お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第388話 再び登場! オレンジ色の髪の死神!

「クロサキイチゴだーっ!! イチゴが来てくれたぞーっ!!」

「イチゴが来てくれれば俺たちは助かるんだーっ!」

「きゃーっ!! 待ってましたイチゴーっ!! 助けてーっ!!」

「クロサキイチゴはここにいるぞーっ!!」

「……あの馬鹿共……」

 

 悲痛な内容とは裏腹に、なんだか楽しそうな雰囲気で叫ぶ死神たちの姿を見ながら、オレンジ色の髪をした死神――黒崎一護は溜息を吐いた。 

 

 ……あれ? 黒崎一護じゃないぞコイツ。

 

 確かに髪はオレンジ色だけど、よく見たら顔立ちが違うし。なんだか外套を羽織っているし。そもそも浅打状態の斬魄刀を腰に二本も差しているし。一護の斬魄刀――斬月は常時開放していて、基本的に普段は背負っているはずだもの。

 偽物だコレ。

 

「まーまー、そう言わないで下さいよ海燕(・・)副隊長」

「そうそう。これも作戦なんですから」

「いやまあ……久しぶりにこの姿になった時点で、もう文句を言うつもりはねーけどよ……」

 

 清音と仙太郎の言葉に、渋面を作りながら黒崎一護――と、表現する必要はもうないだろう。髪を染め、黒崎一護に変装している志波海燕は頷いた。

 元気のない姿に、周囲にいた十三番隊の隊士たちも寄ってきては彼に声を掛けていく。

 

「そもそも今回の発案は浮竹隊長ですよ?」

「元気出して下さいよ!! 前回だって、一護が黒髪に染めたときだって、効果的だったじゃないですか!」

「ああ、まぁ……それを否定するつもりはねぇけどよ……やっぱりちょっとな……」

 

 一護に変装する海燕で場を混乱させる――この奇策は二年ほど前、一護たちが朽木ルキアを追って尸魂界(ソウルソサエティ)に突入してきた時に実行されたものだ。

 その時は「一護の髪を黒く染めて海燕だと言い切ることで瀞霊廷を警戒されずに移動しよう」という物だったが、これは後に「じゃあ逆に海燕の髪をオレンジに染めて一護だと言って死神たちを混乱させよう作戦(清音発案)」に変化し、一応効果を上げていた。

 

 今回もまた、その時と同じ事を滅却師(クインシー)たちを相手に行おうというわけだ。第一次侵攻の際、滅却師(クインシー)達からの被害が多かった理由の一つとして、彼らが幾つの地点に分散して現れたという点がある。

 前回効果があった以上、二次侵攻の際にも同じ動きを取るはずだ。

 ならば死神側は、バラバラに現れた滅却師(クインシー)達を「なんらかの方法で一カ所に集める」ことで、対処しやすくできるはず。

 

 こうして浮竹隊長発案の「良きタイミングで一護が来たと思わせ、集まった所を一気に叩いてしまおう」作戦が動いたわけだが……

 

「いくら作戦の為とはいえ、浮竹隊長の周りをほとんど空にしちまってんのが不安で仕方ねぇんだよ……」

 

 この作戦を実行する場合、十三番隊の隊士たちが浮竹の周囲から離れることになる。

 加えて滅却師(クインシー)たちが何時(いつ)襲ってくるのか、詳細なタイミングが不明なので、浮竹の周囲は基本的に常時守りが薄くならざるをえない。

 海燕からすれば、カミカケ事件の際に生き延びることを約束してくれたとはいえ、不安は拭いきれなかった。

 

「まあまあ、そのために銀城君と月島君を残しているんじゃないですか」

「正直に言ってあの二人、下手な死神よりよっぽど強いですぜ」

「お前らそれ、自分たちじゃ隊長を守り切れないって言ってるのと同じだぞ?」

 

