わかりました!!」
「りょ、了解です!!」
「他の皆は私に着いてきて!! 虎徹隊士はその子の相手をお願い!!」
続いてそう叫ぶと、返事の声も聞かずに駆け出しました。
「う……うぅ……っ……」
「頑張れ! まだだ、まだ死ぬなっ!! もうすぐだ、もうすぐ……っ!!」
そこにいたのは二人の男性隊士です。
一人がもう一人に肩を貸しながら、まるで千鳥足のように覚束ないゆっくりとした足取りで歩いていました。
ですが二人は酔っているわけではありません。
果たして何があったのか、死覇装は見るも無惨にボロボロ。二人とも大怪我を負っていて全身に大小様々な傷が刻まれていますが、片方は特に酷いです。
死覇装は溢れ出た血で染められてドス黒く変色しており、顔は青白くて生気が微塵も感じられません。月光と頼りない街灯に照らされるその姿は幽鬼と見間違わんばかり。
「どうしました!?」
「あ、あんたは……?」
「四番隊 第四席の湯川
「少女!? よかった、無事に……いや、それよりもコイツを! コイツを助けてくれ!! 頼む!!」
「……ッ!!」
……こ、これはっ!!
近くで見ると傷の酷さが一段とよく分かります。
どこから連れてきたのか知りませんが、この傷で今まで生きていたのは奇跡です。
よほど強い精神力を持っているのでしょう。普通なら痛みでショック死か、さもなければ出血多量で意識を失ってから死ぬか……
今すぐ手当をしても、生存確率は――
「班長!」
「やっと、やっと追いついた……」
――そこに、ゼイゼイ言いながら、他のみんなが追いついてきました。
一息吐かせてあげたいですが、そんな余裕は一秒もありません。
「良いところに! 千種十五席と両川十六席!! 二人はそれぞれ隊長、副隊長を呼んできて!!」
「え……?」
「あ、あの……!?」
「重傷者がいます!! 時は一刻を争います!! 手が足りません! 邪魔する者がいれば私に全責任を被せて構いません!! 早く!!」
「り、了解!!」
「はい!!」
「場所は分かるわね!? 不安なら一度隊舎で確認してから行きなさい!!」
駆け出していった二人の背中に叫びましたが、果たして聞こえたでしょうか?
ともあれ、今いる中で一番席次と霊圧が高いのがあの二人。なら、測ったことはないけれど足も速いはず。
ああっ!! もうっ!! なんで今日に限って隊長も副隊長もいないのよっ!! っやっぱりアレって事件フラグだったの!?!?
「布川隊士たちは二人の搬送……いえ、こっちは私が運びます! そっちの患者はお願いしますよ!!」
「はいっ!!」
そう指示を出しながら肩で支えられていた隊士を抱きかかえ、隊舎目掛けて一目散に元来た道を戻ります。
移動途中、僅かでも霊圧治療を行って少しでも延命に務めますが、果たしてどこまで効果があるか……
「は、
後ろから、そんな呟き声が聞こえたような気がしました。
「準備は!?」
「出来てます!! こちらへ!!」
入り口の扉を蹴り破らん勢いで総合救急詰所へと飛び込めば、新村は今か今かと待ち構えていました。堀田もストレッチャーを準備済みです。
「わかったわ! すぐに……」
おそらく彼に先導される形で集中治療室へ向かおうとして、私はその足を止めます。
「この人が患者よ、ごめんなさい。すぐに行くから、先にお願い!」
「なるほど、分かりました。すぐにお願いします!! 堀田、行くぞ!」
「オウ! ……って……っ!!」
患者を見て思わず口から出かけた堀田隊士の言葉を新村隊士が手で押さえ込み、治療室へと駆け出していきます。
新村クン、ナイス判断!!
