お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第374話 断じてセクハラではありません

「……何しているの?」

「え……えーっと、そのぉ……」

 

 私を盾にするように背後へと隠れるジゼルに向けて抗議の視線を向けたところ、彼はバツの悪そうな表情を見せてきました。

 両手の指を顔の前でツンツンさせながら、ときおり視線をチラチラと明後日の方向へと向けます。

 

 ……あ、これ明後日の方向じゃないわね。

 今まさに、もの凄い勢いで近寄ってきている四つの霊圧を気にしているんだわ。

 と言うことはひょっとして、これって私を狙っているんじゃなくてジゼルを狙って来ているのかしら……?

 

 なんとなくそう思ったところで、四つの霊圧それぞれの持ち主の姿が視界に入ってきました。

 四人とも女性。それも、前回の侵攻の際にも姿を見せていた滅却師(クインシー)たちですね。

 

 まず先陣の緩徐が、バンビエッタ・バスターバイン。

 風を切るように颯爽と駆けているおかげで、長い黒髪が美しく靡いています。少し小柄ではあるものの、美少女ですね。

 身に纏っているのは滅却師(クインシー)たちお揃いの軍服っぽい格好ですが、下がミニスカートみたいになっています。走っているので、今にもスカートの裾が翻って見えちゃいそうで、ちょっと心配だわ……

 でもスカートから覗くふとももはとっても扇情的ね。肉付きが良くって、思わず目が離せなくなっちゃいそう!

 顔立ちからすると、勝ち気で好戦的な印象を受けるんだけど……今はどういうわけか、ずいぶんと切羽詰まった余裕のない表情を見せています。

 

 そのバンビエッタのすぐ後ろにいるのが、キャンディス・キャットニップ。

 四人の中では一番挑発的、蠱惑的な容貌をしています。

 バンビエッタよりも頭一つくらいは背が高く、丁寧に梳かしたであろう黄緑色の髪が目を引きますね。

 でも一番目を惹くのは、あの格好!

 なにあれ!? なにあれ!? 改造軍服なのは共通だけど、上はタンクトップ風。下はショートパンツ風! おかげで腕も脚もお腹もおへそも胸の谷間も、ほとんど全部見えてるじゃない!!

 どれだけ自分のスタイルに自信が有るのよ……あんな服、普通の神経してたら着れないわよ……?

 

 キャンディスの少しだけ後ろには、四人の中で一番小柄な少女の姿があります。

 彼女はリルトット・ランパードですね。

 金髪をおかっぱにした髪型とあどけない表情、あとワンピースみたいな服装をしているので、一見するとまるで無垢な少女みたいな印象を受けます。

 体型も他の三人と比べると、凹凸の少ないので余計にそう思えます。

 

 そのキャンディスと併走しているのが、ミニーニャ・マカロン。

 ふわふわとした桃色の髪におっとりとした見た目。加えてどこか乙女ちっくな印象を受ける格好をしているので、四人の中では一番温和に見えます。

 実際、ぽわぽわ~っとした雰囲気を纏っているように見えますからね。

 ただ、背丈は四人の中で一番……ううん、それどころか私より背が高いわね……

 六尺一寸五厘(185センチメートル)を超える長身と露出した腕からは、とてつもない強力(ごうりき)の持ち主ということが伝わってきます。

 

『ちなみにそこのジジ殿も加えて、五人揃ってバンビーズでござるよ!!』

 

 ジゼルも!? 紅一点、じゃなかった黒一点なのね……

 

 ……え、バンビーズ?

 

『バンビーズ』

 

 ……そう……なんていうか、もうすぐ春になりそうなグループ名ね……

 

『(作中の)時期的には、梅雨でござるよ藍俚(あいり)殿!?』

 

 大丈夫、ちょっと気取ってみただけだから。気にしないで。

 

『よく解りませんが、メンバーが二人くらい多いので問題なしでござるよ』

 

「……ひょっとして、あの四人が怖いの?」

「え、ええっと……怖いって言うかぁーっ……そのぉーっ……」

 

 この反応……間違いないみたいね。

 けど本来、捕まったら殺されてても仕方ないものね。

 それがこうして、のうのうと生きていて、それどころか死覇装を着て死神ゴッコしているとバレた日には、どうなることやら……そりゃ口ごもりもするわよね。

 

 もごもごと言葉を濁していると、ついに四人の滅却師(クインシー)たちが到着しました。

 

