お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

373 / 406
第370話 鎮魂祈願

藍俚(あいり)殿、しつもーん!! でござるよ!!』

 

 いきなりどうしたのよ射干玉ってば……

 私は連日色んな隊から呼び出されてて、しかもお料理も作ってて、もうヘトヘトなんだけど……?

 

『ハリベル殿たちはどうしたのでしょうか?』

 

 え、彼女たちならもう帰ったわよ?

 

『……ええっ!?!? い、いつの間に……でござるか!?』

 

 ちょっと前、かしら……?

 忘れちゃったの、ほらあの時に――

 

 

 

「私たちが見つけられたのは、これが精一杯だったわ」

「すまない……いや、ありがとうと言うべきだな」

 

 ハリベルが頭を下げながらお礼の言葉を口にしました。

 彼女の後ろにはウルキオラやチルッチといった他の破面(アランカル)たちが並んでおり、さらにその後ろには簡素な白い布の塊が山のように並んでいます。

 

「我々だけではここまでは行かなかっただろう」

 

 頭を上げたハリベルは背後を向き、白い布の一つ一つへと視線を投げかけました。

 それら全てが埋葬布――滅却師(クインシー)たちに使い捨ての尖兵とされた破面(アランカル)たちの遺体が包み込まれています。

 これらは全て、ハリベルの「利用された同胞たちの亡骸を虚圏(ウェコムンド)で眠らせてやりたい」という願いの為のもので、隊士たちにお願いして可能な限り回収してもらいました。

 

 実際かなりの量だったわ……

 しかも、亡骸を一つ一つ分けて布で包むのにも人員割いて……

 部下のみんな、ごめんね……私の我が儘で迷惑掛けちゃって……

 

「この礼は、この者たちを弔った後にすぐにでも――」

「ううん、平気よ。そこまで無理しないで」

 

 ハリベルの言葉を遮るように手を握り、私はゆっくりと首を横に振ります。

 

「元々尸魂界(ソウルソサエティ)に来たのだって、ハリベルたちが無理をしてくれたんでしょう? これ以上は甘えられないわ。それになにより、再び虚圏(ウェコムンド)が襲われる危険性だってまだ残っているかもしれない……だからハリベルたちは自分たちのことを最優先で考えてくれて構わないから……ね?」

「……すまない」

 

 本当はね、助けて貰ったらすっごく嬉しいんだけどね……

 でもそうそう頼ってばかりもいられないし……下手に頼りすぎると戦後が怖いのよね……それも特に四十六室とか面倒になりそう……

 

 ああ、ダメダメ! こんな打算的なこと考えるなんて私らしくないわね!!

 ハリベルの弱みにつけ込んで次のお山(おっぱい)を確保するためにも、ここは意地を張る場面よ!!

 うん! 精神が持ち直したわ!!

 

「大丈夫大丈夫。だから全部終わったら、また一緒にお茶でもしましょう……約束よ?」

「……そうだな、ああ……約束しよう……」

 

 

 

 ――とまあ、こんな感じでハリベル達は虚圏(ウェコムンド)に帰って行ったのよ。

 

 でもそのときには、チルッチやロリが涙目になりながら別れを惜しんでくれたりとか、グリムジョーが「まだ海燕に用事がある!!」とか言って駄々をこねたりとか、色々あったんだけどね。

 

『うわー、それめっちゃリアルタイムで見ておきたかったでござるよ……Webで再放送配信とかはないのですか!? できれば出演者のコメンタリー付きで!!』

 

 あるわけないでしょう!!

 というかそんなのがあったら、私が見たいわよ! それ以前に私が出演者ってことでしょうが!!

 

『しかし、この話が本当ならば……ひょっとしてもう、ハリベル殿の褐色お山(おっぱい)は出番がないことに……!?』

 

 多分ね。

 

『そんな!! 足らない、全然足らねえでござるよ……ビタミンとミネラルと鉄分とお山(おっぱい)分が不足してきたでござる……』

 

 最初三つなら、錠剤があるわよ?

 

『最後の一つが重要なのですが!!』

 

 それは……今は私ので我慢して……?