 だってあの二人、強いんだもん。

 戦闘力といい能力といい、下手な隊長顔負けなんだもん。

 十三番隊預かりとなっていて、日々交流していたことで銀城と月島の二人の実力を嫌というほど知っている彼らは、海燕の言葉を一切気にすることはなかった。

 むしろ堂々と胸を張ってさらに叫ぶ。

 

「だから! こうやって大声を出してるんじゃないっスか! この作戦で滅却師(クインシー)達が集まってくれば、結果的に浮竹隊長だって楽になる! 浮竹隊長の命を救う事に繋がるんですよ!!」

「そうですよ! だから副隊長も精一杯モノマネを頑張――ぶふううううぅぅぅっっ!!」

「清音テメェ!! なんで最後の最後で笑った!?」

「すみませ……あはははっ! や、やっぱり直視は! 直視は無理ぃっ! 二年ぶりだけど、やっぱり無理ぃ!!」

「ったく! 台無しだ!!」

 

 お腹を抱えて笑う清音の姿から目を逸らしながら、海燕は言おうとしていた言葉を飲み込んだ。

 

 ――隊長も不安だけどよ……都と氷翠(ひすい)たちも、どうなってることやら……

 

 遠い目をしながら、妻と娘の身を案じる。

 滅却師(クインシー)たちの襲撃を受けてから、彼女たちは瀞霊廷にて手伝いを続けていたのだ。夫である彼としては、今回の襲撃に巻き込まれたであろう家族の身も心配でしかなかった。

 

「オラ、いつまで笑ってんだよ。いい加減にしないと――」

 

 だが、その気持ちを海燕は振り切る。

 今は余計なことを考えず、滅却師(クインシー)対策に集中すべきだと己に言い聞かせ、さらに部下達の気も引き締めようとしたときだ。

 彼の霊圧感知に幾つもの霊力が引っかかり、本能が警鐘を鳴らす。

 

「全員気を引き締めろ! ……どうやら、お出ましみたいだぜ」

 

 その言葉に、滅却師(クインシー)達が現れた。 

 

 

  

 

 

「待っていたぞ黒崎一護!」

 

 真っ先に姿を見せたのはジェラルドだ。

 彼は手にした大剣を突きつけながら、海燕のことを一護だとハッキリ口にする。

 

「いや待て、こいつは……黒崎一護……か?」

「何を仰るのやら。この男は間違いなく黒崎一護、特記戦力として陛下から……ん、んんん……っ!?」

 

 続いてやってきたのはリジェだ。だが彼は海燕の姿を見て疑問を浮かべる。

 それとほぼ同じタイミングでキルゲも到着していた。

 彼もまた、ジェラルドと同じように海燕のことを一護だと断言したのだが、その途中で何やら思うところがあったのだろう。色眼鏡を指で押さえ位置を直しながら、マジマジと見つめ直している。

 

「ホントに釣れるとはな……ちぃと半信半疑だったが……」

 

 ジェラルドとリジェは、平子の相手をし続けるよりも一護へと狙いを変えた方が得策と判断し、この場へと来たのだろう。

 キルゲは、ルキアが不在であることに加えて浮竹よりも優先すべき相手と考え、一護(海燕)の元に急行したようだ。

 まだ姿を見せていない滅却師(クインシー)達は、一護が現れたという虚報を未だ耳にしていないのか、それとも手を放せない状況になっているのか、詳細は不明だ。

 ともあれ強大な霊圧を放つジェラルドたちがやってきたことに、海燕は驚きを隠せなかった。

 

「こりゃ効果抜群だ。すみません浮竹隊長、疑っちまって」

「……どうやら一杯食わされたか」

 

 何しろ敵の総大将たるユーハバッハまでもが、側近のユーグラムを伴って姿を現したのだから。

 

 

 

 

 

 

「貴様は黒崎一護ではない。これは我らを誘き寄せるための謀りだったか……」

「ですが陛下、この者の霊力は確かに……!」

 