「いたわね湯川藍俚(あいり)! ジジの仇と、あとあたしの部屋と服の仇! 絶対に打たせて貰うわよ!!」

「ついでにあたしの化粧品とヘアのケア用品の恨みもな!! 死にやがれクソが!!」

「ま、リーダー(カッコカリ)の命令だしな。あと死神は殺せって陛下からの命令でもあるんだ」

「覚悟してくださいねぇ」

 

 バンビーズたちは姿を現すなり、それぞれが威勢良く啖呵を切りながら私に向けて剥き出しの殺気をぶつけてきました。

 同時に今にも射殺しそうな目で睨み付けてきて――

 

「……ってジジ!! あんた生きてたの!?」

「あっ、ヤバっ……」

 

 私の後ろのジゼルを視界に入れた瞬間、その雰囲気を一瞬にして霧消させました。

 一方、見つかったジゼルは慌てて身体を隠そうとするものの、時既に遅し。

 四(つい)八つの視線からは逃れられないと思ったのか、私の陰からそっと出てくると、愛想笑いを浮かべながら手を振ります。

 

「バ、バンビちゃんやっほーっ」

「死になさい!!」

 

 ジゼルに向けて、バンビエッタは球状の霊圧を放ちました。

 多分だけど、見た瞬間その仕草にイラッと来たんでしょうね。散々心配させておいて、何をやってんだこのバカ! みたいな感じで。

 放たれた霊圧を見た瞬間、ジゼルはそれを身をよじりながら必死で避けました。

 通り過ぎた霊圧はそのまま地面にぶつかり、爆発を起こします。

 

 なるほど……これが彼女の爆撃(ジ・エクスプロード)の能力……

 やっぱり実際にみると違うわねぇ、手に入る情報量が段違いだわ。

 

「うわぁっ!? あ、危ないなぁバンビちゃんってば!! 死んだらどうするのさ!?」

「この程度じゃあんた死なないでしょうが!! ってかなんでここにいるのよ!? 生きてるんなら戻ってきなさいよね!! このバカっ!!」

 

 あらあら、照れているのかしら?

 私が想像した通りの言葉を叫びながら、バンビエッタはさらに爆撃を放ちます。その爆撃をさらに避けながら、ジゼルは嬉しそうに頬を染めました。

 

「ええっ! ひょ、ひょっとしてバンビちゃんってばボクのこと心配してくれてたの!? ひょっとしてコレって愛……!?」

「違うってば!!」

「てかよ、愛でも恋でもなんでもいいけどよ。今はんなこと言ってる場合じゃねえよな?」

 

 なんだかラブコメが始まりかけたところを引き戻したのは、リルトットの言葉でした。

 少女の見た目にそぐわぬ男っぽい口調で、彼女はジゼルを睨みます。

 

「別に生きてんのは良いんだよ。けどジジ、お前その格好はなんだ?」

「え、えっとこれは……」

 

 言いにくそうにしていると、何かに気付いたのかバンビエッタが叫びました。

 

「……まさかジジ! 趣味なの!?」

「マジかよ……前から変態だとは思ってたけど、ついに真性にまでなったか……こりゃ救えねえな……」

「えっと、えっと、趣味は人それぞれだと思うの。でもその格好はちょっと駄目っていうかぁ……」

 

 一応、この五人って仲間なのよね……?

 

『そうでござるよ? ですがまあ……関係性は、ご覧の通りでござる!!』

 

 そっかぁ……みんな、イイ性格してるのね……

 

「違うってば! そうじゃなくて!!」

「んな格好してんのは、オレたちを裏切ったってことでいいんだな? その死神の飼い犬になったってことでいいんだな?」

「だから違うってばリル! ボク、この隊長さんに脅されたの!! それで仕方なく……」

 

 あらやだ、脅されたですって。

 ジゼルってば酷いこと言うわねぇ……ちょっと職場体験させ続けただけなのに……

 

「脅されただぁ? ジジ、舐めたこと言ってんじゃねえぞテメエッ!!」

滅却師(クインシー)全体で見ても、一番殺しても死ぬようなタマじゃねえヤツが何を言ってんだ?」

「そうよ! アンタの能力なら脅しなんて苦にならないでしょう!?」

「一体何をされたのぉ?」

 

 ……ひょっとしてリクエストされてる……!?

 なら、期待に応えないとね!!