 そのうちきっと、滅却師(クインシー)側から供給されるから。

 

『仕方ないにゃあ……あ、ござる。と、そういえば滅却師(クインシー)側と言えば、ジジ殿はいかが致しているでござるか?』

 

 元気にお仕事押しつけられてるわよ。

 仕事がないときは安全のために布団に包んでから、縛り上げて転がしているけどね。

 

『(……それってまさか、藍俚(あいり)殿のお布団……? 藍俚(あいり)殿の匂いに包まれているということでは……? ナチュラルに拷問なのではないでしょうか……?)』

 

 あ、ごめんね、伝令神機が鳴ってたわ。

 

「――はい、湯川です――え? 卍解の特訓? はい、はい……それ、私必要でしょうか……? お力になれるとは思えないんですけど……いえ、たしかにそうですけど……」

 

『どなたでござるか?』

 

 どこかの副隊長が顔に69って入れ墨するきっかけになった人よ。

 

『ああ、なるほど。もうそんな時期でしたか……早いものでござるな……』

 

「季節の風物詩みたいなことを……え? いえ、なんでもありませ――きゃっ!? えっと……もしもし――え? お腹が空いたから差し入れ求む? 今は甘い物は……え、絶対に入れろ? あ、ちょっと……!? ……切れちゃった……」

 

『あー、何があったかなんとなくわかるでござるな……スーパー副隊長殿が電話に割り込んで自己主張している姿が目に浮かぶようでござる……』

 

 すごい! よくわかったわね大正解!!

 

『えへへ……では目に浮かぶついでにもう一つ!! 電話の要件そのものは、檜佐木殿に卍解を覚えさせようとしたけど、全然まったくちっともさっぱり上手く行ってないから、力を貸してくれと頼まれたのでござるな!?』

 

 またしても大正解よ!!

 ……って、今回は射干玉も一緒になって聞いてただけでしょうが!!

 

『てへぺろでござる! それで、藍俚(あいり)殿はどうなさいますか?』

 

 うーん、そうねぇ……

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

「あら、やってるわね」

 

 悩んだ末に出した結論は、行くだけ行ってみることにしました。

 

「おー湯川、すまねぇ――」

「わーいあいりんだ!!」

(ましろ)! テメェ……!!」

 

 顔を出し、声を掛けた途端に久南さんが飛びついてきました――いえ、というよりも彼女の狙いは私じゃなくて、私が手に持っている岡持の中身ですね。

 そのつい直前までは檜佐木君の相手をしていたというのに、今ではあっさりとそれを忘れて岡持の中身を物色しています。

 

「ねえねえ、何を作ってきてくれたの!?」

「あんまり時間が無かったから、大した物は出来なかったんだけどね」

「ハァ……まあいい。修兵、お前も少し休憩だ」

「ウ……ウス……」

 

 彼女のその様子に六車隊長は怒る気も失せたらしく、肩を落としながら小休止を宣言しました。

 檜佐木君はというと、全身を汗と汚れと傷まみれにしながら地面に倒れていました。

 

「大変ねぇ、檜佐木君も……それで六車隊長、実際の進捗はどうですか?」

「駄目だな。追い込めば目覚めると思ったんだが、全く芳しくねえ……だからお前を呼――」

「何コレお寿司!? お寿司なのあいりん!?」

「んだあああっっ!! (ましろ)!! さっきから――」

「何コレぇ~……甘くって……ちょっとカリカリだけど、ふわぁって溶けて……ほっぺまで一緒に溶けちゃうよぉ……」

 

 私たちが話をしているのなど何するものぞとばかりで、久南さんはマイペースに岡持を漁っていたかと思えば、その中の玉子焼きを食べて顔を蕩けさせていました。

 

「そっちはブリュレって言って、軽く火であぶったのを甘くしてあるの。あ、反対側に並んでいるのは甘さ控えめだから注意してね。あと、お寿司なのは手軽に食べられるかなって思ったからで――」

「……ええい、もういい! 俺も喰う!!」

「あ、拳西それだめ! そっちもあたしが食べるっ!」

「お前はそっちのお子様寿司食ってろ!! こっちは全部俺のモンだ!!」

「……二人とも、食べる前には桶の水で手を洗ってね」

 

 届くかどうか心配ですが、一応注意をしておいてから……改めて、檜佐木君へと向き直ります。

 

「お疲れ様。これ、濡らした手ぬぐいとお水よ」

「す、すんません……」

 

 よろよろとした手つきで手ぬぐいだけ受け取ると、それを顔の上に乗せました。

 ……いやいや檜佐木君!? 面布じゃないんだから!!

