お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

392 / 406
第389話 嘘から出た誠

「こ、こりゃスゲぇ……! 抑えつけられなくなりそうだ……」

「すっごいビリビリきてるよ……! くぅ……」

(ホロウ)化の時の、暴走を思い出すね……油断していると、一気に持って行かれそうだよ……」

 

 超高密度の(ホロウ)の霊圧を肌で感じながら、元仮面の軍勢(ヴァイザード)の死神たちは、自らの内なる(ホロウ)を力尽くで押さえ込む。

 濃厚すぎる(ホロウ)の霊圧――それも、藍染自らが定めた十刃(エスパーダ)たちの霊圧を、特殊な道具で濃縮してあるのだ。

 木っ端な(ホロウ)や死神であれば、近寄っただけで暴走するか、耐え切れずに潰れるか……とにかくロクでもない結果にしかならないだろう。

 そんな現場に居合わせながら、それでも耐えていることが彼らの実力を示している。

 

「けど、結局ボクらの霊圧だけじゃ足りなかったってことだよね……」

「そういうなローズ! 元々、破面(アランカル)の連中でダメ押しをする予定だっただろうが! ……そりゃ俺も気に入らねえが」

 

 目に見えるほど濃密な霊圧に包まれているユーハバッハたちの様子を睨みながら、二人はそうやり取りをする。

 海燕を"これは一護です"と偽ることで滅却師(クインシー)たちを集め、一網打尽とする作戦のため、(ホロウ)化できる死神は可能な限り身を隠し、同じ仲間である死神たちの救助にも行かず、歯がゆい想いをしながらも必死に耐えていたからだ。

 なお、平子は始解も卍解も便利なので「可能な限り相手をして時間稼ぎをすること」という役割を初めから割り振られていたりする。

 

 ……え? 藍俚(あいり)(ホロウ)化できるからこの場にいないとダメ?

 いやいや、あの人はアレでも(一応は)トップクラスの回道の使い手ですし。回復役として動き回る役目がありますし……

 あとバンビーズのお山(おっぱい)登った(もんだ)り、ペルニダ相手に対魔忍したりと色々あったから……それで、間に合わなかっただけだから……

 

「せやけど、これならユーハバッハかて耐えられへんやろ。アレがどんだけ規格外かて、滅却師(クインシー)(ホロウ)の霊力に耐性を持たんのは変えられへんからな」

「……ちょ! 待て真子!! それは!!」

「それフラグだよっ!?」

「フラグ!?」

「真子! ジャンプを読んでないのかい!?」

 

 お約束な言葉を吐いた平子が、仲間からの言葉に「なん、だと……」と言わんばかりの表情を浮かべていた頃――

 

「いやいや、破面(アランカル)の皆さん。ご協力ありがとうございました」

 

 浦原喜助は、集まった破面(アランカル)たちに礼を述べていた。その言葉をハリベルは軽く首を横に振りながら応じ、他の破面(アランカル)たちも思い思いに口にする。

 

「礼は不要だ。ユーハバッハを放ってはおけないからな」

「とはいえ、突然現れてあの球を渡されたときには、何事かと思ったわ。事前に説明してくれたからよかったものの……しかし、上手く行くものだな……」

「ねえねえ一護は?」

「ありゃ海燕……か? 妙な頭しやがって……」

 

 二人ほど、そんなことは関係ないとばかりに我が道を行っている者がいるが、それはそれとして。ウルキオラが疑問を述べる

 

「お前の言う通りに、数日間に渡って霊圧を込めた。だがユーハバッハは刀剣解放(レスレクシオン)ですら通じなかった相手だ。アレで効果があるのか?」

「そりゃ勿論、効果は十分見込めるっスよ。今回の場合は思いっきり時間を掛けて霊圧を濃縮させましたからね。事前にご説明もしたでしょう?」

 

 浦原はニヤリと笑いながら太鼓判を押す。

 滅却師(クインシー)(ホロウ)の霊圧に弱いものの、それでもユーハバッハの力は驚異的だ。仮に、それこそ万単位の準備をしたとしても、その全てを力業で粉砕されかねない。

 となれば、質か量を高めることで力量差を埋める。単純だが確実な手段だ。そして幸いなことに、高めるだけの時間の猶予もある。

 

 第一次侵攻で滅却師(クインシー)達が撤退した後、浦原は隙を見て破面(アランカル)たちと接触し、この高濃度の(ホロウ)の霊圧を使った策を伝えていた。

 問題は、霊圧を効果的に扱うためには可能な限り滅却師(クインシー)達を一カ所に集める必要があるということだが、それは浮竹の発案した「一護かと思ったら海燕でした」の策を利用することで実現できた。

 

 これらの準備を行いながら、敵の星章化(メダライズ)で奪われた卍解を解析して侵影薬を作ったり、技術開発局に影が出来ない様に改造したりと、併行して色々やっていたりするわけである。

 ……働くなぁ……流石、死なないために死ぬほど努力と準備を怠らない浦原である。

 

(ホロウ)の皆さんですら、あれだけの霊圧をまともに受けたら悪影響が出るんじゃないですかね?」

「確かに……」

「なら、滅却師(クインシー)の方々には効果覿面ですって」

 