 

「こんな脅しよ」

 

 必死に言い訳するジゼルの後ろに回り込むと、そのまま彼の袴の裾を摘まみ、思い切りめくり上げました。

 自然、生足が。

 太ももが。

 お腹やおへそが。

 

 そして、貞操帯に包まれた股間までもが衆目に晒されます。

 

「……き」

「き?」

「きゃあああああああああああああああああああぁぁぁっ!!!!!!?!?!?!?」

 

 次の瞬間、バンビエッタの口から。

 まるで、初めてオチンチンを目にした少女のような可愛らしい悲鳴が響き渡りました。

 

 

 

 

 

 

「なにあれ? なにあれ!? なにあれぇぇっ!!!!」

「落ち着けビッチ。別に初めて見たわけじゃねえだろ。チ○○ンなんて見慣れたもんだろうがよ?」

「だ、だってだってだって!! おち、おちちちちちちんちんにあんな物が!!」

 

 バンビエッタは顔を真っ赤にしながら慌てふためき、仲間に向けて必死で助けを求めようとしています。

 見かねたリルトットが落ち着かせようとした、みたいなんだけど……その言葉は逆効果でしょ? どう考えても……

 しかし彼女、冷めた反応ねぇ……

 あと平気でチンチンとか言っちゃうのはどうなの!? ……ひょっとして興味とか全然ないのかしら……?

 

『リル殿はどちらかというと色気より食い気のイメージがあるでござるよ!!(そして何故リル殿は伏せているのに、藍俚(あいり)殿は伏せないのですか!? バンビ殿なんて隠している様でワードそのものが丸出しでござるよ!?)』

 

「キャンディ! ミニー! あんたたちもなんとか言いなさいよぉ!!」

「えっ、とぉ……そのぉ……な、なんて言うか、だな……」

「別に気にならないと思うの」

 

 反応の薄い二人のせいで、バンビエッタがさらに混乱してるわね。

 ……ところで、ふと気になったんだけど……

 

「はぁはぁ……可愛いよバンビちゃん……ボクのを見てあんなに顔を真っ赤にして……」

「……ねえジゼル。バンビエッタって、見慣れてるの?」

「…………え? うん、そうだよ。バンビちゃんってば、時々部下の男の子をつまみ食いして殺してたからね」

「そ、そうなんだ……」

 

 つまみ食いって、つまり……つまみ食い(意味深)ってことよね……?

 

『そうでござるよ! 藍俚(あいり)殿がよく女性隊士にやっていることでござる!!』

 

 やってません!!

 ……けど、つまみ食いして殺すって……今時の若者の性の乱れって深刻なのね……とうとうここまで来たなんて……

 でもつまみ食いしてるわりには、バンビエッタの反応は初々しいわね。見ていてなんだかほっこりしちゃう。

 

 むしろ、それを見ているジゼルの方が心配になってくるわね。

 バンビエッタに股間を見られた瞬間、一気に興奮したわ。興奮しすぎて、もう貞操帯がビクンビクン暴れ回ってるくらい。

 あと貞操帯の中はトゲトゲしてて、大っきくすると気絶するくらい痛いはずなんだけどなぁ……

 

「ちょっとぉ!? ジジの顔! 顔が、なんだか痛々しいんだけど!? アレ大丈夫なの!? 本当に大丈夫なの!? なんか出てる漏れてる! 隙間から何か変な液体が漏れてるんだけど!!」

「そりゃ何か漏れるくらいするだろ……チ○コだぞ?」

「はぁはぁ……可愛いよバンビちゃんってば本当に可愛い……食べちゃいたいくらいだ……こんなに可愛い表情を見られるなら、隊長さんの下に本当についちゃうのも悪くないかもなぁ……あ、ぐうぅっ! ……はぁはぁ……おぐっ!! ……ふひひ……ぅっ!」

 

 感情が強すぎて、痛みを凌駕してるのね……

 

「付けた私が聞くのもどうかと思うんだけど、あなたそれでいいの?」

「後悔なんてするもんか!」

 

 今にも気絶するくらい痛いでしょうに、よくやるわねぇ……

 

「えっと、バンビエッタ? それともバンビーズって呼んだ方がいい? ともかくこれが脅しの正体、ジゼルを死神側(こっち)に縛り付けてる鎖よ。貞操帯(コレ)を使ってジゼルに言うことを聞かせていたんだけど……なんだか見ていていたたまれなくなっちゃって……そっちに返しましょうか?」

「い、いいいいい要らない! そんなの要らない!!」

「そんなのってオメー……仲間に気を遣ってやれよ……リーダーだろ、一応?」

「幾ら何でもぶっちゃけすぎだろ。あんな変態でも戦力にはなんぞ?」

 