 

『亡くなった方の顔の上に乗せるアレですな! と言うかそれ以前に、濡れタオルを顔に乗せると呼吸が難しくなるのでござるが……』

 

 あ、本人も気付いたみたいね。

 慌てて位置をずらして、鼻から上だけを冷やすようにしたわよ。

 

「……湯川隊長、質問していいですかね……?」

「私が卍解を会得したときのこと?」

「ええ、そうっス……隊長はどんな感じでしたか……?」

 

 えっと、私の場合は……

 

『拙者と一緒に"箱の中身はなんでしょね?"ゲームをして盛り上がりましたな!! いやぁ、懐かしい話でござるよ!!』

 

 そうそう! それまだ百年くらい前の新鮮な話だもんね! よし、その時の話を……って、言えるかぁそんなこと!!

 

「卍解は個人個人で違うから、私の時のことを言っても多分参考にならないと思うわね」

「そっスか……」

 

 あ、落ち込んじゃってる! えっとなにか! 何か隊長らしいことを……

 

「でもね、檜佐木君。斬魄刀を屈服させるには、霊圧を高めるだけが条件とは限らないの。相手が何を求めているのか、斬魄刀が自分にどんな期待をしているのか、そういったことを理解してあげるのも、きっと必要なことよ」

「理解……風死の……」

 

 相変わらず寝転んだまま、浅打状態の斬魄刀を手に取ると呟きます。

 

「でも風死(コイツ)、俺に『命を差しだせ』とか言ってくるんスよ!! 正直、どう思います!?」

「どうって……そうね……捧げてみたら?」

「へ!? でも、ンなことしたら……」

「そのために六車隊長は、私を呼んだんじゃないのかしら? 命を差し出したとしても、私がいればなんとかできるから……違うかしら?」

「そっか、そうかもしれませんね……」

 

『(……あっ! でござるよ……)』

 

 そう告げながら身体を起こし、六車隊長を見ます。

 私もそちらに視線を向けますが……まだお寿司の取り合いをしていますね……

 

「とりあえず、食事にしましょうか? それが終わったら今日一日……うーん、私も忙しいから数時間くらいだけど、付き合うわ」

「そっスね……っしゃあ! やる気が出てきた!!」

 

『(これ多分、檜佐木殿に限っては藍俚(あいり)殿の存在が悪い方向に働いている気がするでござるよ……風死殿の期待はそっちではないはずで……)』

 

 やれやれ……なんとか格好は付いたかしらね……

 

 ……気になるのは、射干玉が何だか釈然としない雰囲気なんだけど……

 

『(まあ檜佐木殿ですし、しかたありませんな!)』

 

 なんだかすごく残念なことを言ってる気がするわ……

 

 

 

 ……というか、えっと……ひーふーみ……

 

『突然指折り数えて、どうかなさったでござるか?』

 

 ……どうしよう射干玉! 私も勇音に卍解の修行とかした方がいいのかしら!?

 このままだと卍解使える副隊長が過半数超えちゃいそう!!

 




破面(アランカル)
挟む隙間を上手く作れなかったので、精一杯のフォロー
(実はアランカルたちだけで話が終わる予定でした。
 ですが気が付いたら檜佐木が絡んできました(タイトルにその頃の名残りがある))

●悪い方向に働く
あの卍解は「生死まとめて釣り合い取って二人ともずっと死なないまま」の能力です。
(死にたくないし殺したくないとビビりまくった結果の到達点みたいな能力ですので)

なので「ほぼ殺せず治しちゃう者の存在」は、檜佐木にとってはマイナスに働くと思います。
「怪我しても大丈夫だからもっと思い切りいくぞ! ヒャッハー怖くなんてないぞ!」と悪い意味で踏ん切りがついてしまい、斬魄刀の理想からはむしろ遠ざかってしまうイメージ。
(でもそんなこと知らない某四番隊隊長は、間違った方向に思い切り背中を押している)

●じゃあ檜佐木の卍解は?
むり
実は射場さんも……正確には挟む隙間がない(てかこの人は始解すらわかんにゃい)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。