 海燕の姿を一瞥するなり、これが死神たちの仕掛けた策だとユーハバッハは看破する。だがそれに疑問を唱えたのはユーグラムだ。

 彼の霊圧感知は、目の前の相手が一護だと告げている。海燕を目の前にしてもなお、それは変わることがない。むしろ一護が変装して騙していると言われた方が自然だ。

 

「よく見てみろユーグラム。この者が発する霊圧ではなく、この者自身から放たれている霊圧を、だ」

「……? これは……! 霊圧が変化している……!? 外套の仕業か!」

 

 ユーハバッハの言葉に従い、ユーグラムは再び海燕を見つめ、そして気付いた。

 海燕から発せられている霊圧と、海燕そのものから放たれている霊圧が異なっているのだ。マイクを通して声を変化させるように、海燕の霊圧パターンが一護の霊圧パターンへと変化している。

 ユーグラムですら、近距離で感知に集中してようやく気付けたのだ。となれば遠く離れた位置からでは、ユーハバッハほどの能力であっても看破は困難。

 加えて死神たちの「一護が来た」という言葉を聞かされては、身を隠し続けることはできなかった。真偽を確認するためにも、この場所へ集まるしかなかった。

 

「いやいや、お見事! ご名答っスよ! まさかこんな簡単にバレるなんて……もう少し騙されてくれると思ってたんスけどねぇ……」

「やはり貴様の仕業か、浦原喜助」

 

 滅却師(クインシー)達が集まってきたタイミングで、浦原が姿を見せる。

 相変わらずの飄々とした態度だったが、その帽子の下の眼差しは驚くほどに真剣だ。

 

「ま、遅かれ早かれバレるってのは計算通り。集まってくれた滅却師(クインシー)の皆さんには申し訳ありませんが、ここで一網打尽にさせてもらいますよ」

「ほう……この程度の戦力でか?」

 

 一杯食わされたとはいえど、ユーハバッハの表情は崩れない。

 周囲を囲む死神たちを見回しながら、淡々と呟く。数こそ多いが、集まっている死神たちは副隊長以下がほとんど。平隊士や席官しかこの場にはいない。

 

「我々を一カ所に集め、一網打尽とする……狙いは良いが、戦力としては足らぬ。山本元柳斎と更木剣八、それに藍染惣右介と湯川藍俚(あいり)でも伏せて(・・・)おくべきだったな」

 

 滅却師(クインシー)たちは、数こそ少ないがその全てが聖文字(シュリフト)持ちだ。さらに親衛隊のジェラルドとリジェまでもがいる。

 それに加えて――

 

「陛下! 遅れて申し訳ございません!」

「なんや、これだけかい……まあ、よう集まった方か……?」

 

 アキュトロンが現れた。

 そして、移動したジェラルドたちを追ってきたのだろう。平子もこの場に姿を現した。彼は周辺の状況を確認すると、懐へと手を伸ばす。

 

「伏せておくべき、ですか……バレてますねぇ……けど、アタシの考えはちょっとだけ違います――皆さん!! お願いします!!」

「おおっ!!」

「やれやれ、待ちくたびれたよ」

「ホンマ、これで空振りやったらどうしたろかと」

「でも隠れんぼみたいで楽しかったよ?」

 

 浦原の言葉に、拳西・ローズ・リサ・(ましろ)の四人が外套を脱ぎ捨てながら一斉に姿を現した。脱ぎ捨てたのはかつて浦原が作成した、霊圧を遮断して姿を隠す外套だ。

 彼らは平子と同じように懐へと手を伸ばすと、そこから掌程度の大きさの金属球を取り出す。

 

「せーのっ!!」

 

 かけ声と共に、五つの金属球が一斉に投げつけられた。

 球は集まった滅却師(クインシー)たち目掛けて迫り、その途中で死神たちの遠距離攻撃によって亀裂が入る。

 ――仮に。もしもこの場にペペがいれば、その球の正体に気付いただろう。死神たちが何をやろうとしているのか、その尻尾くらいは掴むことができたはずだ。

 

「これは……!」

 