 浦原がそう告げたところで、渦中の霊圧がゆらりと蠢いた。

 その気配は、死神であろうと破面(アランカル)であろうと関係なく、この場にいた全ての者が感知できるほど印象的なものだ。

 

「あーあー、やっぱりぃ……」

「フラグ立てちゃったばかりに……」

「さっきのは"やったか!?"並に盛大なフラグだったな」

「スマン……や、ちょい待ち! これ俺か!? 俺が悪いんか!?」

 

 真っ先に口火を切ったのは、先ほどまでフラグだなんだと言い合っていた平子たちだ。

 続いて、悠々とした雰囲気で立ち並ぶ影が、濃厚な霊圧のカーテンの向こうから薄らと見えてくる。

 そのシルエットと気配は、ユーハバッハ達が未だ健在だという何よりの証拠だった。

 

「けど……効果はあっても決定打にはなりませんか……」

「……つまり、無駄だったと?」

「いえいえ、十分ですよ。そりゃ確かに、この策で倒せるのが一番良かったんですけどね。けど、ユーハバッハ相手にも効果はあるってことがわかったんです」

 

 ハリベルの言葉に、浦原は首を横に振る。

 今の光景は、浦原からしてみれば十分に想定可能なものだった。

 

「確かに、僅かながら肝を冷やした。だが、私には通じぬ」

 

 まるでその考えを裏付けるかのように、ユーハバッハが口を開いた。

 その姿は、先ほど平子らの霊圧を圧縮した物を放ったときと同じように、結界を張ったままだ。だがよく見れば結界は先ほどよりも強固なものになっている。

 それに加え、今回は効果があったのだろう。健在でこそあるものの、ジェラルドやユーグラムの様子は精細を欠いていた。

 ユーハバッハの守りの結界があってもなお、この霊圧に苦しめられているようだ。

 それらを確認した浦原は、一つ頷く。

 

「貴方はどうかは知りませんが、部下の方達はその結界が無ければ耐えられない。部下を減らすのは好ましくは無いでしょう? なら、貴方は実質動けなくなったと同じ事です。なら、どうとでも出来ますからね」

「何を言うのかと思えば馬鹿なことを! この程度の霊圧など今すぐにでも突破できる!! 陛下にこれ以上お手間を取らせるわけには行かぬのだ!!」

「よせ、ジェラルド」

「リジェ! 何を言うのだ! ぬ……っ!?」

 

 飛び出そうとしたジェラルドを、リジェが肩を掴んで止める。ほぼ同じタイミングで、スタークとハリベルが虚閃(セロ)を放っていた。もしも飛び出ていれば、間違いなく直撃していただろう。

 虚閃(セロ)自体はユーハバッハの結界で止められたものの、もしも高濃度の(ホロウ)の霊圧の中で、(ホロウ)の霊圧をさらに叩き込まれればどうなるか――神赦親衛隊であっても、その影響は未知数だ。

 

「それだけでは無い様だ。感じぬか、ジェラルドよ?」

 

 機先を制されたジェラルドに向けて、ユーハバッハはそう言い放つ。

 

「気付きました? そちらが黒崎サンを合図に集まってきたのと同じように、こちらもこの霊圧を合図に集まる手筈になってるんですよ」

 

 霊圧を合図に集合を掛ける。それは人数を集めるだけとしか思えないだろうが、本当の狙いはもう少しだけ別のところにある。

 

 もう少しすれば、涅たちが封じられた卍解をきっと解放してくれるはず。

 そうなれば、山本の卍解が――残火の太刀が再び使えるようになる。ユーハバッハがまともに動けないこの状況ならば、間違いなくひっくり返せるはず。

 それこそが本当の狙い。効果のある物を、より効果的に扱えるように場を整えたのだ。

 ……とはいえ、アスキンによって苦戦させられている今の山本ではどこまで活躍できるものか、少々疑問は残る。

 だが浦原もそこまでは知らぬ為、相手を焦らせるように告げる。

 

「霊圧を支配して分解・無効化させる時間は与えませんよ。まあ、そうでなくとも今の状況なら――」

「いや、違うな。私が言っているのはそれ(・・)ではない」

「……え?」

 

 それに気付かなかったのは、浦原もこの高濃度の(ホロウ)の霊圧の影響を受けて感覚が麻痺させられていたからだろう。

 相手の言葉を遮りながら、ユーハバッハは首を横に振ると、チラリと一瞬だけ視線を上に上げた。

 釣られるように浦原もまた、視線を上に向ける。

 そこには、天空からまるで隕石のように超高速で一直線に降りてくる人影があった。

 人影は見事に着地すると、軽く手を挙げる。

 

「よっ! 浦原さん、助けに来たぜ」

「く、黒崎サン!?」

 




●ベリたん登場
 きちゃった。
(上で和尚に「陛下たち来てるよ」って言われただろうし、海燕さんらと打ち合わせしてないし。そりゃあ来るよね。集まってるし、きっとこのまま決戦なんやろなぁ……)

●親衛隊とかユーグラムが
 (ホロウ)の霊圧、効果があるかが謎なんですよね……
 ベースが滅却師(クインシー)なので一応は効果があると思っていますが(霊王の心臓とか、その辺簡単にひっくり返しそうで……)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。