絶対に口に出してはいけない言葉って、ありますからね。ましてや――
「あの、先生……」
――こんな小さな子供の前で、言えるはずがありません。
勇音が慰めて、ここまで連れてきたのでしょう。
そこには私の袴の裾を掴み、再び大泣きしそうな程不安そうな顔をした、あのおかっぱの少女がいました。
「大丈夫よ。絶対に、絶対に、私が助けるから」
「本当に!? にいさまは、本当に助かるの!?」
「ええ……」
彼女を安心させるように優しくそう言います。
本当ならここで頭の一つでも撫でてあげたいところなのですが、あいにく患者の血で汚れていますので。腕で血糊を隠しながら努めて優しい言葉を選びます。
とはいえ、絶対に大丈夫と確約出来ないのが辛いところですね。
「ただ、お兄さんは凄く大きな怪我をしているの。もしかしたら、私たちだけの力じゃ足りないかもしれないの」
「え……っ! そ、そんなの……」
「だから!」
少女の言葉を遮って言います。
「だから、あなたもお兄さんを応援してあげてほしいの。頑張って、怪我なんかに負けちゃ駄目って。その声が届いたら、お兄さんもきっと助かるわ」
「ホントに!?」
嘘ではないですが、真実でもありません。
ただ、ギリギリのところを踏ん張れるか否かは本人の精神力次第です。そこに応援の声があれば――ましてやそれが肉親の声ならば、どれだけ心強いことでしょうか。
「……ええ」
「わかりました! わたし、がんばります! がんばってにいさまをおうえんします!!」
なんとか首肯した私を、少女は一転してキラキラとした瞳で見ています。
……これは、期待を裏切れないわね。駄目だったら、この子に私の首を差し出してでも謝罪しなきゃ……
……おっと、いけない。もう一人を忘れるところでした。
「ほら、虎徹隊士。いくわよ」
「え……?」
「なにを惚けているの? 手が足りないのよ、助手に入って頂戴」
「そ、そんな……私、私じゃ無理ですよぉ!!」
「……私の指示に従いなさい。それ以外は何もしないでいいし、失敗したら全責任を私に押しつけなさい」
「そんなっ! だって……!!」
「いいから、いくわよ!!」
先程の堀田の時のように迂闊なことを口にしそうだったので、慌てて有無を言わさずに引っ張っていきます。
なにしろ彼女にも経験を積ませてあげないといけませんからね。将来のためにも。
とはいえ、さすがにこれは難しいかしら……
『しょうがないにゃあ……でござる』
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「容態は!?」
「極めて危険です! 霊圧治療と薬で延命していますが……」
「わかってるわ! 麻酔は!?」
「大丈夫です!」
「よし、霊子縫合の準備!」
集中治療室では、ストレッチャーからオペ台に移された患者が寝ていました。中には既に堀田たちがおり、戸隠たちが持ってきたであろう薬を投与しています。
「まずいわね、これ……」
明るいところでちゃんと見ると、内臓の損傷の著しいです。これは放置できません……あっちもこっちも……
「まずは氷、低温で壊死を食い止めます! 準備!」
「はい!」
「虎徹隊士!」
「は、はいっ!!」
やっぱり無謀でしたかね? 完全に空気に呑まれています。
「霊術院でも、先輩からも習ったでしょう!?」
「すみませんすみません!!」
慌てて鬼道を唱え、治療に加わりました。
「心拍が弱ってます! 血圧も!」
「増血剤を投与! 薬は……戸隠隊士! 上から順に強いのって言ったでしょう!」
「え、ですが……」
「これじゃ薬効が足りないの! 効果の前に死ぬわよ!?」
「すみません!」
彼女が泣きながら治療室を一旦出ます。
普通ならこの薬で良いんですが、今はこれだと足りません。強すぎて身体に悪いくらいでないと。
語気が荒くなっちゃうのは、ホントにゴメンね。でもこっちも余裕がないの。
「こっち、出血が……!」
「そこは大動脈ね、なら虎徹隊士! 血管の結紮! できるでしょう!?」
「はいいぃっ!!」
「私はコッチの臓器を……うっ……!」
損傷が酷すぎる! これはどうする……
「霊圧治療で再生を促すしか……間に合って!」
患部に手を翳して、全力で回復を試みます。
「うわ、こっちも……!?」
「そこも!? 鉤ピン! あとルーペも! 勇音!!」
「はいいぃっ!!」
「吸引!」
「こっちガーゼ!! 圧迫止血!!」
「はいいいいいぃっ!!」
「すみません、お待たせしました!!」
「遅い! 戸隠はそのまま投与開始! 平家は助手に回って!」
「はいっ!!」
薬担当に回していた二人が戻ってきました。
持ってきた薬品は……問題ないわね。
「ここは!?」
「これは……切除! そこから霊圧で再生させます! こっちには抗生物質!」
「
「班長、ここっ!!」
「う、ここは……」
ここって――この損壊具合じゃあ……! 死には至らないけれど、死神としては……
「無理かも知れませんが、霊圧治療で再生を促します。皆は他を!」
「「「はいっ!」」」
治せる……かしらね? 当然、全力で治療をするつもりだけど、ここだけは……
「血圧安定! 脈拍も正常です!」
そうやって全力で回道を唱え続けていると、どうやらなんとか峠は越えたようです。
「遅くなりました!」
「隊長!!」
卯ノ花隊長も来てくれたみたいですね……これなら……
「あ、れ……?」
「
隊長が、来た、ことで……油断、しすぎましたかね……
さっきから、ずっと、回道も、使い続けて……
い、意識が……
「
「湯川四席!!」
私の名前が呼ばれたような、そんな気がしました。
●施術シーン
医療ドラマのノベライズとか買って、施術シーンをちょっと参考にしました。
(送料の方が高い……(涙))
なにしろ想像の限界を超えていたので。
あくまで"それっぽさ"だけを感じください。
●使い捨て隊士
新村(にいむら)・堀田(ほった)・平家(へいけ)・戸隠(とがくれ)……
(いろは)に・ほ・へ・と……
戸隠十八席はメカクレ系の薬マニアな女性隊士。
とかそういう設定を考えようと思いました(思っただけ)