 だがペペは既に日番谷の手によって倒されており、警告を発する者はいない。ユーハバッハの目を通しても、気付いて対処するまでに僅かな時間を要したほどだ。

 その刹那の瞬間に、事態は変化していた。

 金属球の亀裂から猛烈な勢いで霊圧が吹き出したのだ。

 それは、目には見えぬはずの霊圧がうっすらと視覚化されるほどの高濃度で、霧を作り出すかのように周囲へと広がっていく。

 

滅却師(クインシー)にとって、(ホロウ)の霊圧は毒そのもの。となれば、(ホロウ)化可能な元仮面の軍勢(ヴァイザード)の皆さんの霊圧もまた、毒となる。ましてやその球は、内部に(ホロウ)化した皆さんの霊圧をたっぷりと詰め込んでおきました。どれだけお強い皆さんでも、高濃度に圧縮された霊圧なら少しは効果があるでしょう?」

 

 (ホロウ)化可能な死神たちが詰め込んだ霊圧に滅却師(クインシー)たちが包まれていくのを冷静に観察しながら、浦原は告げる。

 奪われた卍解を奪取する手段と本質的には同じもの。ただより強烈で攻撃的な方法を用いただけだ。ただ、それでも「倒せる」ではなく「効果がある」という言い回しを浦原は使っていた。

 

「なるほど」

 

 高濃度の霊圧に包まれながらも、ユーハバッハは結界のような物を張り部下たちを守っていたのが見えた。

 時間を掛ければ、どのような仕組みで霊圧を防いだのか。その仕組みと対抗手段も見つけられただろう。

 だが残念ながら、その時間は無い。

 薄く光を放つ結界の中で、滅却師(クインシー)達は変わらぬ様子を見せていた。

 

(ホロウ)化可能な死神を切り札として使ったか。確かに、下手に使えぬ特記戦力を使うよりも――」

「あれぇ? 平子さんたちが切り札だってアタシ、言いましたっけ?」

 

 帽子で表情を隠しながらも、浦原はニヤリと笑う。

 すると今度は、スターク・ハリベル・ネリエル・ウルキオラ・グリムジョーの五人の破面(アランカル)たちが姿を現した。

 その全員が、さきほど六車たちが持っていたのと同じく掌サイズの球体を握っている。

 

「本命はコチラ、十刃(エスパーダ)の皆さんですよ」

「いかん!」

 

 周囲一帯が、さきほどとは比べものにならないほど高濃度の(ホロウ)の霊圧に包まれた。

 




●一護だと思った? 残念、可愛い海燕ちゃんでした作戦リターンズ
・発案:浮竹隊長
・協力:十三番隊
・特別協力:浦原
という感じ。
(この仕込みをしていたので、キルゲと戦う浮竹隊長の周りには死神がいなかったという描写をしていました)

それに引っかかっちゃう陛下と滅却師(クインシー)の皆さん……
(今回は浦原が全面協力してるからね。仕方ないんだ)

●今回使ったアイテム
(ホロウ)の霊圧を溜め込む球。
 シロちゃんがペペ様に使ってたのと同じ物。
 (後々、こんな感じの似たようなアイテムを使いますという伏線だったりします)
・霊圧を誤認させる外套
 完全ステルスモード可能アイテムが原作に出てるので、このくらいは余裕の筈。
 ((声に加えて)霊圧誤認で敵を集める目的のため使用)
 (前回と違って、声だけじゃ滅却師たちが騙されてくれないだろうから)

●星十字騎士団《シュテルンリッター》のおさらい
 陛下・ユーグラム・アスキン・リジェ・ジェラルド・バズビー・キルゲ・BG9・ロバート・マスキュリン・ナナナ・ニャンゾル(あと石田)
 ――が生きてる(まだ負けてない)連中のはず

 集まってきた(今回描写したのが)
 陛下・ユーグラム・リジェ・ジェラルド・キルゲ・ロバート

(……だから? と聞かれたら、それまで。
 個人的なメモの意味合いが強いんですが……)
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