 両手と首を勢いよく横に振るバンビエッタの姿を見ながら、私はジゼルの肩にポンと手を掛けます。

 

「嫌われちゃったみたいね」

「ええっ!? そんな、酷いよバンビちゃんってば!! ボクのコレ……取ってくれないの……? ボク、ボク、バンビちゃんが助けてくれるって信じてたから、バンビちゃんが取ってくれるって信じてたから、意地悪な死神の(しご)きにも必死で耐えてきたのにぃーっ!!」

 

『シゴきたくともシゴけないでござるよ!!』

 

 射干玉、ハウス!!

 

「そんなもん自分で取りなさいよ!! なんであたしが取らなきゃならないのよ!?」

「だってこれ、すっごく頑丈なんだもんっ!! 全然壊れないんだよ!?」

「一応、強い力とか強烈な攻撃とかでなら貞操帯(コレ)は壊せるわよ? 取ってあげたら? チームなんでしょ?」

「死神ぃっ!! アンタも余計なこと言わないでよぉっ!!」

 

 ……なんで私、怒られてるの?

 

「おーい、取れるってよリーダー。なら、助けてやれよ」

「助けて欲しいって言ってるの」

「攻撃すりゃ壊れるんだとよ。ならお前の能力で吹き飛ばしてやれよ、仲間だろ?」

「やだっ! 絶対にやだぁっ!! (けが)れる!!」

 

 (けが)れるってアンタ……

 

「てか強い力っていうならミニー! アンタがやんなさいよ!! 得意でしょ!?」

「ええぇ……!? あたし、男の人のおち――ちんなんて、恥ずかしくって……出来ないよぉ……これはバンビエッタちゃんにしか出来ない仕事だって思うの……」

「きいいいいいぃぃぃぃっ!!」

「もういっそチ○コごと吹き飛ばしちまえよ」

「そんなことされると困るんだけど!? 人のチンコだと思って好き勝手言わないでよ!!」

「ええっと……」

 

 ……何、この状況……?

 

 彼女たちって、ジゼルの敵討ちで私を狙ってきたはず……なのよね……?

 これ、このまま攻撃しちゃ駄目かしら……?

 

『(そしてとうとう全員がイチモツの名前を一度は口にしてしまったでござるよ……この状況は一体……!? おかしいでござるな、これは最終決戦だったような……)』

 

 

 

 

 というより、この状況って地味に不味いわよ!!

 バンビーズの四人が真っ先に私の所に来たって事は、他の隊長・副隊長の居場所も完璧に割れているってことでしょ!?

 つまり全員奇襲し放題みたいなものじゃない!!

 地の利も主導権も完全に滅却師(クインシー)に奪われている分、むしろ前回の戦いより不利になってるってことよね!?

 

 ……他の皆はどうしているのかしら……心配だわ……

 




バンビーズと藍俚(あいり)が戦闘する筈だったんですけど……?
四対一どころかジジまで相手取る予定だったんですけど……!?

……なんでこうなったんでしょうか?

●今回頑張ったところ
全員に一度はチ○コって言わせたところ
(なおここでもう一度、今話のタイトルをご確認ください)

●ジジの"下"を見せたときのバンビーズの反応について(妄想込み)
 ①バンビエッタ。
 生娘ではない(六十一巻で、男を真っ二つにした後で服の乱れを直している ≒ ヤった後で()っている(それも何度もやっている)と解釈)
 ただ基本的な性癖はノーマル。
 よって、ジジの貞操帯を見て「よく知らないがなんだかエッチな道具」と解釈して、一番ウブに慌てふためいた。

 ②キャンディ。
 こっちも生娘ではないが、色んな道具とか使っているのでバンビちゃんより慣れてる。
 なので、多少照れているがそこまででは無い。

 ③リル。
 完全に興味なし。心の底からどうでも良いので冷めた反応。
 (むしろバンビちゃんを揶揄って遊んでいる)

 ④ミニー。
 「恥ずかしくてできな~い」と上手く逃げるものの、実際は見慣れすぎてて反応なし。
 (おっとり系な見た目だけど、実はこの子が一番経験豊富なのでは? と勝手な妄想)

 ⑤ジジ。
 バンビちゃんに見られて大興奮&大満足。
 (現在、滅多に摂れないであろうバンビちゃん栄養分を大量摂取中)
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